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飲食店向けシフト管理:変形労働時間制導入で変わる?成功事例と社労士相談

2026.01.21 スタッフブログ

変形労働時間制とは?飲食店経営者が知るべき基本知識

飲食店経営において、ランチタイムとディナータイムのピーク、あるいは平日と週末の客数の差は避け通れない課題です。通常の労働時間制(1日8時間・週40時間)では、忙しい日に少しでも残業が発生すると割増賃金が必要となり、人件費を圧迫する要因となります。そこで注目されるのが「変形労働時間制」です。

飲食店向けシフト管理:変形労働時間制導入で変わる?成功事例と社労士相談

変形労働時間制とは、一定期間(1ヶ月や1年など)の平均労働時間が週40時間以内であれば、特定の日や週に法定労働時間を超えて働かせることができる制度です。つまり、「忙しい日は10時間働き、暇な日は6時間で帰る」といった柔軟なシフト組みが可能となり、その日の残業代(割増賃金)が発生しなくなります。

飲食店で主に使用されるのは以下の3つのパターンです。

  • 1ヶ月単位の変形労働時間制: 最も一般的です。月末や週末が忙しい店舗向きで、1ヶ月以内で労働時間を調整します。
  • 1年単位の変形労働時間制: 季節変動が激しい観光地の飲食店などで採用されますが、要件が厳しく、シフト作成の難易度は高くなります。
  • 1週間単位の非定型的変形労働時間制: 従業員30人未満の小規模な飲食店等に限り認められる特例です。日ごとの繁閑が激しい場合に有効ですが、事前の通知義務など運用には注意が必要です。

この制度は単なる「残業代カット」の手段ではなく、繁閑に合わせて人員を最適配置するための法的な枠組みであると理解することが重要です。

飲食店が変形労働時間制を導入するメリット・デメリット

変形労働時間制は経営にとって強力な武器になりますが、現場の負担が増える側面もあります。導入前にメリットとデメリットを正しく把握しましょう。

メリット

  1. 無駄な残業代(割増賃金)の削減: 繁忙期の長時間労働を、閑散期の短時間労働と相殺できるため、法定労働時間内であれば割増賃金が不要になります。
  2. 効率的な人員配置: 「金曜日は17時からラストまでガッツリ入ってもらう」といったシフトが組みやすくなり、ピークタイムのサービスレベルを維持しやすくなります。
  3. 従業員の休日確保: 閑散期にまとまった休みを取りやすくなるため、メリハリのある働き方が可能になり、従業員満足度の向上につながるケースもあります。

デメリット

  1. シフト管理の複雑化: 期間全体の総労働時間を計算し、法令の範囲内に収める必要があるため、手書きやエクセルの単純管理ではミスが起きやすくなります。
  2. 突発的なシフト変更への対応難易度: 原則として、一度決めた変形労働時間のシフトは、会社都合で勝手に変更できません。急な欠員が出た場合の調整が通常よりも難しくなります。
  3. 従業員の理解不足によるトラブル: 「なぜ10時間働いたのに残業代が出ないのか」といった不満が出ないよう、採用時や導入時に丁寧な説明が不可欠です。

【5ステップ】変形労働時間制導入の具体的な手順と必要書類

ここでは、飲食店で最も導入されやすい「1ヶ月単位の変形労働時間制」を例に、導入までの具体的な流れを解説します。

  1. 労働時間の現状把握とシミュレーション

    まずは過去のタイムカードやシフト表を確認し、月ごとの繁閑や、曜日ごとの労働時間の波を洗い出します。どの程度変形させる必要があるのか(例:週末を10時間にする代わり、平日を6時間にする等)を具体的にシミュレーションします。

  2. 労使協定の締結(または就業規則の改定)

    従業員の代表者を選出し、変形労働時間制を導入することについて合意(労使協定の締結)を得ます。「1ヶ月単位」の場合は就業規則への記載だけでも導入可能ですが、トラブル防止のため労使協定を結ぶことが推奨されます。

    重要: 就業規則には「対象となる従業員の範囲」「変形期間」「起算日」「各日の始業・終業時刻」などを明記する必要があります。

  3. 協定届等の書類作成

    管轄の労働基準監督署に提出する書類を作成します。

    必要書類: 「変形労働時間制に関する協定届(様式第4号など)」、「変更後の就業規則(変更届も含む)」、「シフト表のカレンダー例(労働日と労働時間がわかるもの)」

  4. 労働基準監督署への届出

    作成した書類を管轄の労働基準監督署へ提出します。郵送や電子申請(e-Gov)も可能です。不備があると受理されないため、初めての場合は窓口で相談しながら提出するのが確実です。

  5. 従業員への周知と運用開始

    就業規則を変更したら、必ず従業員に周知(見やすい場所に掲示、書面配布など)しなければ効力を発揮しません。また、シフト表は変形期間が始まる前までに必ず従業員に通知する必要があります。

シフト管理システムを活用した変形労働時間制の効率的な運用法

変形労働時間制の最大の壁は「管理の複雑さ」です。1ヶ月の総労働枠を超えていないか、休日は確保できているかを人力でチェックするのは限界があります。ここでシフト管理システムの活用が必須となります。

  • 法令違反の自動アラート機能

    変形労働時間制に対応したシステムであれば、「このシフトだと月間の法定労働時間を超えてしまう」「連続勤務日数が多すぎる」といったミスを、シフト作成段階で自動的に警告(アラート)してくれます。これにより、意図しない法令違反(コンプライアンスリスク)を防げます。

  • 総労働時間のリアルタイム集計

    シフトを作成しながら、「あと何時間割り振れるか」が可視化されます。店長は直感的に、閑散日の短時間シフトと繁忙期の長時間シフトをパズルのように組み合わせることが可能になります。

  • 複雑な残業計算の自動化

    変形労働時間制では、「1日」「1週間」「期間全体」の3段階で残業時間を計算する必要があります。システムを導入すれば、この複雑な計算を給与計算ソフトと連携して自動化でき、事務作業の負担を劇的に減らせます。

変形労働時間制導入でよくある課題と社労士が教える解決策

導入したものの、運用がうまくいかないケースも多々あります。よくある課題とその解決策を紹介します。

  • 課題1:シフト確定後に急な変更が発生し、調整がつかない

    解決策: 変形労働時間制は、原則としてシフトの事後変更が認められにくい制度です。しかし、やむを得ない事情(急病など)での変更ルールを就業規則にあらかじめ定めておくことや、変形制の対象とならない「予備スタッフ(通常の労働時間制のアルバイト)」を確保しておくことで柔軟性を担保します。

  • 課題2:中途採用者や退職者の賃金計算が複雑

    解決策: 変形期間の途中で入社・退社した従業員については、実労働時間が法定労働時間を超えた分について、通常の残業代精算が必要になる場合があります。この「中途精算」のルールを賃金規程に明確に記載しておきましょう。

  • 課題3:アルバイトスタッフからの不満

    解決策: アルバイトにも適用可能ですが、シフトの自由度を求める学生などには不向きな場合もあります。正社員と店長クラスのみに変形労働時間制を適用し、アルバイトは通常のシフト制にするなど、雇用形態によって制度を使い分けるのも一つの賢い方法です。

【事例公開】変形労働時間制でシフト管理を最適化した飲食店の成功事例

実際に変形労働時間制を導入し、経営改善に成功した飲食店の事例を紹介します。

事例:都内イタリアンレストラン(従業員数15名)

  • 導入前の課題:
    • 金・土曜日のディナータイムは深夜まで忙しく、スタッフが残業過多で疲弊。
    • 一方で、平日のランチタイム後はアイドルタイムが長く、人件費率が高止まりしていた。
    • 固定残業代を払っていたが、超過分も多く収益を圧迫。
  • 実施した対策:
    • 「1ヶ月単位の変形労働時間制」を導入。
    • 平日のシフトを「10:00~15:00(5時間勤務)」とし、アイドルタイムに従業員を帰宅させる運用を徹底。
    • 金・土曜日は「14:00~23:00(休憩1時間含む8時間+残業見込み)」ではなく、「13:00~24:00(休憩1時間半含む9.5時間)」という所定労働時間を設定。
  • 導入後の効果:
    • 平日の無駄な待機時間がなくなり、人件費率が3%改善。
    • 週末に長時間働いても、月全体で調整しているため、無駄な割増賃金が発生しなくなった。
    • スタッフからも「平日は夕方から自分の時間が持てるようになり、習い事ができるようになった」と好評を得た。

この事例の成功要因は、単に制度を入れるだけでなく、「平日を短くする」という業務オペレーションの変更もセットで行った点にあります。

変形労働時間制に関する相談先は?専門家(社労士)の選び方

変形労働時間制は、導入手続きだけでなく、その後の運用(シフト管理、残業代計算)が適法に行われているかが非常に重要です。自己流で導入し、後から未払い残業代を請求されるリスクを避けるためにも、社会保険労務士(社労士)への相談を強くおすすめします。

飲食店に強い社労士を選ぶポイント

  1. 飲食業界の実務への理解: 「中抜けシフト」や「深夜営業」、「学生アルバイトの多さ」など、飲食特有の事情に詳しいかどうかを確認しましょう。
  2. シフト管理システムへの知見: 紙の管理ではなく、ITツールを活用した効率的な運用を提案してくれるかどうかも重要です。
  3. リスク管理の視点: 単なるコスト削減だけでなく、「従業員の定着率向上」や「労務トラブル予防」の観点からアドバイスをくれる専門家がベストです。

変形労働時間制は、正しく運用すれば経営者と従業員の双方にメリットがある制度です。まずは自社の現状を専門家に診断してもらうことから始めてみてはいかがでしょうか。

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