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「テレワーク」就業規則と労務管理、落とし穴を回避する会社必読の7つの注意点
働き方改革やパンデミックを機に急速に普及したテレワークですが、急ごしらえの制度運用によって、予期せぬ労務トラブルや法的なリスクに直面する企業が増えています。「在宅勤務を認める」という通知だけで運用を開始していませんか?

この記事では、テレワークにおける就業規則の改定、労働時間管理、評価制度、そして見落としがちなセキュリティ対策まで、企業が陥りやすい「落とし穴」を回避するための具体的な注意点を解説します。人事労務担当者や経営者の方が、安心して制度を運用するための実践的なガイドとしてご活用ください。
全体の流れ
本記事では、テレワーク導入・運用におけるリスク管理と制度設計のポイントを以下の流れで解説します。
- 就業規則の適切な改定方法と必須項目
- 「隠れ残業」や「中抜け」を防ぐ労働時間管理
- 実際に起きた労務トラブル事例と回避策
- 納得感を醸成する評価制度とモチベーション管理
- 総務省ガイドラインに基づくセキュリティ対策
- 制度を形骸化させない運用サイクルの回し方
テレワーク就業規則の作り方と改定時の注意点
テレワークを恒久的な制度として運用する場合、既存の就業規則をそのまま適用すると実態と乖離し、トラブルの原因となります。特に「労働場所」や「労働時間」の定義変更は必須です。
既存規則の変更か、別規定の作成か
多くの企業では、既存の就業規則の中にテレワークに関する条項を追加するのではなく、「テレワーク勤務規程」として別規定を作成する方法が推奨されています。これは、対象者や適用条件、費用負担などの細かいルールを一元管理しやすく、法改正や運用変更に伴う改定もスムーズに行えるためです。
厚生労働省の「テレワークモデル就業規則」などを参考に、自社の実態に合わせた規定を作成しましょう。
規定に盛り込むべき必須項目
就業規則(または別規定)には、以下の項目を明確に定める必要があります。
- 対象者の範囲と申請承認フロー: 誰でも利用できるのか、勤続年数や業務内容による制限はあるのか。
- 労働時間と休憩の取り扱い: 始業・終業の報告方法、休憩時間の自由度など。
- 費用負担: 通信費、光熱費、郵送費などは会社負担か自己負担か。
- 服務規律: 在宅勤務中の業務専念義務や情報セキュリティ遵守事項。
特に「費用負担」に関するトラブルは頻発しています。「通信費は月額〇〇円を一律支給する」といった具体的な取り決めがないと、後々従業員から請求されるリスクがあります。
テレワークにおける労働時間管理:見落としがちなポイントと対策
管理者の目が届かないテレワーク環境下では、労働時間の把握が最も難しい課題の一つです。不適切な管理は、長時間労働による健康被害や未払い残業代請求に直結します。
「中抜け」時間の明確なルール化
在宅勤務では、育児や介護、通院などで業務を一時中断する「中抜け」が発生しやすくなります。この時間をどう扱うかは、事前にルール化しておく必要があります。
- 休憩時間として扱う: 始業・終業時刻をその分後ろ倒しにする。
- 時間単位年休として扱う: 給与を減額せず、有給休暇を消化する。
- フレックスタイム制を活用する: コアタイム以外の時間で柔軟に調整させる。
これらを曖昧にしたまま運用すると、業務を行っていない時間に対しても給与が発生したり、逆に労働時間としてカウントされるべき時間が除外されたりする恐れがあります。
「事業場外みなし労働時間制」適用の落とし穴
「テレワークだから労働時間の算定は難しい」として、安易に「事業場外みなし労働時間制」を適用するのは危険です。最高裁の判例や厚生労働省のガイドラインでは、適用要件が非常に厳格に解釈されています。
- 使用者の具体的な指揮監督が及んでいないこと
- 常時通信可能な状態(すぐに連絡が取れる状態)にないこと
チャットツールやメールで随時指示が出せる環境であれば、原則として通常の労働時間管理が必要です。安易な適用は、未払い残業代の温床となります。
テレワークで発生しがちな労務トラブル事例と法的リスク回避策
テレワーク特有の環境は、これまで想定していなかった労務トラブルを引き起こします。実際の事例を知り、予防策を講じましょう。
出社命令拒否と解雇リスク
「テレワークで業務は回るから」という理由で、会社からの出社命令を拒否する従業員とのトラブルが増えています。過去の裁判例では、業務命令としての出社指示には合理性があり、正当な理由なき拒否は懲戒処分の対象になり得ると判断されるケースが多いです。
しかし、感染症リスクや育児・介護などの事情がある場合は配慮が必要です。就業規則には「業務の必要性に応じて出社を命じることができる」旨を明記し、拒否した場合の取り扱いも定めておく必要があります。
「隠れ残業」とメンタルヘルス不調
PCのログオン・ログオフ時間と、自己申告の勤怠記録に大きな乖離があるケースです。「成果を出さなければ」というプレッシャーから、深夜や休日に隠れて業務を行う従業員がいます。
- PCログ取得ツールの導入: 客観的な記録と申告時間を突合する。
- メール・チャットの送信時間制限: 深夜休日の連絡をシステム的に制限する。
管理者は「見えないこと」を前提に、過度な成果を求めすぎないマネジメントへの転換も求められます。
テレワーク環境下の評価制度と従業員のモチベーション維持
姿が見えない分、どのように人事評価を行うかは大きな課題です。「成果主義」への移行が叫ばれますが、極端な成果偏重はモチベーション低下を招く恐れがあります。
プロセスが見えないことへの不安解消
オフィス勤務のように「頑張っている姿」が見えないため、従業員は「正当に評価されていないのではないか」という不安を抱きやすくなります。一方で、管理者も「サボっているのではないか」と疑心暗鬼になりがちです。
このギャップを埋めるには、以下の対策が有効です。
- 業務プロセスの可視化: タスク管理ツール等で進捗を共有する。
- 1on1ミーティングの定着: 定期的な対話で業務の障壁を取り除く。
- 目標設定の具体化: 「何を」「いつまでに」「どの程度」やるかを明確に合意する。
成果と行動の両面評価
完全な成果主義(ジョブ型)へ移行できない多くの日本企業では、テレワーク下でも「成果」と「プロセス(行動)」の両面評価を維持することが現実的です。ただし、プロセス評価の基準を「長時間働くこと」から「チームへの貢献」「自律的な業務遂行」「レスポンスの早さ」など、リモートでも確認できる行動指針にシフトさせる必要があります。
テレワーク導入後のセキュリティ対策と情報管理の落とし穴
テレワークにおける最大のリスクの一つが情報漏洩です。総務省の「テレワークセキュリティガイドライン」では、「ルール」「人」「技術」のバランスが重要とされています。
物理的セキュリティとネットワークリスク
ウイルス対策ソフトの導入はもちろんですが、盲点になりやすいのが物理的な環境とネットワークです。
- 公共Wi-Fiの利用禁止: カフェやホテルのフリーWi-Fiは盗聴リスクが高いため、会社支給のモバイルルーターやVPN接続を必須とする。
- 画面の覗き見対策: コワーキングスペースや新幹線での移動中など、第三者に画面を見られるリスクへの注意喚起(プライバシーフィルターの使用など)。
- BYOD(私物端末利用)の管理: 私物スマホやPCを業務利用させる場合、MDM(モバイルデバイス管理)ツールの導入やデータのローカル保存禁止を徹底する。
紛失・盗難時の初動対応
PCやUSBメモリの紛失は致命的な情報漏洩につながります。万が一の紛失時に備え、リモートワイプ(遠隔データ消去)機能の設定や、速やかな報告ルートの確立が必要です。「怒られるから」と報告が遅れるのが最悪のケースです。
テレワークを成功させるための継続的な運用と改善サイクル
テレワーク制度は一度作って終わりではありません。ハイブリッドワーク(出社とテレワークの併用)が定着する中で、運用ルールも進化させていく必要があります。
つまずきポイント
運用開始後に発生しやすい問題点として、以下が挙げられます。
- コミュニケーション不足による孤独感や帰属意識の低下。
- 特定の従業員(出社組)への業務負荷の偏り。
- ハンコや紙書類のためだけの「やむを得ず出社」。
チェックリストによる定期的な見直し
半年に一度程度は、以下の項目についてチェックを行い、制度を見直しましょう。
- 労働時間の記録は実態と合っているか?
- 通信費等の費用負担に関する不満は出ていないか?
- 評価制度に対する納得感はあるか?
- セキュリティ事故やヒヤリハット事例は共有されているか?
- 紙ベースの業務フローが電子化されているか?
まとめ
テレワークは、単なる福利厚生ではなく、企業の生産性を高め、優秀な人材を確保するための経営戦略です。しかし、就業規則の不備や曖昧な労働時間管理は、未払い残業代や不当解雇といった深刻な労務リスクを招きます。
成功の鍵は、「性善説に基づいた信頼」と「性悪説に基づいたリスク管理」のバランスにあります。まずは自社の就業規則と実態にズレがないかを確認し、小さな「落とし穴」を一つずつ埋めていくことから始めましょう。安全で快適なテレワーク環境の整備は、企業の持続的な成長に不可欠な投資です。
関連する詳しい情報は厚生労働省「テレワーク総合ポータルサイト」もご参照ください。
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