新着情報

本当に理解してる?「正社員という雇用形態」の意味と企業が負う責任

2025.06.05 社労士コラム

「正社員と契約社員の違いって何?」「正社員を雇うと企業側にはどんな責任が発生するの?」「正社員登用制度を導入したいが、どんな手続きが必要?」——大阪・東京・名古屋・福岡など、全国の中小企業の人事・総務部門からよくある質問です。

以下のような悩みをお持ちではありませんか?

  • 「“正社員”の定義があいまいで、人事制度の整理ができていない」
  • 「雇用形態ごとに賃金や福利厚生がバラバラで、トラブルになりそう」
  • 「助成金を使って正社員登用したいが、何を整えればよいか分からない」

実は、「正社員」という雇用形態は法律上の明確な定義がなく、企業ごとの運用にゆだねられている部分が多いのが実情です。そのため、就業規則や給与計算、社会保険、助成金制度との整合をしっかり取っていないと、法的リスクや従業員とのトラブルを招きかねません。

この記事では、正社員という雇用形態の特徴、他の雇用形態との違い、実務での取り扱い、顧問社労士やアウトソース活用による整備の進め方まで、分かりやすく解説します。

正社員という雇用形態の特徴と他形態との違い

1. 正社員の一般的な定義とは?

法律上、「正社員」という用語に明確な定義はありませんが、一般的には以下の特徴を持つ雇用形態を指します:

  • 期間の定めがない雇用契約
  • フルタイム勤務(週40時間以内)
  • 所定の福利厚生・昇給・賞与・退職金などの対象
  • 事業所全体での人事異動や配置転換の可能性がある

契約社員・パート・アルバイトと異なり、企業との継続的な雇用関係を前提とするのが特徴です。

2. 雇用形態ごとの違いを比較

項目 正社員 契約社員 パート・アルバイト
契約期間 無期 有期(更新あり) 有期または短時間契約
労働時間 フルタイム フルタイム/時短あり 短時間が一般的
社会保険 加入義務あり 条件次第で加入 週20時間以上・月収8.8万円以上で加入
解雇・雇止めのリスク 低い(整理解雇ルールあり) 期間満了で終了可 柔軟な契約解除が可能

3. 正社員を雇用する際に企業が負う責任

  • 社会保険(健康保険・厚生年金・雇用保険)の加入
  • 就業規則・賃金規程の整備
  • 労働時間管理と残業代の支払い
  • 育児・介護休業など法定福利の提供
  • 整理解雇の厳格なルールの遵守

4. 社会保険・給与計算との関係

正社員は原則としてすべての法定保険に加入するため、給与計算や保険料算定が複雑になります。月額報酬、賞与、有給休暇の管理など、制度面の整備が不可欠です。

5. 助成金との連動

キャリアアップ助成金(正社員化コース)など、正社員登用を促進する助成金が複数存在します。適切な就業規則・契約書の整備が必要条件です。

正社員雇用に向けた企業の実務対応8ステップ

  1. 雇用形態ごとの就業規則を整備
    理由:規程が曖昧だとトラブルの原因に。
    方法:正社員・契約社員・パートごとに明確化。
    効果:労使双方にとって公平な制度設計が可能。
  2. 正社員の雇用契約書を作成
    理由:口頭契約では後の証拠にならない。
    方法:雇用条件通知書とあわせて作成・交付。
    効果:条件面の誤解・トラブルを防止。
  3. 社会保険加入の基準を明確に
    理由:パートとの区分をあいまいにしないため。
    方法:就業時間・月収・期間の基準を文書化。
    効果:適切な保険料負担と助成金活用が可能。
  4. キャリアアップ助成金を活用
    理由:正社員登用に対して国が支援しているため。
    方法:顧問社労士と相談し、条件に沿って申請。
    効果:採用コスト・教育費用を軽減。
  5. 給与体系・賞与制度を構築
    理由:正社員には安定性と納得感が求められる。
    方法:等級制度・手当の設計を明文化。
    効果:モチベーション向上と離職率低下。
  6. 勤怠管理システムを導入
    理由:時間外労働・有給休暇の適正管理が必要。
    方法:IC打刻・クラウド勤怠を導入。
    効果:残業代計算と休暇取得率の向上。
  7. 給与計算・手続きをアウトソース
    理由:法改正や報酬制度との整合管理が複雑。
    方法:給与計算・社会保険を専門会社に委託。
    効果:ミスを削減し、人的負担を軽減。
  8. 社労士との定期相談を行う
    理由:雇用法制や助成金制度の変化に即応するため。
    方法:四半期ごとの面談・顧問契約を活用。
    効果:制度設計とトラブル予防の精度が高まる。

よくあるQ&A

Q1. 「正社員」と記載していない契約書でも問題ない?
A. 雇用契約書に「期間の定めなし」とあり、かつ就業実態がフルタイムであれば、正社員と見なされる可能性があります。文言の整備が重要です。

Q2. 正社員から契約社員に変更するには?
A. 本人の自由意思による同意が必須。業績悪化を理由とした一方的な変更は「不利益変更」とみなされ、違法になる可能性があります。

Q3. パートを正社員登用するには?
A. 雇用契約の再締結、社内規程の整備、就業条件通知の再発行など、段階的な手続きが必要です。助成金の対象にもなるため、顧問社労士との連携が有効です。

Q4. 就業規則に「正社員」の定義を入れるべき?
A. はい。契約社員・パートとの処遇差や制度の明確化のためにも、就業規則内で雇用形態ごとの扱いを明記しておくことが望ましいです。

まとめ

「正社員」という雇用形態は、雇用の安定性と引き換えに、企業側にも法的・制度的な責任が発生します。

  • 契約内容・規程整備・給与計算との整合が重要
  • 社会保険・助成金・制度運用との関係性を理解する
  • 顧問社労士やアウトソースを活用し、効率とリスク管理を両立

大阪・東京・名古屋・福岡などの中小企業では、正社員制度の見直しと整備を進める企業が増加中です。今こそ、自社の雇用制度の在り方を再確認し、健全な人材活用に向けて一歩踏み出しましょう。

LINE お問合せ

大阪なんば駅徒歩1分
給与計算からIPO・M&Aに向けた労務監査まで
【全国対応】社会保険労務士法人 渡辺事務所

こちらの内容もお勧めです