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【労災発生】事業主が陥る初動の落とし穴5選!正しい対応と回避策を社労士が解説

2025.11.24 労災対応

労災発生!事業主が知るべき初動対応の基礎知識

労働災害(労災)は、どんなに安全管理を徹底している職場でも、「まさか」のタイミングで発生します。事故が起きた瞬間、事業主や現場責任者がどのような初動対応を取るかによって、被災した従業員の予後だけでなく、会社の社会的信用や法的責任の行方も大きく左右されます。

【労災発生】事業主が陥る初動の落とし穴5選!正しい対応と回避策を社労士が解説

初動対応において最も重要なのは、「人命救助」と「二次災害の防止」、そして「正確な事実確認」の3点です。これらは同時並行で、かつ迅速に行われなければなりません。特に、動揺している現場では誤った判断が下されがちです。

本記事では、労災発生直後の混乱の中で事業主が陥りやすい間違い(落とし穴)を中心に、正しい対応フローや2025年時点での最新の法的手続きについて、社会保険労務士の視点から詳しく解説します。

「まさか」の労災発生!事業主が陥りやすい初動の落とし穴

労災発生直後、良かれと思って行った判断や、無知による対応が、後に大きなトラブルに発展するケースが後を絶ちません。ここでは、事業主が特に陥りやすい5つの落とし穴を紹介します。これらを回避することが、会社と従業員を守る第一歩です。

1. 健康保険を使って受診させてしまう

「とりあえず健康保険証で」というのは典型的な間違いです。業務上や通勤中のケガ(労災)には、原則として健康保険は使用できません。健康保険を使ってしまうと、後日「労災」への切り替え手続きが必要となり、医療機関や健康保険組合との調整で事務処理が非常に煩雑になります。最初から「労災です」と告げて受診させることが鉄則です。

2. 軽微な事故だからと報告しない(労災隠し)

「大したケガではないから」「保険を使うと保険料が上がるのが嫌だ」といった理由で、労働基準監督署への報告を怠ることは、いわゆる「労災隠し」にあたります。これは犯罪行為であり、発覚すれば50万円以下の罰金や、最悪の場合は書類送検、企業名の公表などのペナルティが科せられます。休業日数が少ない場合でも、所定の報告義務があることを忘れてはいけません。

3. 現場検証の前に現場を片付けてしまう

事故発生後、慌てて現場を掃除したり、機械の位置を動かしたりしてしまうことがあります。しかし、重大な事故であれば警察や労働基準監督署による現場検証が行われます。現場の状況が変わってしまうと、「証拠隠滅」を疑われる可能性があります。二次被害防止のための応急処置を除き、現場はそのまま保存する必要があります。

4. 感情的な対応や安易な口約束をしてしまう

被災者やその家族に対して、誠意を見せようとするあまり、「一生面倒を見ます」「すべての責任は会社にあります」などと、法的根拠のない安易な約束をするのは危険です。また逆に、高圧的な態度で責任を否定するのも訴訟リスクを高めます。まずは事実確認を優先し、補償については「労災保険の範囲内で適切に対応する」という姿勢を保つことが重要です。

5. 「事業主証明」を事実確認せずに押印する

従業員が作成した労災申請書類の内容(発生状況など)をよく確認せず、言われるがままに事業主印を押してしまうケースです。もしその内容が事実と異なっていた場合、会社がその誤った事実を認めたことになり、安全配慮義務違反を問われる裁判などで不利な証拠となる可能性があります。必ず管理者による事実確認(現認)を行ってから証明する必要があります。

事故直後の対応フロー:被害者救護から状況把握まで

正しい初動対応は、以下のフローで行います。手順をマニュアル化し、周知しておくことが推奨されます。

  1. 被災者の救護
    最優先は人命です。ためらわずに119番通報を行い、救急車を呼びます。必要に応じてAEDの使用や止血などの応急処置を行います。この際、医療機関には「仕事中のケガ(労災)」であることを伝えます。可能であれば「労災指定病院」へ搬送すると、その後の手続きがスムーズです。
  2. 二次災害の防止と現場保存
    機械の緊急停止、危険箇所の立ち入り禁止措置などを行い、他の従業員への被害拡大を防ぎます。同時に、前述の通り現場の状況を可能な限り保存します。
  3. 関係各所への連絡
    重大な事故(死亡や重篤なケガ)の場合は、管轄の労働基準監督署および警察署へ直ちに通報する必要があります。社内では、安全衛生担当者や経営層へ速やかに報告ルートを回します。
  4. 事実関係の調査と記録
    記憶が鮮明なうちに、5W1H(いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように)に基づいて事故状況を記録します。
    • 現場の写真撮影(様々な角度から)
    • 目撃者の証言(メモや録音)
    • 監視カメラ映像の確保
    これらの記録は、後の労災認定や再発防止策の策定において極めて重要な資料となります。

労働基準監督署への報告義務と必要な書類・手続き

労災が発生した場合、事業主には労働基準監督署への報告義務があります。提出すべき書類は「労働者死傷病報告」ですが、休業日数によって提出期限や様式が異なります。

  • 死亡または休業4日以上の場合
    「遅滞なく(概ね1週間〜2週間以内)」に、様式第23号を提出しなければなりません。
  • 休業4日未満の場合
    四半期ごとにまとめて報告します。例えば、1月〜3月に発生した災害については、4月末日までに様式第24号を提出します。

【重要】2025年1月からの電子申請義務化について

労働安全衛生規則の改正により、2025年1月1日から「労働者死傷病報告」の電子申請が原則義務化されています。これまでの紙での提出から、厚生労働省のポータルサイトを通じた電子申請(e-Gov)へと移行しています。
また、報告様式も変更され、被災状況の記述に加えて、コード入力などの項目が細分化されています。古い様式のままでは受理されない可能性があるため、必ず最新の運用ルールを確認してください。

労災保険給付申請:スムーズな手続きのための重要ポイント

労働基準監督署への「報告」とは別に、被災した従業員が治療費や休業補償を受けるためには「労災保険給付」の申請手続きが必要です。主な給付には以下があります。

  • 療養(補償)給付: 治療費の全額が支給されます(自己負担ゼロ)。
    • 労災指定病院の場合:現物給付(窓口支払いなし)。「様式第5号」などを病院に提出。
    • 指定外病院の場合:一時立替え払い後、現金給付。「様式第7号」などを労基署に提出。
  • 休業(補償)給付: 休業4日目から、給付基礎日額の80%(特別支給金含む)が支給されます。最初の3日間(待機期間)は、事業主が平均賃金の60%以上を直接補償する義務があります(労働基準法上の義務)。

スムーズな手続きのポイント:
申請書には「事業主の証明」欄があります。事業主は、事故が業務に起因するものであると確認できた場合、速やかに署名・証明を行う義務(助力義務)があります。ここでの遅れは従業員の生活不安に直結するため、迅速な対応が求められます。

二次被害を防ぐ!事業主が行うべき再発防止策と安全管理

労災事故が発生した後、「運が悪かった」で済ませてはいけません。労働基準監督署からも、原因分析と再発防止策の策定・実施が厳しく求められます。場合によっては「労働災害再発防止対策書」の提出を指示されることもあります。

  1. 原因の徹底究明
    「不注意だった」という人的要因だけでなく、「なぜ不注意が起きたのか」「設備に不備はなかったか」「手順書に無理はなかったか」など、設備・管理・環境の面から根本原因を探ります。
  2. 具体的な改善策の実施
    • 設備の安全ガード設置や点検
    • 作業手順書(マニュアル)の見直し
    • リスクアセスメントの実施(危険予知)
    • 安全衛生教育の再徹底
    これらを形だけでなく実効性のあるものとして運用することが、同種事故の再発を防ぎ、企業の安全配慮義務を果たすことにつながります。

「もしも」の時に頼れる専門家:社労士の活用メリット

ここまで解説してきた通り、労災対応は初動の判断、複雑な書類作成、法改正への対応、そして再発防止策の策定と、専門的な知識と経験が求められる業務です。特に、2025年からの電子申請義務化など、手続きのハードルは上がっています。

社会保険労務士(社労士)に依頼することで、以下のようなメリットが得られます。

  • 正確かつ迅速な手続き: 複雑な電子申請や書類作成を代行し、事務負担を大幅に軽減できます。
  • リスク管理のアドバイス: 状況に応じた適切な初動対応を指示し、労災隠しや安全配慮義務違反などの法的リスクを回避します。
  • 労働基準監督署対応: 調査や是正勧告への対応を専門家の知見でサポートします。
  • 職場環境の改善提案: 事故の再発を防ぐための安全管理体制の構築を支援します。

労災は起きないことが一番ですが、起きてしまった時にこそ、プロフェッショナルである社労士のサポートが、会社と従業員を守る強力な盾となります。「もしも」の備えとして、社労士との連携を検討しておくことを強くお勧めします。

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