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人材採用コスト削減の鍵!助成金活用で失敗しないための全知識と注意点

2025.12.13 助成金活用

人材不足が深刻化する昨今、採用コストの高騰は多くの企業にとって頭の痛い課題です。「求人広告を出しても応募が来ない」「紹介料が高すぎる」といった悩みを抱える中で、国が支給する「助成金」は、採用コストを大幅に削減し、企業の成長を後押しする強力なツールとなり得ます。

人材採用コスト削減の鍵!助成金活用で失敗しないための全知識と注意点

しかし、助成金制度は複雑で、要件を一つでも満たさなければ1円も受給できない厳格さがあります。本記事では、人材採用における助成金の基本から、2024年・2025年の最新トレンドを踏まえた主要な助成金の種類、そして何より重要な「失敗しないためのポイント」を、専門的な視点から徹底解説します。

助成金とは?人材採用コスト削減における基本を理解する

まず、「助成金」という制度の根本的な仕組みを正しく理解しましょう。一般的にビジネスの文脈で使われる「補助金(経済産業省管轄)」とは異なり、厚生労働省が管轄する雇用関係の助成金には、以下のような際立った特徴があります。

  • 財源は雇用保険料: 企業が支払っている雇用保険料の一部が財源となっています。つまり、条件を満たしているのに申請しないのは、払い損と言っても過言ではありません。
  • 要件を満たせば受給確率はほぼ100%: 補助金が「採択率(競争)」があるのに対し、助成金は要件を完全に満たしていれば、原則として受給できます。
  • 返済不要: 融資とは異なり、返済する必要がない「純粋な収入」となります(雑収入として課税対象にはなります)。

人材採用において助成金が注目される理由は、単に「お金がもらえる」からだけではありません。助成金の受給要件には「適正な労務管理」が含まれているため、助成金に取り組むプロセスそのものが、「ブラック企業体質からの脱却」や「働きやすい職場づくり」につながり、結果として採用力や定着率の向上に直結するからです。

【必見】助成金活用で失敗しないための大原則と準備

「助成金をあてにして採用したのに、不支給になった」という失敗は後を絶ちません。これを防ぐためには、申請前に以下の大原則をクリアしておく必要があります。これらはすべての助成金に共通する「土台」です。

1. 「計画が先、実行は後」の鉄則

最も多い失敗が順番の間違いです。多くの助成金(特にキャリアアップ助成金など)は、「採用する前」や「正社員転換する前」に計画届を提出しなければなりません。「いい人を採用できたから、後から申請しよう」では手遅れになるケースが大半です。必ずアクションを起こす前に制度を確認しましょう。

2. 労務管理の帳票類が完備されているか

助成金の審査では、実態調査のためにタイムカード(出勤簿)、賃金台帳、労働条件通知書(雇用契約書)の提出が求められます。これらに整合性がなかったり、欠如していたりすると不支給となります。

  • 出勤簿と賃金台帳の労働日数は一致しているか?
  • 残業代は1分単位で計算され、正しく支払われているか?
  • 最低賃金を割っていないか?

3. 解雇(会社都合退職)を行っていないか

助成金は雇用の安定を目的としているため、申請の前後一定期間(通常は雇い入れ等の前後6ヶ月間)に「会社都合の解雇」を行っていると、その事業所は助成金を受け取れません。 退職勧奨も解雇とみなされる場合があるため、人員整理を行っている時期は特に注意が必要です。

採用コストを抑える!主要な助成金の種類と具体的な活用例

採用コスト削減に直結する、現在もっとも活用すべき主要な助成金を紹介します。なお、支給額や要件は2024年・2025年の制度変更を反映した目安(中小企業の場合)です。

1. キャリアアップ助成金(正社員化コース)

契約社員やパートタイム労働者などを「正社員」に転換した場合に支給されます。

  • 概要: 非正規雇用労働者を正社員化し、賃金を3%以上アップさせる等の要件を満たす。
  • 支給額: 対象者1人あたり最大80万円(2期に分けて支給など、要件により変動)。
  • 活用例: いきなり正社員として求人を出すと、紹介手数料(年収の30〜35%)が高額になります。まずは契約社員として採用し、半年間の勤務態度を見てから正社員へ登用することで、ミスマッチを防ぎつつ、助成金で採用コスト(求人広告費や研修費)を実質ゼロに近づけることが可能です。

2. 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)

就職が困難な方を、ハローワーク等の紹介により雇い入れる場合に支給されます。

  • 対象: 60歳以上の高年齢者、障害者、母子家庭の母など。
  • 支給額: 60万円〜240万円(対象者の属性や労働時間により異なる)。
  • 活用例: シニア層の経験豊富な人材や、障害者雇用を積極的に進める企業にとって、人件費の負担を軽減する大きな支えとなります。

3. トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)

職業経験不足などで就職が難しい求職者を、原則3ヶ月間の「試用期間(トライアル雇用)」として雇い入れる制度です。

  • 概要: 3ヶ月間のトライアル雇用期間中に、適性を見極めて本採用するか判断できます。
  • 支給額: 対象者1人あたり月額最大4万円(最長3ヶ月で計12万円)。
  • 活用例: 「面接だけでは分からない」というリスクを低減できます。もし適性が合わず本採用に至らなかった場合でも、要件を満たしていればトライアル期間分の助成金は支給されるため、採用のハードルを下げることができます。

申請前に知るべき!助成金で陥りがちな「よくある間違い」と対策

助成金申請の現場で頻発する「不支給事例」を知っておくことが、確実な受給への近道です。

親族の採用は対象外

原則として、事業主や取締役の親族(3親等以内など)を採用しても助成金の対象にはなりません。「息子を従業員にしたから助成金をもらおう」という申請は通らないため注意してください。

固定残業代(みなし残業)の運用ミス

固定残業代制度を導入している企業でよくあるのが、「就業規則への記載不備」や「超過分の未払い」です。固定残業代が基本給と明確に区分されていない、あるいは実際の残業時間が固定分を超えているのに差額を払っていない場合、賃金未払いとみなされ不支給となります。

採用経費の削減と「人材紹介会社」の利用

特定求職者雇用開発助成金などは、「ハローワーク」や「厚生労働大臣の許可を受けた職業紹介事業者」からの紹介であることが要件です。求人サイトからの直接応募や、知人の紹介では対象にならないケースが多いため、どのルートで採用するかが極めて重要です。

期限の徒過(遅れ)

助成金の申請期限は厳守です。「1日遅れ」でも受理されません。特に支給申請期間は「転換後6ヶ月分の賃金を支払った日の翌日から2ヶ月以内」など複雑に設定されているため、スケジュール管理が命取りになります。

成功事例に学ぶ!効果的な助成金活用で採用力を高める方法

実際に助成金をうまく活用している企業は、単にコストを削減するだけでなく、「人を育てる仕組み」とセットで運用しています。

ある中小IT企業では、未経験者を「契約社員」として採用し、6ヶ月間のOJT(実務研修)を実施。その期間で一定のスキルを習得した人材を「正社員」へ転換する制度を構築しました。
これにより、「キャリアアップ助成金」を活用して一人当たり最大80万円を受給し、その資金を外部研修費や先輩社員のメンター手当に還元。結果として、採用コストを相殺しながら、離職率を大幅に低下させることに成功しました。

また、シニア層をターゲットにした警備会社では、「特定求職者雇用開発助成金」を活用。60歳以上の人材を積極的に採用し、助成金を原資にシニア向けの負担軽減装備(空調服など)を導入しました。これが評判を呼び、求人費をかけずに口コミで応募が集まる好循環を生んでいます。

助成金を「単なる雑収入」ではなく、「人材投資への原資」と捉えることが、長期的な採用コスト削減の秘訣です。

助成金に関するQ&A:疑問を解消してスムーズな申請へ

Q1. 自分で申請することはできますか?
A. 可能です。ただし、就業規則の改定や複雑な書類作成が必要であり、不備があれば不支給となります。また、制度は頻繁に改正されるため、正確な知識がないとリスクが高いのが実情です。手間とリスクを考えると、専門家である社会保険労務士(社労士)に依頼するのが一般的です。
Q2. 過去に採用した人でも申請できますか?
A. 原則として難しいです。多くの助成金は「計画届の提出」や「ハローワーク等の紹介」など、採用前・転換前のアクションを要件としています。ただし、要件に合致する研修を行った場合など、事後でも申請できる助成金(人材開発支援助成金の一部など)も稀にありますが、基本は「事前準備」が必要です。
Q3. 助成金を受給することのデメリットはありますか?
A. 労務管理(法定帳簿の整備や残業代の支払い)を徹底する必要があるため、これまで労務管理がルーズだった企業にとっては、体制を整える手間とコストが初期にかかります。しかし、これはコンプライアンス順守の観点からはいずれ必要なことであり、企業体質が強化されるメリットの方が大きいと言えます。また、会計検査院の検査対象となる可能性があるため、書類は5年間きっちり保管する必要があります。
Q4. 「会社都合退職」を出してしまったのですが、いつから申請できますか?
A. 一般的に、会社都合退職(解雇など)を出した日から6ヶ月経過後の雇い入れや転換であれば、不支給要件(解雇制限)が解除されることが多いです。ただし、助成金の種類によって期間が異なる場合があるため、必ず最新の要件を確認してください。

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