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労使協定の適用範囲とは?中小企業が押さえるべき実務ポイント
「36協定を締結したが、全社員に適用されるのか?」「本社と支店で労使協定を分ける必要があるのか?」「パートやアルバイトにも労使協定は適用されるのか?」——大阪・東京・福岡・名古屋などの中小企業で、労使協定の適用範囲に関する疑問を抱える経営者や総務担当者は少なくありません。
労使協定は、労働条件の柔軟な運用を可能にする重要な取り決めですが、その適用範囲を正しく理解しないと、法令違反や労使トラブルの原因となります。
本記事では、労使協定の基本的な仕組みから、適用範囲の考え方、事業場ごとの対応、就業規則や労働協約との関係、実務上の注意点まで、実務目線で詳しく解説します。
労使協定とは?その目的と適用範囲
労使協定とは、使用者(企業)と労働者の過半数を代表する者との間で締結される取り決めで、労働基準法や育児・介護休業法などで定められた事項について、労使間で合意することにより、一定の労働条件の変更や特例を可能にするものです。
労使協定の適用範囲は、原則として締結された事業場内の全労働者に及びます。つまり、正社員だけでなく、パートタイム労働者やアルバイトなど、雇用形態を問わず、その事業場で働くすべての労働者が対象となります。
ただし、労使協定は事業場単位で締結されるため、本社と支店など複数の事業場がある場合には、それぞれの事業場ごとに労使協定を締結する必要があります。
労使協定の種類と適用範囲の具体例
労使協定にはさまざまな種類があり、それぞれ適用範囲や締結手続きが異なります。以下に代表的な労使協定とその適用範囲を示します。
- 36協定(時間外・休日労働に関する協定)
法定労働時間を超えて労働させる場合に必要な協定で、事業場単位で締結し、労働基準監督署への届出が必要です。 - 変形労働時間制に関する協定
1か月単位や1年単位の変形労働時間制を導入する場合に必要な協定で、事業場単位で締結します。 - フレックスタイム制に関する協定
労働者が始業・終業時刻を自主的に決定する制度を導入する場合に必要な協定で、事業場単位で締結します。 - 賃金控除に関する協定
法定外の賃金控除を行う場合に必要な協定で、事業場単位で締結します。
これらの協定は、すべて締結された事業場内の全労働者に適用されます。したがって、複数の事業場がある場合には、それぞれの事業場で個別に労使協定を締結する必要があります。
労使協定の締結手続きと実務上の注意点
労使協定を締結する際には、以下の手順を踏むことが一般的です。
- 労働者の過半数代表者の選出
労働者の過半数を代表する者を選出します。選出方法は、労働者の投票や挙手など、民主的な手続きで行う必要があります。 - 協定内容の協議と合意
使用者と過半数代表者が協議を行い、協定内容について合意します。 - 書面による協定の締結
協定内容を文書にまとめ、使用者と過半数代表者が署名または記名押印します。 - 労働基準監督署への届出(必要な場合)
36協定など、届出が必要な協定については、所轄の労働基準監督署に提出します。 - 労働者への周知
締結した労使協定の内容を、労働者に周知します。周知方法は、掲示、書面の配布、電子媒体での提供などがあります。
実務上の注意点として、以下の点が挙げられます。
- 協定の有効期間の設定
労使協定には有効期間を定める必要があります。たとえば、36協定では1年以内の有効期間を設定することが一般的です。 - 協定内容の明確化
協定内容は具体的かつ明確に記載し、解釈の余地がないようにすることが重要です。 - 協定の管理と更新
有効期間が満了する前に、協定の内容を見直し、必要に応じて更新手続きを行います。
労使協定と就業規則・労働協約との関係
労使協定は、就業規則や労働協約と密接な関係があります。
- 就業規則との関係
就業規則は、企業が定める労働条件の基本的なルールです。労使協定で定めた内容は、就業規則に反映させることで、労働者への周知と遵守を促進できます。 - 労働協約との関係
労働協約は、労働組合と使用者との間で締結される取り決めで、労働条件全般について定めます。労働協約が存在する場合、その内容が労使協定よりも優先されます。
したがって、労使協定を締結する際には、既存の就業規則や労働協約との整合性を確認し、矛盾が生じないように注意する必要があります。
まとめ:労使協定の適用範囲を正しく理解し、適切に運用する
労使協定は、労働条件の柔軟な運用を可能にする重要な取り決めですが、その適用範囲を正しく理解し、適切に運用することが求められます。
特に、複数の事業場を持つ企業では、各事業場ごとに労使協定を締結し、それぞれの労働者に適用する必要があります。また、協定内容の明確化や有効期間の管理、就業規則や労働協約との整合性の確保など、実務上の注意点を押さえておくことが重要です。
労使協定の適切な運用により、労働者の働きやすい環境を整備し、企業の生産性向上や人材定着にもつなげていきましょう。
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