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是正報告書の完璧な書き方!社労士が提出期限厳守とリスク回避を徹底解説

2025.12.27 労働基準監督署対応

労働基準監督署から是正勧告を受けた際、多くの企業担当者が頭を悩ませるのが「是正報告書」の作成です。「具体的に何を書けばいいのか」「提出期限に間に合わない場合はどうすればいいのか」といった不安を抱える方も少なくありません。是正勧告は放置すれば書類送検などの重大なリスクにつながる行政指導であり、迅速かつ正確な対応が求められます。

是正報告書の完璧な書き方!社労士が提出期限厳守とリスク回避を徹底解説

本記事では、是正勧告への対応経験豊富な社労士が、是正報告書の正しい書き方から提出までのステップを徹底解説します。指摘事項を確実に改善し、リスクを最小限に抑えるための実務ポイントを押さえましょう。

是正報告書とは?労働基準監督署からの「是正勧告」の基本

是正報告書とは、労働基準監督署の調査(臨検)によって法令違反を指摘された企業が、その違反状態を改善(是正)したことを報告するための公式文書です。通常、調査後に交付される「是正勧告書」には、違反した法律の条項、違反内容、そして是正期限が記載されています。

重要なのは、是正勧告自体は「行政指導」であり、直ちに罰則が適用されるわけではないという点です。しかし、指定された期限までに適切な是正措置を講じ、その結果を是正報告書として提出しなければ、「改善の意思がない」とみなされ、再監督や悪質な事例としての書類送検に発展する可能性があります。形式的な書類作成ではなく、実質的な労働環境の改善が求められる手続きであることを理解しましょう。

是正報告書提出の重要性:なぜ迅速かつ正確な対応が求められるのか

是正報告書の提出は、単なる事務手続きの完了ではなく、企業がコンプライアンスを遵守する姿勢を監督署に示す重要な機会です。迅速かつ正確に提出することで、監督官に対して「誠実に対応している」という心証を与え、調査の早期終了につながります。

逆に、報告書の内容が曖昧であったり、事実と異なる虚偽の記載があったりすると、再度の立ち入り調査(再監督)が行われるリスクが高まります。特に以下のようなケースは厳しく追及されます。

  • 是正期限を過ぎても連絡なく放置している
  • 「今後注意します」といった具体性のない精神論だけの記述
  • 実際には支払っていない残業代を支払ったと偽る(虚偽報告)

虚偽の報告は労働基準法違反の中でも重い罪に問われる可能性があるため、必ず事実に基づいた正確な記述が必要です。

【実務で役立つ】是正報告書作成の具体的なステップと準備

効果的な是正報告書を作成するためには、いきなり書き始めるのではなく、事前の準備と事実確認が不可欠です。以下の手順で進めることで、抜け漏れのない報告が可能になります。

  • ステップ1:是正勧告書の内容確認
    指摘された違反事項(条文)と是正期限を正確に把握します。何が問題とされたのかをチームで共有しましょう。
  • ステップ2:事実関係の調査と特定
    未払い賃金がある場合は対象期間や金額の計算、長時間労働の場合はタイムカードの履歴など、客観的なデータを収集します。
  • ステップ3:是正措置の実施
    報告書を書く前に、実際に改善を行います。不足賃金の支払い、就業規則の改定届出、安全装置の設置などを完了させます。
  • ステップ4:証拠書類の整理
    改善した事実を証明するための帳簿や振込明細、写真などを準備します。

報告書に必須の項目:法的要件と効果的な記載方法

是正報告書には法的に定められた厳密な様式はありませんが、労働基準監督署から渡される雛形を使用するのが一般的です。任意の様式を使用する場合でも、以下の必須項目を網羅する必要があります。

  • 是正勧告書の交付年月日と監督官名:どの勧告に対する報告かを特定します。
  • 違反事項(法条項):勧告書に記載された通りに転記します。
  • 是正措置の内容:最も重要な部分です。「5W1H」を意識し、「いつ」「誰に対して」「どのような措置を行い」「どう改善したか」を具体的に記述します。
  • 是正年月日:改善措置が完了した日付を記載します。

記述の際は、「タイムカードを導入し労働時間を適正に把握した」「過去3ヶ月分の不足額〇〇円を〇月〇日に支払った」など、客観的事実を具体的に記載することがポイントです。

是正措置の具体的な実行計画と進捗管理のポイント

指摘事項が多岐にわたる場合や、制度変更を伴う是正が必要な場合、場当たり的な対応では期限に間に合いません。是正報告書の作成を見据えた実行計画(アクションプラン)を策定しましょう。

例えば、長時間労働の是正であれば、「業務量の見直し」「ノー残業デーの設定」「管理職への研修」といった具体的な施策をスケジュールに落とし込みます。進捗管理においては、担当者を明確にし、定期的に是正状況をチェックする体制を整えることが大切です。特に就業規則の変更が必要な場合は、従業員代表からの意見聴取や労働基準監督署への届出といった手続きに時間を要するため、余裕を持ったスケジュール管理が求められます。

提出前の最終チェックリスト:不備なく提出するための確認事項

作成した是正報告書を提出する前に、以下のチェックリストを用いて最終確認を行いましょう。不備があると再提出を求められ、完了までの期間が長引く原因となります。

  • 指摘事項の網羅性:勧告書にある全ての違反事項に対して回答していますか?
  • 添付資料の整合性:報告書本文に記載した内容(金額や日付)と、添付する証拠書類(賃金台帳や領収書)の内容は完全に一致していますか?
  • 具体的記述:精神論ではなく、物理的・制度的な改善措置が記載されていますか?
  • 押印と日付:代表者印や提出年月日の記載漏れはありませんか?
  • コピーの保管:提出用とは別に、自社控え用のコピーを必ずとりましたか?

提出期限を厳守する戦略:遅延によるリスクと対応策

是正勧告書に記載された指定期限は厳守が原則です。期限を過ぎても是正報告書が提出されない場合、監督署は是正の意思がないと判断し、対応を厳格化させる可能性があります。

しかし、システム改修や大規模な計算作業など、正当な理由で物理的に期限内の完了が困難なケースもあります。その場合は、決して無断で遅延してはいけません。必ず期限が到来する前に担当の監督官へ電話等で連絡を入れ、以下の点を伝えてください。

  • 現在の進捗状況(ここまで完了している等)
  • 期限内に間に合わない具体的な理由
  • 是正完了の確実な見込み時期(いつなら提出できるか)

誠意を持って事情を説明し、相談すれば、提出期限の延長や「一部報告(完了した分だけ先に報告)」を認めてもらえるケースが一般的です。

是正報告書提出後の流れとフォローアップの重要性

是正報告書を提出しても、それですべてが終わるわけではありません。監督官が報告書の内容を確認し、不十分な点や疑問点があれば問い合わせが来たり、場合によっては実地での再調査(再監督)が行われたりすることもあります。

提出後は、報告内容に基づいた運用が継続されているか、社内でフォローアップを行うことが重要です。「報告書を出すためだけの一時的な対応」と見なされれば、将来の調査でより厳しい指導を受けることになります。是正措置をきっかけとして、労務管理体制そのものを抜本的に見直し、法令遵守ができる仕組みを定着させることが、企業防衛の観点からも最善の策となります。

不安な場合は専門家へ:社会保険労務士に相談するメリット

是正勧告への対応は、法解釈や計算実務など高度な専門知識を要する場面が多くあります。自社だけで対応しようとすると、誤った解釈で不十分な是正を行ってしまったり、是正報告書の記述内容が新たな是正の火種になったりするリスクもあります。

労働法の専門家である社会保険労務士(社労士)に依頼することで、適切な是正策の立案から、監督官にも納得してもらいやすい報告書の作成、さらに再発防止に向けた社内規定の整備まで、一貫したサポートを受けることができます。監督署対応に不安がある場合は、早めの段階で専門家に相談することをお勧めします。

まとめ

是正報告書は、労働基準監督署からの指摘に対し、企業がコンプライアンス遵守の姿勢を示すための最重要書類です。是正勧告書の内容を正確に理解し、事実に基づいた改善措置を実行した上で、具体的かつ客観的な報告を行うことが求められます。提出期限の厳守はもちろんですが、万が一遅れる場合の事前相談や、提出後の継続的な改善運用も忘れてはいけません。

行政指導への対応はリスク管理の側面もありますが、これを機に労務環境を健全化し、従業員が安心して働ける職場を作るチャンスでもあります。自社のみでの対応が難しいと感じたら、専門家の力を借りて確実に解決へと導きましょう。

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