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社会保険料削減!合法的に手取りを増やす最適戦略と注意点【社労士解説】

2025.12.12 労務管理

社会保険料削減!合法的に手取りを増やす最適戦略と注意点【社労士解説】

社会保険料削減は、企業と従業員双方にとって手取り収入を最大化するための重要な経営課題です。法改正の動向を見据えながら、合法かつ効果的な社会保険料削減策を講じることで、財務体質の強化と従業員満足度の向上を同時に実現できます。

社会保険料削減!合法的に手取りを増やす最適戦略と注意点【社労士解説】

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社会保険料の基本を理解する:なぜ削減が重要なのか

社会保険料削減を検討する際、まずその仕組みと経営へのインパクトを正しく理解する必要があります。社会保険料(健康保険、厚生年金、介護保険)は、企業と従業員が約半分ずつ負担する「労使折半」が基本ですが、その負担率は年々上昇傾向にあり、給与総額の約30%(労使合計)にも達します。

具体的には、額面給与が30万円の従業員の場合、企業と本人を合わせた社会保険料負担は月額約9万円、年間で100万円を超えます。利益率の低いビジネスモデルでは、この固定費が経営を圧迫する大きな要因となります。社会保険料削減は単なるコストカットではなく、キャッシュフローを改善し、その原子を賃上げや設備投資に回すための「攻めの経営戦略」と言えるでしょう。

合法的な社会保険料削減策の全体像

合法的な社会保険料削減策とは、制度の抜け穴を突くことではなく、社会保険料算定の基礎となる「標準報酬月額」の仕組みを正しく理解し、最適化することです。違法な未加入や過少申告は論外ですが、給与の支払い方や手当の名称、福利厚生の活用によって、同じ年収であっても社会保険料の等級が変わるケースがあります。

主なアプローチとしては、「給与と賞与のバランス調整」「非課税手当の活用」「福利厚生制度の導入(選択制DCなど)」が挙げられます。これらは法律に基づいた正当な手法ですが、導入には就業規則の変更や従業員への説明、場合によっては税務署への届出が必要です。全体像を把握した上で、自社の状況にマッチした手法を組み合わせることが成功の鍵です。

【戦略1】給与体系の見直しによる削減:メリット・デメリット

社会保険料削減の代表的な手法の一つに、月々の給与と賞与(ボーナス)の比率を見直す方法があります。社会保険料は「標準報酬月額(月給)」と「標準賞与額(ボーナス)」それぞれにかかりますが、賞与にかかる保険料には上限が設定されています。

  • メリット: 健康保険料は年間累計573万円、厚生年金保険料は1回につき150万円が上限です(2024年時点)。高額所得者の場合、月給を抑えて賞与比率を高めることで、上限を超えた部分の保険料が発生しなくなり、総額での削減が可能になります。
  • デメリット: 将来受け取る年金額(報酬比例部分)が減少する可能性があります。また、賞与は業績連動型にすることが多いため、従業員にとっては生活給の安定性が損なわれるリスクがあります。さらに、2025年以降の法改正で賞与の上限額が引き上げられる議論も進んでおり、長期的な効果には注意が必要です。

【戦略2】役員報酬最適化で社会保険料を抑える:メリット・デメリット

役員報酬の支払い方を工夫することで、社会保険料削減を実現する手法も広く知られています。特にオーナー社長や親族役員の場合、毎月の役員報酬を極端に低く設定し、その分を「事前確定届出給与」として賞与形式で受け取るスキームがあります。

  • メリット: 前述の賞与上限枠を最大限に活用でき、年間で数百万円単位の削減効果が出るケースもあります。キャッシュフローの大幅な改善が見込めます。
  • デメリット: 税務署への事前の届出(期限厳守)が必須であり、1日でも遅れると損金不算入になる税務リスクがあります。また、月額報酬が低すぎると、傷病手当金などの給付額が低下するほか、社会的信用(ローン審査など)に影響する可能性があります。近年、このスキームに対する当局の監視が強化されており、極端な設定は否認されるリスクが高まっています。

【戦略3】通勤手当・住宅手当の非課税枠活用:メリット・デメリット

手当の見直しも有効な社会保険料削減策です。特に注意すべきは「通勤手当」と「住宅手当」です。これらは所得税法上は非課税枠などがあっても、社会保険料の算定基礎には「全額」含まれるのが原則です。

  • 通勤手当の工夫: 定期代として毎月支給すると標準報酬月額に含まれますが、テレワーク導入に伴い「実費精算」に切り替えれば、それは給与ではなく「経費」扱いとなり、社会保険料の対象外にできる可能性があります(就業規則の整備が必要)。
  • 住宅手当の工夫: 現金で渡す住宅手当は社会保険料の対象ですが、「社宅制度(借り上げ社宅)」を導入し、会社が家賃を払い、従業員から一定の賃料(法定の賃貸料相当額)を徴収する形にすれば、差額分は福利厚生となり、社会保険料の対象外となります。
  • メリット: 借り上げ社宅は削減効果が非常に大きく、従業員の手取りも増えるため満足度が高いです。
  • デメリット: 物件の契約手続きや管理の手間が発生します。

【戦略4】雇用形態の見直し・福利厚生活用による削減:メリット・デメリット

社会保険料削減と福利厚生の充実を両立させる最先端の手法として、「選択制確定拠出年金(選択制DC)」の導入が注目されています。これは、給与の一部を「前払い退職金」として受け取るか、「確定拠出年金の掛金」として積み立てるかを従業員が選択できる制度です。

  • メリット: 掛金を選択した場合、その額は給与とみなされないため、所得税・住民税だけでなく社会保険料もかかりません。企業側も法定福利費を削減でき、従業員は老後資金を効率的に形成できます。また、パートタイマーの労働時間を「週20時間未満」などに調整し、社会保険の適用除外とする方法も、扶養範囲内で働きたい層にはメリットがあります。
  • デメリット: 選択制DC導入には、労使合意や規程の改定など導入コストと時間がかかります。従業員への投資教育も必要不可欠です。

【戦略5】社会保険料適正化の専門ツール・サービス活用

自社だけで社会保険料削減のシミュレーションを行うのは複雑で困難です。最近では、給与データを入力するだけで削減余地を診断できるクラウドツールや、社労士監修の適正化コンサルティングサービスが登場しています。

  • メリット: 複雑な計算を自動化でき、法改正にも対応した最新のロジックで試算できます。借り上げ社宅や選択制DC導入のシミュレーションも容易で、削減額を具体的な数字で把握できるため、経営判断が迅速になります。
  • デメリット: 導入費用やコンサルティング料が発生します。また、ツールごとの精度にばらつきがあるため、サポート体制が充実した信頼できるベンダーを選ぶ必要があります。コスト対効果(ROI)を冷静に見極めることが重要です。

違法な社会保険料削減策の危険性とリスク

社会保険料削減を急ぐあまり、違法行為に手を染めることは絶対にしてはいけません。例えば、実際の給与額よりも低い金額で届出をする、残業代を給与明細に記載せず現金で手渡しする、昇給したのに月額変更届(随時改定)を出さない、といった行為です。

これらは年金事務所の調査(4〜5年に1度の定期調査など)で必ず発覚します。発覚した場合、過去2年間に遡って不足分の保険料を徴収されるだけでなく、延滞金も加算されます。さらに悪質な場合は刑事罰の対象となり、企業名が公表されるなど、社会的信用を完全に失うことになります。「知らなかった」では済まされないため、必ず専門家である社労士の指導のもとで進めてください。

最適な社会保険料削減策を選ぶための比較検討ポイントと手順

自社に最適な社会保険料削減策を選ぶためには、以下の手順で比較検討を行いましょう。

  1. 現状分析: 全従業員の標準報酬月額分布を把握し、削減インパクトが大きい層(高額所得者や残業が多い層など)を特定します。
  2. 手法の選定: 「借り上げ社宅」や「選択制DC」など、導入ハードルと効果のバランスを見ます。例えば、賃貸住まいの若手が多いなら社宅、全社員向けなら選択制DCが有効です。
  3. シミュレーション: 選定した手法を導入した場合の「企業側の削減額」「従業員の手取り増加額」「将来の年金への影響」を具体的に試算します。
  4. 従業員説明: メリットだけでなく、将来の年金受給額への影響(デメリット)も正直に説明し、同意を得ることがトラブル回避に繋がります。

まとめ

社会保険料削減は、合法的なスキームを活用することで、企業のコスト削減と従業員の手取りアップを両立できる有効な施策です。給与・賞与バランスの見直し、借り上げ社宅の活用、選択制確定拠出年金の導入など、選択肢は多岐にわたります。

しかし、目先の削減額だけに囚われず、将来の年金への影響や法改正リスク、税務リスクを総合的に判断することが不可欠です。違法な手法は企業の存続に関わる重大なリスクとなります。自社の状況に合わせ、専門家の助言を得ながら、長期的視点で最適な戦略を実行してください。

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