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フリーランス新法で企業は何をすべき?2025年施行に向けた対応策と契約見直し術

2026.01.18 スタッフブログ

2024年11月に施行された「フリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)」は、フリーランスと取引を行うすべての企業にとって、業務フローや契約内容の抜本的な見直しを迫る重要な法律です。施行から時間が経過し、2025年現在、実務現場では対応の不備によるトラブルや、行政からの指導事例も報告され始めています。

フリーランス新法で企業は何をすべき?2025年施行に向けた対応策と契約見直し術

「具体的に契約書のどこを変えればいいのか」「現場の担当者は何を注意すべきか」と頭を悩ませている法務・人事担当者も多いのではないでしょうか。本記事では、フリーランス新法の基本概要から、企業が今すぐ取り組むべき具体的な対応ステップ、契約書の見直しポイントまでを網羅的に解説します。実務で使えるチェックリストも掲載していますので、ぜひ社内体制の整備にお役立てください。

フリーランス新法とは?企業が知るべき基本概要

フリーランス新法は、個人で働くフリーランス(特定受託事業者)が安心して働ける環境を整備するため、発注事業者に対して「取引の適正化」と「就業環境の整備」を義務付ける法律です。

企業(発注事業者)がまず理解すべきは、この法律が従業員を使用しない個人事業主(フリーランス)への業務委託すべてに適用されるという点です。下請法の対象外だった取引(資本金基準なし、役務提供委託も対象)もカバーされるため、多くの企業が影響を受けます。

法律の骨子は、主に以下の2つの柱で構成されています。

  • 取引の適正化: 発注時の取引条件の明示、報酬支払期日の設定(60日以内)、禁止行為(受領拒否や減額など)の規定。
  • 就業環境の整備: 募集情報の的確な表示、育児・介護等への配慮、ハラスメント対策の体制整備、中途解除の事前予告。

特に注意が必要なのは、発注側が「従業員を使用する事業者(特定業務委託事業者)」である場合、より重い義務が課される点です。

2025年施行に向けた企業がすべき具体的な対応ステップ

フリーランス新法に対応するためには、単に契約書の雛形を変えるだけでなく、発注から支払いに至るまでの業務プロセス全体を見直す必要があります。ここでは、企業が踏むべき具体的なステップを解説します。

  • Step1: 社内のフリーランス取引の実態を把握する
  • Step2: 発注書・契約書の雛形を改定する
  • Step3: 支払サイトと経理フローを確認・修正する
  • Step4: 就業環境整備(ハラスメント対策・相談窓口)を行う
  • Step5: 現場担当者への周知と運用ルールの徹底

Step1: 社内のフリーランス取引の実態を把握する

まず、自社が「誰と」「どのような契約で」取引しているかを洗い出します。取引先が法人であっても、代表者1名で従業員がいない場合は法の対象となります。各部署でバラバラに行われている発注状況を集約し、対象となるフリーランス(特定受託事業者)をリストアップしましょう。

Step2: 発注書・契約書の雛形を改定する

新法では、業務委託をした際、「直ちに」取引条件を書面または電磁的方法(メール等)で明示することが義務付けられています(第3条)。従来の契約書や発注書に、必須記載項目(後述)が網羅されているか確認し、不足があれば雛形を改定します。特に「基本契約書」だけでなく、都度の「発注書(個別契約書)」の整備が重要です。

Step3: 支払サイトと経理フローを確認・修正する

報酬の支払期日は、「検査の有無にかかわらず、成果物受領日(役務提供完了日)から60日以内」かつ「できる限り短い期間」に設定しなければなりません。「月末締め翌々月末払い(最大90日サイト)」などの従来の支払条件は違法となる可能性があります。経理部門と連携し、支払サイトを「60日以内」に収めるようシステム設定を変更する必要があります。

Step4: 就業環境整備(ハラスメント対策・相談窓口)を行う

発注事業者は、フリーランスに対するハラスメント(セクハラ、パワハラ、マタハラ)を行ってはならず、相談体制を整備する義務があります。社内の従業員向け相談窓口をフリーランスも利用できるように開放し、その旨を周知する等の対応を行いましょう。また、6ヶ月以上の継続契約がある場合、育児や介護との両立に対する配慮も求められます。

Step5: 現場担当者への周知と運用ルールの徹底

どんなに契約書を整えても、現場担当者が口頭やチャットツールで安易に追加発注し、条件を明示しないまま業務を進めれば法違反となります。「発注前に必ず条件を明示する」「仕様変更時は記録を残す」といった運用ルールを策定し、発注担当者への研修を徹底してください。

フリーランスとの契約書見直し:新法で変わる必須項目と注意点

フリーランス新法対応の要となるのが、契約書(または発注書・メール)による取引条件の明示です。第3条に基づく明示義務項目は以下の通りです。これらが漏れなく記載されているか確認してください。

  • 委託する業務の内容: 具体的かつ明確に記載する(「一式」などの曖昧な表現は避ける)。
  • 報酬の額: 金額、または算定方法を明記する。
  • 支払期日: 「受領日から60日以内」の日付を設定する。
  • 発注事業者・フリーランスの名称: 事業者名、氏名など。
  • 業務委託をした日: 契約締結日、発注日。
  • 給付を受領する日(または役務提供を受ける日): 納期。
  • 給付を受領する場所: 納品場所。
  • (検査を行う場合)検査完了日: 検査を行う場合は必須。
  • (現金以外で支払う場合)手形等の詳細: サイト短縮等の要件あり。

契約実務の注意点
取引条件の明示は、書面(紙)が原則ですが、フリーランスの承諾があれば電子メールやSNS、クラウドソーシング上のメッセージ機能などの「電磁的方法」でも可能です。ただし、その場合でも上記項目が閲覧・保存できる状態で明示される必要があります。トラブル防止のため、メール本文に列挙するか、PDFファイルを添付する形式が推奨されます。

社内体制の整備と運用のポイント

契約書の整備と並行して、継続的に法令を遵守するための社内体制が必要です。

発注プロセスのシステム化
各担当者が個別に発注を行う体制はリスクが高いため、購買管理システムなどを導入し、発注内容(金額、納期、業務内容)を入力しなければ発注書が発行できない仕組みにすると安全です。これにより、「明示義務違反」や「支払遅延」をシステム的に防ぐことができます。

相談窓口の明確化と周知
ハラスメント相談窓口については、イントラネットでの掲示だけでなく、契約時や発注時にフリーランスへ案内文書を渡すなどして、実際に利用できる状態にしておくことが重要です。また、育児・介護等の申し出があった場合の対応フロー(誰が判断し、どう回答するか)も決めておきましょう。

フリーランス新法対応で避けるべき「つまずきポイント」

新法対応において、多くの企業が見落としがちなポイントや、トラブルになりやすい事例を紹介します。

  • 「口頭発注」の放置: 急いでいる案件で「まずは着手して」と電話で依頼し、後から条件を決めるケースは典型的な違反です。必ず着手前に条件を明示してください。
  • 一方的な仕様変更と「やり直し」: 発注後に「やっぱりここも変えて」と当初の契約に含まれない修正を無償で強要することは、禁止行為(不当な給付内容の変更・やり直し)に該当します。仕様変更の際は、追加報酬や納期の変更を協議し、記録に残す必要があります。
  • 消費税の扱いの曖昧さ: 報酬額に消費税が含まれているのか、別なのかを明記しないとトラブルの元になります。新法では消費税の扱いも含めて明確にすることが求められます。
  • 契約更新時の予告忘れ: 6ヶ月以上継続して取引しているフリーランスとの契約を終了(または更新しない)場合、契約満了の30日前までに予告する義務があります。直前での「今回で終わり」は違法です。

対応漏れなし!企業向けフリーランス新法チェックリスト

最後に、自社の対応状況を確認できるチェックリストを掲載します。すべての項目にチェックが入るよう、準備を進めてください。

  • 対象者の把握
    • 取引先の中に、従業員を使用しない個人事業主・法人が含まれているか確認したか?
    • 継続的取引(1ヶ月以上、6ヶ月以上)があるフリーランスを特定しているか?
  • 取引条件の明示(第3条)
    • 業務委託の際、直ちに書面または電磁的方法で条件を明示しているか?
    • 明示項目(業務内容、報酬額、支払期日、納期、場所等)に漏れはないか?
    • 電磁的方法の場合、相手方の承諾を得ているか?
  • 報酬の支払い(第4条)
    • 支払期日は、成果物受領日から60日以内に設定されているか?
    • 手形払いの場合、割引困難でない手形(サイト60日以内等)を使用しているか?
  • 禁止行為の遵守(1ヶ月以上の継続取引の場合)
    • 受領拒否、報酬減額、返品を行っていないか?
    • 買いたたき(著しく低い報酬設定)をしていないか?
    • 正当な理由なく、指定した物の購入やサービスの利用を強制していないか?
  • 就業環境の整備
    • 募集情報の内容は正確か(虚偽表示をしていないか)?
    • 育児・介護等との両立への配慮申し出に対応する体制はあるか?
    • ハラスメント相談窓口を設置し、フリーランスに周知しているか?
    • (6ヶ月以上の継続取引の場合)契約終了の30日前予告ルールを運用しているか?

関連する詳しい情報はこちらのブログ一覧もご参照ください。

まとめ

フリーランス新法は、企業に対して従来の商慣習を見直し、より透明で公正な取引を求めるものです。2025年以降、コンプライアンス遵守は企業のリスク管理だけでなく、優秀なフリーランスを確保するための重要な要素となります。

対応すべき項目は多岐にわたりますが、まずは「取引条件の書面明示」と「60日以内の支払い」という基本を徹底することから始めましょう。本記事で紹介したチェックリストを活用し、社内体制を万全に整えてください。

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