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労務管理の2025年法改正、企業が失敗しないための準備と対策10選は?

2025.12.07 労務管理法改正

導入

2025年(令和7年)は、労務管理にとって極めて重要な「法改正イヤー」となります。特に育児・介護休業法の2段階施行(4月・10月)や雇用保険法の改正は、企業の規模を問わず、就業規則の改定や実務フローの抜本的な見直しを迫るものです。「何から手をつければよいかわからない」「対応漏れによるリスクが怖い」と不安を感じる人事担当者も少なくありません。

労務管理の2025年法改正、企業が失敗しないための準備と対策10選は?

この記事では、2025年の法改正の全体像を整理し、企業が確実に実施すべき10の準備と対策を具体的な手順とともに解説します。実務担当者が陥りやすい「つまずきポイント」やチェックリストも網羅していますので、自社の対応状況と照らし合わせながら読み進めてください。

全体の流れ

2025年の法改正対応は、主に「育児・介護」「雇用保険」「次世代育成」の3つの柱で構成されています。施行時期が4月10月に分かれているため、計画的な準備が必要です。

まずは、対応の全体像を以下の5つのステップで把握しましょう。

  • ステップ1:【2025年4月】育児・介護休業法の改正対応(第1弾)
    • 子の看護休暇の拡充、残業免除の対象拡大など、就業規則の変更が必須となる項目です。
  • ステップ2:【2025年4月】雇用保険法・次世代法の改正対応
    • 自己都合退職の給付制限短縮や、高年齢雇用継続給付の縮小への実務対応を行います。
  • ステップ3:【2025年4月】男性育休取得率の公表義務化(300人超)
    • 対象企業が従業員数1,000人超から300人超へ拡大されます。データの集計と公表準備が必要です。
  • ステップ4:【2025年10月】育児・介護休業法の改正対応(第2弾)
    • 「柔軟な働き方を実現するための措置」の導入と、個別の意向聴取が義務化されます。
  • ステップ5:【2025年10月】新たな給付金制度への対応
    • 教育訓練休暇給付金などの新設に伴う、従業員への周知と運用フローの整備を行います。

ステップ1:育児・介護休業法の4月改正に対応する

2025年4月1日から、育児・介護休業法の改正第1弾が施行されます。この段階で最も重要なのは、従業員が利用できる休暇制度や働き方の制限緩和に関するルールの変更です。

まず、「子の看護休暇」の対象範囲が拡大されます。これまでの「小学校就学前」から「小学校3年生修了前」まで引き上げられるとともに、取得事由に「学級閉鎖」や「入園式・卒園式等の行事参加」が新たに追加されます。また、勤続6ヶ月未満の労働者を労使協定で除外できる仕組みが撤廃されるため、すべての従業員が取得できるよう就業規則(育児・介護休業規程)を見直す必要があります。

さらに、「所定外労働の制限(残業免除)」の対象も、これまでの「3歳未満」から「小学校就学前」へと大幅に拡大されます。これにより、残業免除を申請できる従業員が増加するため、業務配分の見直しや人員体制の調整が求められます。

ステップ2:雇用保険法と次世代法の変更を押さえる

2025年4月は雇用保険法にも大きな動きがあります。「自己都合退職者の給付制限期間」が、従来の2ヶ月から1ヶ月へと短縮されます(5年間で2回まで)。従業員にとっては退職後の失業手当を早期に受給できるメリットがある一方、企業側にとっては、退職への心理的ハードルが下がる可能性があるため、離職防止策の強化が重要になります。

また、60歳以上の賃金ダウンを補填する「高年齢雇用継続給付」の給付率が、最大15%から10%に縮小されます(2025年4月以降に60歳に達する人が対象)。シニア社員の処遇や手取り額に直結するため、対象者への説明と、必要に応じた再雇用時の賃金設計の見直しが不可欠です。

同時に、「次世代育成支援対策推進法」の改正により、従業員数100人超の企業は、一般事業主行動計画策定時に「育児休業取得状況」や「労働時間状況」に関する数値目標の設定が義務付けられます。

ステップ3:公表義務の拡大と実務フローの整備

これまで従業員数1,000人超の企業に義務付けられていた「男性労働者の育児休業等取得状況の公表」が、2025年4月より「常時雇用する労働者数が300人超」の企業へと拡大されます。該当する企業は、前事業年度の取得率を算出し、自社ホームページや「両立支援のひろば」などで年1回公表しなければなりません。集計漏れがないよう、今のうちから管理体制を整えておく必要があります。

また、介護離職防止に向けた対応も強化されます。従業員から家族の介護が必要である旨の申し出があった場合、「個別の周知・意向確認」を行うことが義務化されます。加えて、「介護のためのテレワーク」が努力義務として導入されるため、在宅勤務規定の整備も検討が必要です。

ステップ4:10月施行「柔軟な働き方」の措置導入

2025年10月1日からは、育児・介護休業法の改正第2弾が施行されます。ここでの目玉は、「柔軟な働き方を実現するための措置」の義務化です。

企業は、3歳から小学校就学前の子を養育する労働者に対して、以下の5つの選択肢から2つ以上を選んで制度化し、労働者がその中から選択できるようにしなければなりません。

  1. 始業時刻等の変更(フレックスタイム制など)
  2. テレワーク等(月10回以上)
  3. 短時間勤務制度
  4. 新たな休暇の付与(年間10日以上)
  5. 保育施設の設置運営等

さらに、妊娠・出産の申し出時や、子が3歳になる前に、将来の働き方についての「個別の意向聴取」を行うことも義務付けられます。面談シートの作成や、誰がいつ面談を行うかといった運用フローを10月までに確立する必要があります。

ステップ5:新たな給付金とマイナンバーカード対応

2025年10月には、雇用保険法において「**教育訓練休暇給付金**」が創設されます。これは、被保険者が自発的な教育訓練を受けるために無給休暇を取得した場合、基本手当相当額が支給される制度です。リスキリング(学び直し)を促進する施策であり、企業としても従業員のスキルアップ支援の一環として活用が期待されます。

なお、労務管理全般に関わるトピックとして、2024年12月の健康保険証廃止に伴い、2025年は「**マイナ保険証**」への完全移行期間となります。「資格情報のお知らせ」の配布や、マイナンバーカードを持たない従業員への「資格確認書」の発行手続きなど、現場での混乱を防ぐためのサポート体制も継続して求められます。

つまずきポイント

多くの企業が法改正対応で陥りがちな失敗や誤解を整理しました。これらは、現場の混乱や法違反のリスクに直結するため、特に注意が必要です。

  • 施行時期の「4月」と「10月」を混同する
    • 2025年の育児・介護休業法改正は2段階施行です。4月にすべての準備を終えたつもりで、10月の「柔軟な働き方措置」の対応が漏れてしまうケースが想定されます。就業規則の改定附則には、それぞれの施行日を明記し、運用開始のタイミングを誤らないようにしてください。
  • 「努力義務」と「義務」を見誤る
    • 例えば、3歳未満の子を持つ従業員へのテレワーク導入は「努力義務」ですが、3歳〜就学前の子を持つ従業員への「柔軟な働き方措置(2つ選択)」は「義務」です。努力義務だからと後回しにしていた項目が、実は義務化対象だったということがないよう、条文を正確に確認する必要があります。
  • 個別の「意向確認」を実施していない
    • 制度を作っただけでは不十分です。介護の申し出時や、妊娠・出産時、子が3歳になる前など、法律で定められたタイミングで個別に面談や書面での意向確認を行わなかった場合、法違反となります。必ず記録(ログ)を残す運用フローを構築してください。
  • 高年齢雇用継続給付の縮小を本人に伝えていない
    • 給付率が15%から10%に下がることは、再雇用者の手取り額に大きな影響を与えます。施行直前になって「給料が減った」とトラブルにならないよう、対象となる従業員(2025年4月以降に60歳になる方)へは早めのシミュレーション提示と説明が不可欠です。

チェックリスト

2025年の法改正対応に漏れがないか、以下のリストで確認しましょう。完了した項目にはチェックを入れ、進捗管理に役立ててください。

  • 就業規則(育児・介護休業規程)の改定
    • 子の看護休暇の対象年齢を「小3修了前」に変更したか
    • 子の看護休暇の取得事由に「学級閉鎖」「行事参加」を追加したか
    • 所定外労働の制限(残業免除)を「就学前」まで拡大したか
    • 労使協定による「入社6ヶ月未満」の除外規定を削除したか
  • 社内制度・運用の整備
    • (300人超企業)男性育休取得率の公表準備は完了しているか
    • (100人超企業)行動計画に「数値目標」を設定し、届出・公表したか
    • 介護の申し出があった際の「個別周知・意向確認書」の雛形を作成したか
    • 【10月施行】「柔軟な働き方措置」として導入する2つの制度を決定したか
    • 【10月施行】子が3歳になる前の「個別意向聴取」のフローを確立したか
  • 雇用保険・給与関係
    • 自己都合退職の給付制限短縮に伴い、退職時の説明資料を更新したか
    • 高年齢雇用継続給付の縮小(15%→10%)を対象者に説明したか
    • 給与計算システムの設定変更(高齢者の給付率変更等)を確認したか

法改正後も企業価値を高める労務管理体制の構築

2025年の法改正は、単なる「ルールの変更」ではなく、「働き方の多様性」を受け入れる企業体質への転換を促すものです。育児や介護を抱える従業員が離職することなく、柔軟に働き続けられる環境を整備することは、人手不足が深刻化する中で企業の競争力を左右する重要な要素となります。

法令遵守(コンプライアンス)は最低限のラインです。今回の改正を機に、男性の育休取得促進やシニア層の活性化、リスキリング支援などに積極的に取り組むことで、「選ばれる企業」としてのブランド力を高めることができます。まずはチェックリストに基づいた着実な準備を進め、制度が形骸化しないよう、社内への丁寧な周知と運用定着を目指しましょう。

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まとめ

2025年の労務管理は、4月と10月の2段階で施行される育児・介護休業法改正が中心となります。子の看護休暇の拡大や柔軟な働き方措置の導入など、企業が対応すべき項目は多岐にわたります。また、雇用保険法の改正による給付制限の短縮や、300人超企業への公表義務拡大なども見逃せません。本記事の「つまずきポイント」や「チェックリスト」を活用し、2025年法改正に向けた準備を万全に行いましょう。

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