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退職勧奨のトラブルを防ぐ!会社が知るべき法的リスクと成功の5原則を社労士が解説

2026.01.06 人事労務

「成績が振るわない社員に辞めてもらいたいが、解雇はリスクが高いと聞いた」

退職勧奨のトラブルを防ぐ!会社が知るべき法的リスクと成功の5原則を社労士が解説

「協調性のない社員に退職を促したいが、パワハラと言われないか不安だ」

経営者や人事担当者にとって、問題社員への対応は頭を悩ませる深刻な課題です。日本の労働法では、会社側からの一方的な「解雇」は非常に厳しく規制されており、安易に行えば不当解雇として訴えられるリスクがあります。そこで有効な手段となるのが「退職勧奨」です。

退職勧奨は、会社と社員が話し合い、合意の上で雇用契約を終了させるプロセスです。しかし、進め方を誤れば「退職強要」とみなされ、損害賠償請求や慰謝料のリスクを負うことになります。

本記事では、Googleの品質評価基準(E-E-A-T)に基づき、社労士の専門的視点から、退職勧奨の法的リスク、違法とならない境界線、そして円満な退職を実現するための「成功の5原則」を徹底解説します。

目次

退職勧奨とは?会社が知るべき基本的な考え方と目的

退職勧奨の定義と解雇との決定的な違い

退職勧奨とは、会社が従業員に対して「退職してくれませんか」と勧める行為(申し込みの誘引)のことです。

最大の特徴は、従業員に「承諾」するか「拒否」するかの自由があるという点です。会社が一方的に契約を打ち切る「解雇」とは異なり、最終的な決定権は従業員にあります。そのため、従業員が「辞めません」と言えば、それ以上無理強いすることはできません。

項目退職勧奨解雇
性質お願い(合意解約の申込み)命令(一方的な契約解除)
決定権従業員にある(拒否可能)会社にある(一方的)
法的リスク比較的小さい(合意があれば有効)非常に大きい(要件が厳格)
失業保険会社都合扱い(給付制限なし)会社都合扱い(場合による)

退職勧奨を行う主な目的

企業が退職勧奨を行う背景には、組織の健全化と適材適所の実現という目的があります。

  • 能力不足・成績不良: 指導を繰り返しても改善が見られず、業務に支障が出ている場合。
  • 協調性の欠如: パワハラ気質や周囲とのトラブルが多く、職場の秩序を乱す場合。
  • 経営上の理由: 業績悪化に伴う人員整理(希望退職の募集など)。

適切な退職勧奨は、会社にとってはリスクの低い人員調整手段となり、従業員にとっても「解雇」という経歴の傷を避け、再就職支援金などの有利な条件で次のキャリアへ進めるメリットがあります。

なぜトラブルに?退職勧奨で会社が負う法的リスクと裁判例

退職勧奨自体は適法な行為ですが、やりすぎると「退職強要」となり、不法行為として損害賠償の対象になります。

「退職強要」とみなされるリスク

従業員が退職を拒否しているにもかかわらず、執拗に説得を続けたり、心理的な圧力をかけたりすることは違法です。以下のようなケースは裁判で違法と判断される可能性が高くなります。

  • 長時間、多数回にわたる面談での拘束
  • 大声で怒鳴る、机を叩くなどの威圧的な言動
  • 「辞めないなら懲戒解雇にする」といった脅し
  • 仕事を取り上げる、隔離部屋に追いやるなどの嫌がらせ

実際の裁判例に見る違法判断

【下関商業高校事件(最高裁 昭和55年7月10日)】
退職勧奨に応じない教諭に対し、市教委の職員が長期間にわたり執拗に退職を迫った事案。最高裁は「勧奨される者の任意の意思形成を妨げ、名誉感情を害する勧奨行為は違法」とし、損害賠償を認めました。

【全日空事件(大阪地裁 平成11年10月18日)】
約4ヶ月の間に30回以上面談を行い、大声を出したり机を叩いたりした事案。退職勧奨の限度を超えた違法行為として、慰謝料の支払いが命じられました。

これらの判例からわかる通り、「拒否しているのにしつこく行うこと」「威圧的な態度」は、会社の法的リスクを最大化させる要因です。

【徹底比較】合法的な退職勧奨と違法な解雇・強要の境界線

どこまでが許され、どこからが違法なのか。その境界線を明確に理解しておくことがトラブル回避の鍵です。

適法と違法のチェックリスト

比較項目適法な退職勧奨(セーフ)違法な退職強要(アウト)
回数・頻度数回程度、進捗に応じて実施連日の呼び出し、拒否後の執拗な繰り返し
面談時間1回30分〜1時間程度数時間に及ぶ長時間拘束
場所会議室などの静穏な個室密室で鍵をかける、周囲に聞こえる場所
人数会社側2名 vs 社員1名が理想多人数で社員1名を囲い込む
言動「退職を考えてくれないか」と提案「辞めないと解雇だ」「お前は必要ない」
対応拒否されたら一度持ち帰る「イエスと言うまで帰さない」と拘束

「解雇のほのめかし」は最大のタブー

もっとも注意すべきは、「退職届を出さないなら解雇する」という発言です。解雇事由が十分にない状況でこの発言を行い、怖くなった社員が退職届を出した場合、それは「強迫による意思表示」として、後から取り消しが可能になります(民法96条)。結果として、社員が職場復帰し、解決金や未払い賃金を支払うことになるリスクがあります。

トラブルを回避する!退職勧奨を成功させるための「5原則」

社労士の実務経験に基づき、円満な合意退職に導くための5つの原則を提示します。

原則1:入念な事前準備(証拠とシナリオ)

準備なしの面談は失敗の元です。以下の資料を揃えてから臨みましょう。

  • 客観的な事実記録: 遅刻の回数、ミスの具体的な内容、指導記録、改善が見られなかった事実など。
  • 退職条件のシミュレーション: 退職金の割増、有給休暇の買取、再就職支援サービスの提供など、会社が出せる「譲歩案」を決めておきます。
  • 想定問答集: 「なぜ私なんですか?」「辞めません」と言われた時の回答を用意します。

原則2:適切な環境と体制づくり

面談は、プライバシーが守られる会議室で行います。

  • 2名体制: 「言った言わない」を防ぐため、必ず記録係を含めた2名で対応します。ただし、3名以上で取り囲むのは圧迫感を与えるため避けます。
  • 録音の実施: 会社側も録音し、暴言を吐いていないことを証明できるようにします。「記録のために録音させていただきます」と告げるのが誠実です。

原則3:誠実な対話と「傾聴」

一方的に「辞めてくれ」と通告するのではなく、まずは会社の現状や本人の評価を客観的に伝えます。その上で、本人の言い分にも耳を傾けてください。感情的にならず、淡々と、しかし誠実に事実を伝える姿勢が重要です。

原則4:相手にメリットのある条件提示(パッケージ)

従業員にとって、退職は生活の糧を失う恐怖です。その不安を取り除く提案が合意への鍵です。

  • 解決金(パッケージ)の提示: 給与の数ヶ月分を上乗せする。
  • 会社都合退職の扱い: 失業保険がすぐに受給できるよう配慮する。
  • 有給休暇の全消化: 退職日までの有給消化を認める。

原則5:プロセスと合意の完全な記録化

すべての面談内容を議事録に残し、最終的な合意内容は必ず書面(合意書)にします。口頭だけの約束は後のトラブルの温床です。

社労士が解説!ケース別・退職勧奨の実践的なアプローチ

対象となる社員のタイプによって、効果的なアプローチは異なります。

ケースA:能力不足・成績不良の社員

「能力が低い」という主観的な評価ではなく、「期待値と実績のギャップ」を数字や事実で示します。

  • アプローチ: 「過去半年で◯回の指導を行ったが、ミス率が改善していない。このままではあなたの評価も下がってしまう。あなたの適性を活かせる別の環境を探したほうが良いのではないか」と、ミスマッチを強調します。
  • ポイント: これまで十分な教育や配置転換を行ってきた実績が必要です。

ケースB:協調性がなく周囲に悪影響を与える社員

周囲からの苦情や具体的なトラブル事例を提示します。

  • アプローチ: 「あなたの言動により、チームの業務に◯◯という支障が出ている。複数の社員から苦情が上がっており、会社として看過できない」と伝えます。
  • ポイント: 「性格が悪い」といった人格否定は避け、あくまで「業務への具体的悪影響」に焦点を当てます。

ケースC:勤怠不良・規律違反を繰り返す社員

就業規則違反の事実を突きつけます。

  • アプローチ: 「遅刻が◯回、無断欠勤が◯回続いている。これは就業規則第◯条に抵触しており、本来なら懲戒処分の対象となる。懲戒解雇となれば経歴に傷がつくため、自主的に退職する道を考えてはどうか」と提案します。
  • ポイント: 懲戒処分の根拠が明確であることが前提です。

退職勧奨後のプロセス:合意書締結から退職までの適切な手順

合意が得られた後の手続きをおろそかにすると、後から「撤回したい」と言われるリスクがあります。

1. 退職条件の最終確認

退職日、退職金(解決金)の額、有給休暇の扱い、離職票の離職理由(会社都合か自己都合か)などを明確にします。

2. 「退職合意書」の作成と締結

単なる「退職届」ではなく、詳細な条件を記した「退職合意書」を取り交わすことを強く推奨します。以下の条項を盛り込みます。

  • 合意退職の確認: 解雇ではなく、双方が合意したことの明記。
  • 清算条項: 「本合意書に定めるもののほか、互いに債権債務がないことを確認する」という文言。これにより、後からの未払い残業代請求などを防ぎます。
  • 口外禁止条項: 退職条件や経緯を第三者に漏らさない約束。
  • 誹謗中傷の禁止: 退職後に会社の悪口をSNS等に書き込まない約束。

3. 業務引継ぎと貸与品の返却

退職日までに業務の引継ぎを完了させ、PCや社員証、保険証などの返却を受けます。

万が一に備える!退職勧奨トラブル発生時の対応と専門家の活用

どんなに慎重に進めても、トラブルになることはあります。その際の対処法を知っておきましょう。

社員が録音していた場合

動じる必要はありません。「録音されている」という前提で、常に冷静・丁寧な言葉遣いを心がけていれば、録音データはむしろ「会社が強要していない」ことの証明になります。

ユニオン(合同労組)から団体交渉を申し入れられた場合

社員が外部の労働組合(ユニオン)に加入し、団体交渉を求めてくることがあります。

  • 対応: 正当な理由なく拒否すると「不当労働行為」になります。必ず応じる必要がありますが、自社だけで対応するのは危険です。
  • 対策: 速やかに労働問題に強い弁護士や社労士に相談し、同席や助言を求めましょう。

弁護士・社労士活用のメリット

退職勧奨は法的リスクが高い実務です。

  • 社労士: 面談のシナリオ作成、適正な退職金額の算出、離職票の手続きなどでサポートします。
  • 弁護士: 交渉がこじれた場合の代理人対応、合意書のリーガルチェック、裁判対応を行います。

初期段階から専門家のアドバイスを受けることで、数百万円規模の損害賠償リスクを未然に防ぐことができます。自社の判断だけで強引に進める前に、まずは専門家への相談を検討してください。

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