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従業員50人規模の就業規則見直しガイド:労務リスクを最小化する実践的改定ポイント7選
従業員数が50人に近づくと、企業は新たなフェーズを迎えます。組織の拡大は喜ばしいことですが、同時に「50人の壁」と呼ばれる労働安全衛生法上の様々な義務が発生し、労務管理の難易度が格段に上がります。このタイミングで就業規則を見直すことは、単なる法令遵守にとどまらず、組織のリスクマネジメントと成長基盤を固めるために極めて重要です。

多くの企業が「創業時のまま」「雛形を少し変えただけ」の就業規則を運用しており、実態との乖離や法改正への未対応が労使トラブルの火種となっています。本記事では、従業員50人規模の企業が直面するリスクと、それを回避するための戦略的な就業規則改定のポイントを専門的な視点で解説します。
従業員50人規模企業が直面する就業規則の盲点と重要性
従業員数が50人を超えると、労働基準法や労働安全衛生法などの適用範囲が変わり、企業に課される義務が大幅に増加します。しかし、多くの経営者や担当者はこの変化に対応した就業規則の見直しを行えていないのが実情です。
- 衛生管理体制の不備:常時50人以上の事業場では、衛生管理者の選任や産業医の選任、衛生委員会の設置が義務付けられます。就業規則にこれらの体制や従業員の協力義務を明記していないケースが散見されます。
- ストレスチェックの義務化:年1回のストレスチェック実施が義務となります。実施規定や結果の取り扱いについて、プライバシー保護の観点も含めたルール化が必要です。
- 定期健康診断結果の報告::50人未満では義務ではなかった労働基準監督署への定期健康診断結果報告書の提出が必要になります。受診拒否への対応など、受診義務を強化する規定が求められます。
また、組織が大きくなると、創業期のような「阿吽の呼吸」や「経営者の目が届く範囲での個別対応」が通用しなくなります。明確なルールがないことで公平性が損なわれ、従業員の不満が蓄積するリスクも高まります。この規模での就業規則見直しは、組織のガバナンスを効かせるための必須事項といえます。
法改正だけではない!就業規則見直しが企業にもたらす戦略的メリット
就業規則の見直しは、法改正対応という「守り」の側面だけでなく、企業の成長を加速させる「攻め」の戦略的ツールとしても活用できます。適切に改定された就業規則は、企業と従業員の双方に多くのメリットをもたらします。
- 採用競争力の強化と定着率向上:多様な働き方(テレワーク、フレックスタイム制など)や休暇制度、ハラスメント防止対策が明文化されていることは、求職者にとって「安心して働けるホワイト企業」という強力なアピール材料になります。明確なルールは従業員の安心感を生み、離職防止にも寄与します。
- 助成金の受給要件クリア:「キャリアアップ助成金」や「両立支援等助成金」など、多くの公的助成金は、就業規則への適切な規定の記載を受給要件としています。戦略的に規定を整備することで、数百万円規模の資金調達が可能になる場合があります。
- トラブルの未然防止と迅速な解決:問題社員への対応やSNSの不適切利用など、現代的なトラブルが発生した際、就業規則に懲戒事由や手続きが明記されていなければ、企業は適切な処分を行えません。詳細な規定は、会社を守る防波堤となります。
労務リスクを未然に防ぐ!就業規則改定における7つの重要ポイント
50人規模の企業が直面する労務リスクを最小化するために、今回の就業規則見直しで特に注力すべき7つのポイントを解説します。
1. 労働時間・休日管理の適正化
働き方改革関連法により、時間外労働の上限規制や年次有給休暇の年5日取得義務が導入されています。特に50人規模では管理職の目が届きにくくなり、隠れ残業や休日出勤が発生しがちです。「固定残業代」を導入している場合は、金額と対象時間の明記、超過分の支払いルールが曖昧だと未払い残業代請求のリスクに直結するため、厳格な規定が必要です。
2. ハラスメント防止規定の強化
パワハラ防止法(労働施策総合推進法)の改正により、中小企業を含む全企業にハラスメント防止措置が義務付けられています。単に「ハラスメントを禁止する」だけでなく、相談窓口の設置、調査手順、行為者への懲戒処分、相談者のプライバシー保護と不利益取り扱いの禁止などを具体的に就業規則に盛り込む必要があります。
3. メンタルヘルス対策と休職・復職規定
従業員数が増えれば、メンタルヘルス不調者が発生する確率は高まります。休職期間の上限、休職中の給与や社会保険料の扱い、復職時の判断基準(主治医だけでなく産業医の意見を重視するなど)を詳細に定めておくことが不可欠です。「治癒」の定義を明確にし、試し出勤制度などを導入することで、復職後のトラブルを防げます。
4. 服務規律とSNS利用ガイドライン
スマートフォンの普及に伴い、従業員によるSNSへの不適切投稿や情報漏洩リスクが急増しています。業務中の私的利用の禁止はもちろん、私的な投稿であっても会社の信用を毀損する行為を懲戒対象とする規定が必要です。また、副業・兼業を認める場合は、許可・届出制のルールや競業避止義務、秘密保持義務を明確にしておくことが重要です。
5. 雇用形態ごとの規定と同一労働同一賃金
正社員だけでなく、契約社員、パートタイマーなど雇用形態が多様化している場合、それぞれの就業規則(または適用除外規定)を整備する必要があります。特に「同一労働同一賃金」への対応として、正社員と非正規社員の待遇差(賞与、退職金、手当など)について合理的な説明ができるよう、職務内容や責任の範囲を明確に区分した規定が求められます。
6. テレワーク・在宅勤務規定
コロナ禍を経て定着したテレワークですが、通信費や光熱費の負担、労働時間の把握方法、中抜け時間の扱いなどでトラブルになるケースがあります。通常の就業規則とは別にテレワーク規定を作成し、対象者、労働時間管理(始業・終業の報告方法)、費用負担、セキュリティ対策などを具体的に定めることを推奨します。
7. 育児・介護休業法の改正対応
育児・介護休業法は頻繁に改正されており、「産後パパ育休(出生時育児休業)」の創設や育休の分割取得など、最新の制度に対応していない規則が多く見られます。法改正の内容を反映させないと法令違反となるだけでなく、従業員のライフプランに支障をきたし、不信感を招く原因となります。最新の法律に基づいた規定へのアップデートは必須です。
就業規則改定プロセスの全体像:計画から周知・運用まで
就業規則の改定は、単に条文を書き換えて終わりではありません。法的に有効な改定とするためには、以下の適切なプロセスを踏む必要があります。
- STEP 1:現状分析と課題抽出
現行の就業規則と実態の乖離をチェックし、法改正の未対応箇所や現場からの要望(休暇制度の柔軟化など)を洗い出します。 - STEP 2:改定案の作成
専門家のアドバイスを受けながら、自社の実情に合った条文を作成します。リスク回避と運用しやすさのバランスが重要です。 - STEP 3:従業員代表からの意見聴取
労働基準法では、改定にあたり過半数代表者(労働組合がない場合)の意見を聴くことが義務付けられています。同意までは必須ではありませんが、円滑な運用のために十分な説明を行い、意見書を作成してもらいます。 - STEP 4:労働基準監督署への届出
「就業規則変更届」に「意見書」と「改定後の就業規則」を添付し、所轄の労働基準監督署へ届け出ます。50人以上の事業場が複数ある場合は、事業場ごとの届出が必要です(本社一括届出も可)。 - STEP 5:従業員への周知
最も重要なステップです。届出をしても、従業員に周知(いつでも見られる状態にする)されていなければ、その就業規則は法的効力を持ちません。書面の配布、イントラネットへの掲載、説明会の実施などで徹底します。
見直しで後悔しない!就業規則改定で陥りやすい落とし穴と対策
良かれと思って行った就業規則の改定が、逆に法的リスクを招くこともあります。ここでは、特に注意すべき落とし穴と対策を紹介します。
- 不利益変更の禁止と合理的理由:賃金の減額や休日の削減など、労働条件を従業員に不利に変更することは原則として禁止されています(労働契約法)。どうしても必要な場合は、高度な必要性と合理的な理由(経営危機回避など)、代償措置(経過措置など)、適切な労使協議が必要です。安易な不利益変更は無効となる可能性が高いです。
- 雛形の丸写しによる実態との不一致:厚生労働省のモデル就業規則やネット上の雛形をそのまま使うことは危険です。「休職期間が長すぎて解雇できない」「退職金の計算式が自社に合わない」といった事態を招きます。必ず自社の規模や体力に合わせたカスタマイズを行ってください。
- 管理職への教育不足:素晴らしい規則を作っても、現場の管理職が理解していなければ運用されません。「残業の許可制を知らずに黙認していた」という事例は後を絶ちません。改定後は管理職向けの研修を行い、ルールの趣旨と運用方法を徹底させることが不可欠です。
就業規則を形骸化させないための運用と定期的な見直しの重要性
就業規則は「作って終わり」ではなく、運用して初めて意味を持ちます。しかし、一度作成すると金庫にしまわれ、誰も内容を知らない「形骸化」した状態の企業は少なくありません。形骸化した就業規則は、いざという時に会社を守れないばかりか、過去の慣習が優先される原因となり、組織の統制を失わせます。
形骸化を防ぐためには、入社時の説明を徹底するとともに、いつでも従業員が閲覧できる環境(クラウド上の共有フォルダなど)を整備することが重要です。また、労働法は頻繁に改正されるため、少なくとも年に1回は法改正の有無を確認し、必要な見直しを行うサイクルを確立しましょう。定期的なメンテナンスこそが、50人規模企業の安定的成長を支える土台となります。
関連する詳しい情報はこちらのブログ一覧もご参照ください。
まとめ
従業員50人規模での就業規則の見直しは、企業の法的リスクを低減し、持続的な成長を支えるための重要な経営課題です。「50人の壁」に伴う義務への対応はもちろん、ハラスメント対策や多様な働き方への適応など、現代的な課題を反映させた規定整備が求められます。
不利益変更や周知不足といった落とし穴に注意しつつ、適切なプロセスを経て改定を行うことで、従業員が安心して働ける環境を構築できます。定期的な見直しと適正な運用を継続し、労使双方にとって価値あるルール作りを目指してください。
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