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固定残業代と就業規則の関係とは?法令遵守のための解説

2025.05.27 社労士コラム

固定残業代は、企業にとって便利な制度である一方、法令遵守の観点から複雑な問題を含んでいます。
特に、就業規則への適切な記載は、労働トラブルを回避するために極めて重要です。
誤った記載は、後々大きな損失につながる可能性があります。
そこで今回は、固定残業代の就業規則への正しい記載方法について、解説します。

固定残業代の法令遵守

労働基準法との関係性

固定残業代は、労働基準法に抵触しないよう、細心の注意を払って設計・運用する必要があります。
労働基準法では、時間外労働に対しては割増賃金の支払い義務を定めており、固定残業代もこの原則に従わなければなりません。
具体的には、固定残業代に含まれる時間数を明確に示し、それを超える時間外労働に対しては、超過分の残業代を支払う必要があります。
この点の規定が曖昧だと、労働基準監督署の調査や訴訟に発展するリスクがあります。
また、固定残業代に休日労働や深夜労働の手当が含まれる場合、その旨を明確に記載する必要があります。

トラブル回避の注意点

固定残業代に関するトラブルを回避するには、就業規則への記載内容の明確さが非常に重要です。
まず、固定残業代の金額と時間数を明確に区別し、記載する必要があります。
基本給との区別も明確にすることで、従業員への誤解を防ぎます。

さらに、時間外労働の計算方法や、超過分の残業代支給に関する規定も、具体的に記述する必要があります。
記載が曖昧だと、従業員が「固定残業代に含まれる時間内で働けば、残業代は不要」と誤解する可能性があります。
実際に時間外労働が発生した場合の処理方法も明確に定めておくことで、後々のトラブルを未然に防ぐことができます。

また、賃金明細書に、実際の労働時間と時間外労働手当の額を明記することも重要です。
これにより、従業員は自身の残業代の状況を把握しやすくなり、不満や誤解を減らすことができます。

就業規則への適切な記載

1:残業代の規定項目

就業規則には、固定残業代の定義、対象となる労働時間、計算方法、支給額、超過分の処理方法などを明確に記載する必要があります。
固定残業代を支給する旨を明確に記し、対象となる労働(時間外労働、休日労働、深夜労働など)を具体的に指定することが重要です。

また、固定残業代に含まれる時間数も正確に記載し、それを超えた場合の残業代の支払方法についても明確に規定する必要があります。
さらに、固定残業代の名称についても、従業員にとって誤解が生じにくい名称(例:「固定残業手当」)を使用することが望ましいです。

2:固定残業代の算定方法

固定残業代の算定方法は、労働基準法に則って行う必要があります。
基本給、所定労働時間、割増賃金率(時間外労働、休日労働、深夜労働など)を基に計算します。
計算式を具体的に示し、計算過程も透明性をもって説明することが重要です。
従業員ごとに基本給が異なる場合は、個々の労働条件に合わせて固定残業代を算定する方法を明示する必要があります。
計算方法が複雑な場合は、算定方法を分かりやすく図解するなどの工夫も有効です。

3:就業規則記載例

以下に、就業規則への記載例を示します。
これはあくまで例なので、自社の状況に合わせて修正する必要があります。

(固定残業手当)
第○条 固定残業手当は、月額○万円とし、○時間分の時間外労働に対する割増賃金を含むものとする。
2.固定残業手当は、時間外労働、休日労働、深夜労働のいずれにも適用される。
3.賃金の支払時には、賃金明細書に、当該月の実際の労働時間と時間外労働手当の額を明示する。
4.従業員が第1項に定める時間を超えて時間外労働をした場合は、その超過分の残業代を別途支給する。

まとめ

固定残業代の就業規則への記載は、法令遵守とトラブル回避の観点から、極めて重要です。
金額と時間数を明確に示し、超過分の残業代支給についても明確に規定する必要があります。
労働基準法を理解し、自社の状況に合わせて適切な規定を設けることが、円滑な労働関係を築く上で不可欠です。
本記事で示した記載例はあくまでも参考であり、個々の企業の状況に合わせて修正・調整する必要があることを忘れないでください。

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