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就業規則を勝手に変更するリスクとは?100人企業の経営者が知るべき適法な手続き

2025.10.12 スタッフブログ

「急に業務が変わったから就業規則をすぐに変更したい。でも手続きが面倒で…」

従業員100人を抱える企業の経営者なら、一度は考えたことがあるでしょう。しかし、就業規則を勝手に変更することには重大な法的リスクが伴います。「従業員に不利益な変更はダメと聞いたが、どこまでが不利益なのか」「労働基準監督署への届出が遅れても大丈夫なのか」「従業員から同意を得る必要はあるのか」といった疑問をお持ちの方がほとんどです。

特に最近は働き方改革や新型コロナウイルス対応で、「テレワーク規定を急いで作りたい」「副業を解禁したい」「時短勤務制度を見直したい」といった変更ニーズが急増しています。一方で、「従業員から『聞いていない』と苦情が来た」「労働基準監督署から指導を受けた」「変更が無効と言われた」といったトラブルも頻発しています。

また、「現在の顧問社労士が変更手続きについて明確に教えてくれない」「給与計算に影響する変更の場合の注意点がわからない」「DX化で新しい働き方に対応した規定が必要だが手続きが複雑」といった実務面での課題もあるでしょう。

助成金申請で就業規則の変更が要件になっているが間に合わない」「他社では簡単に変更していると聞いたが本当に大丈夫なのか」そんな不安をお持ちではありませんか。

本記事では、就業規則を勝手に変更することの法的リスクから、適法な変更手続きの方法、実務上の注意点まで、全国対応のHR BrEdge(エイチアールブレッジ)社会保険労務士法人が豊富な実務経験に基づいて詳しく解説いたします。法的トラブルを回避しながら必要な変更を適切に行う方法をお伝えします。

就業規則を勝手に変更することの法的リスクと企業が直面する問題

「就業規則の変更って、会社が自由に決められるんじゃないの?」

まず、就業規則を勝手に変更することがなぜ問題なのか、法的なリスクと企業が直面する具体的な問題を正確に理解することから始めましょう。多くの経営者が誤解している重要なポイントがあります。

【労働契約法による厳格な制限】

労働契約法第9条・第10条の規定
就業規則の変更については、労働契約法で厳格なルールが定められています。

第9条(不利益変更の原則禁止):
「使用者は、労働者と合意することなく、労働者に不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない」

第10条(就業規則による変更の要件):
就業規則の変更により労働条件を変更する場合は、以下の要件が必要:
・変更が合理的であること
・労働者への周知が行われていること

【「勝手に変更」が引き起こす具体的なリスク】

法的リスク
・変更の無効(従来の労働条件が継続)
・労働基準監督署からの指導・勧告
・従業員からの労働審判申し立て
・損害賠償請求
・刑事罰(労働基準法違反の場合)

経営リスク
・従業員の士気低下
・優秀な人材の流出
・企業の信頼失墜
・労働組合との対立
・採用活動への悪影響

【不利益変更と判断される典型例】

給与・賞与関係
・基本給の減額
・賞与支給基準の厳格化
・各種手当の廃止・減額
・退職金制度の不利益変更

労働時間・休暇関係
・所定労働時間の延長
・休日数の減少
・有給休暇取得制限の強化
・フレックスタイム制の廃止

その他の労働条件
・転勤命令権の拡大
・懲戒処分の加重
・服務規律の厳格化
・福利厚生の削減

経営者の視点から見ると、就業規則は企業運営の重要なツールですが、一方的な変更は重大な法的リスクを伴います。適切な手続きにより、従業員の理解を得ながら必要な変更を実現することが重要です。

総務担当者の視点から見ると、就業規則の変更は労務管理の根幹に関わる重要な業務です。給与計算や勤怠管理への影響も大きいため、慎重な検討と正確な手続きが求められます。

【適法な変更が認められる要件】

合理性の判断要素
裁判所は以下の要素を総合的に判断します:
・労働者の受ける不利益の程度
・労働条件の変更の必要性
・変更後の就業規則の内容の相当性
・労働組合等との交渉の状況
・その他の事情

変更の必要性が認められやすいケース
・経営危機による人件費削減
・法改正への対応
・企業の競争力確保
・労働者の安全確保

代償措置の例
・段階的な実施
・経過措置の設定
・他の労働条件の改善
・退職優遇制度の設置

【必要な手続きの概要】

労働基準法上の手続き(常時10人以上の事業場)
・従業員代表の意見聴取
・労働基準監督署への届出
・従業員への周知

労働契約法上の要請
・変更の合理性確保
・適切な周知方法
・労働者との協議努力

【実際のトラブル事例】

ケース1:賞与支給基準の一方的変更
企業が業績悪化を理由に賞与の支給基準を一方的に厳格化。従業員が労働審判を申し立て、変更が無効とされ、従来基準での支給を命じられた。

ケース2:転勤命令権の拡大
全国転勤なしで採用した従業員に対し、就業規則変更により転勤命令権を設定。従業員が拒否し、解雇無効の訴訟に発展。企業が敗訴。

ケース3:退職金制度の不利益変更
確定給付型から確定拠出型への一方的変更。労働基準監督署から是正勧告を受け、適切な移行措置を講じることとなった。

【近年の傾向と注意点】

新型コロナウイルスの影響により、テレワーク規定や感染症対策に関する変更が急増していますが、これらも適切な手続きが必要です。また、DX化に伴う新しい働き方への対応でも、従業員の理解と協力が不可欠です。

助成金申請において就業規則の整備が要件となる場合も多く、拙速な変更ではなく、計画的で適法な変更が求められています。

適法な就業規則変更の実践的手順と企業成功事例

「それでは、就業規則を適法に変更するには、どんな手順で進めればいいの?」

ここでは、当事務所が支援してきた企業の実例を交えながら、適法で効果的な就業規則変更の進め方をご紹介します。

【成功事例1:製造業FF社(従業員96名)の働き方改革対応】

FF社では働き方改革関連法の施行に伴い、就業規則の大幅な見直しが必要となりましたが、適切な手続きにより従業員の理解を得て変更を実現しました。

変更の背景:
・時間外労働の上限規制対応
・有給休暇取得義務化対応
・同一労働同一賃金への対応
・テレワーク制度の導入

実施した手順:
1. 事前調査・分析(2ヶ月)
・現行規則と法改正内容の差分分析
・従業員の労働実態調査
・他社事例の研究
・変更による影響度の試算

2. 変更案の作成(1ヶ月)
・法的要件を満たす条文の作成
・従業員への不利益最小化
・経過措置・代償措置の検討
・実施スケジュールの策定

3. 従業員との協議(2ヶ月)
・管理職向け説明会(3回)
・全従業員向け説明会(2回)
・部署別意見交換会(10回)
・労働者代表との正式協議(5回)

4. 最終調整・手続き(1ヶ月)
・意見を踏まえた修正
・労働者代表の意見書取得
・労働基準監督署への届出
・従業員への周知・配布

成果:
・従業員の85%が変更に納得
・労働基準監督署からの指導なし
・法改正への完全対応
・労働時間削減の実現

【成功事例2:IT企業GG社(従業員105名)の副業解禁対応】

GG社では人材確保の観点から副業解禁を検討しましたが、慎重な検討と適切な手続きにより、トラブルなく制度を導入しました。

検討プロセス:
・副業解禁のメリット・デメリット分析
・情報管理・競業避止の検討
・労働時間管理の方法検討
・社会保険への影響調査

従業員との対話:
・アンケート調査(希望者の把握)
・ワークショップ形式の意見交換
・個別面談による詳細ヒアリング
・段階的実施への理解醸成

段階的実施:
第1段階:IT関連の専門職のみ対象
第2段階:営業職・企画職に拡大
第3段階:全職種対象(管理職除く)

効果:
・従業員満足度の向上
・スキルアップの促進
・優秀な人材の確保
・企業の魅力度向上

【失敗事例:サービス業HH社(従業員89名)】

HH社では業績悪化により賃金制度の見直しが必要となりましたが、手続きを軽視したため大きなトラブルになりました。

実施した変更:
・基本給の5%減額
・賞与支給基準の厳格化
・各種手当の統廃合
・退職金制度の見直し

問題のあった対応:
・従業員への事前説明なし
・一方的な通告のみ
・労働者代表との協議なし
・代償措置の検討不足

発生したトラブル:
・従業員の半数が労働組合に加入
・労働審判の申し立て
・労働基準監督署による調査
・メディアでの報道

最終的な解決:
顧問社労士による緊急サポート
・変更内容の大幅修正
・適切な手続きのやり直し
・和解による早期解決

【実践的な変更手順(完全版)】

Phase 1:準備・調査段階(1~2ヶ月)
・変更の必要性・目的の明確化
・現行規則の問題点分析
・法的要件の確認
・影響を受ける従業員の特定
・他社事例・判例の調査

Phase 2:案文作成段階(2~4週間)
・変更条文の具体的作成
・不利益性の最小化検討
・経過措置・代償措置の設計
・実施時期・方法の決定
・説明資料の準備

Phase 3:協議・調整段階(1~3ヶ月)
・管理職への事前説明
・従業員説明会の開催
・意見・要望の収集
・労働者代表との協議
・必要に応じた修正

Phase 4:正式手続き段階(2~4週間)
・最終案の確定
・労働者代表の意見書取得
・労働基準監督署への届出
・従業員への正式周知
給与計算システムへの反映

Phase 5:実施・フォロー段階(継続)
・変更内容の実施
・従業員からの質問対応
・運用状況のモニタリング
・必要に応じた微調整
・効果の検証・評価

経営者の視点からは、就業規則の変更は短期的にはコストと時間がかかりますが、適切な手続きにより法的リスクを回避し、従業員との信頼関係を維持できます。

総務担当者の視点からは、複雑な変更手続きについてアウトソースも含めた効率的な体制構築が重要です。特に内製化が困難な法的判断については、専門家との連携が不可欠です。

よくある疑問をQ&A形式で解決

Q1. 就業規則を勝手に変更することは絶対にダメなのでしょうか?軽微な変更でも同じですか?

A1. 就業規則を勝手に変更することは、従業員に不利益を与える可能性がある場合は法的に問題となります。軽微な変更であっても、適切な手続きを踏むことが重要です。例えば、服装規定の詳細化や、連絡方法の変更など、従業員に不利益のない変更であっても、労働者代表の意見聴取と労働基準監督署への届出は必要です。総務担当者としては、変更の大小に関わらず、定められた手続きを確実に実施することが重要です。経営者の立場では、「軽微だから」という理由で手続きを省略することのリスクを理解し、常に適法な手続きを心がけることが大切です。

Q2. 従業員全員の同意を得ることは現実的に難しいのですが、どの程度の合意があれば変更可能でしょうか?

A2. 従業員全員の同意は確かに現実的ではありませんが、労働契約法では「合理性」と「周知」が要件とされています。重要なのは、労働者代表との十分な協議、従業員説明会の開催、意見収集の機会提供など、真摯な協議プロセスを経ることです。反対意見があっても、変更の必要性が高く、不利益が軽微で、代償措置があれば変更が認められる場合があります。総務担当者としては、協議プロセスを丁寧に記録し、合理性を示す証拠を残すことが重要です。経営者の視点では、従業員の理解を得る努力を継続することで、長期的な労使関係の改善につながります。

Q3. 就業規則の変更手続きにはどのくらいの期間がかかりますか?急ぎの場合の対応方法はありますか?

A3. 適法な就業規則変更には通常3~6ヶ月程度の期間が必要です。従業員との協議、労働者代表の選出、意見聴取、届出手続きなど、複数のステップがあるためです。急ぎの場合でも手続きの省略はできませんが、並行処理や事前準備により期間短縮は可能です。例えば、変更案の作成と従業員説明を並行して進める、労働者代表を事前に選出しておくなどの方法があります。総務担当者としては、年間計画で定期的な見直し時期を設定し、急な変更を避ける体制作りが重要です。経営者の立場では、計画的な制度見直しにより、適切なタイミングでの変更を実現できます。

まとめ:適法な就業規則変更で従業員の信頼と企業の成長を両立

就業規則を勝手に変更することの法的リスクを理解し、適切な手続きを踏むことで、従業員の信頼を得ながら必要な制度変更を実現できます。100人規模の企業では、多様な従業員のニーズと企業の経営方針のバランスを取った変更が重要です。

重要なのは、就業規則の変更を「会社の一方的な決定」ではなく、「労使が協力して職場をより良くする機会」として捉えることです。適切な協議プロセスにより、従業員の理解と協力を得ながら、企業の競争力強化と働きやすい職場環境の実現を同時に達成できます。

DX化による新しい働き方への対応、法改正への適切な対応、従業員のワークライフバランス向上など、現代的な課題に対応するためにも、就業規則の適切な変更は不可欠です。

また、適法な変更手続きは、労働基準監督署からの指導回避、労働審判等のトラブル防止、企業の社会的信頼向上など、多面的な効果をもたらします。短期的な手間を惜しまず、長期的な企業価値向上の観点から取り組むことが重要です。

もし現在、就業規則の変更を検討されている場合、または変更手続きでお困りの場合は、ぜひ専門家にご相談ください。HR BrEdge社会保険労務士法人では、企業の実情に応じた最適な変更プロセスの設計から実施支援まで、総合的なサポートを提供しています。

今すぐ無料相談をご希望の方は、お電話またはWebフォームからお気軽にお問い合わせください。250社以上の企業様をサポートしてきた豊富な経験をもとに、貴社の就業規則変更を成功に導き、従業員満足度向上と企業成長を一緒に実現してまいりましょう。【全国対応・オンライン相談OK】

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