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固定残業代とは?導入メリット・デメリット、設定方法を解説

2025.02.12 スタッフブログ

固定残業代制度の運用で労務リスクを抱えていませんか?適正化のポイントを解説

「固定残業代を導入したいが、未払い残業代のリスクが心配」「現在の固定残業代制度が適法かどうか不安」「固定残業時間を超えた場合の対応が複雑で困っている」

従業員100人規模の企業では、給与計算の効率化や人件費管理の観点から固定残業代制度を検討・導入する企業が増加していますが、不適切な運用により未払い残業代請求や労働基準監督署の指導を受けるリスクも高まっています。

固定残業代制度とは、一定時間分の時間外労働に対する割増賃金をあらかじめ定額で支払う制度です。適切に運用すれば、企業にとって人件費の予測可能性向上と給与計算の効率化、従業員にとって収入の安定化というメリットがありますが、法的要件を満たさない場合は制度自体が無効とされるリスクがあります。

適切な固定残業代制度の運用により、給与計算の正確性向上、就業規則の整備、労務リスクの回避、さらには助成金申請時の適正性確保にもつながります。また、DXツールを活用した労働時間管理により、固定残業時間の超過管理と適切な追加支払いも効率化できます。

本記事では、全国対応のHR BrEdge(エイチアールブレッジ)社会保険労務士法人が、企業の総務担当者と経営者の視点から、固定残業代制度の適正な設計・運用方法と労務リスク回避のポイントを詳しく解説します。

固定残業代制度の法的要件と企業が注意すべきリスク

固定残業代制度は、労働基準法に基づく割増賃金の支払い義務を満たすための制度であり、単なる給与計算の簡略化手段ではありません。従業員100人規模の企業では、この制度の法的性質を正確に理解し、適切に運用することが労務リスク管理の前提条件となります。

固定残業代制度が有効となるためには、①固定残業代部分と基本給部分の明確な区分、②対象となる時間外労働時間の明示、③固定残業時間を超えた場合の追加支払いの保証、④労働契約書・就業規則への明記、という4つの法的要件を満たす必要があります。

制度設計における法的要件の詳細

明確な区分表示では、「月給30万円(基本給25万円、固定残業代5万円・30時間分を含む)」のように、基本給と固定残業代を明確に分離して表示する必要があります。「営業手当」「業務手当」などの曖昧な名称では固定残業代として認められません。

対象時間の明示では、固定残業代が何時間分の時間外労働に対応するかを具体的に示す必要があります。単に「残業代込み」という表現では不十分で、「月30時間分の時間外労働に対する割増賃金として」という明確な記載が必要です。

追加支払いの保証では、固定残業時間を超過した場合に確実に追加の割増賃金を支払うことを制度上担保する必要があります。これは単なる運用上の約束ではなく、制度設計の根幹に関わる要件です。

企業が陥りやすい制度設計のミス

固定残業時間の設定ミスが最も多い問題です。36協定の上限(月45時間・年360時間)を超える固定残業時間の設定や、実際の残業実態と大きく乖離した時間設定は、制度の有効性を損なう可能性があります。

ある製造業の企業(従業員108名)では、固定残業時間を50時間に設定していたため、労働基準監督署から「36協定の上限を超える固定残業時間設定は不適切」として指導を受けました。その後、月40時間の固定残業時間に変更し、業務効率化により実際の残業時間も削減することで適正化を図っています。

経営者が理解すべき財務・法的リスク

経営者にとって重要なのは、不適切な固定残業代制度による財務・法的リスクの理解です。制度が無効と判断された場合、固定残業代部分を基本給とみなした上で、全ての時間外労働に対して改めて割増賃金を計算し直すことになり、膨大な未払い残業代が発生する可能性があります。

また、労働基準法違反として刑事罰(6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金)の対象となる可能性もあり、企業の社会的信用失墜につながるリスクも存在します。

総務担当者が押さえるべき実務ポイント

総務担当者にとって固定残業代制度の運用は、継続的な労働時間管理と正確な給与計算が核心となります。固定残業時間の超過監視、追加残業代の計算、深夜労働割増の別途計算など、複雑な給与計算業務が発生します。

特に重要なのは、固定残業代に含まれない深夜労働割増賃金(25%)の別途計算です。午後10時から午前5時までの労働については、固定残業代とは別に深夜労働割増賃金を支払う必要があるため、労働時間の詳細な把握と計算が必要になります。

また、労働契約書の更新、就業規則の改定、給与明細の記載方法見直しなど、制度導入・変更時の事務手続きも多岐にわたります。顧問社労士がいない企業では、これらの専門的な手続きへの対応が特に困難になるため、外部専門家のサポートが重要になります。

適正な固定残業代制度の設計と効果的な運用方法

固定残業代制度の成功には、法的要件を満たす制度設計と継続的な適正運用が不可欠です。ここでは、実際に適正な制度運用を実現している企業の事例をもとに、具体的な方法をご紹介します。

ステップ1:実態に基づく適正な制度設計

固定残業代制度の設計において、実際の残業実態を詳細に分析し、現実的で適法な制度を構築します。過去6ヶ月~1年間の残業実績分析、部署別・職種別の残業パターン把握、36協定の上限との整合性確認などを行います。

ある建設会社(従業員95名)では、部署別の残業実態分析を行った結果、「営業部門:月平均35時間」「施工管理部門:月平均25時間」「事務部門:月平均15時間」という実態が判明しました。この分析をもとに、部署別の固定残業時間設定(営業35時間、施工管理25時間、事務15時間)を導入し、実態に即した制度運用を実現しています。

ステップ2:明確な労働契約と就業規則の整備

制度の有効性確保のため、労働契約書と就業規則への適切な明記を行います。固定残業代の金額、対象時間、計算根拠、超過時の取扱いなどを具体的かつ明確に記載します。

成功事例として、あるIT企業(従業員112名)では、労働契約書に「月給35万円(基本給30万円、固定残業代5万円・月30時間分の時間外労働割増賃金として)。30時間を超える時間外労働については別途割増賃金を支給する」と明記しています。また、給与明細にも固定残業代の内訳を明示し、従業員の理解促進と制度の透明性確保を実現しています。

ステップ3:継続的な労働時間管理と適正な追加支払い

固定残業時間の超過管理と追加残業代の適正な支払いのため、精密な労働時間管理システムを構築します。リアルタイムでの残業時間監視、固定時間超過時の自動アラート、追加残業代の自動計算などにより、確実な法令遵守を実現します。

ある製造業の企業では、勤怠管理システムに固定残業時間管理機能を追加し、固定時間に到達した時点で従業員と管理者に自動通知する仕組みを構築しています。また、超過分の残業代計算も自動化し、給与計算ミスの防止と事務負担の軽減を同時に実現しています。

従業員への丁寧な説明と理解促進

固定残業代制度への従業員の理解と納得を得るため、制度の趣旨と内容の丁寧な説明を行います。制度説明会の開催、個別質問への対応、給与明細の見方説明などにより、従業員の不安解消と制度への信頼確保を図ります。

制度のメリット(収入の安定化、効率的な働き方の促進)とデメリット(固定時間内での効率性要求)を正直に説明し、従業員が納得して制度を受け入れられる環境を整備することが重要です。

システム連携と効率的な管理体制

固定残業代制度の効率的な運用には、勤怠管理システムと給与計算システムの高度な連携が効果的です。労働時間データの自動連携、固定残業代と追加残業代の自動区分計算、深夜労働割増の別途計算などを自動化します。

また、就業規則の定期見直し、労働契約書の更新管理、法改正への対応など、制度維持に必要な継続的な管理業務も体系化することが重要です。

アウトソースの活用により、複雑な給与計算業務や法的要件の確認を専門家に委託することも効果的です。顧問社労士による定期的な制度監査により、適正性の継続的な確保を実現できます。

助成金の活用により、労働時間管理システムの導入や制度整備にかかるコストを軽減することも可能です。働き方改革推進支援助成金や人材確保等支援助成金など、労働環境改善に関連する助成金を戦略的に活用しましょう。

固定残業代制度でよくある疑問と解決策

固定残業代制度の運用について、経営者や総務担当者から寄せられる代表的な質問にお答えします。

Q1:固定残業代には深夜労働割増賃金も含めることができますか?

A:深夜労働割増賃金は固定残業代とは別に支払う必要があります。固定残業代に含めることができるのは、時間外労働割増賃金(25%以上)と休日労働割増賃金(35%以上)のみです。深夜労働割増賃金(25%以上)は性質が異なるため、固定残業代とは別途計算・支給する必要があります。ただし、深夜の時間外労働の場合は50%以上の割増賃金となり、このうち時間外労働分(25%)は固定残業代に含めることができますが、深夜労働分(25%)は別途支給が必要です。

Q2:固定残業時間を月45時間に設定することは可能ですか?

A:36協定の範囲内であれば可能ですが、実態との整合性と健康配慮が重要です。月45時間は36協定の原則上限であり、法的には設定可能です。ただし、実際の残業実態がそれに見合っているか、従業員の健康に配慮した働き方ができているかを慎重に検討する必要があります。また、特別条項なしの36協定では年360時間が上限となるため、月45時間×12ヶ月=540時間とならないよう注意が必要です。実務的には月30~40時間程度の設定が一般的で、実態に即した適正な時間設定を推奨します。

Q3:固定残業代制度を廃止する場合、どのような手続きが必要ですか?

A:労働条件の変更として、適切な手続きと従業員への配慮が必要です。固定残業代制度の廃止は労働条件の重要な変更にあたるため、就業規則の変更手続き、労働契約書の更新、従業員への事前説明と同意取得が必要です。特に、廃止により従業員の収入が減少する場合は、不利益変更として法的な制約があるため、代替的な処遇改善(基本給の増額、各種手当の新設など)を検討する必要があります。変更理由の合理性、変更内容の相当性、手続きの妥当性を総合的に判断し、適法な変更手続きを行うことが重要です。

適正な固定残業代制度で労務リスク回避と効率的な給与管理を実現しよう

固定残業代制度の適正な運用は、労働基準法の遵守と効率的な給与管理を両立させる重要な経営課題です。不適切な制度運用による法的リスクを回避しながら、給与計算の効率化と従業員の収入安定化を実現することで、企業の持続的成長と従業員満足度向上を同時に達成できます。

従業員100人規模の企業では、この制度への適切な対応により、労務リスクの回避、給与計算業務の効率化、人件費管理の精度向上、従業員との信頼関係強化を総合的に実現できます。また、法令遵守の徹底により、労働基準監督署の調査への適切な対応や、労働紛争の予防にも大きく貢献します。

固定残業代制度の適正化は、給与計算の正確性向上、就業規則の充実、労働時間管理の高度化、人事制度の透明性確保など、人事労務管理全体の質向上にもつながります。DXツールの戦略的活用、アウトソースと内製化の最適化、助成金の効果的な利用により、効率的で持続可能な制度運用を実現することも可能です。

今こそ、適正な固定残業代制度により、法令遵守と効率的な給与管理を両立する労務管理体制を構築しませんか?

HR BrEdge社会保険労務士法人では、2007年の創業以来、顧問先50社・給与計算月1万人の実績をもとに、固定残業代制度の適正設計から運用監査まで、企業の労務リスク管理を総合的にサポートしています。ミスを出さない仕組みづくりと迅速な対応にこだわり、LINE、Slack、Chatworkなど、お客様の使用ツールに合わせて柔軟に対応いたします。

固定残業代制度の適正化や労務リスクの回避でお悩みの方は、まずは無料相談からお気軽にご相談ください。オンライン対応も可能ですので、全国どちらからでもサポートいたします。適正な固定残業代制度により、法令遵守と効率的な給与管理を両立する労務管理体制を一緒に構築していきましょう。

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