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育児介護休業法改正で迷わない!実務対応「7つのステップ」とチェックリスト

2025.12.08 労務管理

2025年(令和7年)4月および10月から段階的に施行される「改正育児・介護休業法」。今回の改正は、男女ともに仕事と育児・介護を両立できる環境整備を企業に強く求める内容となっており、実務への影響は甚大です。「子の看護等休暇」の対象拡大や、「柔軟な働き方」を実現する新たな義務化など、対応すべき項目は多岐にわたります。

育児介護休業法改正で迷わない!実務対応「7つのステップ」とチェックリスト

「何から手をつければいいのか分からない」「4月施行と10月施行の違いが整理できていない」と悩む人事労務担当の方も多いのではないでしょうか。本記事では、複雑な法改正への対応をスムーズに進めるための「実務対応7つのステップ」を体系化し、見落としがちなポイントやチェックリストとともに徹底解説します。

育児介護休業法改正の主要ポイントと企業への影響

今回の法改正は、単なる制度の微修正ではなく、企業の雇用環境そのもののアップデートを迫るものです。まずは2025年に施行される主要な変更点を、施行時期別に整理して把握しましょう。

2025年4月1日施行の主なポイント

  • 「子の看護等休暇」への名称変更と拡充: 対象となる子が「小学校3年生修了まで」に延長され、取得事由に「感染症に伴う学級閉鎖」や「入園・入学式、卒園式への参加」が追加されます。また、勤続6ヶ月未満の労働者を労使協定で除外できる規定が廃止されます。
  • 所定外労働の制限(残業免除)の拡大: 対象が「3歳未満」から「小学校就学前」の子を養育する労働者へ拡大されます。
  • 介護離職防止の強化: 介護に直面した従業員への「個別の周知・意向確認」が義務化されるほか、40歳到達時等における「早期の情報提供」も義務化されます。
  • 育児休業取得状況の公表義務拡大: 従業員数1,000人超から「300人超」の企業へと対象が大幅に拡大されます。

2025年10月1日施行の主なポイント

  • 柔軟な働き方を実現するための措置: 3歳から小学校就学前の子を養育する労働者に対し、事業主は「始業時刻等の変更」「テレワーク」「短時間勤務」「新たな休暇」「保育施設の設置」の5つから2つ以上を選択肢として用意する義務が生じます。
  • 個別の意向聴取・配慮: 妊娠・出産等の申出時や、子が3歳になる前に、労働者の意向を聴取し、配慮することが義務化されます。

これらの改正により、企業は就業規則の改定だけでなく、個別の意向確認フローの構築や、管理職への教育といった実務対応が不可欠となります。

【実務対応】法改正への「全体の流れ」を把握する7ステップ

法改正対応を漏れなく進めるためには、場当たり的な対応ではなく、計画的なプロジェクトとして取り組むことが重要です。以下の7ステップに沿って準備を進めましょう。

  • Step 1: 改正内容の正確な把握と施行時期の整理
  • Step 2: 自社規定・現状とのギャップ分析
  • Step 3: 「柔軟な働き方」の選択肢検討と方針決定
  • Step 4: 就業規則・労使協定の改定案作成
  • Step 5: 従業員代表との協議・労使協定の締結
  • Step 6: 業務フローの整備とツール作成
  • Step 7: 社内周知と管理職研修の実施

各ステップ詳細:具体的な手続きと準備を徹底解説

Step 1: 改正内容の正確な把握と施行時期の整理

まずは厚生労働省の資料などを基に、4月施行分と10月施行分の内容を正確に理解します。特に「義務」なのか「努力義務」なのかの違いや、対象となる従業員の範囲(有期雇用労働者含む)を明確に区分けすることがスタートラインです。

Step 2: 自社規定・現状とのギャップ分析

現行の就業規則(育児介護休業規程)と改正法を照らし合わせます。「子の看護休暇」の対象年齢が就学前までになっていないか、残業免除の規定が3歳未満限定になっていないか等を確認します。また、現在300人超の企業であれば、育休取得率の公表に向けたデータ集計の準備ができているかも確認が必要です。

Step 3: 「柔軟な働き方」の選択肢検討と方針決定

10月施行の重要項目である「柔軟な働き方」。企業は以下から2つ以上を選んで制度化する必要があります。

  • 始業時刻等の変更(フレックスタイム制など)
  • テレワーク等(月10日以上)
  • 短時間勤務制度
  • 新たな休暇制度(保育施設の設置運営等を含む場合もあり、詳細は指針確認)
  • 保育施設の設置運営等

自社の業務特性に合わせ、現実的に導入可能なものを経営層と協議し決定します。特に「テレワーク」や「フレックス」は、既存制度の要件緩和で対応できるか検討しましょう。

Step 4: 就業規則・労使協定の改定案作成

方針が決まったら、規定の文言を作成します。「子の看護等休暇」への名称変更や、取得事由の追加(学級閉鎖、式典参加)を盛り込みます。また、介護に関する「個別の周知・意向確認」の手順も規定に明記することが望ましいでしょう。

Step 5: 従業員代表との協議・労使協定の締結

今回の改正では、勤続6ヶ月未満の除外規定が廃止される項目(子の看護等休暇)がある一方で、引き続き労使協定により除外できる項目もあります。新たに労使協定を結び直す必要があるため、過半数代表者との協議をスケジュールに組み込みます。

Step 6: 業務フローの整備とツール作成

制度を作っても運用できなければ意味がありません。「妊娠・出産の申出があった時」「介護の申出があった時」「子が3歳になる前」など、どのタイミングで誰がどのような案内をするかをフローチャート化します。

  • 意向確認書: 従業員の希望を聞き取るためのフォーマットを作成。
  • 周知用リーフレット: 制度内容を分かりやすく説明した資料を準備。

Step 7: 社内周知と管理職研修の実施

最後に全従業員への周知を行います。特に重要なのが管理職への研修です。「男性の育休取得」や「残業免除」に対して、管理職が誤った理解やハラスメントまがいの発言をしないよう、法改正の趣旨を徹底的に教育する必要があります。

労務担当者が知るべき「つまずきポイント」:事例で学ぶ対応策

  • 「子の看護等休暇」の行事参加の範囲今回追加される事由は「入園式、入学式、卒園式」です。授業参観や運動会まで含まれるわけではない点に注意が必要です。ただし、企業独自にこれらを含めることは差し支えありません。
  • 「柔軟な働き方」の選択肢不足「うちは短時間勤務があるから大丈夫」はNGです。10月施行の改正法では、対象者が選択できるよう2つ以上の措置を用意することが義務付けられています。短時間勤務に加え、フレックスやテレワークなど、もう一つの選択肢が必須です。
  • 介護の「早期情報提供」の漏れ介護休業の申出があった時の対応だけでなく、従業員が「40歳」になったタイミング等での情報提供も新たに義務化されます。給与明細への同封やメール配信など、システマチックに実施できる仕組みが必要です。
  • 公表義務の対象カウント「従業員数300人超」のカウントは、正社員だけでなく、期間の定めのある契約社員やパートタイム労働者も含めた「常時雇用する労働者」で判断されます。ギリギリの企業は特に注意が必要です。

これで万全!育児介護休業法改正対応「実践チェックリスト」

準備の進捗を確認するために活用してください。

  • [ ] 2025年4月1日施行分と10月1日施行分の内容を区別して理解している
  • [ ] 「子の看護等休暇」への名称変更、対象年齢・事由の拡大を就業規則に反映した
  • [ ] 所定外労働の制限(残業免除)を小学校就学前まで拡大した
  • [ ] 3歳~就学前の子を持つ従業員向けに「柔軟な働き方」を2つ以上選定した
  • [ ] 介護離職防止のための「個別周知・意向確認書」の書式を作成した
  • [ ] 40歳到達時等の介護情報提供の方法(メール、研修等)を決定した
  • [ ] 育児休業取得状況の公表義務(300人超)への該当有無を確認した
  • [ ] 従業員代表を選出し、労使協定の改定・再締結を行った
  • [ ] 改定した就業規則を労働基準監督署へ届け出た
  • [ ] 管理職向けの法改正説明会を実施した

法改正を機会に!従業員エンゲージメントを高める戦略的視点

法改正への対応は、形式的な「義務」として捉えると事務負担が増えるだけです。しかし、視点を変えれば、これは「従業員を大切にする企業」であることを内外に示す絶好のチャンスです。

少子高齢化が進む中、育児や介護と仕事の両立は、優秀な人材を確保・定着させるための必須条件となりつつあります。今回の改正で求められる「柔軟な働き方」や「個別の意向聴取」を積極的に推進することで、従業員は「会社は自分のキャリアと生活の両立を応援してくれている」と感じ、エンゲージメント(帰属意識)が高まります。

単なる法令遵守(コンプライアンス)にとどまらず、働きやすい職場環境づくり(ウェルビーイング)への投資と捉え、経営戦略の一環として改正対応に取り組んでみてはいかがでしょうか。

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まとめ

2025年の育児介護休業法改正は、4月と10月の2段階施行であり、その影響範囲は非常に広範です。「子の看護等休暇」の拡充や「柔軟な働き方」の義務化など、企業には具体的かつ迅速な対応が求められます。

本記事で紹介した「7つのステップ」に沿って準備を進めれば、抜け漏れなく対応できるはずです。特に「柔軟な働き方」の選択肢の設計や、現場の管理職への意識改革は、一朝一夕にはいきません。施行直前に慌てることがないよう、今から計画的にプロジェクトを進めていきましょう。自社だけで対応が難しい場合は、社会保険労務士などの専門家に相談することをお勧めします。

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