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育児介護休業法の落とし穴!中小企業が避けるべきトラブル事例と実践的対策
育児介護休業法の改正が続き、中小企業における対応が急務となっています。しかし、依然として「うちは少人数だから関係ない」「代替要員がいないから無理だ」といった誤解や運用ミスによるトラブルが後を絶ちません。

本記事では、人事労務の現場で頻発している育児介護休業法に関するトラブル事例を具体的に解説し、企業が法的リスクを回避するための実践的な対策を紹介します。2025年4月からの法改正に向けた準備も含め、経営者や人事担当者が知っておくべき重要ポイントを押さえましょう。
育児介護休業法で中小企業が陥りがちなトラブル事例
育児休業や介護休業にまつわるトラブルは、悪意がある場合だけでなく、制度への理解不足から生じるケースも多々あります。ここでは、中小企業で実際に見られる典型的なトラブル事例を紹介します。
事例1:男性社員への「パタハラ」と取得拒否
ある中小製造業でのケースです。男性社員から「子どもが生まれるので育休を取りたい」と申し出があった際、上司が「男が育休なんて取ってどうするんだ」「昇進に響くぞ」といった発言を行いました。さらに、会社側は「就業規則に男性の育休規定がない」ことを理由に取得を拒否。結果として、社員は労働局に相談し、会社は行政指導を受けることになりました。
事例2:復帰後の不利益取扱い(正社員からパートへ)
育児休業から復帰しようとした女性社員に対し、会社側が「子育て中で残業ができないなら正社員としては戻せない」と一方的に通告し、パートタイム契約への変更を強要した事例です。社員は原職復帰を希望していましたが、会社は「代替要員を正社員で雇ってしまったためポストがない」と主張。これは法的に禁止されている不利益取扱いに該当し、後に損害賠償請求へと発展しました。
事例3:育休終了日の認識不一致による無断欠勤扱い
社員は「保育園が決まらなければ延長できる」と思い込み、会社への連絡なしに育休を延長しようとしました。一方、会社側は予定通りの復帰がないため「無断欠勤」として懲戒処分を検討。双方のコミュニケーション不足と、延長手続きに関するルールが周知されていなかったことが原因で起きたトラブルです。
なぜ発生する?育児介護休業法トラブルの背景と要因
このようなトラブルが発生する背景には、単なる法律知識の欠如だけでなく、組織特有の構造的な要因が潜んでいます。
「制度の周知」と「実際の運用」の乖離
多くの企業では就業規則に育児・介護休業の規定を設けていますが、現場の管理職までその内容が浸透していないケースが目立ちます。特に、「育児・介護休業法」は頻繁に改正されるため、就業規則が古いまま放置され、現行法に対応できていないことがトラブルの引き金となります。
人手不足による現場の疲弊
ギリギリの人員で回している中小企業では、一人が抜けることのインパクトが非常に大きくなります。「休まれると現場が回らない」という現実的な問題が、ハラスメント発言や取得妨害という形で表面化してしまうのです。経営層が現場に対して具体的な代替策を提示せず、負担を現場任せにしていることが大きな要因です。
「休業=迷惑」というアンコンシャス・バイアス
「子育ては女性の役割」「休む社員はやる気がない」といった無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)が、管理職層に残っていることも問題です。これが法的な権利行使を阻害し、従業員のエンゲージメントを著しく低下させています。
根本原因を徹底分析:法解釈の誤りや運用上の課題
トラブルの根本原因を掘り下げると、以下の3つのポイントに集約されます。これらは法解釈の誤りや運用体制の不備に起因しています。
- 就業規則の不備と法改正への対応遅れ
「労使協定を結べば育休を拒否できる」と誤解しているケースがあります。確かに労使協定により「入社1年未満」などの除外規定を設けることは可能ですが、正当な理由なく拒否することは違法です。また、2022年の改正で義務化された「個別の周知・意向確認」を行っていないことも、重大なコンプライアンス違反となります。 - 代替要員確保の計画性の欠如
育休取得は突発的なものではなく、数ヶ月前から予測可能です。しかし、多くの企業では「誰かがカバーするだろう」と楽観視し、具体的な業務引き継ぎや代替要員の採用計画を立てていません。これにより、残された従業員に過度な負担がかかり、不満が爆発するのです。 - 復帰支援プランの不在
「休ませて終わり」になっており、復帰後のキャリアプランや働き方についての話し合い(復職面談)が不足しています。これにより、復帰直後の社員が「自分の居場所がない」と感じたり、会社側が一方的な配置転換を行ったりする原因となります。
企業への影響:トラブルがもたらす法的リスクと損失
育児介護休業法違反によるトラブルは、単に労使間の問題にとどまらず、企業の存続に関わる重大なリスクをもたらします。
行政指導と企業名の公表
都道府県労働局による助言・指導・勧告に従わない場合、企業名が公表される可能性があります。これは企業の社会的信用を失墜させ、取引先からの信頼低下を招きます。また、虚偽の報告をした場合には過料の罰則も規定されています。
損害賠償請求と訴訟リスク
不利益取扱いやハラスメントを受けた従業員から、慰謝料や逸失利益を求める民事訴訟を起こされるリスクがあります。裁判例でも、育休取得を理由とした降格や雇い止めに対し、企業側に数百万円単位の支払いを命じる判決が出ています。
人材流出と採用難(レピュテーションリスク)
「あの会社は育休が取れない」「マタハラがある」といった評判は、SNSや口コミサイトを通じて瞬く間に拡散します。これにより、優秀な若手社員の離職を招くだけでなく、新規採用が極めて困難になります。人手不足が加速し、経営そのものが立ち行かなくなる恐れがあります。
失敗を回避!育児介護休業法における予防策と改善ステップ
トラブルを未然に防ぎ、従業員が安心して働ける環境を作るために、企業が直ちに取り組むべき具体的な改善策を提示します。
1. 就業規則と労使協定の総点検
まずは自社の就業規則が最新の育児介護休業法に対応しているか確認しましょう。特に、「産後パパ育休(出生時育児休業)」や「介護休業」に関する規定、および労使協定による除外規定が法的に正しいかを見直す必要があります。
2. 「個別の周知・意向確認」の徹底と記録化
妊娠・出産の申し出があった従業員に対し、制度の内容を個別に説明し、取得意向を確認することが義務付けられています。口頭だけでなく、必ず「面談記録」や「意向確認書」として書面に残し、言った言わないのトラブルを防ぎましょう。
3. 管理職向けのハラスメント研修の実施
管理職に対し、育児介護休業法の基礎知識と、どのような言動が「パタハラ」「マタハラ」に該当するかを教育する研修を定期的に実施します。「知らなかった」では済まされないことを徹底的に周知し、意識改革を促します。
4. 業務の棚卸しと属人化の解消
特定の社員しかできない業務(属人化)を減らすことが、休業取得時の現場混乱を防ぐ鍵です。業務マニュアルの整備や、多能工化(ジョブローテーション)を進め、誰が休んでも業務が回る体制を平時から構築しておきましょう。
5. 復職支援プランの策定
休業に入る前から復帰後を見据えたプランを作成します。休業中の連絡頻度や方法、復帰後の働き方(短時間勤務など)について事前に合意形成を図ることで、スムーズな職場復帰を実現できます。
実践的アドバイス:万が一のトラブル発生時の正しい対応
もし社内で育児介護休業法に関するトラブルが発生してしまった場合、初期対応を誤ると事態が悪化します。以下の手順で冷静に対応してください。
- 事実関係の正確な把握: 当事者双方(申請者と上司など)から丁寧にヒアリングを行い、事実関係を時系列で整理します。予断を持たずに客観的な証拠を集めることが重要です。
- 法令との照合: 把握した事実が法律や就業規則に違反していないか確認します。判断が難しい場合は、早急に弁護士や社会保険労務士などの専門家に相談してください。
- 是正措置と再発防止: 違反が確認された場合は、直ちに是正措置(休業の承認、不利益取扱いの撤回など)を講じます。同時に、被害を受けた従業員への謝罪とケアを行い、再発防止策を全社に周知します。
類似ケースを防ぐためのチェックポイントと今後の展望
最後に、今後の法改正も見据えたチェックポイントと展望を整理します。
トラブル予防のためのチェックリスト
- [ ] 育児・介護休業規定は最新の法改正に対応しているか?
- [ ] 妊娠・出産の申し出時に、制度の個別周知と意向確認を行っているか?
- [ ] 「男の育休」や「時短勤務」に対する否定的な風土はないか?
- [ ] 復職時の処遇について、休業前と同じか、不利益になっていないか?
- [ ] 相談窓口を設置し、従業員に周知しているか?
2025年改正を見据えた対応
育児介護休業法は、2025年4月および10月にも重要な改正が施行されます。
- 柔軟な働き方の実現: 3歳以上小学校就学前の子を養育する労働者に対し、テレワークや短時間勤務など複数の選択肢を用意し、選択可能にすることが義務化されます。
- 残業免除の対象拡大: 所定外労働の制限(残業免除)が、3歳未満から小学校就学前までに拡大されます。
- 介護支援の強化: 介護離職防止のため、40歳時点での情報提供や、介護に直面した際の意向確認が義務化されます。
これらの改正は、企業に対しより一層の「個別の配慮」と「環境整備」を求めるものです。今のうちから体制を整えておくことで、将来のトラブルを確実に防ぐことができます。
育児や介護と仕事の両立は、もはや一部の社員の問題ではなく、企業経営の根幹に関わる課題です。法律を遵守するだけでなく、従業員がライフステージの変化に関わらず活躍できる環境を作ることは、結果として企業の生産性向上と持続的な成長につながります。
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