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2025年最新版 副業・兼業規程の作成ガイド:企業がトラブルを回避するポイントと注意点
政府による働き方改革の推進以降、多くの企業で副業・兼業規程の整備が進んでいますが、2025年はその運用フェーズが大きく変化する重要な年です。これまでのような「原則禁止」から「原則容認」へと社会全体の潮流が変わる中で、企業は法的リスクを抑えつつ、人材確保やエンゲージメント向上につなげるための新たなルール作りを求められています。しかし、労働時間の通算管理や情報漏洩対策など、実務担当者が解決すべき課題は依然として複雑です。本記事では、最新の法改正や裁判例を踏まえ、企業を守りながら従業員の多様な働き方を支援するための副業・兼業規程作成のポイントを徹底解説します。
副業・兼業規程が2025年に見直される背景と重要性
2025年現在、企業における副業・兼業規程の見直しは、単なる福利厚生の一環ではなく、経営戦略上の必須課題となっています。その背景には、法制度の改正と労働市場の構造変化があります。以下の最新動向を押さえ、なぜ今、規程の再整備が必要なのかを理解しましょう。
- 「原則容認」の流れの定着と裁判例の蓄積
厚生労働省のガイドライン改定以降、副業を「原則禁止」とする従来の就業規則は、合理的な理由がない限り無効とされるリスクが高まっています。裁判例でも、労働時間外の時間を従業員がどう利用するかは原則自由であるという判断が定着しており、企業はこれに適合した副業・兼業規程への書き換えを迫られています。 - フリーランス新法(2024年11月施行)の影響
従業員が個人事業主(フリーランス)として副業を行うケースが増加していますが、新法の施行により、発注事業者としての取引ルールが厳格化されました。従業員の副業先がフリーランスである場合、企業側がどのような管理や配慮を行うべきか、規程内でも間接的に関わる部分への理解が必要です。 - 労働時間管理の複雑化と「管理モデル」の推奨
副業における最大の課題である「労働時間の通算」について、厚生労働省は簡便な管理手法である「管理モデル」の導入を推奨しています。2025年は、この新しい管理手法を自社の副業・兼業規程にどう落とし込むかが、実務上の大きな焦点となっています。 - 人材獲得競争の激化とエンゲージメント
優秀な人材ほど、自身のスキルを活かせる副業を希望する傾向にあります。柔軟で透明性のある副業・兼業規程を持つことは、採用ブランディングにおいても強力な武器となり、既存社員の離職防止にも寄与します。
【タイプ別】副業・兼業規程の主要な選択肢とその特徴
自社に適した副業・兼業規程を作成するためには、まずどのような制度設計が可能かを知る必要があります。大きく分けて以下の3つのタイプが存在し、それぞれ管理の厳格さや従業員の自由度が異なります。
1. 許可制(事前許可必須タイプ)
従来型の多くの企業で採用されている形式です。従業員が副業を希望する場合、事前に会社へ詳細な申請を行い、会社の許可を得て初めて副業が可能になります。副業・兼業規程において「会社の許可なく他社の業務に従事しないこと」と明記し、企業側が強い管理権限を持つのが特徴です。
2. 届出制(一定基準クリアで容認タイプ)
現在の主流となりつつある形式です。就業規則で定めた「禁止事由(競業、長時間労働など)」に該当しない限り、届出を行えば原則として副業を認めます。副業・兼業規程では、許可という言葉を使わず「会社へ届け出るものとする」と規定し、従業員の自律的なキャリア形成を支援する姿勢を示します。
3. 自由型(一部届出・報告のみタイプ)
労働時間管理の対象とならない「個人事業主としての副業」や「少額の副業」について、細かい届出を求めない、あるいは事後報告のみとする形式です。成果主義が浸透している企業や、フルリモート主体の組織で見られます。ただし、副業・兼業規程で最低限の秘密保持義務などは課す必要があります。
各選択肢(規程タイプ)のメリット・デメリットを徹底比較
前述の3つのタイプには、それぞれ明確なメリットとデメリットがあります。自社の企業風土や管理リソースに合わせて、最適な副業・兼業規程のスタイルを選択してください。
許可制のメリット・デメリット
- メリット:企業が副業内容を事前に審査できるため、競業避止や情報漏洩のリスクを最小限に抑えられます。また、長時間労働が懸念される場合に、事前にストップをかけやすいという利点があります。
- デメリット:「原則容認」という厚生労働省のガイドラインの趣旨と対立しやすく、不許可とした場合にトラブルになる可能性があります。また、いちいち審査を行う人事担当者の負担が大きく、従業員からは「会社に管理されている」という反発を招きやすいでしょう。
届出制のメリット・デメリット
- メリット:副業・兼業規程として最もバランスが取れています。従業員の自主性を尊重しつつ、会社が副業の事実を把握できるため、労働時間の通算管理や健康確保措置を適切に行えます。法的なトレンドにも合致しており、採用面でのアピールにもなります。
- デメリット:届出内容に虚偽があった場合や、届出後に副業の内容が変更された場合の把握が難しい点です。また、届出を受理した時点で会社が副業を認認したことになり、労働時間管理の責任(割増賃金など)が確定的に発生するため、運用ルールの整備が不可欠です。
自由型のメリット・デメリット
- メリット:管理コストが最も低く、従業員の自律性を最大限に引き出せます。イノベーション創出やスキルアップを目的とした副業推進には最適です。
- デメリット:実態把握が困難なため、知らぬ間に従業員が過重労働に陥ったり、競合他社へノウハウが流出したりするリスクが高まります。副業・兼業規程で免責事項を定めても、安全配慮義務を完全に免れることは難しいため、ハイリスクな選択肢と言えます。
2025年版 副業・兼業規程に盛り込むべき必須項目
トラブルを防ぐためには、副業・兼業規程に具体的なルールを明記しておく必要があります。2025年の最新実務において、欠かすことのできない必須項目を解説します。
1. 労働時間の通算管理と上限設定
労働基準法上、他社に雇用される形での副業は、労働時間を通算して管理する義務があります。副業・兼業規程には、「所定労働時間と副業先での労働時間を通算して週〇時間以内とする」といった具体的な上限ルールや、「管理モデル」を導入する場合はその運用方法を明記します。また、副業先での労働時間が変更になった場合の報告義務も定めておくことが重要です。
2. 秘密保持義務の徹底
本業で知り得た機密情報や顧客情報を、副業先で利用されることは企業にとって致命的です。一般的な就業規則の秘密保持条項に加え、副業・兼業規程独自の条項として、「副業先での業務において、当社の名称、顧客リスト、ノウハウを使用してはならない」といった具体的な禁止事項を盛り込みます。
3. 競業避止義務の明確化
同業他社での副業や、自社と競合するビジネスを個人で立ち上げることは、会社の利益を損なう可能性があります。しかし、職業選択の自由があるため、無限定な禁止は無効となる恐れがあります。副業・兼業規程では、「当社の主要事業と競合する業務」や「当社の顧客に対する営業行為」など、禁止される範囲を具体的かつ合理的に定義することが求められます。
4. 誠実義務と職務専念義務
副業による疲れで本業のパフォーマンスが著しく低下することは避けなければなりません。副業・兼業規程には、「副業・兼業を行うことによって、当社の業務遂行に支障をきたさないこと」を条件として明記します。また、会社の施設、PC、備品などを許可なく副業に使用することを禁止する規定も忘れずに入れましょう。
5. 健康管理と安全配慮
企業には従業員の健康を守る安全配慮義務があります。副業・兼業規程において、長時間労働による健康被害を防ぐため、「直近の健康診断結果に問題がないこと」や「長時間労働が続く場合は副業の停止を命じることができる」といった、企業の介入権限を確保しておくことが重要ですです。
6. 誓約書の提出義務
規程そのものだけでなく、運用フローとしての「誓約書」も重要です。副業・兼業規程の中に、副業開始時には会社所定の誓約書を提出することを義務付け、本人がルールを理解し遵守することを約束させる手続きを組み込みましょう。
規程作成時に企業が直面しやすい法的リスクと回避策
副業・兼業規程を作成・運用する過程では、いくつかの法的な落とし穴が存在します。これらを事前に把握し、適切な回避策を講じることが重要です。
a) 割増賃金の支払い義務(労働時間通算リスク)
何が変わったのか: 複数の会社で雇用される場合、労働時間は通算され、法定労働時間を超えた分については、原則として「後から契約した会社」に割増賃金の支払い義務が生じます。
企業への影響: 副業を許可・届出受理した時点で、自社での残業がなくても、副業先での労働と合わせて割増賃金を支払う必要が出てくる可能性があります。これは予期せぬ人件費増につながります。
実務での注意点: このリスクを回避するには、副業・兼業規程において、労働時間の自己申告を徹底させるとともに、「管理モデル(本業・副業それぞれの労働時間上限を設定し、その範囲内であれば通算計算を簡略化する手法)」の導入を検討すべきです。
b) 情報漏洩と不正競争防止法
何が変わったのか: デジタル化により、データの持ち出しが容易になっています。副業先での意図しない情報漏洩も増えており、企業のリスク管理意識が高まっています。
企業への影響: 従業員が悪気なく自社の資料を副業で使い回したり、副業先が競合他社であった場合にノウハウが流出したりする恐れがあります。
実務での注意点: 副業・兼業規程に秘密保持を定めるだけでなく、具体的に「データの持ち出し禁止」や「私用デバイスの業務利用制限」とセットで運用することが必要です。また、誓約書に違反時の損害賠償条項を設けることも抑止力になります。
c) 労災認定の複雑化
何が変わったのか: 2020年の法改正により、複数就業者の労災給付は、全ての就業先の賃金額を合算して算定されるようになりました。
企業への影響: 従業員にとっては安心材料ですが、企業側としては、どちらの業務に起因する事故(あるいは過労)なのかの切り分けが難しくなるケースがあります。通勤災害(本業から副業先への移動中など)の扱いも複雑です。
実務での注意点: 副業・兼業規程や運用ガイドラインで、副業先への移動ルートや移動手段についても届出事項に含め、通勤災害のリスクを把握できる体制を整えておくことが望ましいでしょう。
効果的な規程運用と従業員への周知徹底のポイント
どれほど完璧な副業・兼業規程を作成しても、現場で正しく運用されなければ意味がありません。形骸化を防ぎ、実効性を持たせるためのポイントを解説します。
- 申請・届出フローの電子化と簡略化
紙の申請書でのやり取りは、更新漏れや紛失のリスクがあります。また、従業員にとっても心理的なハードルとなります。勤怠管理システムやワークフローシステムを活用し、Web上で簡単に届出・更新ができる仕組みを整えましょう。これにより、定期的な情報のアップデートも容易になります。 - 定期的な状況確認(モニタリング)
副業の状況は変化します。当初は週5時間だった副業が、いつの間にか週20時間に増えていることも珍しくありません。副業・兼業規程に基づき、半年に1回などの頻度で、副業の内容や労働時間に変更がないかを確認する「再届出」のプロセスを設けることを推奨します。 - 管理職(マネージャー)への教育
現場の管理職が「副業なんてけしからん」という古い価値観を持っていると、制度は機能しません。逆に、部下の健康管理を怠って放置することも問題です。管理職向けに副業・兼業規程の趣旨や、労務管理上の注意点(特に労働時間管理と健康観察)を研修し、適切なマネジメントができるように支援しましょう。 - 禁止事例の具体化と共有
「会社の信用を毀損する場合」といっても、従業員には伝わりにくいものです。「自社の名刺を使って副業活動をすること」「反社会的勢力と関わりのある企業で働くこと」「SNSで自社の内部事情を発信すること」など、NGとなる具体的なケースをQ&A形式などで共有すると、従業員の理解が深まります。
自社に最適な副業・兼業規程を選ぶためのチェックリスト
最後に、自社がどのタイプの副業・兼業規程を採用し、どのような項目を盛り込むべきかを判断するためのチェックリストを提示します。
- 労働時間管理の体制は十分か?
- 勤怠管理システムは副業時間の入力に対応できるか?
- 管理部門は、通算労働時間の計算リソースを確保できるか?
→「いいえ」が多い場合:厳格な許可制か、時間管理不要な業務委託に限定することを検討。
- 機密情報の重要度は高いか?
- 独自技術や顧客リストが事業の核となっているか?
- 競合他社への人材流出が経営リスクに直結するか?
→「はい」の場合:競業避止義務と秘密保持義務を詳細に定めた届出制または許可制を選択。
- 企業文化と導入目的は?
- 自律的な働き方を推奨し、イノベーションを期待したい。
- 人手不足解消のため、柔軟な働き方で採用を強化したい。
→「はい」の場合:届出制を基本とし、運用ルールでリスクヘッジを図るのが最適。
- 従業員の健康リスクへの懸念は?
- 既に本業での残業が多い部署がある。
- メンタルヘルス不調者が発生している。
→「はい」の場合:副業時間の上限設定や、健康診断結果に基づく許可取り消し条項を必須とする。
関連する詳しい情報はこちらのブログ一覧もご参照ください。
まとめ
2025年における副業・兼業規程の作成は、単なる法令対応を超えて、企業の「働き方」に対する姿勢を示す重要なメッセージとなります。従来の「禁止」から「適正な管理を伴う容認」へとシフトすることで、法的リスクを回避しつつ、従業員のエンゲージメントを高めることが可能です。
重要なのは、自社の実情(労働時間管理の体制、機密情報のレベルなど)に合わせた制度設計を行うことです。許可制、届出制、自由型といった選択肢のメリット・デメリットを比較し、労働時間通算や競業避止といった必須項目を漏れなく盛り込んでください。そして、一度作って終わりではなく、運用状況を見ながら定期的に見直しを行うことが、トラブルのない副業・兼業規程運用の鍵となります。
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