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福利厚生見直しで人件費高騰を解決!失敗回避、コスト削減と満足度を両立する6つのポイント

2025.12.17 福利厚生

近年、最低賃金の引き上げや社会保険の適用拡大などにより、企業の人件費負担は急速に増大しています。こうした状況下で経営を安定させ、かつ従業員のエンゲージメントを維持するためには、「福利厚生の見直し」が極めて有効な手段となります。しかし、安易な制度変更は法的なリスクや従業員の不満を招く恐れがあり、慎重な進め方が求められます。

福利厚生見直しで人件費高騰を解決!失敗回避、コスト削減と満足度を両立する6つのポイント

本記事では、福利厚生の見直しを通じて無駄なコストを削減しつつ、従業員満足度を向上させるための具体的な手順と、失敗しないための重要ポイントを専門的な視点で解説します。

現代社会で企業が直面する人件費高騰の背景と影響

企業の経営環境は今、かつてないほどの人件費上昇局面にあります。福利厚生の見直しが必要とされる最大の要因は、この構造的なコスト増にあります。単なる景気変動ではなく、法改正や社会構造の変化が絡み合っているため、一時的な対策では乗り切れないのが現状です。

具体的には、以下の3つの要素が企業経営を圧迫しています。

  • 最低賃金の大幅な引き上げ: 物価高に対応するため、政府は継続的な最低賃金の引き上げを推進しており、パート・アルバイトだけでなく正社員の賃金ベースアップ圧力も強まっています。
  • 社会保険の適用拡大: 「年収の壁」対策や法改正により、短時間労働者への社会保険適用範囲が拡大し、法定福利費の負担が急増しています。
  • 深刻な人手不足と採用コスト増: 労働人口の減少により、人材獲得競争が激化。採用単価の高騰に加え、既存社員の離職を防ぐためのリテンションコストも増加傾向にあります。

これらのコスト増を吸収し、利益を確保するためには、固定費の中でも大きな割合を占める福利厚生費の最適化が避けて通れません。

福利厚生の見直しがもたらす2つの効果:コスト削減と従業員満足度向上

適切に行われる福利厚生の見直しは、単なる経費削減にとどまらず、組織全体の生産性を高めるポジティブな効果をもたらします。コストを抑えることと、従業員を喜ばせることは、決してトレードオフ(二律背反)の関係ではありません。

見直しによって得られる主な効果は以下の2点です。

  • 無駄なコストの徹底的な削減:
    • 利用率が極端に低い保養所や契約施設の廃止。
    • 時代遅れとなった各種手当(現金支給)の整理統合。
    • 重複しているサービスの統廃合による管理コストの圧縮。
  • 従業員満足度(エンゲージメント)の向上:
    • 浮いた予算を、食事補助や健康支援などニーズの高い分野へ再投資。
    • ライフスタイルに合わせた選択肢の提供による公平感の醸成。
    • 「会社が自分たちを大切にしてくれている」というメッセージの発信。

漫然と続けてきた制度をスクラップ&ビルドすることで、筋肉質な経営体質と意欲的な組織風土を同時に手に入れることが可能です。

失敗しないための福利厚生見直し:計画から導入までのステップ

福利厚生の見直しを成功させるためには、思いつきで制度を変えるのではなく、データに基づいた論理的なプロセスを踏む必要があります。以下のステップに従って進めることで、手戻りや混乱を最小限に抑えることができます。

具体的な進め方は以下の通りです。

  1. 現状把握とコスト分析:
    • 現在の制度ごとの年間コスト、利用者数、利用率を正確に算出します。
    • 法定福利費と法定外福利費の内訳を整理し、削減可能な領域を特定します。
  2. 従業員ニーズの調査:
    • 全従業員を対象としたアンケートを実施し、「本当に欲しい制度」と「不要な制度」を洗い出します。
    • 属性(年代、性別、既婚・未婚)ごとのニーズの偏りも分析します。
  3. 見直し方針の策定:
    • 「コスト削減重視」か「満足度向上重視」か、あるいはその両立か、目的を明確にします。
    • 廃止する制度と新設・拡充する制度の原案を作成します。
  4. 制度設計と導入準備:
    • アウトソーシングサービスの活用も含め、運用負荷の少ない仕組みを設計します。
    • 就業規則や賃金規程の改定案を作成します。
  5. 社内周知と導入:
    • 説明会や社内報を通じて、変更の目的とメリットを丁寧に説明します。

【要注意】福利厚生見直しで陥りやすい落とし穴と回避策

福利厚生の変更において最も警戒すべき点は、従業員に「改悪された」と受け取られることです。特に既存の制度を廃止・縮小する場合、法的なトラブルに発展するリスクもあります。福利厚生の見直しにおける失敗を回避するためには、以下の落とし穴を事前に把握し、対策を講じることが不可欠です。

  • 「不利益変更」による法的リスク:
    • リスク: 合理的な理由なく、一方的に労働条件(福利厚生を含む)を引き下げることは、労働契約法により原則として禁止されています。
    • 回避策: 代替措置(別の利益の提供)を用意する、十分な経過措置期間を設ける、労働組合や従業員代表と誠実に協議し合意を得るなどのプロセスを徹底してください。
  • 周知不足による利用率低迷:
    • リスク: 新しい制度を導入しても、従業員がその存在や使い道を知らなければ、宝の持ち腐れとなりコストの無駄になります。
    • 回避策: イントラネットでの掲示だけでなく、朝礼での案内、ハンドブックの配布、利用体験談の共有など、複数のチャネルで継続的にアナウンスを行います。
  • 一部の従業員への偏り:
    • リスク: 特定の属性(例:育児中の社員のみ、若手のみ)だけが恩恵を受ける制度ばかりになると、他の従業員から不公平感を抱かれます。
    • 回避策: 全従業員が利用可能な「カフェテリアプラン」や「食事補助」などを組み合わせ、恩恵のバランスを調整します。

従業員が本当に喜ぶ!効果的な福利厚生制度を構築する秘訣

コストを抑えつつ満足度を高めるには、トレンドと実用性を兼ね備えた制度を選ぶことが重要です。近年のアンケート調査などで常に上位にランクインする、効果的な福利厚生の見直しアイデアを紹介します。

従業員のニーズが高い制度には以下のような特徴があります。

  • カフェテリアプラン(選択型福利厚生):
    • 会社がポイントを付与し、従業員がメニュー(旅行、自己啓発、育児用品など)の中から自由に選んで利用する仕組みです。個人のライフスタイルに合わせられるため、満足度が非常に高く、企業側も予算管理がしやすいメリットがあります。
  • 食事補助(社食サービス・チケットレストラン):
    • 毎日のランチ代を補助する制度は、手取り収入が増えるのと同等の効果を感じやすく、若手からベテランまで幅広く喜ばれます。一定の要件を満たせば福利厚生費として非課税扱いになるため、節税効果も期待できます。
  • 健康支援・メンタルヘルスケア:
    • 人間ドックの補助やフィットネスジムの利用割引、ストレスチェック後のカウンセリングなどは、「健康経営」の文脈でも重要視されています。従業員の健康維持は、長期的な生産性向上に直結します。
  • 特別休暇・アニバーサリー休暇:
    • 誕生日や結婚記念日などに休める制度は、導入コストがほとんどかからず、従業員のワークライフバランスを向上させる効果的な施策です。

見直し効果を最大化!PDCAサイクルで持続的な改善を実現する方法

福利厚生制度は、一度見直して終わりではありません。従業員の年齢構成の変化や社会情勢の移り変わりに合わせて、常にブラッシュアップしていく必要があります。福利厚生の見直しを成功させ続けるためには、以下のPDCAサイクルを回す仕組みを構築しましょう。

  1. Check(評価・測定):
    • 四半期または半期ごとに、各制度の利用実績を集計します。
    • 年に1回程度、従業員満足度調査を実施し、定性的な意見(「使いにくい」「もっとこうしてほしい」)を収集します。
  2. Action(改善):
    • 利用率が低迷している制度については、原因を分析します。周知不足であれば広報を強化し、ニーズがない場合は廃止や入れ替えを検討します。
    • 他社の成功事例や最新のトレンド情報を収集し、自社に取り入れられるものがないか検討します。
  3. Plan(計画):
    • 次年度の予算配分や制度変更の計画を立てます。
  4. Do(実行):
    • 改善計画に基づき、制度の改定や運用ルールの変更を実行します。

定期的なメンテナンスを行うことで、制度の陳腐化(形骸化)を防ぎ、常にコスト対効果の高い福利厚生運用が可能になります。

福利厚生の見直しは、人件費高騰という経営課題に対する防御策であると同時に、従業員エンゲージメントを高める攻めの一手でもあります。法的リスクや公平性に配慮しながら、自社に最適な制度へと進化させていきましょう。

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