新着情報
在留資格認定証明書が交付されない9つの理由!特定技能の不交付回避と実務の急所を社労士解説
特定技能外国人の受入れを計画し、入管へ申請を行ったにもかかわらず「在留資格認定証明書(COE)」が交付されないケースが増えています。人手不足解消のために採用活動を行い、内定を出した後に「不交付」の通知が届くことは、企業にとって大きな損失です。
不交付には必ず明確な理由があります。しかし、入管法や審査要領は複雑で、通知書に記載された簡潔な理由だけでは具体的な原因が読み取れないことも少なくありません。特に特定技能制度は要件が細かく、企業のコンプライアンス体制も厳しく問われます。
本記事では、外国人雇用を専門とする社会保険労務士が、在留資格認定証明書が交付されない主な理由と、実務上の回避策をQ&A形式で解説します。審査のポイントを理解し、確実な許可取得を目指しましょう。
Q1. なぜ「在留資格認定証明書」が交付されないのでしょうか?審査の全体像を教えてください。
【結論】申請内容が「上陸許可基準」に適合していない、または提出資料の信憑性が疑われているからです。
在留資格認定証明書(COE)の交付申請は、外国人が日本に入国・滞在するための要件を満たしているかを審査する手続きです。入管は提出された書類のみで審査を行う書面審査が原則ですが、疑義がある場合は実地調査や追加資料の提出を求めます。
実務上よくあるケースとして、不交付の理由は大きく「形式的要件の不備」と「実体的要件の不適合」に分かれます。申請書の記載ミスや添付書類の不足といった形式的な不備であれば、補正指示(追加資料提出通知)で対応できることが多いですが、要件そのものを満たしていない場合は一発で不交付となります。
一方で、企業側が要件を満たしているつもりでも、入管側のデータベースにある過去の情報(企業の過去の不正行為や、外国人の過去の在留履歴)と照合された結果、不適合と判断されるケースもあります。審査は「申請人(外国人)」と「所属機関(受入れ企業)」の双方に対して行われるため、どちらか一方にでも問題があれば交付されません。
Q2. 特定技能で不交付が多発する「分野別要件」にはどのような盲点がありますか?
【結論】試験合格証の有効期限切れや、業務区分と試験区分の不一致が主な原因です。
特定技能ビザを取得するためには、各分野(建設、製造、外食など)で定められた技能試験と日本語試験に合格している必要があります。しかし、単に「合格証があればよい」というわけではありません。
- 試験区分の不一致:例えば、製造分野で「機械加工」の業務に従事させる予定なのに、合格証が「電気機器組立て」の区分である場合、不交付となります。
- 有効期限の確認漏れ:一部の試験合格証には有効期限(例:10年、または試験実施団体の規定による期間)が設けられている場合があります。
また、海外で実施された試験の場合、合格証の真偽を確認するための照会手続きに時間がかかることがあります。一方で、技能実習2号を良好に修了して試験免除となるルートを使う場合、「従事する業務と実習職種の関連性」が認められないと不交付になります。この「関連性」の判断は専門的な知識が必要なため、事前に評価調書などで確認しておくことが重要です。
Q3. 協議会への加入手続きが遅れた場合も不交付の理由になりますか?
【結論】はい、特定技能所属機関は、入国後4ヶ月以内等の期限までに協議会へ加入しなければなりません。
特定技能制度では、分野ごとの「協議会」への加入が義務付けられています。建設分野など一部の分野では「申請前の加入」が必須要件となっており、これを行っていないと申請自体が受け付けられない、あるいは不交付となります。
実際の顧問先では、初めて特定技能外国人を受け入れる際に、この協議会加入の手続きを失念しているケースが散見されます。特に注意が必要なのは以下の点です。
- 建設分野:受入れ計画の認定申請前に「建設キャリアアップシステム(CCUS)」の登録と協議会加入が必要です。
- 製造分野など:初めての受入れから4ヶ月以内に加入が必要ですが、2人目以降の申請時に「加入済みであることの証明」を提出できないと審査が止まります。
協議会加入は形式的な手続きに見えますが、制度の根幹に関わる重要な要件です。「後でやればいい」と後回しにせず、採用活動と並行して手続きを進めるべきです。
Q4. 受入れ企業の「社会保険未納」はどの程度審査に影響しますか?
【結論】直近の社会保険料・国税・地方税に未納がある場合、原則として不交付となります。
特定技能制度は、受入れ企業(特定技能所属機関)のコンプライアンスを非常に重視します。特に社会保険(健康保険、厚生年金保険)や労働保険、税金の納付状況は厳格にチェックされます。
申請時には、企業の社会保険料納入状況を証明する書類を提出します。ここで未納や滞納が発覚すると、「法令を遵守する体制がない」とみなされ、不交付の決定的な理由となります。もし資金繰りの都合などで一時的に納付が遅れている場合は、申請前に必ず完納し、領収証書を添付して「現在は解消している」ことを証明しなければなりません。
一方で、法人だけでなく、役員個人の住民税未納などが問題視されるケースも稀にあります。企業としての納付義務を果たすことは、外国人雇用のスタートラインであると認識してください。
Q5. 労働基準法違反や賃金設定のミスで不交付になることはありますか?
【結論】はい、日本人と同等以上の報酬額設定や、過去1年以内の労基法違反処分は不交付事由です。
特定技能外国人の報酬額は「日本人と同等以上」でなければなりません。これは基本給だけでなく、諸手当や賞与を含めた待遇全体で判断されます。同じ業務に従事する日本人従業員と比較して、合理的な理由なく低い賃金を設定している場合、不交付となります。
これまで多くの企業を支援してきた中で、特に注意が必要なのが「変形労働時間制」や「固定残業代」の運用です。雇用契約書上の労働時間設定が労基法に違反していたり、最低賃金を下回るような計算になっていたりすると、審査に通りません。
- 過去の違反歴:過去1年以内に労働関係法令違反で罰金刑以上の処分を受けている場合、欠格事由に該当します。
- 行方不明者の発生:過去1年以内に、自社の責めに帰すべき理由で外国人の行方不明者を発生させている場合も、受入れが認められません。
Q6. 外国人本人の「過去の在留状況」で不交付になるのはどんなケースですか?
【結論】留学生時代のアルバイト超過(資格外活動違反)や、短期滞在の繰り返しが主な理由です。
企業側に問題がなくても、外国人本人に問題があって不交付になるケースは非常に多いです。最も代表的なのが、留学生時代の「週28時間」を超えるアルバイト就労です。
入管は課税証明書や源泉徴収票から、本人の過去の収入を把握できます。学生の身分で扶養範囲を大きく超える収入がある場合、資格外活動許可の範囲を超えて働いていたと推測され、素行不良として不交付になります。実務上よくあるケースとして、本人が「少しオーバーしたくらいならバレない」と安易に考えて申告せず、審査で発覚して不許可になるパターンが後を絶ちません。
一方で、短期滞在ビザで入出国を繰り返している場合も、「実質的に就労していたのではないか」と疑われる可能性があります。採用面接の段階で、過去の在留状況やアルバイトの実績を正直にヒアリングし、在留カードやパスポートの履歴を確認することが重要です。
Q7. 登録支援機関の選び方や支援体制の不備も理由になりますか?
【結論】支援責任者の要件不足や、支援計画の実現可能性が低いと判断されれば不交付になります。
特定技能外国人の受入れには、法令で定められた「支援計画」の策定と実施が義務付けられています。これを自社で行う(自社支援)か、登録支援機関に委託するかを選択します。
自社支援を行う場合、過去2年以内に中長期在留外国人の受入れ実績があることや、支援責任者が配置されていることなど、厳しい要件があります。これらを満たしていないのに自社支援で申請すると不交付になります。
登録支援機関に委託する場合でも、その機関が行政処分を受けていたり、支援体制が不十分であったりすると、連鎖的に不交付のリスクが高まります。委託先を選ぶ際は、単に「費用が安い」だけでなく、適正な支援実績があるか、通訳体制が整っているかを見極める必要があります。
Q8. 不交付通知が届いた直後にすべきことは何ですか?
【結論】通知書を持って管轄の入管に行き、審査官から具体的な不許可理由を聞き出してください。
不交付通知書には、「出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の基準に適合しない」といった条文上の理由しか書かれていません。これだけでは具体的な改善点が分からないため、必ず入管の窓口で「理由聞き取り」を行う必要があります。
聞き取りの際は、以下の3ステップを踏んでください。
- ステップ1:通知書が届いたらすぐに管轄入管に電話し、面談予約を取る(予約不要な場合もあり)。
- ステップ2:行政書士や社労士などの専門家、または申請担当者が直接出向く。
- ステップ3:審査官に対し、「どの書類の」「どの記述が」問題だったのか、具体的に質問しメモを取る。
ここで感情的にならず、事実関係を冷静に確認することが、再申請での逆転につながります。
Q9. 再申請で許可を勝ち取るためのポイントと、今後の審査傾向は?
【結論】不備事項を完全に解消した上で、反省と改善策を明記した「理由書」を添付して再申請します。
一度不交付になっても、理由が解消可能なものであれば再申請で許可を得られる可能性があります。例えば、書類の記載ミスや説明不足であれば、正しい書類と補足説明書(理由書)を提出することでリカバリーできます。
しかし、虚偽申請(偽造書類の提出など)と認定された場合は、再申請は極めて困難です。2026年に向けて入管法の改正議論が進む中、審査は年々厳格化しています。特に「育成就労制度」への移行を見据え、受入れ企業の育成能力やコンプライアンス体制への監視は強化される傾向にあります。
不交付を避けるためには、申請前の段階で「疑われる要素」を徹底的に排除し、法令遵守の証拠を積み上げておくことが、遠回りのようで最短の道です。
まとめ
在留資格認定証明書が交付されない理由は、書類の不備から過去の在留履歴、企業の労務管理体制まで多岐にわたります。特定技能制度は、単なる労働力の確保手段ではなく、外国人を適正に雇用し支援する体制が問われる制度です。
不交付通知を受け取ってしまった場合は、焦らずに入管での聞き取りを行い、原因を特定してください。自社での対応が難しい場合や、再申請に不安がある場合は、外国人雇用に精通した専門家のサポートを受けることを強くお勧めします。
特定技能・外国人雇用に関する詳しい情報はこちらのブログ一覧もご参照ください。
監修者プロフィール
本記事は、HR BrEdge社会保険労務士法人に所属する特定社会保険労務士・渡辺俊一が監修しています。法人顧問業務を中心に、給与計算、労務相談、就業規則整備など、企業のバックオフィス全体を支える実務に携わってきました。
日常的な労務相談から、制度設計、実務運用、トラブル予防まで、「現場で実際に起こること」を前提とした支援を行っています。特に、従業員100名以上規模の企業における実務の属人化や判断が分かれやすい場面への対応を得意としています。
- 社会保険労務士(登録番号:第27070207号・平成19年11月1日登録・平成24年5月1日特定社会保険労務士付記)
- キャリアコンサルタント(登録番号:16131446・平成28年8月23日登録)
- HR BrEdge社会保険労務士法人 代表社員
- 法人顧問を中心とした労務管理・給与計算の実務支援
- 就業規則・社内ルール整備を含む制度運用支援
- 企業向け労務管理に関する書籍・実務資料の執筆・監修
- 経営者・人事担当者向け研修・セミナー講師実績
制度の解説にとどまらず、「このケースではどう判断すべきか」「どこでトラブルになりやすいか」といった実務上の判断ポイントを重視した情報提供を行っています。
大阪なんば駅徒歩1分
給与計算からIPO・M&Aに向けた労務監査まで
【全国対応】HR BrEdge社会保険労務士法人

