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取締役の役員報酬はどう決まる?押さえておきたい税務・労務のポイント

2025.05.24 社労士コラム

役員報酬に関して、こんな悩みや疑問をお持ちではありませんか?

  • 「取締役の役員報酬って、いくらが適正なんだろう?」
  • 「役員報酬の設定を間違えると、税務署から指摘されるって本当?」
  • 「労務管理の観点からも気をつけるべきことはあるの?」

取締役の役員報酬は、企業運営や税務、労務に深く関わる重要なテーマです。しかし、その決め方や適正額、税務上の取り扱いについては、あまり詳しく知られておらず、判断に迷う経営者や担当者も多いでしょう。

なぜこのような悩みが生まれるのでしょうか?

主な理由は、役員報酬が「税務上の制約」と「労務上の配慮」の両面で考慮すべき点が多いからです。税務署から否認されると経費にできず、法人税の負担が増えます。一方で、過度な報酬や不透明な決め方は、社内外の信頼を損なうリスクもあります。

この記事では、取締役の役員報酬について、その決め方、税務・労務上の注意点、そして適正な報酬設定のための具体策を解説します。これを読めば、安心して役員報酬を設定し、企業経営をスムーズに進められるようになります。

取締役の役員報酬とは?|基本と税務・労務の注意点

まず、「役員報酬」とは、会社の取締役、監査役、執行役員など、役員に支払われる報酬のことを指します。給与所得者とは異なる特別な立場にあり、その決定や支払い方法には独自のルールがあります。

1. 役員報酬の決定方法

会社法では、役員報酬は「株主総会の決議」によって決定されることが原則とされています。中小企業では、株主と役員が同一人物であることが多いため、形式的に決議を行う場合もありますが、税務署からの指摘を防ぐためにも、議事録などの形式は整えておくことが重要です。

2. 税務上の取り扱い

役員報酬は、以下の条件を満たさないと、法人税の計算上「損金不算入」とされ、経費にできません。

  • 定期同額給与:毎月同じ金額を支払う
  • 事前確定届出給与:賞与や臨時的な報酬は、事前に税務署へ届出を行う
  • 利益連動給与:一部の上場企業にのみ適用される

これらのルールを守らずに報酬を変動させると、その増額分が経費と認められず、法人税が増えてしまいます。たとえば、A社(サービス業)は役員報酬を途中で増額した結果、税務署から否認され、追加の法人税を支払うことになりました。

3. 労務管理の観点

役員は労働者としての位置づけではありませんが、社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入対象です。そのため、役員報酬額に応じて保険料負担が発生します。

また、役員報酬が著しく高額な場合、他の従業員とのバランスや社内のモチベーションに影響を与えることもあります。特に中小企業では、役員と従業員の距離が近いため、労務管理にも配慮が必要です。

次に、役員報酬を適正に設定し、税務・労務リスクを防ぐための具体的な行動を紹介します。

役員報酬を適正に設定するための8つの具体策

  • 1. 株主総会議事録を毎年作成する

    理由:役員報酬の決定プロセスを形式的に整えるため。

    方法:株主総会を形式的にでも開催し、役員報酬の決定内容を議事録に残します。

    効果:税務署からの指摘リスクを減らせます。B社ではこれにより調査時のトラブルを回避できました。

  • 2. 役員報酬の見直しは決算期に合わせて行う

    理由:税務署に否認されないタイミングで調整するため。

    方法:決算終了後、新しい会計年度のスタート時に報酬額を見直します。

    効果:定期同額給与の要件を満たし、損金算入が可能になります。

  • 3. 事前確定届出給与を活用する

    理由:賞与などを支給する場合、税務署への届出が必要なため。

    方法:賞与を支給する場合は、事前に届出書を税務署へ提出します。

    効果:賞与分も経費として認められるようになります。

  • 4. 社労士や税理士と定期的に相談する

    理由:法改正や制度変更に柔軟に対応するため。

    方法:半年に1回程度、役員報酬や社会保険について専門家と確認します。

    効果:最新の法令に基づいた適正な報酬設定ができます。

  • 5. 他社の役員報酬相場を調査する

    理由:適正額を把握し、社内外からの納得感を得るため。

    方法:業界団体のデータや公的資料を参考に、相場感を調査します。

    効果:高すぎず低すぎない報酬設定ができます。

  • 6. 社会保険料の負担額を事前に試算する

    理由:報酬額に応じて保険料が変動するため。

    方法:報酬額ごとに保険料をシミュレーションし、会社と個人の負担額を把握します。

    効果:資金繰りや個人負担のバランスを考慮した設定ができます。

  • 7. 資金繰りを考慮した報酬設定を行う

    理由:経営状況によっては、高額な報酬が負担になるため。

    方法:会社の利益やキャッシュフローを考慮して、無理のない範囲で設定します。

    効果:安定した経営を維持しつつ、適正な報酬が支払えます。

  • 8. やってはいけない行動:年度途中で報酬額を変更する

    理由:定期同額給与のルールに反し、税務署に否認される可能性があるため。

    効果:損金算入が認められず、法人税負担が増えます。

役員報酬に関するQ&A

Q. 役員報酬をゼロにすることはできますか?

A. 可能です。ただし、社会保険の加入要件を満たす場合、報酬ゼロでも保険料が発生することがあります。

Q. 役員に賞与を出すことはできますか?

A. 事前確定届出給与として、税務署への届出を行えば可能です。届出がないと、賞与分は経費にできません。

Q. 役員報酬と従業員給与のバランスはどう考えるべき?

A. 高額すぎると従業員の不満につながる可能性があります。業績や相場を考慮し、納得感のあるバランスを意識しましょう。

Q. 社会保険に加入しなくてもいい役員はいますか?

A. 週の労働時間や報酬額が少ない場合、加入義務がないケースもありますが、原則として役員も加入対象です。

まとめ|適正な役員報酬で、税務・労務リスクを回避しよう

この記事では、取締役の役員報酬の決め方、税務・労務上の注意点、適正な報酬設定の具体策を紹介しました。役員報酬は、企業経営の健全性や税務リスクに直結する重要なテーマです。

株主総会議事録の作成や、定期的な見直し、専門家との相談を通じて、適正な報酬設定を行いましょう。適切な対応をすることで、税務署からの指摘や労務トラブルを防ぎ、安心して企業経営に専念できます。

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