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【副業・兼業】会社のとるべき対応は?(労働時間通算・健康管理・就業規則変更)

2022.08.16 スタッフブログ

現政府は指針の改定案を労働政策審議会に報告する等、積極的な副業・兼業の促進を進めています。改定案が通れば、今後より一層その動きは加速していくことが予想されます。

当事務所では就業規則の作成依頼も多く承っていますが、副業・兼業を禁止しておきたいという会社はまだ多くあります。

副業・兼業を禁止することは出来ないのでしょうか?また、副業・兼業を認めると、会社にはどのような対応が待ち構えているのでしょうか?

解説していきましょう。

※以下の解説では、副業・兼業を副業等と記載していきます。

副業・兼業は禁止できる?

結論から言うと、条件付きで禁止することはできます。


副業等に関する過去の裁判例では、『 労働者は、勤務時間以外の時間については、事業場の外で自由に利用することができるのであり、使用者は、労働者が他の会社で就労(兼業)するために当該時間を利用することを、原則として許されなければならない。 』という判決が出ています。(マンナ運輸事件)

実際、これらの裁判では、不当に副業等を制限されたということで、会社から原告(従業員側)に損害賠償の支払いが命じられています。


完全に副業等を禁止することは、過去の裁判例をみても、適切とはいえません。


副業等を禁止できるケースは、以下の4つあります。


1.労務提供上の支障となる場合
2.企業秘密が漏洩する場合
3.企業の名誉・信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合
4.競業により企業の利益を害する場合


これらに当てはまる場合、 労働者の労働時間外の自由よりも 優先すべき、会社に副業を禁止する正当な理由があるとみなされますので、副業等を拒否することは問題となりません。


判断が難しい部分ではありますが、これらのケースに当てはまらないにも関わらず副業等を拒否すると、従業員側が正当性を持って異議を唱えることは可能であり、万が一の場合には会社の責任を問われるケースもあることを知っておきましょう。

副業・兼業は労働時間の通算に注意!

労働基準法第38条では『労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する』と定められており、これは事業主を異にする場合も含むとされています。


注)事業主、委任契約、業務委託契約など、労働基準法に定められた労働時間規制が適用される労働者以外には、通算は適用されません。


労働時間を通算した結果、1日8時間・1週40時間を超える、いわゆる法定外の時間外労働が発生した場合には、法律通りの割り増し賃金の支払いが必要となります。

当然、36協定を締結しておくことも必須です。

副業先となる会社だけでなく、メイン勤務の会社でも、働き方次第で残業代(割増賃金)の支払い義務が発生する可能性がありますので、非常に注意が必要です。


ここでは、 “最初に雇用契約を結んでいた会社” をメイン勤務先、 “後から雇用契約を結んだ会社” を 副業先 と呼ぶことにします。

では、労働時間の通算ルールについて詳しく見ていきましょう。

副業先となる会社で割増賃金の支払いが必要となるケース

A社で働いており、新しくB社で副業を開始したAさんが、

それぞれの会社と以下の内容で雇用契約を結んだとします。


ケース①

A社(メイン勤務先):1日の所定労働時間8時間

B社(副業先):1日の所定労働時間4時間


ある1日の中で、A社→B社の順で契約通りに働くと、A社での所定労働時間だけで1日の法定内労働時間(8時間)に到達してしまっていますので、B社で働く4時間の勤務は、すべて時間外労働にあたり、B社はAさんに4時間分の割増賃金を支払う必要があります。

また、4時間の労働がすべて時間外労働となるため、B社では36協定を締結していなければ直ちに違法となってしまいます。


ケース②

A社(メイン勤務先):1日の所定労働時間8時間 所定労働日/月~金

B社(副業先):1日の所定労働時間3時間 所定労働日/土のみ


A社で 、月~金の5日間、契約通り1日8時間ずつ働くと、 金曜日までのA社の所定労働時間だけで1日の法定内労働時間(40時間)に到達してしまっていますので 、同じ週の土曜日に働いた3時間の勤務は、すべて時間外労働にあたり、B社はAさんに3時間分の割増賃金を支払う必要があります。


また、くどいようですが、3時間の労働がすべて時間外労働となるため、B社では36協定を締結していなければ直ちに違法となってしまいます。


ケース③

A社(メイン勤務先):1日の所定労働時間8時間

B社(副業先):1日の所定労働時間4時間


ケース①と前提は同じですが、次の日にB社→A社の順で契約通りに働いた場合はどうなるでしょうか?B社での勤務が終了した時点で4時間しか勤務していないので法定内労働時間となりそうな気もしますね。

 

しかし、残念ながら、このケースでもB社で働く4時間の勤務は、すべて時間外労働にあたり、B社はAさんに4時間分の割増賃金を支払う必要があります。

 

厚生労働省が2020年9月に改定した『副業・兼業の促進に関するガイドライン』で、『2社の所定労働時間を通算して、法定労働時間を超える部分がある場合には、その部分は後から契約した会社の時間外労働となる』ことが定められているためです。

つまり、2社の所定労働時間の合計で法定内労働時間を超えている部分は、副業先の残業になるということです。

メイン勤務先となる会社で割増賃金の支払いが必要となるケース

先ほどと同様に、A社で働いており、新しくB社で副業を開始したAさんが、

それぞれの会社と以下の内容で雇用契約を結んだとします。


ケース①

A社(メイン勤務先):1日の所定労働時間4時間 

B社(副業先):1日の所定労働時間4時間


ある1日の中で、A社→B社の順で契約通りに働くと、A社とB社の1日の所定労働時間の合計は、法定内労働時間(8時間)にぴったり収まっていますので、契約通りの労働であれば、A社でも B社でも時間外割増の支払いは必要ありません。


ここでA社で所定労働時間を超過して働いた場合は、どうなるでしょうか?

 

~実際の勤務実績~

A社(メイン勤務先):1日の所定労働時間4時間 +所定外労働時間1時間

B社(副業先):1日の所定労働時間4時間


A社で勤務を終えた時点で1日5時間しか働いておらず、A社単体で見れば8時間の法定内労働に収まっているように見えますが、AさんとしてはB社と通算した4時間+4時間=8時間が所定労働時間となっており、所定労働時間だけで法定内労働時間(8時間)に到達していますので、A社で所定時間(4時間)を超えて労働した分は、時間外労働となります。


よって、A社で働いた5時間のうち、1時間の勤務は時間外労働にあたり、A社はAさんに1時間分の割増賃金を支払う必要があります。

健康管理が会社にも労働者にも求められる

会社にも、労働者にも、副業兼業を通じて以下の4つの留意事項が提言されています。


・安全配慮義務

・秘密保持義務

・競業避止義務

・誠実義務


また、事業主としては、従業員が副業・兼業する場合でも、時間外労働の上限規制(単月100時間未満、複数月平均80時間以内、月45時間超年6回)を遵守しなければなりません。

これらの義務、規制に引っかかりそうな従業員には、副業等の働き方を見直すよう指導することがメイン勤務先、副業先ともに求められます。

副業・兼業のルールを定めたら…

副業等のルールは、就業規則の規定に明記した上で、従業員に周知しましょう。

前項の4つの禁止事例を適用するのであれば、その点についても漏れなく明記しましょう。

就業規則を変更した場合は、原則通り労働基準監督署への届け出が必要です。

それ以外に特に会社として届け出が必要な書類はありません。


また、実際に従業員が副業等を申し出る際の申請書も作成せねばなりません。

申請書に、副業先の詳細や労働時間を確認できるような項目を設けておくと、前述した4つの禁止事項に該当していないかどうか、労働時間が時間外労働の上限規制を上回らないかどうか、等の労務管理を最初に想定しやすくなります。


また、既存の従業員が新たに副業等を始めるケースだけでなく、新たに採用した従業員が実はメイン勤務が他にあり、副業先としての入社だったというケースも往々にしてあります。

そのため、入社書類の中に、副業・兼業に関する確認書類を追加する対応もとっておくとよいでしょう。

まとめ

いかがだったでしょうか。ルールをよく知るとより一層「副業・兼業なんて認めたくない!」と言いたくなってしまいますね。


しかしながら、冒頭にお伝えしたとおり、過去の裁判例から見ても、副業兼業を禁止することは会社にとってもリスクになります。副業兼業することで従業員の経済生活も豊かになるわけですから、お互いに納得感を持って進められる形を模索していただければと思っております。


とはいえ、この労働時間通算や副業実態の把握など、労務管理が煩雑になることは間違いありません。当事務所には煩雑な労務管理をなるべくシンプルに仕組み化するサポート体制がございます。よければプロの力も借りてみてくださいね。



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