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人事労務の属人化解消へ!体制構築の7ステップと失敗しないための注意点とは?
導入
人事労務業務において、「この仕事は〇〇さんしか分からない」という状況に心当たりはありませんか? 給与計算や社会保険手続き、勤怠管理といった専門性の高い業務は、特定の担当者に依存する「属人化」が起こりやすい領域です。しかし、属人化を放置することは、担当者の急な休職や退職による業務停止、ブラックボックス化による不正リスク、さらには組織全体の生産性低下といった深刻な経営課題に直結します。

本記事では、人事労務の属人化を根本から解消し、持続可能な組織体制を構築するための「7つのステップ」を具体的に解説します。また、多くの企業が陥りがちな失敗パターンや、実務で役立つチェックリストもあわせて紹介します。業務フローの可視化からITツールの活用、多能工化まで、今日から実践できるノウハウを体系的に整理しましたので、ぜひ貴社の体制強化にお役立てください。
人事労務の属人化とは?現状把握とリスクの特定方法
人事労務における「属人化」とは、特定の業務の手順や進捗状況、判断基準などが担当者個人の記憶やスキルに依存し、その人が不在になると業務が滞ってしまう状態を指します。まずは自社の状況を客観的に把握し、潜んでいるリスクを特定することが解消への第一歩です。
属人化のリスクと弊害
属人化を放置することで、組織は以下のような多大なリスクを抱えることになります。
- 業務停止リスク: 担当者の病気、怪我、退職などにより、給与支払いや入退社手続きなどの重要業務がストップする。
- 品質のバラつきとミス: ダブルチェックの体制が組みにくく、担当者のコンディションやスキルによって成果物の精度が変動する。
- 不正の温床: 業務プロセスが不透明(ブラックボックス化)であるため、不正やコンプライアンス違反の発見が遅れる。
- 長時間労働の常態化: 特定の社員に負荷が集中し、有給休暇の取得が困難になるなど、労働環境が悪化する。
現状把握のためのチェックポイント
以下の項目に一つでも当てはまる場合、貴社の業務は属人化している可能性が高いと言えます。
- 担当者が休むと、問い合わせに答えられない業務がある。
- マニュアルが存在しない、または何年も更新されていない。
- 「これは〇〇さんの仕事だから」と、誰も関与しない領域がある。
- 業務の進捗状況が担当者の頭の中にしかなく、可視化されていない。
- 休暇中の担当者に業務連絡をせざるを得ない状況が頻発する。
業務フローの可視化と標準化:マニュアル作成の重要性
属人化解消の土台となるのが、業務フローの「可視化」と「標準化」です。誰が担当しても一定の品質を保てる仕組みを作ることで、業務の再現性を高めます。
1. 業務の棚卸しと可視化
まずは、人事労務部門で行われている全ての業務を洗い出します。「日次」「週次」「月次」「年次」といったサイクルごとにリストアップし、それぞれの業務について以下の項目を整理します。
- 担当者: 誰が行っているか
- 工数: どれくらいの時間がかかっているか
- 使用ツール: どのようなシステムや帳票を使っているか
- インプット/アウトプット: 何をもとに作成し、何を出力するか
2. 業務フローチャートの作成
洗い出した業務の流れをフローチャート(業務フロー図)に落とし込みます。関係者間のやり取りや承認プロセスを視覚化することで、無駄な工程や重複作業を発見しやすくなります。
3. 標準化とマニュアル作成
可視化されたフローに基づき、最も効率的でミスの少ない手順を「標準」として定めます。その上で、以下のポイントを押さえたマニュアルを作成します。
- 判断基準の明記: 「どう判断するか」という思考プロセスを言語化する。
- ビジュアルの活用: スクリーンショットや動画を多用し、直感的に理解できるようにする。
- 例外対応の記述: イレギュラーな事態が発生した際の対応手順も含める。
役割分担と責任範囲の明確化:適切な人員配置の原則
業務が見える化されたら、次は「誰が何を担うか」という役割分担を再設計します。特定の個人に依存しない体制を作るための原則を押さえましょう。
スキルマップ(スキルマトリックス)の活用
各メンバーが現在どの業務をどのレベルでこなせるかを一覧化した「スキルマップ」を作成します。
- レベル1: 指導を受けながらできる
- レベル2: 一人で完結できる
- レベル3: 他者に指導できる
といった具合に可視化することで、組織全体のスキルバランスや不足している領域が明確になります。
主担当・副担当制の導入
全ての重要業務において、「主担当(メイン)」と「副担当(サブ)」を配置する「2名体制」を原則とします。
- 主担当: 日常の実務遂行と進捗管理を担う。
- 副担当: 常に状況を把握し、主担当不在時に代行できるよう準備する。
これにより、突発的な欠員リスクを回避し、相互チェックによるミス防止も期待できます。
ナレッジ共有基盤の構築:情報連携をスムーズにするには
個人の頭の中にある知識(暗黙知)を組織の知識(形式知)へと変えるためには、情報をスムーズに連携・蓄積できる基盤が必要です。
情報共有ツールの活用
物理的なファイルサーバーだけでなく、検索性の高いデジタルツールを活用します。
- 社内Wiki/ナレッジベース: マニュアル、FAQ、過去のトラブル事例などを蓄積。
- ビジネスチャット: 日々の業務連絡やQ&Aをオープンな場で行い、経緯をログとして残す。
- クラウドストレージ: 最新のドキュメントにどこからでもアクセスできる環境を整備。
「情報を隠さない」文化の醸成
ツールを導入するだけでなく、積極的に情報を開示・共有する文化を作ることが重要です。「質問することは良いこと」「トラブル事例の共有は全員の学びになる」といった意識付けをリーダーが率先して行いましょう。
多能工化とOJTの推進:組織全体のスキルアップ戦略
特定の業務しかできない「単能工」から、複数の業務をこなせる「多能工(マルチスキル人材)」への転換を進めることで、組織の柔軟性は飛躍的に向上します。
ジョブローテーションの実施
定期的に担当業務を入れ替えるジョブローテーションを計画的に実施します。
- 異なる業務を経験することで、人事労務全体の繋がりが理解できる。
- 前任者のやり方の改善点が見つかるきっかけになる。
- 新たな視点が入ることで、業務の陳腐化を防げる。
効果的なOJT(On-the-Job Training)
多能工化を進めるための教育手法として、OJTは欠かせません。ただし、単なる「放置」にならないよう注意が必要です。
- Show(やってみせる): まず手本を見せる。
- Tell(説明する): 意味やポイントを解説する。
- Do(やらせてみる): 実際に担当させる。
- Check(評価・指導する): 結果を確認しフィードバックする。
作成したマニュアルを教科書として活用しながら進めることが成功の鍵です。
ITツールの導入・活用:業務効率化を加速させる選択肢
属人化の解消と同時に、業務効率化を強力に推進するのが「HR Tech」などのITツールです。人の手による作業を減らすことで、属人化のリスク自体を低減させます。
属人化解消に効くITツールの種類
- クラウド給与計算システム: 給与規定や税率変更が自動反映され、計算ロジックの属人化を防ぐ。
- 勤怠管理システム: 打刻漏れや残業超過のアラートを自動化し、管理の手間を削減。
- 労務手続きシステム: 入退社手続きや社会保険申請をWeb上で完結させ、ペーパーレス化と進捗可視化を実現。
- AIチャットボット: 従業員からのよくある質問に自動回答し、担当者の対応工数を削減。
デジタル化による「仕組み化」
システムを導入することで、業務プロセスそのものが「システムの仕様」として標準化されます。これにより、独自の(非効率な)やり方が入り込む余地をなくし、誰が操作しても同じ結果が得られる状態を作り出すことができます。
定着化と継続的な改善:PDCAサイクルで成果を最大化
体制構築は「一度やって終わり」ではありません。法改正や組織変更、ツールのアップデートに合わせて、継続的にメンテナンスを行う必要があります。
PDCAサイクルの回し方
- Plan(計画): 業務フローの設計、マニュアル作成、教育計画の立案。
- Do(実行): 新フローでの業務遂行、ツールの運用、OJT実施。
- Check(評価): ミスの発生状況、業務時間の変化、マニュアルの分かりにくさを検証。
- Action(改善): マニュアルの修正、ルールの見直し、追加研修の実施。
特に人事労務分野は毎年法改正があるため、定期的な「マニュアルの棚卸し日」を設定するなど、更新を忘れない仕組みを組み込むことが重要です。
【注意】人事労務の属人化解消で陥りやすい失敗と対策
属人化解消の取り組みは、進め方を誤ると現場の混乱や反発を招く恐れがあります。よくある失敗パターンと、それを回避するための対策を紹介します。
1. 現場への目的共有不足
失敗: 現場に「なぜやるのか」を説明せず、トップダウンでマニュアル作成を指示してしまう。
対策: 「担当者の負担を減らすため」「長期休暇を取りやすくするため」など、現場スタッフにとってのメリットを丁寧に伝え、協力を仰ぐことが不可欠です。
2. 一気に全てをやろうとする
失敗: 全ての業務を同時に標準化しようとして、通常業務が圧迫され、プロジェクトが頓挫する。
対策: 「リスクが高い業務」や「頻度が高い業務」から優先順位をつけ、スモールスタートで一つずつ着実に進めます。
3. ベテラン社員の心理的抵抗
失敗: 業務を可視化されることで「自分の存在意義が失われる」「仕事を奪われる」と感じたベテラン社員が非協力的になる。
対策: 属人化解消は「仕事を奪う」ことではなく、「より付加価値の高い業務(企画や制度設計など)にシフトしてもらうため」の前向きな施策であることを伝え、評価制度とも連動させてモチベーションを維持します。
4. ツール導入が目的化する
失敗: 高機能なツールを導入したが、現場の運用フローに合わず、結局使われない。
対策: ツールありきではなく、まずは現状の業務フローを整理し、「どの課題を解決するためにツールが必要か」を明確にしてから選定します。
成功事例に学ぶ!属人化を防ぐための実践的チェックリスト
最後に、属人化を防ぐ体制が整っているかを確認するための実践的なチェックリストを提示します。定期的に見直し、組織の健康状態をチェックしてください。
- 業務一覧(棚卸しリスト)は最新の状態か?
- 主要な業務には必ずマニュアルが存在し、誰でも閲覧可能か?
- マニュアルは直近の法改正や手順変更を反映しているか?
- 全ての業務において、主担当以外に代行できる人が1名以上いるか?
- 業務データやファイルは個人PCではなく、共有サーバー/クラウドにあるか?
- 定期的にジョブローテーションや業務の入れ替えを行っているか?
- 休暇中の担当者に連絡しなくても業務が回る状態か?
- ミスやトラブルが発生した際、個人を責めるのではなく仕組み(マニュアル)を改善しているか?
人事労務の属人化解消は、一朝一夕には達成できません。しかし、ステップを踏んで着実に取り組むことで、組織のリスク耐性は高まり、従業員にとっても働きやすい環境が実現します。まずは「現状把握」から、最初の一歩を踏み出してみましょう。
関連する詳しい情報は外部リンク: 厚生労働省「人材育成」関連情報や、専門家の知見もご参照ください。
まとめ
人事労務の属人化解消は、以下の7つのステップで進めることが重要です。
- 現状把握とリスク特定
- 業務フローの可視化・標準化
- 役割分担の明確化
- ナレッジ共有基盤の構築
- 多能工化とOJTの推進
- ITツールの導入
- PDCAによる継続改善
失敗を防ぐためには、現場との対話を重ね、スモールスタートで成功体験を積み上げることがポイントです。強固なバックオフィス体制を構築し、企業のさらなる成長を支えていきましょう。
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