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実は損することも?特別支給の老齢厚生年金のデメリットと注意点を解説

2025.06.17 社労士コラム

「60歳になったら年金がもらえるって聞いたけど、実は損になることもある?」「特別支給の老齢厚生年金っていつから?働いてたら減るの?」「繰上げや繰下げとの違いがよくわからない…」——大阪・東京・名古屋・福岡の企業から、定年後の年金に関する質問が増えています。

こんな疑問をお持ちではありませんか?

  • 「特別支給の老齢厚生年金って結局何歳からもらえるの?」
  • 「会社に残って働いていたら、年金が減らされるって本当?」
  • 「受け取らずに65歳まで待った方が得なんじゃ…?」

特別支給の老齢厚生年金は、昭和36年4月1日以前生まれの方を対象に設けられた「経過措置」ですが、仕組みが複雑で誤解も多く、働きながら受け取ると損になる可能性もあります。

この記事では、制度の仕組みと対象年齢、メリット・デメリット、働き方との関係、就業規則や給与との連動、社会保険や顧問社労士との連携など、企業として従業員対応にも役立つポイントを詳しく解説します。

特別支給の老齢厚生年金とは?制度の概要

1. 通常の老齢年金との違い

通常の老齢厚生年金:原則65歳から受給開始
特別支給の老齢厚生年金:60歳台前半(60~64歳)から受給できる制度(段階的に廃止中)

対象は主に昭和36年4月1日以前生まれの男性および女性です(女性は5年後ろ倒し)。

2. 年金の内訳

  • 報酬比例部分:厚生年金の保険料に基づく支給
  • 定額部分:基礎年金に準ずる金額(現在は原則廃止)

3. 支給開始年齢の一覧(男性)

生年月日 支給開始年齢
昭和28年4月~昭和30年3月 61歳
昭和30年4月~昭和32年3月 62歳
昭和32年4月~昭和34年3月 63歳
昭和34年4月~昭和36年3月 64歳
昭和36年4月以降 対象外

特別支給の老齢厚生年金:4つのデメリット

1. 在職老齢年金制度による減額

60歳以降も働き続けると、「賃金+年金」の合計が月額28万円(65歳未満)を超える場合、超過分に応じて年金が減額されます。

たとえば、月収25万円+年金10万円の場合、7万円の超過→その一部が支給停止に。

2. 所得税・住民税がかかる

年金は非課税ではなく、一定額を超えると課税対象になります。給与と年金のダブルインカムの場合、住民税や保険料負担が増加することも。

3. 健康保険・厚生年金の保険料が発生

60歳以降も厚生年金に加入して働いていると、年金をもらいながら保険料を払う状況に。さらに、在職中に払った保険料はすぐに反映されず、65歳以降に再計算されて加算されます。

4. 企業側の制度整備が追いついていない

就業規則に退職・再雇用・給与の取り扱いが明記されていないと、社内対応の不一致や助成金対象外リスクにつながるケースも。

企業・従業員がとるべき8つの実務アクション

  1. 該当従業員の生年月日を把握
    理由:対象者かどうかで対応が変わるため。
    方法:人事データベースで1953年〜1961年生まれを抽出。
    効果:制度案内・面談タイミングを把握可能。
  2. 在職老齢年金のシミュレーションを実施
    理由:減額される可能性があるから。
    方法:日本年金機構の「年金見込額試算」で確認。
    効果:支給額の期待値と対策が見える化。
  3. 就業規則・再雇用規程の整備
    理由:60歳以降の処遇を明文化するため。
    方法:顧問社労士と規程を改訂。
    効果:助成金受給や従業員満足度の向上。
  4. 年金と給与の「手取り比較」を提示
    理由:総額ではなく手取りで損得が変わる。
    方法:給与+年金−税金−保険料でシミュレーション。
    効果:従業員の誤解や不満を解消。
  5. 定年前退職と再雇用の選択肢を提示
    理由:退職して年金全額を受け取る方法もある。
    方法:就業希望者と個別面談を実施。
    効果:多様な働き方に対応。
  6. 給与設計を工夫して支給停止を回避
    理由:28万円の壁を意識した設計が必要。
    方法:手当の非課税化、労働時間の調整など。
    効果:年金と給与の両立が可能に。
  7. 年金事務所・社労士との情報共有
    理由:毎年制度変更が発生しているため。
    方法:最新情報をキャッチし、社内で共有。
    効果:法令順守・助成金受給に強くなる。
  8. 給与計算をアウトソース
    理由:60歳以降の複雑な計算処理を正確に行うため。
    方法:社労士や給与計算代行業者に委託。
    効果:処理ミス防止と業務効率化を実現。

よくあるQ&A

Q1. 65歳まで働くと特別支給の年金は減る?
A. 月28万円を超えると「在職老齢年金制度」により一部支給停止されます。

Q2. 定額部分って今もあるの?
A. 2022年度で廃止されており、現在は原則「報酬比例部分」のみ支給されています。

Q3. 年金を受け取らずに遅らせることは可能?
A. 特別支給はあくまで「前倒し受給」の扱いで、繰下げ制度は原則適用できません。65歳以降は繰下げ可能です。

Q4. パート社員でも支給対象になる?
A. 厚生年金に加入していた期間があり、要件を満たしていれば支給対象になります。

まとめ

特別支給の老齢厚生年金は、一見お得な制度に見えますが、働き方や制度の理解次第では損をするケースもあります。

  • 在職中の年金は減額リスクあり
  • 税・保険料・助成金との関係に要注意
  • 制度の理解と就業規則の整備が不可欠

大阪・東京・名古屋・福岡など全国の企業でも、60歳以降の制度設計に注力する企業が増えています。今こそ、自社の対応と従業員の理解を深め、納得できる働き方と年金受給の両立を支援していきましょう。

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