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同一労働同一賃金の見直し完全ガイド:会社が選ぶべき最適な導入ステップと成功事例

2026.01.14 スタッフブログ
企業の人事担当者や経営者にとって、「同一労働同一賃金」への対応は、単なる法改正への追随ではなく、組織の公平性と競争力を高めるための重要な経営課題です。特に2025年に向けて厚生労働省によるガイドラインのさらなる見直しが議論されており、賞与や退職金を含む具体的な待遇差の判断基準がより厳格化される見通しです。

本記事では、HR BrEdge社会保険労務士法人の専門的な知見に基づき、最新の法改正動向を踏まえた見直しの完全ガイドを提供します。複数の選択肢やツールを比較し、貴社に最適な導入ステップを判断するための材料としてご活用ください。

同一労働同一賃金の見直し完全ガイド:会社が選ぶべき最適な導入ステップと成功事例

目次

同一労働同一賃金とは?基本原則と企業が見直すべき理由

基本原則:均衡待遇と均等待遇

同一労働同一賃金の核心は、正規雇用労働者(正社員)と非正規雇用労働者(パート・有期・派遣社員)との間の「不合理な待遇差」を解消することにあります。これは、単に「給料を同じにする」ことだけを指すのではなく、以下の2つの原則に基づきます。

  • 均等待遇(差別的取扱いの禁止):職務内容(業務の内容+責任の程度)と人材活用の仕組み(転勤や異動の有無)が同じであれば、差別的な取扱いをしてはならないという原則。
  • 均衡待遇(不合理な待遇差の禁止):職務内容や人材活用の仕組みに違いがあっても、その違いに応じたバランスの取れた(不合理ではない)処遇を求める原則。

企業が見直すべき理由と最新動向

2020年・2021年の法改正施行以降も、最高裁判決(日本郵便事件、メトロコマース事件など)により、手当や賞与に関する企業の敗訴が相次いでいます。さらに、2025年にはガイドラインの大幅な見直しが予定されており、これまで曖昧だった「賞与」「退職手当」「家族手当」などの判断基準が明確化される見込みです。

企業が見直しを急ぐべき理由は主に3点です。

  • 訴訟・賠償リスクの回避: 過去に遡った差額賃金の請求リスクがあります。
  • 説明義務の強化: 非正規社員から待遇差の理由を求められた際、合理的な説明ができなければ法令違反となります。
  • 人材確保: 公正な待遇は、深刻な人手不足の中での採用競争力に直結します。

厚生労働省「同一労働同一賃金特集ページ」の詳細はこちら

見直しの第一歩:現状把握と課題特定の方法

見直しを成功させるためには、感覚的な判断を排除し、客観的なデータに基づいて現状を把握する必要があります。以下のステップで進めます。

Step 1: 雇用形態の洗い出しとマッピング

まずは自社にどのような雇用形態(フルタイム契約社員、短時間パート、定年再雇用者など)が存在するかを洗い出します。

Step 2: 待遇差の可視化(比較表の作成)

次に、正社員と各雇用形態の間で、基本給、賞与、各種手当、福利厚生などにどのような違いがあるかを表にまとめます。

項目正社員契約社員パート差の有無
基本給月給制(職能給)月給制(職務給)時給制あり
賞与年2回(計4ヶ月)寸志なしあり(要確認)
通勤手当全額支給上限あり上限ありあり(要確認)
慶弔休暇ありなしなしあり(要確認)

Step 3: 「不合理」かどうかの判定

待遇差がある項目について、「なぜその差があるのか」を言語化します。「正社員だから」「パートだから」という主観的な理由は認められません。

  • OKな理由の例: 「正社員は全国転勤があるが、地域限定社員は転居を伴う異動がないため、その負担分として住宅手当に差を設けている」
  • NGな理由の例: 「将来の幹部候補だから(※具体的な職務の違いが現時点でなければ不合理とされる可能性が高い)」

厚生労働省「パートタイム・有期雇用労働法対応のための取組手順書」はこちら

賃金制度設計の見直し:具体的な選択肢と導入方法を比較

基本給の決定方法を見直すことは、最もハードルが高い一方で、根本的な解決策となります。主に3つのアプローチがあります。

1. 職務給(ジョブ型)の導入

職務の内容(Job)に基づいて賃金を決定する方法です。同一労働同一賃金との親和性が最も高い手法です。

  • メリット: 役割と報酬の関係が明確で、説明責任を果たしやすい。
  • デメリット: 職務記述書(ジョブディスクリプション)の作成・メンテナンスに手間がかかる。

2. 役割等級制度への移行

日本の職能資格制度(人の能力基準)と職務給(仕事基準)のハイブリッド型です。「役割」の大きさで等級を決めます。

  • メリット: 日本企業の風土に馴染みやすく、柔軟な運用が可能。
  • デメリット: 役割定義が曖昧だと、実質的な年功序列に戻ってしまうリスクがある。

3. ポイント制による是正

既存の制度を維持しつつ、非正規社員にも同様の評価ポイントを付与し、単価(時給換算)を調整する方法です。

  • メリット: 大規模な制度改定が不要で、導入コストが低い。
  • デメリット: 根本的な待遇差の解消にはならず、一時的な対症療法になりがち。

推奨: 中小企業においては、完全なジョブ型への移行よりも、「役割等級制度」を導入し、正社員と非正規社員を共通の「役割」モノサシで評価するアプローチが、運用負荷と公平性のバランスが良くおすすめです。

評価制度と手当制度の再構築:最適な運用モデルを見つける

手当制度の見直し:目的別アプローチ

手当は最高裁で最も争点になりやすい部分です。「その手当の支給目的は何か?」を再定義し、目的に合致しない差を解消します。

手当の種類支給目的(例)見直しの方向性
通勤手当実費弁償雇用形態に関わらず全額支給または同等基準に統一すべき。
精皆勤手当出勤の確保業務内容に関係なく、出勤を奨励するなら同一支給が必要。
特殊作業手当危険・困難業務への対価同じ作業をするなら同一支給が原則。
住宅手当転勤コストの補填転勤の有無で差をつけることは合理的だが、単なる生活補助なら統一検討が必要。

評価制度の統合または分離

  • 統合型: 正社員・非正規社員を同じ評価シートで評価する。公平感は高いが、求めるレベルの違いを調整する難易度が高い。
  • 分離型: 非正規専用の簡易評価制度を作る。運用は楽だが、「同じ仕事なのに評価基準が違う」という不満が出ないよう注意が必要。

制度導入をスムーズにするためのツール・システムの活用と比較

見直し業務は複雑であり、手作業での管理には限界があります。フェーズに応じたツールの活用を比較検討しましょう。

1. 公的支援ツール(無料)

  • 特徴: 厚生労働省が提供する「取組手順書」や「法対応チェックツール」。
  • メリット: コストゼロで、法令遵守の最低ラインを確認できる。
  • デメリット: データの保存や経年変化の分析ができず、手作業での入力が必要。
  • おすすめ: まず自社の現状をざっくり把握したい初期段階。

2. 労務管理クラウドシステム(有料:SmartHR, freee等)

  • 特徴: 従業員情報のデータベース化、雇用契約の更新管理。
  • メリット: 評価履歴や契約内容を一元管理でき、変更時のシミュレーションが容易。
  • デメリット: ランニングコストがかかる。
  • おすすめ: 従業員数が多く、契約更新や評価運用を効率化したい場合。

3. 人事評価・賃金設計特化型システム(有料:あしたのチーム等)

  • 特徴: 評価制度の運用と給与連動に特化。
  • メリット: 評価結果に基づいた公正な処遇決定を自動化できる。
  • デメリット: 導入コストが高く、設定に専門知識が必要な場合がある。
  • おすすめ: 抜本的な制度改定を行い、厳格な運用を目指す場合。

同一労働同一賃金導入におけるメリット・デメリットとリスク管理

メリット

  • 生産性の向上: 公正な評価により非正規社員のモチベーションが上がり、業務効率が改善します。
  • 人材定着率の改善: 「使い捨て」という意識が消え、長期就業が見込めます。
  • 助成金の活用: キャリアアップ助成金(正社員化コース、賃金規定等改定コース)などが活用できる場合があります。

デメリットと課題

  • 人件費の増加: 待遇を底上げする場合、原資が必要になります。
  • 正社員の不満: 説明不足のまま非正規社員の待遇だけを上げると、正社員から「逆差別」と感じられるリスクがあります。
  • 運用の手間: 評価やフィードバックの工数が増加します。

リスク管理:絶対にしてはいけないこと

「コスト増を避けるために、正社員の待遇を一方的に引き下げること」は、労働契約法上の「不利益変更」に当たり、原則として認められません。見直しは「非正規の引き上げ」を基本としつつ、長期的な賃金カーブの見直しなどで総額人件費をコントロールする視点が必要です。

成功事例に学ぶ:他社の導入プロセスと成果

事例1:食品スーパーマーケットA社(従業員数300名)

  • 課題: パート社員の離職率が高く、採用コストが圧迫。
  • 対策:
    • パート社員にも賞与(寸志レベルではなく基本給連動型)を支給。
    • 正社員登用制度を明確化し、試験要件を公開。
  • 成果: パート社員の定着率が20%向上し、ベテランパートが売り場主任を担うことで正社員の残業時間が削減された。

事例2:製造業B社(従業員数50名)

  • 課題: 正社員と契約社員が混在し、同じライン作業をしているのに手当に差があった。
  • 対策:
    • 皆勤手当と通勤手当を完全統一。
    • 基本給は「能力給」として、習熟度に応じた同一のテーブルを適用。
  • 成果: 現場の不公平感が解消され、契約社員からの業務改善提案が増加した。

社労士に相談するメリットと最適なパートナー選びのポイント

同一労働同一賃金の対応は、法律の解釈と人事制度設計の両面からのアプローチが必要です。

社労士に依頼するメリット

  1. 「不合理」の判断基準の提示: 最新の判例やガイドラインに基づき、リスクの高い箇所を指摘してもらえます。
  2. 就業規則・賃金規程の整備: 制度改定に伴う規定変更を法的に漏れなく行えます。
  3. 助成金の提案: 制度変更のコストを補填できる助成金の申請代行が可能です。

パートナー選びのポイント

全ての社労士が人事評価制度に精通しているわけではありません。

  • 人事コンサルティングの実績があるか: 手続き代行だけでなく、賃金テーブルの設計までできるか確認しましょう。
  • 業界特有の事情に詳しいか: 飲食、医療、運送など、業界ごとの慣習やリスクを理解している専門家を選びましょう。

免責事項: 本記事の情報は執筆時点(2025年12月)の法令・ガイドラインに基づいています。個別の労務トラブルや制度設計については、必ず専門家である社会保険労務士等にご相談ください。


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