新着情報

社会保険労務士の相談サービス2025年版:中小企業のための労務トラブル予防と解決策

2025.12.21 労務管理

社会保険労務士の相談サービスとは?中小企業経営者が知るべき基礎知識

社会保険労務士(社労士)は、企業経営における「人」に関する専門家です。多くの経営者が「手続きを代行してくれる人」というイメージをお持ちですが、それは業務の一部に過ぎません。社会保険労務士の相談サービスの本質は、企業の成長を阻害する労務リスクを未然に防ぎ、従業員が安心して働ける環境を整備することにあります。

社会保険労務士の相談サービス2025年版:中小企業のための労務トラブル予防と解決策

社労士の業務範囲と「3つの独占業務」

社会保険労務士法に基づき、社労士には大きく分けて3つの業務領域があります。これらを理解することで、自社に必要なサービスを適切に選択できます。

  • 1号業務(手続き代行): 労働社会保険諸法令に基づく申請書、届出書、報告書などの作成と提出代行を行います。入退社時の社会保険手続きや、労災保険の給付申請などが該当します。
  • 2号業務(帳簿書類作成): 法定の帳簿(労働者名簿、賃金台帳)や就業規則などの作成を行います。これらは法律で作成が義務付けられており、不備があるとトラブルの原因になります。
  • 3号業務(相談・指導): 人事・労務管理に関する相談指導、コンサルティング業務です。賃金制度の設計、採用支援、ハラスメント対策など、経営課題に直結する重要な領域です。

相談顧問と手続き顧問の違い

社労士との契約形態には、主に「手続き顧問」と「相談顧問」があります。
手続き顧問は、日々の保険手続きや給与計算などの定型業務を委託するスタイルです。一方、社会保険労務士の相談サービスを主軸とする「相談顧問」は、法改正への対応や従業員トラブルの解決策など、経営判断に必要なアドバイスを継続的に受けることができます。

近年、労務トラブルの複雑化に伴い、単なる手続き代行だけでなく、予防法務としての相談顧問契約を結ぶ中小企業が増加しています。外部の専門家をパートナーにすることで、経営者は本業に集中できる環境を手に入れることができるのです。

2025年最新動向:労務環境変化と中小企業への影響を解説

2025年は、中小企業の人事労務管理にとって大きな転換点となる年です。育児・介護休業法の改正をはじめ、働き方改革の深化ともいえる重要な法改正が相次いで施行されます。これらの変化に対応できない場合、法違反のリスクだけでなく、採用難や離職の増加といった経営リスクに直結します。

育児・介護休業法の改正(2025年4月・10月施行)

2025年の最大のトピックは、育児・介護休業法の大幅な改正です。今回の改正は、育児や介護と仕事の両立支援を企業に強く求める内容となっています。

  • 柔軟な働き方の実現: 3歳から小学校就学前の子を育てる従業員に対し、テレワークや短時間勤務、始業時刻変更などの柔軟な働き方を選択できる措置を講じることが義務化されます。
  • 子の看護休暇の拡大: 取得できる対象となる子の範囲が「小学校3年生修了まで」に延長され、感染症に伴う学級閉鎖や入園式・卒園式への参加も取得事由として認められます。
  • 残業免除の期間延長: 所定外労働の制限(残業免除)を請求できる期間が、これまでの「3歳になるまで」から「小学校就学前まで」に拡大されます。

社会保険の適用拡大と賃上げ圧力

2024年10月に従業員数51人以上の企業まで拡大された社会保険の適用範囲ですが、2025年以降もこの流れは加速します。特に「年収の壁」対策として、パートタイム労働者の労働時間延長や賃上げに取り組む企業への支援が強化される一方で、最低賃金の上昇に伴う人件費の増加は避けられません。

  • 51人以上企業の完全対応: 経過措置期間が終了し、対象企業におけるパート・アルバイトへの加入漏れに対する指導が強化される見込みです。
  • 制度改正の議論: 週所定労働時間20時間未満の労働者への適用拡大など、さらなる加入要件の緩和に向けた議論が進んでいます。

ハラスメント対策とコンプライアンスの厳格化

パワハラやセクハラに加え、顧客からの理不尽な要求である「カスタマーハラスメント(カスハラ)」への対策も企業に求められるようになっています。東京都での条例制定の動きなどを受け、国レベルでも法制化の議論が進んでおり、社会保険労務士への相談案件としても急増しています。企業は相談窓口の設置や研修の実施など、実効性のある防止措置を講じる必要があります。

労務トラブル予防から解決まで:相談サービスの具体的な活用シーン

労務トラブルは、発生してから対応するのではなく、発生させないための「予防」が最も重要です。しかし、万が一トラブルが発生してしまった場合には、初期対応のスピードと正確さが被害を最小限に抑える鍵となります。ここでは、具体的なシーン別に社会保険労務士への相談活用法を解説します。

シーン1:問題社員への対応と解雇トラブル

「遅刻を繰り返す」「業務命令に従わない」といった問題社員への対応は、経営者にとって大きなストレスです。感情的に解雇を言い渡してしまうと、不当解雇として訴えられ、数百万円単位の解決金を支払う事態になりかねません。

a) 何が変わったのか労働契約法や判例法理により、解雇のハードルは非常に高く設定されています。また、SNSでの拡散リスクも高まり、レピュテーション(評判)リスクも考慮しなければなりません。

b) 企業への影響不適切な対応は、他の従業員のモチベーション低下や連鎖退職を招きます。また、労働審判などの法的紛争に発展すれば、時間と費用の莫大なコストがかかります。

c) 実務での注意点まずは就業規則に基づいた指導・教育を行い、その記録を残すことが必須です。社会保険労務士に相談することで、法的に適切な注意指導書の書き方や、退職勧奨の進め方について具体的なアドバイスを得られます。

シーン2:未払い残業代請求への備え

退職した従業員から、過去に遡って残業代を請求されるケースが後を絶ちません。現在は消滅時効が3年に延長されており、請求額が高額化する傾向にあります。

a) 何が変わったのか勤怠管理システムの導入が進んでいますが、システムの設定ミスや、実態と乖離した運用(休憩時間が取れていないなど)が新たなリスクを生んでいます。

b) 企業への影響一人の請求が認められると、他の元従業員や現職従業員からの集団請求に波及する恐れがあります。数百万円から数千万円規模の支払い命令が出ることも珍しくありません。

c) 実務での注意点固定残業代(みなし残業)を導入している企業は特に注意が必要です。契約書への明記や、超過分の精算が正しく行われているか、専門家のチェックを受けることを強く推奨します。

シーン3:メンタルヘルス不調と休職・復職

従業員が「うつ病」などのメンタルヘルス不調を訴えた場合、会社としての安全配慮義務が問われます。休職期間中の連絡頻度や、復職判定の基準が曖昧だと、トラブルの原因になります。

a) 何が変わったのかストレスチェック制度の義務化(50人以上)に加え、テレワーク普及によるコミュニケーション不足から、メンタル不調を訴える従業員が増加しています。

b) 企業への影響貴重な人材の長期離脱は業務への支障となります。また、対応を誤り病状が悪化した場合、損害賠償請求のリスクも発生します。

c) 実務での注意点主治医の診断書だけでなく、産業医や社会保険労務士と相談しながら、会社として復職が可能かどうかを慎重に判断するプロセス(リハビリ出勤制度など)を規定しておく必要があります。

シーン4:ハラスメント通報への初期対応

社内のハラスメント相談窓口に通報があった際、事実確認の調査方法や、加害者・被害者への措置を間違えると、二次被害を生むことになります。

a) 何が変わったのかハラスメント防止法により、中小企業にも相談窓口の設置や事後の迅速な対応が義務付けられています。

b) 企業への影響調査の中立性が疑われると、被害者から会社も訴えられるリスクがあります。また、職場環境が悪化し、人材流出につながります。

c) 実務での注意点内部調査に限界を感じる場合は、外部の第三者委員会としての役割を社労士に依頼することも可能です。公平な立場でのヒアリングと事実認定が、トラブルの早期解決につながります。

シーン5:採用時の労働条件通知と雇用契約

「求人票の内容と実際の条件が違う」というトラブルは、入社直後の早期離職の主要因です。

a) 何が変わったのか2024年4月から労働条件明示ルールが改正され、就業場所や業務の変更範囲、更新上限の有無などを明示することが義務化されました。

b) 企業への影響採用コストをかけて獲得した人材がすぐに辞めてしまうだけでなく、ハローワークへの求人が出せなくなるなどのペナルティを受ける可能性があります。

c) 実務での注意点最新の法改正に対応した労働条件通知書(雇用契約書)のひな形を使用しているか確認してください。社会保険労務士に相談し、自社の実態に即した契約書を作成することが重要です。

シーン6:高齢者雇用と定年後の処遇

60歳の定年後も働き続ける従業員が増える中、給与水準(同一労働同一賃金)や業務内容の設定が課題となっています。

a) 何が変わったのか高年齢者雇用安定法の改正により、70歳までの就業機会確保が努力義務となっています。また、定年前後の待遇差に関する訴訟リスクも高まっています。

b) 企業への影響シニア社員のモチベーション維持が課題となる一方、若手社員への技能継承や人手不足解消の戦力として期待されています。

c) 実務での注意点再雇用時の契約更新基準や賃金規程を見直し、納得感のある処遇を設計する必要があります。年金との調整や給付金(高年齢雇用継続給付)の活用も視野に入れたアドバイスが有効です。

中小企業が陥りやすい「よくある誤解」と社会保険労務士の役割

多くの経営者が抱いている社労士に対するイメージや、労務管理に関する認識には、実務現場で大きなリスクとなり得る「誤解」が含まれています。ここでは代表的な誤解を解消します。

  • 誤解1:「従業員が少ないから就業規則は作らなくていい」
    法律上、常時10人未満の事業場には作成義務はありませんが、トラブル時の判断基準(解雇の根拠など)として就業規則は不可欠です。人数に関わらず、会社のルールブックとして作成しておくべきです。
  • 誤解2:「社労士は手続きだけをやってくれる人だ」
    手続き代行は業務の一部です。本来の価値は、法改正情報の提供や労務リスクの診断、人事評価制度の構築など、経営をサポートするコンサルティング機能にあります。
  • 誤解3:「顧問料が高いので、問題が起きてから相談すればいい」
    トラブル発生後の弁護士費用や解決金は、顧問料の何年分にもなることが多くあります。予防医療と同じで、定期的なメンテナンス(相談)の方がトータルコストは安く済みます。
  • 誤解4:「残業代は固定給(手当)に含んでいるから払わなくていい」
    固定残業代制度を導入していても、金額が明確に区分されていない、あるいは実際の残業時間が想定時間を超えている場合は、差額の支払いが必要です。「込み」という口約束は通用しません。

失敗しない!社会保険労務士の選び方と効果的な依頼のポイント

自社に合った社労士を選ぶことは、経営パートナーを選ぶことと同義です。単に「家から近い」「料金が安い」だけで選ぶと、期待したサポートが得られない場合があります。

1. 得意分野と専門性を確認する

社労士と一口に言っても、手続き業務が得意な事務所、人事評価制度に強い事務所、助成金申請に特化した事務所など、それぞれに特色があります。自社の課題が「事務効率化」なのか「組織改革」なのかを明確にし、その分野の実績が豊富な社会保険労務士に相談することが重要です。

2. デジタル対応度とレスポンスの速さ

2025年現在、電子申請やクラウド労務管理システムの活用はスタンダードになっています。ChatworkやSlack、ZoomなどのITツールに対応しているか、質問に対するレスポンスは早いかどうかも、スムーズな連携には欠かせない要素です。

3. コミュニケーションの相性

労務問題は、経営者の理念や従業員への想いが深く関わるデリケートな分野です。法律論だけでなく、経営者の気持ちに寄り添い、かつ会社の現状を踏まえた現実的な解決策を提案してくれる人物かどうを見極めましょう。

専門家が解説:中小企業が最大限に相談サービスを活用する重要点

最後に、社労士の相談サービスを120%活用し、企業の成長につなげるためのポイントを専門家の視点で整理します。

定期的な情報共有が予防のカギ

何か起きた時だけ連絡するのではなく、定期的なミーティングやチャットで「最近、従業員の様子が少しおかしい」「新しい事業を始めたい」といった些細な情報を共有してください。社労士はその会話の中から、将来のリスクや活用できる助成金の種を見つけ出すことができます。

「できない理由」ではなく「できる方法」を聞く

法律を遵守することは大前提ですが、頭ごなしに「それは法律違反です」と否定するだけでは経営は進みません。「法律の範囲内で、自社の目的を達成するにはどうすればよいか」という視点で質問し、建設的な提案を引き出す関係性を築きましょう。

助成金の活用は「ついで」ではなく戦略的に

助成金は返済不要の資金ですが、受給には適切な労務管理(残業代の未払いがない、就業規則が整備されているなど)が前提となります。助成金目当てではなく、職場環境改善の取り組みの結果として助成金が得られるというスタンスで、社労士と中長期的な計画を立てることが重要です。

従業員への説明にも同席してもらう

新しい制度の導入や就業規則の変更を行う際、経営者からの説明だけでは従業員に不信感を持たれることがあります。第三者である専門家が「法改正に伴う必要な変更である」と客観的に説明することで、従業員の納得感を得やすくなります。

関連する詳しい情報はこちらのブログ一覧もご参照ください。

まとめ

2025年は育児・介護休業法の改正や社会保険の適用拡大など、中小企業にとって対応すべき課題が山積しています。これらの変化を乗り越え、企業が持続的に成長するためには、労務リスクの予防と迅速な解決が不可欠です。

社会保険労務士への相談は、単なる事務代行の依頼ではなく、企業の未来を守るための投資です。法改正への対応、問題社員への対策、そして働きやすい職場づくりに向けて、信頼できるパートナーと共に歩みを進めてください。今抱えている不安を放置せず、まずは専門家の意見を聞いてみることから始めましょう。

LINE お問合せ

大阪なんば駅徒歩1分
給与計算からIPO・M&Aに向けた労務監査まで
【全国対応】HR BrEdge社会保険労務士法人

こちらの内容もお勧めです