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労働条件明示ルール変更!最適な対応ツール比較と社労士が解説する注意点

2026.01.10 人事労務

2024年4月、労働基準法施行規則の改正により、企業が労働者に対して行う「労働条件明示」のルールが大きく変更されました。この変更は、すべての企業にとって避けて通れない実務上の重要課題となっており、特に有期契約労働者を多く抱える企業や、採用活動が活発な企業にとっては、対応の不備が重大な労務リスクに直結します。

労働条件明示ルール変更!最適な対応ツール比較と社労士が解説する注意点

本記事では、HR BrEdge社会保険労務士法人の専門ライターが、改正ルールのポイントを整理し、実務担当者が直面する「手作業か、システム導入か」という課題に対して、具体的な比較と最適なツールの選び方を解説します。法令遵守と業務効率化を両立させるための「処方箋」としてご活用ください。

目次

労働条件明示ルールの主な変更点と企業が知るべき基本

2024年4月の改正により、労働契約締結時および更新時に明示すべき事項として、以下の4点が新たに追加されました。これらは、多様な働き方の進展や、トラブルの未然防止を目的としています。

  • 就業場所・業務の変更の範囲の明示(すべての労働者対象)従来は「雇い入れ直後」の場所と業務のみを明示すれば足りましたが、改正後は「将来的な配置転換や業務変更の可能性がある範囲」まで明示する必要があります。「変更なし」の場合はその旨を、変更の可能性がある場合は「会社の定める営業所」や「会社が指示する業務全般」といった記載が求められます。
  • 更新上限の有無と内容の明示(有期契約労働者対象)有期労働契約の締結時および更新時に、契約更新の上限(「通算契約期間は5年まで」「更新回数は3回まで」など)があるかどうか、ある場合はその内容を明示しなければなりません。また、上限を新設・短縮する場合には、事前説明が必要となります。
  • 無期転換申込機会の明示(無期転換ルール対象者)通算契約期間が5年を超える有期契約労働者に対し、無期労働契約への転換を申し込む権利(無期転換申込権)が発生する更新のタイミングごとに、「無期転換を申し込める旨」を明示する必要があります。
  • 無期転換後の労働条件の明示(無期転換ルール対象者)上記と同様のタイミングで、実際に無期転換した場合の労働条件(給与、労働時間、定年など)についても明示義務が課されました。

詳細は厚生労働省の特設ページでも確認できますが、これら4つの追加事項は、従来の雛形をそのまま使用しているだけでは対応できないため、必ず様式の見直しが必要です。

新ルール対応の必要性:企業が直面する課題と見落としがちな落とし穴

「たかが書類の項目が増えただけ」と安易に捉えていると、思わぬ落とし穴にはまります。今回の改正対応が不可欠である理由は、単なる法令遵守にとどまらず、企業の信頼性や人材定着に直結するからです。

曖昧な運用が招く労使トラブル

特に「就業場所・業務の変更の範囲」の明示は、転勤や職種転換の拒否を巡るトラブルに直結します。ここが曖昧だと、いざ配置転換を行おうとした際に「入社時に聞いていない」と反発されるリスクが高まります。また、「更新上限」の明示漏れは、雇い止め時の紛争(いわゆる「雇い止め法理」の適用判断)において、企業側に不利に働く可能性があります。

既存社員への対応漏れ

新ルールは2024年4月1日以降に締結・更新される契約に適用されますが、自動更新の契約社員やパートタイマーの場合、更新月が来るまで気づかないケースが多々あります。管理がずさんだと、ある日突然「法律違反」の状態に陥ることになります。

労働条件明示の対応アプローチ徹底比較:手作業vsシステム導入

対応方法として、WordやExcelを用いた従来型の「手作業」と、クラウド労務管理システムを用いた「システム化」の2つのアプローチがあります。それぞれのメリット・デメリットを比較し、自社に最適な方法を見極めましょう。

比較項目手作業(Word/Excel + メール/紙)システム導入(クラウド労務ソフト等)
導入コスト低い(既存ソフトで対応可能)中〜高(月額利用料が発生)
作成の手間高い(一人ひとり入力・修正が必要)低い(一括作成、データ連携が可能)
ミスのリスク高い(コピペミス、古い様式の使用)低い(最新法令に自動対応、入力制御)
管理・検索性低い(フォルダ管理、期限管理が属人的)高い(ステータス管理、更新アラート機能)
電子交付対応手間(PDF化→メール添付→同意保存)容易(合意から保存までワンストップ)
おすすめの企業従業員数が少なく、契約更新が稀な企業従業員数が多い、有期契約社員が多い企業

手作業の限界

従業員数が数名程度であれば手作業でも対応可能ですが、数十名規模になると、契約更新ごとの書類作成、送付、回収、保管の工数は膨大になります。特に今回の改正で記載事項が増えたため、転記ミスのリスクも増大しています。

システム導入の優位性

システムを導入すれば、法改正に合わせてテンプレートが自動更新されるため、法令違反のリスクを大幅に低減できます。また、対象者の抽出や更新時期のアラート機能により、管理漏れを防ぐことができる点が最大の強みです。

【厳選】労働条件明示に役立つシステム・ツールの特徴と選び方

市場には多くの労務管理システムが存在しますが、労働条件明示の観点から選ぶ際は、主に以下の2つのタイプから検討することをおすすめします。

1. 労務管理一体型システム(SmartHR、freee人事労務、オフィスステーションなど)

入社手続き、社会保険手続き、給与計算などの労務業務全体を一元管理できるタイプです。

  • 特徴: 従業員データベースと連動しているため、ボタン一つで最新の労働条件通知書を作成・送付できます。
  • メリット: 入力の手間が最小限で済み、情報の整合性が保たれます。
  • 選び方: すでに給与計算などで利用しているシリーズがあれば、それを拡張するのが最もスムーズです。

2. 電子契約特化型システム(クラウドサイン、GMOサインなど)

雇用契約書に限らず、取引先との契約書などあらゆる契約業務をデジタル化するタイプです。

  • 特徴: 法的証拠力が強く、署名フローの柔軟性が高いのが特徴です。
  • メリット: 独自の契約書フォーマットをそのまま活用でき、社外取引にも使えます。
  • 選び方: 独自のレイアウトにこだわりたい場合や、社外契約も含めてペーパーレス化したい場合に適しています。

選定のポイントは、「法改正への自動対応機能があるか」と「更新管理(アラート)機能があるか」の2点です。これらが備わっているシステムであれば、担当者の負担は劇的に軽減されます。

社労士が解説!最新ルール対応の労働条件明示書テンプレートと記載例

システムを導入せず、自社で書式を作成・修正する場合、厚生労働省が公開している「モデル労働条件通知書」をベースにするのが最も確実です。ここでは、特に間違いやすい「変更の範囲」の記載例を紹介します。

記載例:就業場所・業務の変更の範囲

【パターンA:限定なし(正社員など)】

  • 就業場所: (雇入れ直後)本社、(変更の範囲)会社の定めるすべての事業所
  • 従事すべき業務: (雇入れ直後)営業職、(変更の範囲)会社内でのすべての業務

【パターンB:限定あり(地域限定社員など)】

  • 就業場所: (雇入れ直後)東京支店、(変更の範囲)関東エリア内の各支店
  • 従事すべき業務: (雇入れ直後)一般事務、(変更の範囲)変更なし

【パターンC:完全限定(勤務地限定パートなど)】

  • 就業場所: (雇入れ直後)大阪工場、(変更の範囲)変更なし
  • 従事すべき業務: (雇入れ直後)ライン製造業務、(変更の範囲)変更なし

重要:労働条件通知書テンプレートの入手先

厚生労働省のサイトから最新のWord版テンプレートがダウンロード可能です。

テンプレートを利用する際は、「変更の範囲」の欄が設けられているか、有期契約の場合は「更新上限」や「無期転換」の欄があるかを必ず確認してください。古いテンプレートを使い回していると、記載漏れ=法違反となります。

労働条件明示の違反リスクとペナルティ:企業が取るべき対策とは

労働条件の明示義務に違反した場合、どのようなリスクがあるのでしょうか。

1. 罰金刑(労働基準法第120条)

労働基準法第15条に基づく明示義務に違反した場合、30万円以下の罰金が科される可能性があります。

2. 即時解除権(労働基準法第15条第2項)

明示された労働条件と事実が異なる場合、労働者は即時に労働契約を解除することができます。この場合、就業のために住居を変更した労働者が帰郷するための旅費も負担しなければなりません。

3. 損害賠償請求と社会的信用の失墜

「聞いていた条件と違う」という不満は、SNS等での告発や、未払い賃金請求などの民事訴訟に発展するリスクがあります。特に採用難の現在、ブラック企業というレッテルを貼られることは、採用活動において致命的なダメージとなります。

対策:
リスクを回避するためには、「最新様式への更新」「システムによる更新漏れ防止」「採用時の丁寧な説明(読み合わせ)」の3点を徹底することが重要です。

これで安心!労働条件明示に関するよくあるQ&Aと専門家の見解

最後に、現場でよくある疑問について、社労士の視点から回答します。

Q1. 既存の従業員に対しても、改めて労働条件通知書を出し直す必要がありますか?

A1. 2024年4月1日時点で既に雇用契約期間中の従業員に対して、直ちに再発行する法的義務はありません。ただし、次回契約更新のタイミングでは、新ルールに基づいた明示が必須となります。無期雇用の社員についても、給与改定や異動のタイミングに合わせて新しい様式で通知することをおすすめします。

Q2. 労働条件の明示は、メールやSNSで行っても良いですか?

A2. はい、可能です。ただし、労働者が希望した場合に限ります。会社が一方的にメールで送りつけることは認められていません。メールやPDFで送付する場合でも、「書面として出力(印刷)できる状態」である必要があり、また労働者が確実に受信したことを確認できる仕組み(受信確認メールの返信を求める等)を整えることが重要です。

Q3. 「業務の変更の範囲」は、将来の可能性をすべて網羅しないといけませんか?

A3. あらゆる可能性を列挙する必要はありませんが、就業規則等で定められている人事異動の可能性がある範囲と整合性が取れている必要があります。「変更なし」と記載したにもかかわらず、後に異動を命じた場合、契約違反となるため注意が必要です。

Q4. 3月以前に契約締結し、4月1日から勤務開始する場合の対応は?

A4. 契約締結日が3月31日以前であれば、旧ルールが適用されます。しかし、勤務開始が4月1日以降である場合、トラブル防止の観点および従業員の理解促進のため、可能な限り新ルール(改正後の様式)で明示することが望ましい対応と言えます。


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