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「不利益変更の禁止原則」とは?就業規則を変えるときの落とし穴と対処法

2025.06.29 スタッフブログ

「就業規則を見直したいが、労働条件の引き下げが“違法”になる?」「業績が厳しいから賞与を減らしたいけど大丈夫?」「社員に説明しても納得してくれない…」——従業員数100名以上の中小企業では、制度変更のたびに必ず浮上する問題が“不利益変更”です。

導入:制度変更の際に起こる3つの悩み

  • ・労働条件を見直したいが、どこまで変更が許されるか分からない
  • ・賞与や手当の減額で「違法じゃないか」と社員から反発を受けた
  • ・大阪や東京の拠点で制度がバラバラ、統一したいけれどトラブルが心配

こうした問題の根底には、労働法における「不利益変更禁止の原則」があります。これは、企業が一方的に就業規則などを変更して、労働者にとって不利な条件にすることを原則として禁止するルールです。

この記事では、名古屋・福岡・大阪・東京の顧問先を多数支援してきた社労士の立場から、不利益変更の基本と実務対応、合法的に制度を見直す方法をわかりやすく解説します。

「不利益変更禁止の原則」とは?

法的根拠:労働契約法第9条・第10条

労働契約法第9条では、労働者の合意なしに不利益な条件変更はできないとされています。また、第10条では、就業規則の変更が合理的である場合に限って、労働者の同意がなくても変更できるとされています。

合理的変更が認められる条件(第10条)

以下のような要素を総合的に判断します:

  • ・変更の必要性があるか
  • ・変更の内容が相当か(不利益の程度)
  • ・代替措置があるか
  • ・労働組合との協議・周知がされているか
  • ・従業員の受け止め方

実は多い?誤解とリスク

  • ・「就業規則を変えたら全員に自動適用される」→ × 合理性がなければ無効
  • ・「全社員に説明会をすればOK」→ × 内容に合理性がないと意味なし
  • ・「手当を減らすのは経営判断で自由」→ × 給与や福利厚生の変更には法的注意が必要

裁判例に学ぶ:名古屋の医療法人ケース

賞与支給基準の一方的な変更が違法とされ、元通りの賞与支給と損害賠償命令が出された例も。変更の際の説明・協議の重要性が改めて問われました。

不利益変更を合法的に進めるための8つのステップ

  • ① 変更理由を明文化する
    変更の目的(経営悪化、制度改革など)を明確にし、説明責任を果たせるようにします。
  • ② 就業規則の現状分析
    対象となる条文や制度がどうなっているか、現行ルールを正確に把握しましょう。
  • ③ 給与計算や手当の影響をシミュレーション
    金額ベースでどれくらいの差が出るのかを示し、不公平感を軽減します。特に大阪や東京の本社部門では明確な数値が説得材料に。
  • ④ 社員への説明会を開催
    社内説明会を実施し、意見を聴取。一方的ではなく双方向の姿勢が信頼構築につながります。
  • ⑤ 労働組合または従業員代表との協議
    合意形成のプロセスが変更の“合理性”として非常に重要視されます。
  • ⑥ 代替措置や緩和措置を提示
    たとえば、手当削減と同時に別のインセンティブを設けるなど、トレードオフが必要です。
  • ⑦ 改定後の就業規則を周知徹底
    電子掲示・配布などで周知し、署名取得も行いましょう。
  • ⑧ 社労士や顧問専門家と事前確認
    法的リスクや周知方法など、実務でのミスを防ぐために専門家の意見を仰ぎましょう。
  • 【注意】パート・契約社員にも影響が及ぶ
    雇用体系が異なっていても、就業規則が共通である場合はパートにも適用されるため、全体への影響を確認する必要があります。

よくある質問に答えます

Q. 経営悪化を理由に賞与カットは認められる?

A. 一定の条件を満たせば可能ですが、説明と協議、代替措置の検討が不可欠です。協議が不十分な場合、後に無効とされるリスクがあります。

Q. 同意を取れば、どんな変更もOK?

A. × 同意があっても、労働基準法に違反する内容は無効です。必ず法的枠組みに沿った変更を。

Q. 地域ごとに就業規則を変えてもいい?

A. はい、支店単位の就業規則も可能ですが、整合性が取れているか、法令順守されているかが重要です。

Q. アウトソースしても最終責任は会社?

A. はい。社労士に手続きを委託しても、内容の責任は会社にあります。必ず内容を確認しましょう。

まとめ:不利益変更は“手順”と“納得感”がすべて

「不利益変更の禁止原則」は労働者保護の観点から非常に厳しく適用されますが、手順と合理性をもって進めれば制度変更は可能です。

特に給与計算や就業規則に関連する変更は、労務リスクと直結します。大阪・東京・名古屋・福岡のように拠点が多い企業では、就業規則の整備や周知方法も含めて、顧問社労士の支援やアウトソースが有効です。

制度の見直しは、企業の未来をつくる大切なプロジェクト。焦らず丁寧に進めましょう。

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