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平均賃金の算出方法とは?100人企業の総務が知るべき正確な計算法
「休業手当を計算したいけれど、平均賃金の算出方法がよくわからない…」
従業員100人を抱える企業の総務担当者なら、一度は直面するこの疑問。平均賃金の算出方法は、休業手当、解雇予告手当、年次有給休暇の賃金計算など、様々な場面で必要となりますが、「計算式が複雑すぎる」「除外日数の考え方がわからない」「給与計算ソフトで自動計算されるが、計算根拠を確認したい」といった悩みをお持ちの方がほとんどです。
特に最近は新型コロナウイルスの影響による休業や、働き方改革に伴う労働条件の見直しなどで、平均賃金を正確に算出する機会が急増しています。「休業手当の支払いで平均賃金を使ったが、計算が正しいか不安」「労働基準監督署から指導を受けないか心配」といった声をよく伺います。
また、「賞与や諸手当の扱いがわからない」「欠勤や有給休暇が多い従業員の平均賃金はどう計算するのか」「就業規則に記載された計算方法で正しいのか」といった実務上の細かな疑問も多数あります。
「現在の顧問社労士に聞いてもよくわからない」「DX化でシステム導入を検討しているが、平均賃金計算機能の精度が心配」「助成金申請で平均賃金の証明が必要だが、どう算出すればいいのか」そんな不安をお持ちではありませんか。
本記事では、平均賃金の算出方法について、基本的な計算式から実務上の注意点、具体的な計算事例まで、全国対応のHR BrEdge(エイチアールブレッジ)社会保険労務士法人が豊富な実務経験に基づいて詳しく解説いたします。正確な計算により法的リスクを回避し、適切な労務管理を実現する方法をお伝えします。
平均賃金の算出方法:基本原則と法的根拠
「平均賃金って、そもそもどんな場面で使うの?計算方法の基本は?」
まず、平均賃金の算出方法の基本原則と使用場面を正確に理解することから始めましょう。多くの総務担当者が混乱する理由は、平均賃金の概念が複雑で、計算方法も複数のパターンがあるためです。
【平均賃金が使用される主な場面】
1. 休業手当(労働基準法第26条)
使用者の責に帰すべき事由による休業の場合、休業期間中は平均賃金の60%以上の休業手当を支払わなければなりません。新型コロナウイルス関連の休業でも頻繁に使用されています。
2. 解雇予告手当(労働基準法第20条)
30日前に解雇予告をしない場合、平均賃金の30日分以上の解雇予告手当を支払う必要があります。
3. 年次有給休暇の賃金(労働基準法第39条)
年次有給休暇取得時の賃金について、平均賃金で支払うことも選択できます(他に通常賃金、健康保険の標準報酬日額での支払いも可能)。
4. 労働災害時の休業補償(労働基準法第76条)
業務上の災害により休業する場合、平均賃金の60%の休業補償を行います(実際は労災保険から給付)。
【平均賃金の基本的な算出方法】
原則的な計算式
平均賃金 = 算定すべき事由の発生した日以前3ヶ月間の賃金総額 ÷ その期間の総日数
具体例:
・算定すべき事由の発生日:4月15日
・算定期間:1月15日~4月14日の3ヶ月間
・期間中の賃金総額:900,000円
・期間の総日数:90日
・平均賃金:900,000円 ÷ 90日 = 10,000円
【算定期間から除外する期間】
以下の期間は、賃金総額からも日数からも除外します:
・業務上の傷病による休業期間
・産前産後休業期間
・育児・介護休業期間
・年次有給休暇を取得した日
・試用期間
除外の考え方
これらの期間を除外するのは、通常の労働による賃金ではないため、平均賃金の算定に含めると適正な金額にならないためです。
【最低保障額の規定】
最低保障額の計算
原則計算による平均賃金が以下の金額を下回る場合は、最低保障額が平均賃金となります:
最低保障額 = 算定期間中の賃金総額 ÷ 算定期間中の労働日数 × 0.6
適用される場合
主に以下のような場合に最低保障が適用されます:
・日給制、時間給制、出来高払制の労働者
・欠勤日数が多い労働者
・算定期間中に賃金の変動が大きい労働者
経営者の視点から見ると、平均賃金の正確な算出は法的リスクの回避に直結します。計算ミスにより過少支払いとなった場合、労働基準監督署からの指導や従業員からの未払い請求のリスクがあります。
総務担当者の視点から見ると、平均賃金の計算は給与計算業務の中でも特に専門性が求められる分野です。正確な理解と計算により、労務トラブルの予防と適切な労働条件の確保が可能になります。
【賃金総額に含まれるもの・含まれないもの】
含まれるもの
・基本給
・諸手当(職務手当、家族手当、住宅手当等)
・時間外手当
・深夜手当
・休日手当
含まれないもの
・賞与等臨時に支払われた賃金
・結婚手当等恩恵的に支払われた賃金
・通勤手当等実費弁償的な賃金
・1ヶ月を超える期間で支払われる賃金
【近年の動向と注意点】
新型コロナウイルスの影響により、休業手当の支払いが急増し、平均賃金の算出が重要な課題となっています。また、雇用調整助成金等の助成金申請においても、平均賃金の算出が必要な場合があります。
また、DX化の進展により、給与計算システムでの自動計算も可能になっていますが、システムの設定が正確かどうかの確認が重要です。特に除外期間の設定や最低保障額の計算について、正確な設定が求められます。
実務における平均賃金算出の具体例と注意すべきポイント
「実際の計算では、どんなケースで困ることが多いの?具体的な計算例を知りたい。」
ここでは、当事務所が支援してきた企業での実例を交えながら、平均賃金算出の具体的な方法と注意点をご紹介します。
【複雑な計算事例1:製造業L社の時間給従業員の場合】
前提条件:
・算定事由発生日:6月10日
・算定期間:3月10日~6月9日(91日間)
・時間給:1,200円
・期間中の有給休暇:3日
・期間中の欠勤:2日
・期間中の労働日数:63日(土日祝除く66日から有給3日を除外)
期間中の賃金詳細:
・基本賃金:504,000円(実労働分)
・時間外手当:48,000円
・深夜手当:12,000円
・有給休暇分:28,800円(1,200円×8時間×3日)
・合計:592,800円
原則計算:
平均賃金 = 592,800円 ÷ (91日 − 3日) = 592,800円 ÷ 88日 = 6,736円
最低保障額計算:
最低保障額 = 564,000円(有給分除く) ÷ 63日 × 0.6 = 5,371円
結果:
原則計算(6,736円)>最低保障額(5,371円)のため、平均賃金は6,736円
【複雑な計算事例2:IT企業M社の営業職員の場合】
前提条件:
・算定事由発生日:8月20日
・算定期間:5月20日~8月19日(91日間)
・基本給:300,000円/月
・営業手当:50,000円/月
・期間中に育児休業:10日間
・期間中に賞与支給:200,000円(除外対象)
期間中の賃金詳細:
・基本給:3ヶ月分 900,000円
・営業手当:3ヶ月分 150,000円
・時間外手当:45,000円
・賞与:200,000円(除外)
・算定対象賃金:1,095,000円
原則計算:
平均賃金 = 1,095,000円 ÷ (91日 − 10日) = 1,095,000円 ÷ 81日 = 13,519円
最低保障額計算:
月給制のため最低保障の適用なし
結果:
平均賃金は13,519円
【実務でよくある間違いとその防止策】
よくある間違い1:除外期間の計算ミス
有給休暇を除外せずに計算してしまうケースが多発しています。
防止策:
・勤怠管理システムと連携した自動除外設定
・チェックリストによる確認体制
・給与計算担当者向け研修の実施
よくある間違い2:賞与等の除外漏れ
賞与や決算賞与を賃金総額に含めてしまうミスが頻発しています。
防止策:
・給与と賞与の支給項目明確化
・就業規則での賞与の定義明文化
・システムでの自動除外設定
よくある間違い3:最低保障額の適用判断
時間給制の従業員で最低保障額の適用を忘れるケースがあります。
防止策:
・雇用形態別の計算マニュアル整備
・二重チェック体制の確立
・専門家による定期監査
【システム化による効率化と注意点】
システム化のメリット
・計算ミスの大幅削減
・処理時間の短縮
・法改正への自動対応
・監査証跡の自動保存
システム選定時の注意点
・除外期間の自動判定機能
・最低保障額の自動計算機能
・複雑な雇用形態への対応
・法改正時のアップデート体制
【業種別の特殊事情】
製造業:交代制勤務での変則的な労働時間、深夜手当の扱い
サービス業:繁忙期の時間外労働、チップ等の臨時収入の扱い
IT業界:裁量労働制での基本給中心の計算、在宅勤務手当の扱い
建設業:現場手当や危険手当の扱い、天候による出勤日数の変動
【労働基準監督署の調査対応】
よく確認される項目:
・計算方法の根拠資料
・除外期間の適用根拠
・最低保障額の適用判断
・過去の計算実績との整合性
準備すべき資料:
・平均賃金計算書
・勤怠記録
・給与明細
・就業規則(賃金規程)
経営者の視点からは、平均賃金の正確な算出により法的リスクを回避し、従業員からの信頼も獲得できます。また、システム化による効率化投資は、中長期的にコスト削減効果をもたらします。
総務担当者の視点からは、正確な平均賃金算出により専門性を発揮できます。アウトソースも含めた効率的な業務体制の構築により、より戦略的な人事業務に注力することも可能です。特に内製化が困難な複雑なケースについては、顧問社労士との連携が重要です。
よくある疑問をQ&A形式で解決
Q1. 平均賃金の算出方法で最も間違いやすいポイントはどこでしょうか?正確に計算するためのコツを教えてください。
A1. 平均賃金の算出方法で最も間違いやすいのは除外期間の処理です。有給休暇、育児休業、業務上傷病による休業などは、賃金総額からも日数からも除外する必要がありますが、片方だけ除外してしまうミスが頻発します。正確に計算するコツは、まず除外すべき期間を特定し、それから賃金総額と日数の両方から除外することです。総務担当者としては、勤怠管理システムと給与計算システムの連携により、自動的に除外処理ができる環境を構築することが重要です。経営者の立場では、システム投資により計算ミスのリスクを大幅に軽減できます。
Q2. 時間給制の従業員で欠勤が多い場合、最低保障額の適用はどのように判断すればよいでしょうか?
A2. 時間給制の従業員の場合、原則計算と最低保障額計算の両方を行い、高い方を平均賃金とします。欠勤が多い場合、原則計算では総日数が多くなるため平均賃金が低くなりがちですが、最低保障額計算では労働日数で割るため、より適正な金額になることが多いです。具体的には「賃金総額÷労働日数×0.6」で最低保障額を計算し、原則計算の結果と比較します。総務担当者としては、両方の計算を必ず行い、比較検討することが重要です。経営者の視点では、適正な平均賃金の支払いにより従業員の信頼を獲得できます。
Q3. 賞与や決算賞与は平均賃金の算定から除外すると聞きましたが、どのような基準で判断すればよいでしょうか?
A3. 賞与等は「臨時に支払われた賃金」として平均賃金の算定から除外されます。判断基準は支給の regularity(定期性)で、毎月定額で支給される手当は含まれ、年2回の賞与や決算賞与は除外されます。グレーゾーンとなるのは四半期ごとの手当などですが、一般的には3ヶ月を超える期間で支給されるものは除外対象となります。就業規則での明確な定義が重要で、「賞与」として位置づけられているものは除外の対象です。総務担当者としては、支給項目ごとの分類を明確にし、システムでも正確に設定することが大切です。経営者の立場では、制度設計時に平均賃金算定への影響も考慮することが重要です。
まとめ:平均賃金の正確な算出で法的リスクを回避し労務管理を強化
平均賃金の算出方法を正確に理解し、適切に計算することで、法的リスクの回避と従業員からの信頼獲得を同時に実現できます。100人規模の企業では、休業手当や解雇予告手当など、平均賃金を使用する場面が定期的に発生するため、正確な算出体制の構築が不可欠です。
重要なのは、平均賃金の計算を「面倒な事務作業」ではなく、「適正な労働条件確保のための重要な業務」として位置づけることです。正確な計算により、従業員の経済的な権利を適切に保護し、企業の法的責任を果たすことができます。
DX化の進展により、平均賃金の計算も大幅に効率化が可能になっています。適切なシステム導入により、複雑な除外期間の処理や最低保障額の計算を自動化し、正確性と効率性を両立できます。
また、平均賃金の算出能力は、総務担当者の専門性を示す重要な指標でもあります。正確な知識と計算能力により、労務管理の質を向上させ、企業の競争力強化に貢献することができます。
もし現在、平均賃金の算出でお困りの場合、または計算体制の見直しを検討されている場合は、ぜひ専門家にご相談ください。HR BrEdge社会保険労務士法人では、平均賃金の計算支援から制度設計まで、企業の規模と実情に応じた総合的なサポートを提供しています。
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