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特定技能の雇用契約変更で届出漏れは厳禁!社労士が解説する罰則リスクと実務の要諦

2026.01.26 社労士コラム

特定技能外国人を雇用する企業にとって、避けて通れないのが煩雑な行政手続きです。特に、採用後の「雇用契約内容の変更」に伴う届出は、実務の現場で最も見落とされやすいポイントの一つといえます。日本人の従業員であれば社内の辞令や通知だけで済む変更も、特定技能制度においては入管法に基づく厳格な届出義務が課されており、これを怠ると「受入れ停止」という最悪の事態を招きかねません。

本記事では、特定技能の雇用契約変更時に必須となる「変更届出」のルールと、現場で陥りやすい落とし穴について、外国人雇用に強い社会保険労務士が詳しく解説します。昇給や勤務地変更といった具体的なケーススタディを交えながら、コンプライアンス違反を防ぐための実務ポイントを網羅しました。自社の管理体制を見直し、安定した雇用継続を実現するための手引きとしてご活用ください。

Q1. 特定技能外国人の雇用契約内容を変更した場合、必ず届出が必要ですか?

【結論】主要な労働条件に変更があった場合は、事由発生から14日以内に必ず入管への届出が必要です。

特定技能制度において、受入れ機関(企業)は、外国人材と締結している雇用契約の内容に変更が生じた際、「雇用契約変更届出書」を提出する義務があります。これは、外国人が在留資格「特定技能」の要件を満たす適正な労働条件で働き続けているかを、入管庁がモニタリングするために不可欠な手続きです。

実務上よくあるケースとして、日本人社員と同様の感覚で「給与改定」や「勤務時間の変更」を行い、社内手続きだけで完結させてしまう事例が後を絶ちません。しかし、特定技能の場合は、たとえ本人と合意があっても、入管への報告を怠れば「届出義務違反」となります。

一方で、軽微な変更やすべての項目が対象となるわけではありません。重要なのは、「どの項目が変わったときに届出が必要か」を正確に把握しておくことです。判断に迷う場合は、自己判断せず専門家に確認することをお勧めします。

  • 雇用契約書の記載事項に変更があれば原則届出が必要と考える
  • 変更日から14日以内という期限は厳守しなければならない

Q2. 現場で「届出漏れ」が起きやすいのはどのようなケースですか?

【結論】定期昇給や手当の名称変更、勤務時間のわずかな変更など、日常的な人事異動のタイミングで多発しています。

届出漏れが頻発するのは、大掛かりな契約更新のタイミングではなく、日常業務の中で発生する「部分的な変更」の際です。例えば、会社の就業規則改定に伴って手当の体系が変わったり、シフト制の運用ルールが変更されたりした場合などが該当します。

実際の顧問先では、以下のようなケースで担当者が届出を失念してしまうことがありました。

  • 試用期間終了後に本採用となり、給与額が変更されたとき
  • 会社の年間カレンダーが変わり、休日数や就業時間が変動したとき
  • 本人の希望で勤務日数を減らしたり、雇用形態が変わったりしたとき

一方で、代表者の変更や社名の変更など、法人自体の登記事項に関わる変更も届出の対象ですが、こちらは法務部門が管轄していて人事現場と情報共有ができていない場合に漏れやすくなります。人事と総務・法務の連携不足も、届出漏れの大きな要因と言えるでしょう。

Q3. 変更届出が必要となる具体的な「契約内容」の基準は何ですか?

【結論】従事する業務内容、雇用契約期間、報酬額、労働時間、休日など、雇用条件書の主要項目が対象です。

具体的に届出が必要となるのは、入管法で定められた「重要事項」に変更があった場合です。これには、基本給や諸手当の額、所定労働時間、休憩時間、休日、就業場所、従事する業務の内容などが含まれます。

制度と現場運用のズレとして注意したいのは、「有利な変更だから届け出なくて良いだろう」という誤解です。例えば、「給与を大幅にアップした」「休日を増やした」といった外国人材にとってプラスになる変更であっても、契約内容が変わる以上は届出が必須です。入管は「条件が悪化していないか」だけでなく、「届出された内容と実態が一致しているか」を重視するからです。

一方で、単なる部署名の変更(業務内容は変わらない)や、振込口座の変更といった事務的な事項のみであれば、雇用契約変更の届出は不要な場合があります。ただし、判断基準は細かいため、変更が生じるたびに要件を確認するフローが必要です。

Q4. 定期昇給や手当の金額変更だけでも、変更届出は必要ですか?

【結論】はい、報酬額(基本給や手当)の変更は重要事項にあたるため、たとえ少額の昇給でも届出が必要です。

特定技能の運用要領では、報酬の額や内訳に変更があった場合、変更届出を行うよう明記されています。これは定期昇給によるベースアップだけでなく、資格手当の追加や、住宅手当の廃止・新設なども含まれます。

これまで多くの企業を支援してきた中で、最も多い誤解が「契約更新のタイミングでまとめて届け出ればいい」というものです。しかし、契約期間の途中であっても、昇給が実施された日から14日以内に届け出る必要があります。これを怠ると、次回の在留期間更新申請の際に、提出書類(賃金台帳など)と過去の届出内容との不整合を指摘され、審査がストップする原因となります。

一方で、残業代(超過勤務手当)のような「実績に応じて毎月変動するもの」については、計算方法や割増率に変更がない限り、毎月の支給額が変わっても届出は不要です。固定的な賃金条件が変わったかどうかが判断の分かれ目となります。

Q5. 勤務地や従事する業務内容が変わる場合、どのような手続きが必要ですか?

【結論】変更届出だけでなく、場合によっては在留資格変更許可申請が必要になることもあるため、細心の注意が必要です。

勤務地(就業場所)の変更は、単なる住所変更ではなく、特定技能の活動要件に関わる重要な変更です。同一法人内での異動であっても、新しい勤務地が当初の計画に含まれていない場合や、業務区分(分野)が異なる場合は注意が必要です。

特に注意すべきは「従事する業務内容」の変更です。特定技能は「特定の産業分野」の「特定の業務」を行うことが許可の条件です。したがって、許可された範囲内での配置転換であれば「雇用契約変更届出」で済みますが、分野をまたぐ異動や、特定技能で認められていない業務への変更は認められません。

一方で、同一分野内であっても、例えば「外食業」から「飲食料品製造業」へ移るような場合は、在留資格そのものの「変更許可申請」が必要になります。これは事後報告の「届出」ではなく、事前の「許可」が必要な手続きですので、絶対に混同しないようにしてください。

Q6. 変更届出はいつまでに行う必要がありますか?期限を過ぎた場合のリスクは?

【結論】変更が生じた日から14日以内が期限です。遅延は始末書の提出や、最悪の場合は受入れ停止処分の対象となります。

入管法上の届出期限は「事由が生じた日から14日以内」と厳格に定められています。この期限を過ぎてしまった場合、単なる遅延では済まされず、違反状態として扱われます。

実務上のリスクとして、届出が遅れたこと自体ですぐに在留資格が取り消されることは稀ですが、次回の更新申請時に「理由書(始末書)」の提出を求められることが一般的です。しかし、これが常習化していたり、悪質な隠蔽とみなされたりした場合は、「出入国在留管理法令に関し不正又は著しく不当な行為」を行ったとして、受入れ機関としての欠格事由に該当し、今後5年間の受入れ停止処分を受ける可能性があります。

一方で、数日の遅れであれば、速やかに自主的に提出し、誠実に理由を説明することで、厳重注意で済むケースも多いです。放置すればするほどリスクは高まるため、気づいた時点での即時対応が鉄則です。

Q7. もし届出漏れに気づいた場合、どのようにリカバリーすればよいですか?

【結論】隠蔽せず、速やかに管轄の入管へ相談し、遅延理由書を添えて事後届出を行うべきです。

届出漏れに気づいた際、絶対にやってはいけないのが「見なかったことにして次回の更新まで放置する」ことや「日付を改ざんして辻褄を合わせる」ことです。これらは虚偽申請とみなされ、より重い処分を招きます。

実務上よくあるケースとして、担当者の退職や引き継ぎミスで数ヶ月前の変更届が出ていなかったことが発覚する場合があります。この場合、まずは専門家(行政書士や社労士)に相談し、事実関係を整理した上で、「なぜ遅れたのか」「今後どう改善するか(再発防止策)」を記載した理由書を作成し、変更届出書と共に提出します。

一方で、企業の状況によって判断が異なる場合もあります。違反の内容が軽微か重大かによって対応の緊急度も変わるため、自己判断で処理せず、必ず専門家の助言を仰ぐことが、ダメージを最小限に抑えるポイントです。

Q8. 登録支援機関に支援を委託していれば、変更届出も自動的に行ってもらえますか?

【結論】契約内容によりますが、雇用契約の変更情報は企業側から能動的に伝えない限り、支援機関も把握できません。

多くの企業が登録支援機関に支援業務を委託していますが、「委託しているから全てお任せ」という姿勢は危険です。登録支援機関はあくまで支援計画の実施を代行する立場であり、企業内部の人事情報(昇給や異動など)までリアルタイムで把握しているわけではないからです。

制度と現場運用のズレとして、企業側は「支援機関がやってくれるはず」、支援機関側は「企業から連絡がないから変更はないはず」と思い込み、結果として届出漏れが発生するパターンが散見されます。雇用契約の変更届出義務者はあくまで「受入れ機関(企業)」であることを忘れてはいけません。

一方で、良質な登録支援機関であれば、定期的な面談や監査の際に「契約内容に変更はありませんか?」と確認してくれます。委託範囲に「随時届出の作成代行」が含まれているか、契約書を改めて確認することをお勧めします。

Q9. コンプライアンス違反を防ぐために、登録支援機関とどのような連携をとるべきですか?

【結論】人事情報の変更フローに支援機関への連絡を組み込み、定期的な「監査」を有効活用する体制を築くべきです。

コンプライアンス違反を防ぐためには、社内の人事異動や給与改定のフローの中に、「登録支援機関への連絡」という工程を必須項目として組み込むことが有効です。日本人社員の手続きとは別に、外国人材専用のチェックリストを作成し、変更が発生した時点で自動的に情報が共有される仕組みを作りましょう。

実際の顧問先では、3ヶ月に1回の定期面談(支援業務)とは別に、毎月の給与データを登録支援機関と共有し、支払額の変動や控除項目の変更がないかをダブルチェックする体制をとっている企業もあります。これにより、計算ミスや届出漏れを未然に防ぐことができます。

一方で、登録支援機関の質も重要です。質問しても回答が遅い、法改正の情報提供がないといった場合は、コンプライアンスリスクが高まります。自社を守るためにも、連携がスムーズで専門性の高い支援機関を選定・変更することも経営判断として必要です。

まとめ

特定技能外国人の雇用において、契約内容の変更に伴う届出は、単なる事務手続きではなく、企業のコンプライアンス体制そのものを問われる重要なプロセスです。14日以内という期限の厳守、昇給や配置転換時の判断基準、そして登録支援機関との密な連携が、安定した受入れ継続の鍵となります。

届出漏れは「知らなかった」では済まされない重大なリスクを孕んでいます。しかし、正しい知識と管理体制があれば、恐れることはありません。社内の運用ルールを見直し、不明点は専門家と連携しながら、外国人材が安心して働ける環境を整えていきましょう。

特定技能・外国人雇用に関する詳しい情報はこちらのブログ一覧もご参照ください。

監修者プロフィール

本記事は、HR BrEdge社会保険労務士法人に所属する特定社会保険労務士・渡辺俊一が監修しています。法人顧問業務を中心に、給与計算、労務相談、就業規則整備など、企業のバックオフィス全体を支える実務に携わってきました。

日常的な労務相談から、制度設計、実務運用、トラブル予防まで、「現場で実際に起こること」を前提とした支援を行っています。特に、従業員100名以上規模の企業における実務の属人化や判断が分かれやすい場面への対応を得意としています。

  • 社会保険労務士(登録番号:第27070207号・平成19年11月1日登録・平成24年5月1日特定社会保険労務士付記)
  • キャリアコンサルタント(登録番号:16131446・平成28年8月23日登録)
  • HR BrEdge社会保険労務士法人 代表社員
  • 法人顧問を中心とした労務管理・給与計算の実務支援
  • 就業規則・社内ルール整備を含む制度運用支援
  • 企業向け労務管理に関する書籍・実務資料の執筆・監修
  • 経営者・人事担当者向け研修・セミナー講師実績

制度の解説にとどまらず、「このケースではどう判断すべきか」「どこでトラブルになりやすいか」といった実務上の判断ポイントを重視した情報提供を行っています。

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