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カスタマーハラスメント対策の2025年最新動向|企業が講じるべき法的措置と実務ポイント
この記事では、カスタマーハラスメント対策の最新動向と企業が講じるべき具体的な実務手順を解説します。

近年、顧客による理不尽な要求や著しい迷惑行為、いわゆる「カスタマーハラスメント(カスハラ)」が社会問題化しています。2025年4月には東京都で全国初となる防止条例が施行されるなど、企業に対するカスタマーハラスメント対策の強化は待ったなしの状況です。対策の不備は、従業員の離職や企業イメージの低下だけでなく、安全配慮義務違反による損害賠償リスクにも直結します。
本記事では、最新の法改正情報から、現場で使える具体的な対応フロー、証拠収集の技術、そして法的措置の進め方まで、実務担当者が今すぐ使える情報を網羅的に整理しました。
カスタマーハラスメント対策の2025年最新動向と法改正のポイント
2025年は、日本のカスタマーハラスメント対策における大きな転換点となります。これまでの「企業の自主的な取り組み」から、「法的根拠に基づく義務」へとフェーズが移行しています。
特に注目すべきは、東京都の条例施行と国レベルでの法制化に向けた動きです。
- 東京都「カスタマー・ハラスメント防止条例」(2025年4月施行)
- 全国初の条例化: 東京都が全国に先駆けて施行。都内で事業を行うすべての企業が対象となります。
- 企業の責務: カスハラを「禁止行為」と明記し、従業員の安全確保体制の整備を求めています。
- ガイドラインの策定: 具体的な該当行為や対策手順を示した指針が公表され、実務の基準となります。
- 国(厚生労働省)の動向
- 法改正の検討: 労働施策総合推進法の改正議論が進み、パワハラ同様に防止措置の義務化が現実味を帯びています。
- 対策マニュアルの改訂: 厚生労働省のマニュアルも、より実践的な内容へと随時アップデートされています。
- 社会的な意識の変化
- 「お客様は神様」という過剰なサービス精神が見直され、対等な取引関係が重視されるようになっています。
- 鉄道、流通、介護など、業界団体ごとに統一したカスタマーハラスメント対策基準(定義や対応ポリシー)を発表する動きが加速しています。
これらの動向は、東京都以外の企業にとっても無関係ではありません。東京の基準が事実上の「標準(スタンダード)」となり、対応が遅れている企業は社会的な信用を失うリスクが高まっています。
企業に求められる実効性のある予防策:具体的な導入ステップ
カスタマーハラスメント対策を実効性のあるものにするためには、場当たり的な対応ではなく、組織的な仕組みづくりが不可欠です。以下に、企業が踏むべき具体的な導入ステップを解説します。
1. トップによる基本方針の策定と宣言
まずは経営トップが「カスハラを許さない」という断固たる姿勢を示すことがスタートです。
- 企業としての「カスタマーハラスメントに対する基本方針」を明文化する。
- 社内報やイントラネット、全体会議などで全従業員に周知する。
- Webサイトや店舗の掲示を通じて、顧客に対しても方針(ポリシー)を公表する。
2. 実態把握とリスクの洗い出し
現場で何が起きているかを知らなければ、適切な対策は打てません。
- 全従業員を対象としたアンケート調査を実施する。
- 過去のクレーム記録や日報から、カスハラに該当しうる事案を抽出する。
- 部署ごとのリスク(対面、電話、訪問など)を分類・整理する。
3. 対策マニュアルの作成・改訂
厚生労働省や各業界団体のマニュアルを参考に、自社の業務に即した具体的な手順書を作成します。
- 定義と判断基準: どのような行為をカスハラとするか(暴言、長時間拘束、セクハラなど)。
- 対応フロー: 現場対応、上長へのエスカレーション、専門部署への引き継ぎ手順。
- 禁止事項: 従業員がしてはいけないこと(個人の連絡先交換、独断での金銭解決など)。
4. 相談体制の整備
被害を受けた従業員が安心して相談できる窓口を設置します。
- 社内窓口(人事・総務など)と社外窓口(弁護士・外部EAPなど)の設置。
- 相談者のプライバシー保護と不利益取り扱いの禁止を徹底する。
ハラスメント発生時の初動対応と適切な証拠収集・記録方法
カスタマーハラスメント対策において、現場での初動対応は事態の収拾と後の法的措置を左右する極めて重要なフェーズです。
現場担当者が守るべき「3つのNO」
- 一人で抱え込まない: 必ず複数名で対応し、目撃者を確保する。
- その場で判断・約束しない: 即答を避け、「持ち帰って検討します」と伝える。
- 感情的に反応しない: 冷静さを保ち、相手のペースに巻き込まれない。
有効な証拠収集と記録の技術
カスハラを立証するためには、客観的な証拠が不可欠です。
- 録音・録画の活用
- 「通話品質向上のため録音しております」等のアナウンスを入れることが望ましいですが、身の危険を感じる緊急時などは秘密録音が正当防衛として認められるケースもあります。
- 防犯カメラの映像は保存期間が過ぎる前に確保します。
- 詳細な記録(5W1H)
- 記憶が鮮明なうちに、以下の要素を含む報告書を作成します。
- When(いつ): 日時、対応時間。
- Where(どこで): 場所、周囲の状況。
- Who(誰が): 相手の特徴、氏名、対応した従業員、目撃者。
- What(何を): 相手の具体的な発言(暴言の内容を一字一句正確に)、要求内容。
- How(どのように): 態度(大声、机を叩く、詰め寄るなど)。
- Why(なぜ): トラブルの発端、相手の主張する理由。
- 記憶が鮮明なうちに、以下の要素を含む報告書を作成します。
法的措置の選択肢:相談から法的手段までのフロー
悪質な事案に対しては、躊躇なく法的措置を講じることが、従業員を守る最強のカスタマーハラスメント対策となります。
法的措置への移行フロー
- 警告(イエローカード)
- 現場責任者または法務担当者から、「これ以上の行為は業務妨害にあたる可能性がある」旨を警告します。
- 内容証明郵便等で、文書による警告を行う場合もあります。
- 警察・弁護士への相談
- 社内で解決困難と判断した場合、早急に専門家へ相談します。
- 警察には被害届の提出やパトロール強化を依頼します。
- 取引停止・出入り禁止(レッドカード)
- 警告を無視して行為が継続する場合、サービスの提供拒否や来店拒否を通告します。
- 民事・刑事での法的措置
- 刑事: 威力業務妨害罪、強要罪、脅迫罪、不退去罪などで告訴。
- 民事: 業務妨害による損害賠償請求、従業員への慰謝料請求、差止請求。
主な適用法律と罰則の目安
- 威力業務妨害罪: 3年以下の懲役または50万円以下の罰金。
- 強要罪: 3年以下の懲役(土下座の強要など)。
- 脅迫罪: 2年以下の懲役または30万円以下の罰金。
- 不退去罪: 3年以下の懲役または10万円以下の罰金。
従業員の安全とメンタルヘルスを守る教育とサポート体制
カスタマーハラスメント対策は「顧客対応」だけでなく、「従業員ケア」の両輪で進める必要があります。
実践的な教育・研修プログラム
マニュアルを配るだけでは現場の対応力は上がりません。
- ロールプレイング研修: 実際のカスハラ事例(暴言、居座りなど)を想定した模擬演習。
- アンガーマネジメント: 相手の怒りを鎮める会話術と、自身のストレスコントロール。
- 法的知識の習得: 「どこからが犯罪か」を知ることで、従業員の不安を軽減する。
メンタルヘルスサポートの充実
被害に遭った従業員は、恐怖や自己否定感により深刻なトラウマを抱えることがあります。
- 産業医・カウンセラーとの連携: 早期のケア面談を実施する。
- 配置転換: 必要に応じて、当該顧客と接触しない部署への異動を検討する。
- 休職・労災申請の支援: カスハラが原因の精神疾患は労災認定の対象となります。会社として申請を積極的にサポートする姿勢が重要です。
他社事例に学ぶ!効果的なカスタマーハラスメント対策の落とし穴と成功要因
多くの企業がカスタマーハラスメント対策に取り組んでいますが、成功する企業と失敗する企業には明確な違いがあります。
よくある落とし穴(失敗パターン)
- 「現場任せ」の放置: 「うまくやっておいて」と現場に丸投げし、上層部が責任を取らない。
- 結果: 従業員の不信感が募り、離職が急増する。
- 過剰な謝罪と特別対応: トラブルを避けるために、不当な要求に応じて金品や特別サービスを提供してしまう。
- 結果: 「ゴネれば得をする」と学習され、要求がエスカレートする。
- 対策基準の曖昧さ: 「常識の範囲内で」といった抽象的な指示しかなく、現場が判断に迷う。
- 結果: 対応にばらつきが生じ、新たなクレームを誘発する。
成功企業の共通点
- 経営トップのコミットメント: 社長自らが「従業員を守る」と宣言し、悪質な顧客には組織として対峙している。
- 情報の共有とアップデート: 発生した事例をすぐに全社で共有し、マニュアルを随時更新している。
- 毅然とした「No」: 不当な要求には一切応じない姿勢を貫き、警察連携も辞さない構えを見せている。
専門家が解説するカスタマーハラスメント対策の最重要ポイント
最後に、社会保険労務士の視点から、今後のカスタマーハラスメント対策において特に押さえておくべきポイントを整理します。
- 「安全配慮義務」の履行
企業には従業員が安全に働ける環境を整える法的義務があります。カスハラを放置して従業員がメンタルヘルス不調に陥った場合、企業は損害賠償責任を問われる可能性があります。「お客様だから」という言い訳は通用しません。 - 証拠の質が勝負を決める
いざ法的措置や毅然とした対応を取る際、最も強い武器になるのは「記録」です。感情論ではなく事実ベースで対抗できるよう、日頃から記録文化を根付かせることが重要です。 - 外部専門家との連携ネットワーク
カスハラ対応は、法律、労務、メンタルヘルスなど多岐にわたる専門知識を要します。自社だけで抱え込まず、弁護士、警察、社労士などの外部リソースと平時から連携体制を作っておくことが、迅速な解決への近道です。
関連する詳しい情報は外部リンク: オフィス・ナベのブログ一覧もご参照ください。
まとめ
2025年は、東京都の条例施行をはじめ、カスタマーハラスメント対策が「マナー」から「ルール」へと変わる重要な年です。企業は、従業員を守り、持続可能な事業運営を行うために、方針の策定から現場の運用フロー整備まで、具体的かつスピード感を持って対策を進める必要があります。
適切な対策は、従業員の安心感を醸成し、結果として顧客サービスの質を向上させることにもつながります。本記事で紹介したステップを参考に、自社の体制を今一度見直してみてください。
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