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中小企業向け!2024年版採用関連助成金リストと申請を成功させる7つのコツ
採用コストを抑える切り札!助成金活用の基本
近年、中小企業を取り巻く採用環境は厳しさを増しており、人材確保にかかるコストや労力は経営の大きな課題となっています。「求人を出しても応募が来ない」「採用してもすぐに辞めてしまう」「採用コストが利益を圧迫している」といった悩みは、多くの経営者や人事担当者が共有する切実な問題です。

こうした状況下で、国が提供する「助成金」の活用は、企業の採用活動を支える強力な切り札となります。助成金は融資とは異なり返済不要の資金であり、要件を満たせば受給できる権利があります。特に2024年度(令和6年度)は、正社員化の促進や成長分野への人材移動を後押しするため、いくつかの助成金で支給額の増額や要件緩和が行われています。
本記事では、2024年現在、中小企業が活用しやすい採用関連の助成金を網羅的に解説し、申請を確実に成功させるための実務的なステップとコツを紹介します。
2024年版 最新の採用関連助成金リスト
2024年度において、中小企業の採用活動や人材定着に活用できる主要な助成金は以下の通りです。それぞれの特徴と最新の変更点を把握し、自社の採用計画に合致するものを選定することが重要です。
1. キャリアアップ助成金(正社員化コース)
非正規雇用労働者(パート、アルバイト、派遣社員など)を正社員に転換した場合に支給される、最も代表的な助成金です。
- 概要: 有期雇用労働者等を正社員化し、賃金を3%以上増額させる等の要件を満たすことで受給可能。
- 2024年のポイント:
- 支給額が拡充され、要件を満たせば1人あたり最大80万円(中小企業の場合、2期合計)が助成されます。
- 対象となる有期雇用労働者の通算雇用期間要件などが緩和され、より使いやすくなりました。
- 「正社員転換制度」を新たに就業規則に規定した場合の加算措置(20万円)などが新設されています。
2. 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)
就職が困難な方を、ハローワーク等の紹介により継続して雇用する労働者として雇い入れる場合に支給されます。
- 対象者: 60歳以上の高年齢者、母子家庭の母、障害者など。
- 支給額(中小企業):
- 高年齢者・母子家庭の母等:60万円(短時間労働者は40万円)
- 重度障害者等:240万円(短時間労働者は80万円)
- ※支給対象期間(1年〜3年)にわたり、数回に分けて支給されます。
3. 特定求職者雇用開発助成金(成長分野等人材確保・育成コース)
2024年10月に要件が緩和された注目のコースです。脱炭素(グリーン)化やデジタル(DX)化などの成長分野に関連する業務に従事させるために、就職困難者等を雇い入れる場合に活用できます。
- 2024年のポイント: 通常の特定求職者雇用開発助成金の支給額に上乗せがあり、最大360万円(中小企業・人材育成メニュー等の場合)の受給が可能です。未経験者を雇い入れ、人材育成(訓練)を行う場合などに手厚い支援があります。
4. トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)
職業経験不足やブランクがあるなど、就職に不安を持つ求職者を、原則3ヶ月間の「試行雇用(トライアル雇用)」として受け入れる制度です。
- 概要: 適性を見極めた上で本採用を判断できるため、ミスマッチ防止に役立ちます。
- 支給額: 対象者1人あたり月額最大4万円(最長3ヶ月間)。母子家庭の母などの場合は月額5万円に増額されます。
5. 早期再就職支援等助成金(中途採用拡大コース)
中途採用者の雇用管理制度を整備し、実際に中途採用率を拡大させた場合に助成されます(旧:中途採用等支援助成金)。
- 概要: 中途採用計画期間内に対象者を雇用し、中途採用率を計画前の3年間と比較して20ポイント以上向上させるなどの要件があります。
- 支給額: 100万円(中小企業の場合)。
助成金申請前に確認すべき重要ポイント
助成金は「申請すれば必ずもらえる」ものではありません。申請前に以下の前提条件をクリアしていないと、そもそも審査の対象にならないため注意が必要です。
- 雇用保険の適用事業所であること: 従業員を1人でも雇用していれば、加入手続きを行っている必要があります。
- 会社都合の解雇をしていないこと: 多くの助成金では、支給申請日の前6ヶ月〜1年以内に、事業主都合による解雇(退職勧奨を含む)を行っていると不支給となります。
- 労働関係法令の遵守: 残業代の未払いや、最低賃金割れ、違法な長時間労働などがないことが必須です。
- 帳簿類の整備: 出勤簿(タイムカード)、賃金台帳、労働者名簿、雇用契約書などが法定通りに整備・保管されている必要があります。
採用関連助成金申請の具体的な流れとステップ
助成金の申請は、採用活動と並行して計画的に進める必要があります。一般的な申請フローは以下の通りです。
ステップ1:計画の策定と届出
多くの助成金(特にキャリアアップ助成金など)では、取り組みを開始する前に「計画届」を労働局へ提出する必要があります。
- ポイント: 採用予定者の入社日や転換日より前に提出しなければならないケースが多いため、採用活動開始時点で準備を始めるのが理想です。
ステップ2:就業規則の整備・改定
助成金の要件に合わせて、就業規則に必要な規定(正社員転換制度、試用期間の定めなど)を盛り込み、労働基準監督署へ届け出ます。
- ポイント: 10人未満の事業所でも、助成金申請のためには就業規則の作成と届出、従業員への周知が求められる場合があります。
ステップ3:求人・採用・取り組みの実施
ハローワークや認定された紹介事業者を通じて求人を出し、採用を行います。「ハローワーク等の紹介状」が必須要件となる助成金(特定求職者雇用開発助成金、トライアル雇用助成金など)が多い点に注意してください。
- ポイント: 採用時には必ず書面で「労働条件通知書(雇用契約書)」を交わし、労働時間や賃金などの条件を明確にします。
ステップ4:支給申請
取り組み実施後(例:正社員転換後6ヶ月経過して賃金を支払った後など)、定められた期間内に「支給申請書」を提出します。
- ポイント: 申請期間は一般的に2ヶ月間のみです。1日でも遅れると受給できません。
ステップ5:審査・支給決定
労働局による審査が行われます。追加資料の提出を求められたり、実地調査が入ったりすることもあります。審査通過後、指定口座に助成金が振り込まれます。
申請をスムーズに進めるための資料準備と注意点
審査をスムーズに通過させるためには、以下の資料等の整合性が取れていることが何よりも重要です。
- 出勤簿(タイムカード): 休憩時間が正しく記録されているか、残業時間が36協定の範囲内か、欠勤控除の計算根拠となる日数が確認できるか。
- 賃金台帳: 時間外手当(残業代)が正しく計算・支給されているか、社会保険料の控除額が正しいか、最低賃金を下回っていないか。
- 雇用契約書: 実際の勤務実態(労働時間、休日)と契約内容が一致しているか。特に有期契約の場合は、契約期間と更新の有無が明記されているか。
- 就業規則: 申請した助成金のコース要件に合致した条文が入っているか。
注意点: 手書きの出勤簿や、計算式が不明確な給与明細は、審査で疑義を持たれる原因となります。勤怠管理システムや給与計算ソフトを導入し、客観的な記録を残すことを強く推奨します。
助成金受給後の手続きと継続的な活用
助成金が入金された後も、企業の責任は続きます。
- 書類の保存義務: 申請に関連した書類(計画届、就業規則、出勤簿、賃金台帳など)は、支給決定後5年間の保存が義務付けられています。会計検査院の検査対象となり、数年後にチェックが入ることもあります。
- 会計処理: 受け取った助成金は「雑収入」として計上し、法人税(個人事業主の場合は所得税)の課税対象となります。
- 継続的な活用: 一度助成金を受給できる体制(帳簿や規定の整備)が整えば、他の助成金(人材開発支援助成金など)も申請しやすくなります。これを機に、従業員のスキルアップや働き方改革に関連する助成金へのステップアップを検討しましょう。
よくある疑問とトラブル回避策
最後に、現場で発生しやすいトラブルと、その予防策をまとめます。
- Q: 助成金の手続きを社労士に依頼せず自社で行うことは可能か?
- A: 可能ですが、推奨されません。制度の要件は複雑で頻繁に変更されるため、書類不備や期間徒過で不支給となるリスクが高いためです。
- トラブル1:会社都合退職による不支給
- 対策: 助成金申請を検討している期間は、解雇や退職勧奨を行わないよう人事管理を徹底してください。離職者が出た場合の離職理由(自己都合か会社都合か)は、離職票の手続き時に厳格に確認しましょう。
- トラブル2:残業代の計算ミス
- 対策: 固定残業代(みなし残業)を導入している場合でも、超過分の支払いが漏れているケースが散見されます。給与計算のルールを再確認し、法令通りに運用してください。
- トラブル3:申請期限の勘違い
- 対策: 「転換から6ヶ月後」なのか「6ヶ月分の給与を支払った翌日から」なのか、起算日を正確に把握し、カレンダーにアラートを設定しておきましょう。
助成金は、適正な労務管理を行う企業への「ご褒美」とも言えます。制度を正しく理解し活用することで、採用力の強化と経営基盤の安定化を同時に実現してください。
関連する詳しい情報はこちらのブログ一覧もご参照ください。
まとめ
2024年の採用関連助成金は、キャリアアップ助成金や特定求職者雇用開発助成金を中心に、要件緩和や助成額の拡充が進んでおり、中小企業にとって大きなチャンスとなっています。
申請を成功させる7つのコツを振り返ります。
- 自社の採用ターゲットに合った助成金を選定する。
- 「解雇」などの不支給要件に該当していないか事前に確認する。
- 採用活動開始前に「計画届」の提出が必要か確認する。
- ハローワーク等の指定された経路で求人・採用を行う。
- 就業規則と雇用契約書を整合させ、実態通りに運用する。
- 勤怠管理と給与計算を適正化し、証拠書類を整備する。
- 申請期限を厳守する。
これらのステップを確実に踏むことで、資金面でのメリットを享受できるだけでなく、従業員にとっても働きやすいホワイトな職場環境が整備され、結果として人材の定着率向上にもつながります。助成金活用を単なる「お金の受給」で終わらせず、貴社の組織力を高める契機としてください。
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