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「残業は事前申請がないと違法?」その対応、本当に合っていますか?企業が守るべき労務管理の盲点
「事前申請のない残業は払わなくていい?」「黙認しただけで残業代を払う義務があるの?」「残業をなくしたいが、管理が大変…」――大阪、東京、福岡、名古屋の中小企業の経営者や総務担当者からよく聞く悩みです。
残業の「事前申請」制度は、従業員の労働時間を適切に管理し、無駄な残業を抑えるために導入されることが多い一方、実際には「申請がなければ残業代を払わなくてよい」と誤解されているケースも少なくありません。
しかし、実態として働いていた場合、申請の有無にかかわらず残業代は原則支払う義務があります。この記事では、残業の事前申請制度の法的位置づけ、企業の正しい対応方法、トラブルを防ぐ実践ポイントまでを、社労士の視点から詳しく解説します。
残業の事前申請と法律のリアル
■ 「申請がないから払わない」は通用する?
結論から言えば、「通用しません」。労働基準法第37条では、「使用者の指揮命令下にある時間」は労働時間とみなされ、所定外労働であれば残業代を支払う義務が発生します。たとえ事前に申請がなくても、実際に働いており、上司がそれを黙認していた場合などは、「黙示の指示」と判断されることがあります。
■ 黙認とは何か?
黙認とは、「明示的な指示はしていないが、従業員が残業していることを知っていて、止めなかった」状態を指します。たとえば、オフィスに部下が遅くまで残っていても、注意もせず容認している上司の行動は、「黙示の指示」とされかねません。
■ 裁判事例:事前申請がなくても敗訴
東京地裁のある事例では、従業員が定時後に日常的に仕事をしていたにもかかわらず、企業は「事前申請がなかった」として残業代を支払いませんでした。しかし裁判所は「上司が知っていた以上、企業に支払い義務がある」と判断し、2年分の未払い残業代支払いを命じました。
■ よくある誤解とその背景
- ×「申請がなければ労働時間にカウントしなくていい」→ 実態があれば労働時間。
- ×「就業規則に“申請ない残業は無効”と書けばOK」→ 就業規則より法律が優先。
- ×「内製化して対応できる」→ 実務上は顧問や社労士の確認が不可欠。
■ 総務部の落とし穴:給与計算ミス
事前申請がない残業を記録せず、給与計算から外してしまうケースが散見されます。これは単なるミスではなく、法的には「賃金不払い」に該当する可能性があり、是正勧告や遡及支払いの対象となります。
■ DX・アウトソースとの連携で防げる
ジョブカンなどの勤怠DXツールと給与計算の連携を行えば、実際の打刻データをもとに正確な残業時間を把握し、自動的に給与に反映できます。手続きや確認作業も一括管理でき、内製化では限界のあるリスク回避が可能になります。
企業が実践すべき8つの対応策
- ① 就業規則に「申請が原則」と「例外対応」を明記
理由:申請なしの残業でも支払い義務は生じる。
方法:「例外的な事情がある場合は事後申請可能」など柔軟な規定に。
効果:実態に沿った制度運用とトラブル回避が両立。 - ② 勤怠データの把握とアラート設定
理由:現場任せでは未申請残業が見逃される。
方法:ジョブカンなどで打刻状況をリアルタイムに可視化。
効果:残業発生時に即時対応可能に。 - ③ 総務部と上司の情報連携を徹底
理由:「総務が知らなかった」では済まない。
方法:残業報告を上長と総務に同時通知する体制を構築。
効果:管理の漏れがなくなり、給与計算も正確に。 - ④ 未申請残業の事後報告制度を整備
理由:申請がなくても働いている事実は消せない。
方法:事後報告フォームの導入と月次確認のフロー化。
効果:抜け漏れ防止と証拠保全が同時に実現。 - ⑤ 業務量と人員配置の見直し
理由:慢性的な残業は申請制度で解決しない。
方法:業務棚卸しとDX導入による効率化支援。
効果:そもそも残業を発生させない環境づくりへ。 - ⑥ 労務顧問との定期レビュー
理由:法改正や裁判例の変化に即時対応するため。
方法:顧問社労士による年1回の制度見直し・チェック。
効果:法令違反リスクの最小化。 - ⑦ 助成金制度と連動した就業管理
理由:適切な勤怠管理が受給条件となることも。
方法:キャリアアップ助成金や働き方改革推進助成金に合わせた運用。
効果:制度導入費用を軽減可能に。 - ⑧ 経営層の意識改革
理由:「申請がなければ払わない」という誤認はトップから改善。
方法:労務研修や外部セミナーへの参加。
効果:全社的な労務リスク管理が定着。
よくある質問(Q&A)
Q. 事前申請がない残業にも残業代は払う必要がありますか?
A. はい。実態として働いていれば、申請の有無に関係なく支払義務があります。黙認も「使用者の指示」と見なされます。
Q. 事前申請がない残業を禁止したい場合、どうすれば?
A. 事前申請制度は有効ですが、未申請残業があった場合の「事後処理フロー」も必ず整備しておく必要があります。
Q. 残業を抑制するにはどうしたらいいですか?
A. 業務の見直し、勤怠の見える化、DXの活用が有効です。制度面だけでなく、業務量そのものを調整しましょう。
Q. 顧問社労士に相談する意味はありますか?
A. 非常にあります。就業規則の整備や制度導入時の法令確認、助成金活用の提案まで、社労士は企業の労務管理を総合的に支援します。
まとめ
「残業は申請がなければ払わなくていい」という考え方は、もはや通用しません。労務管理において重要なのは、実態に即した記録と、正確な給与計算、そして全社的な法令遵守体制です。
大阪・東京・福岡・名古屋などの中堅企業では、勤怠DXの導入と社労士との連携を進め、残業管理をアウトソースやクラウドでスマート化する流れが進んでいます。今こそ、自社の労務制度を見直す絶好の機会です。
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