新着情報
最低賃金2025年引き上げで再点検!給与計算と就業規則変更の重要ポイント5選
2024年の大幅な引き上げに続き、2025年も最低賃金の上昇トレンドは止まりません。「2020年代に全国平均1,500円」という政府目標に向け、企業はかつてないペースでの賃上げ対応を迫られています。しかし、単に時給を上げるだけでは不十分です。複雑な給与計算、就業規則の改定、そして「年収の壁」への対策など、経営者がクリアすべき課題は山積みです。

本記事では、最低賃金 2025年の動向を見据え、企業が今すぐ再点検すべき5つの重要ポイントを、社会保険労務士法人の視点から徹底解説します。給与計算の落とし穴や労基署の指摘事例を知り、リスクを回避しながら生産性を高めるための具体的な戦略を持ち帰りましょう。
最低賃金引き上げの基本:なぜ今、自社の給与体系を見直すべきか?
最低賃金の引き上げは、単なる法的義務の履行にとどまらず、企業の存続に関わる経営課題となっています。2024年度には全国加重平均が1,055円となり、前年度から大幅な引き上げが行われました。そして2025年度も、物価上昇や人手不足を背景に、さらなる引き上げが確実視されています。
なぜ今、給与体系の抜本的な見直しが必要なのでしょうか。
- 採用競争力の低下リスク:最低賃金ギリギリの設定では、人材の確保が困難になります。近隣の競合他社が賃上げを行えば、既存社員の流出も招きかねません。
- 人件費の構造的変化:最低賃金の上昇は、パート・アルバイトだけでなく、新入社員や若手社員の基本給にも波及します。これにより、従来の賃金テーブルが崩れ、給与体系全体のバランス調整が不可欠となります。
- 法的リスクの増大:「うちは大丈夫」と思っていても、計算方法の誤りで知らぬ間に最低賃金割れを起こしているケースが後を絶ちません。
2025年の改定を見据え、今のうちに自社の賃金水準が「世間相場」や「法的基準」に対してどの位置にあるかを正確に把握し、先手の対策を打つことが重要です。
給与計算で陥りがちなミスと見落としがちな手当の取扱い
最低賃金への対応で最も多いトラブルが、給与計算におけるミスです。「基本給が最低賃金を超えているから問題ない」という認識は危険です。最低賃金の対象となる賃金には厳格なルールがあり、これを見落とすと法令違反となります。
特に注意すべきは、最低賃金の計算に含まれない手当(除外賃金)の扱いです。
- 精皆勤手当・通勤手当・家族手当:これらは最低賃金の計算には含まれません。これらを含めて「月給÷月平均所定労働時間」で計算し、最低賃金をクリアしていると誤認するケースが多発しています。
- 時間外割増賃金(残業代)・休日割増賃金・深夜割増賃金:これらも当然除外されます。
- 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)や賞与:これらも対象外です。
また、固定残業代(みなし残業代)を導入している企業も要注意です。固定残業代を除いた「基礎部分」だけで最低賃金をクリアしている必要があります。「総支給額」で判断せず、必ず対象となる賃金のみを抽出して時給換算を行いましょう。
就業規則変更で失敗しない!記載すべき必須項目と注意点
最低賃金の上昇に伴い、賃金体系を変更する場合は、必ず就業規則(賃金規程)の変更が必要になります。これは労働基準法で定められた「絶対的必要記載事項」であり、変更後は所轄の労働基準監督署への届出が義務付けられています。
変更時の主なチェックポイントは以下の通りです。
- 基本給の改定:最低賃金に合わせて基本給を引き上げる場合、その金額や計算方法を明記します。
- 手当の見直し:基本給アップの原資を確保するために、諸手当を廃止・統合する場合は、不利益変更とならないよう十分な注意が必要です。合理的な理由なく手当を削減すると、従業員とのトラブルに発展する可能性があります。
- 賃金テーブルの変更:等級制度や号俸表を用いている場合、下位等級の金額が最低賃金を下回らないよう、テーブル全体のスライド改定が必要になることがあります。
就業規則の変更には、従業員代表の意見聴取が必要です。一方的な変更は無効となるリスクがあるため、改定の背景や意図を丁寧に説明し、理解を得るプロセスを大切にしてください。
パート・アルバイト社員への影響と適切な対応策
最低賃金 2025年の引き上げで特に影響を受けるのが、パート・アルバイト社員を多く抱える企業です。時給が上がると、扶養範囲内(年収103万円や130万円、106万円の壁)で働きたい従業員が、労働時間を抑制する「働き控え」を行う可能性が高まります。
これにより、企業は深刻な人手不足に陥るリスクがあります。適切な対応策を講じましょう。
- 年収の壁・支援強化パッケージの活用:「106万円の壁」への対応として、キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)などを活用し、手取り収入が減らないような取り組みを行う企業に対し、国からの助成が受けられます。
- 社会保険の適用拡大への対応:2024年10月から従業員数51人以上の企業まで適用が拡大されました。対象となる従業員への説明会を実施し、社会保険加入のメリット(将来の年金増額など)を伝えることで、フルタイム化を促すことも一つの戦略です。
- 業務効率化とシフト調整:限られた労働時間で成果を出せるよう、業務フローの見直しやDXツールの導入を進めることも重要です。
最低賃金違反を防ぐ!労働基準監督署の指摘事例から学ぶ対策
労働基準監督署は、最低賃金法違反を重点的に監督しています。違反が発覚した場合、最大50万円の罰金刑が科されるだけでなく、企業名が公表されるケースもあり、社会的信用を失うリスクがあります。
よくある指摘事例から、対策を学びましょう。
- 事例1:月給制社員の時給換算ミス
月給制の社員について、年間休日数を考慮せずに「月給÷160時間」などの固定値で計算していたため、実際には最低賃金を割っていた事例。正確な「月平均所定労働時間」を用いて計算し直す必要があります。 - 事例2:試用期間中の減額設定
「試用期間中は時給を低く設定する」という運用自体は可能ですが、その額が最低賃金を下回ることは原則認められません(特例許可を受けた場合を除く)。 - 事例3:特定の地域別最低賃金の見落とし
複数の都道府県に支店がある場合、本社の地域の最低賃金ではなく、各事業所が所在する地域の最低賃金が適用されます。地域ごとの改定額を必ず確認してください。
万が一、違反を指摘された場合は、過去に遡って差額を支払う義務が生じます。定期的な監査や専門家によるチェックが、最大のリスクヘッジとなります。
生産性向上に繋がる賃金制度・評価制度の見直し戦略
賃上げを「コスト増」とだけ捉えるのではなく、「投資」に変える視点が不可欠です。最低賃金の引き上げを機に、生産性を高めるための賃金制度・評価制度へと刷新しましょう。
具体的な戦略としては以下が挙げられます。
- 職務給・役割給の導入:「勤続年数」ではなく、「担当する仕事の価値」や「役割」に応じて賃金を支払う制度へ移行することで、若手や優秀な人材のモチベーションを高めます。
- 評価制度の明確化:何ができれば時給が上がるのか(昇給要件)を具体的に明示します。スキルマップを作成し、成長に応じた賃上げを行うことで、従業員のスキルアップ意欲を刺激します。
- 業務改善助成金の活用:賃上げとセットで設備投資(POSレジ導入、業務ソフト導入など)を行う場合、業務改善助成金を活用できる可能性があります。これにより、原資を確保しつつ生産性向上を実現できます。
専門家に相談すべきケースと社会保険労務士に依頼するメリット
最低賃金への対応は、法律、税務、労務管理が絡み合う複雑な業務です。自社だけで対応しようとすると、計算ミスや法改正の見落としなど、思わぬリスクを抱え込むことになります。
以下のようなケースでは、迷わず専門家である社会保険労務士(社労士)に相談することをお勧めします。
- 複雑な手当が多く、計算が正しいか不安な場合
- 就業規則や賃金規程を長年見直しておらず、実態と合っているか不明な場合
- 助成金を活用して、コストを抑えながら賃上げを行いたい場合
- 従業員から「給与が最低賃金を下回っているのでは?」と指摘された場合
社労士に依頼するメリットは、単なる事務代行にとどまりません。最新の法改正情報に基づいた正確なアドバイスはもちろん、貴社の実情に合わせた最適な賃金制度の設計、労使トラブルの未然防止など、経営の安定化に寄与するパートナーとしての役割を果たします。
まとめ
2025年の最低賃金引き上げは、企業にとって避けられない波ですが、これを機に組織体制を強化するチャンスでもあります。給与計算の正確性確保、就業規則の適切な改定、そして生産性向上への投資。これらを連動させて進めることが、企業の持続的な成長には不可欠です。
「最低賃金 2025」への対応は、早めの準備が鍵を握ります。不安な点があれば、プロフェッショナルの力を借りて、盤石な体制を整えましょう。
関連する詳しい情報はこちらのブログ一覧もご参照ください。
大阪なんば駅徒歩1分
給与計算からIPO・M&Aに向けた労務監査まで
【全国対応】HR BrEdge社会保険労務士法人

