新着情報
外国人雇用における残業管理:法的に正しい勤怠システム運用で押さえるべき8つの要点
外国人雇用における残業管理の基本原則と法的背景
外国人労働者を雇用する際、まず理解しなければならない大原則は、「日本国内で就労する限り、国籍を問わず日本の労働関係法令が等しく適用される」ということです。労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法などの法律は、日本人従業員と同様に外国人労働者にも適用されます。したがって、法定労働時間(1日8時間、週40時間)や休憩、休日に関する規定は厳格に守らなければなりません。
しかし、外国人雇用にはこれに加え、「出入国管理及び難民認定法(入管法)」による規制が重なります。これが日本人雇用との決定的な違いです。在留資格の種類によっては、労働基準法が許容する範囲内であっても、入管法上の制限によって残業が禁止されたり、労働時間そのものに上限が設けられたりするケースがあります。
特に注意が必要なのは、労働時間の管理責任が「事業主」にあるという点です。もし違法な長時間労働や資格外活動の範囲を超えた労働をさせた場合、事業主は「不法就労助長罪」に問われる可能性があり、最大で3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科されるだけでなく、その後5年間は新たな外国人雇用ができなくなるという重大なペナルティを受けることになります。詳細なガイドラインについては厚生労働省の外国人雇用対策などを参照し、常に最新の法令を確認する姿勢が不可欠です。
在留資格別に異なる労働時間規制と残業上限への対応
外国人労働者の残業管理を適正に行うためには、彼らが保有する「在留資格」ごとのルールを正確に把握する必要があります。大きく分けて、「就労制限がない資格」と「制限がある資格」の2パターンで対応が異なります。
- 「永住者」「日本人の配偶者等」など身分に基づく在留資格日本人と同様に、就労活動に制限がありません。36協定の範囲内であれば、残業や休日労働も可能です。
- 「技術・人文知識・国際業務」「特定技能」などの就労ビザ原則として日本人と同様の労働時間管理が適用されます。36協定を締結・届出していれば、法定労働時間を超える残業(月45時間・年360時間以内が原則)も可能です。ただし、業務内容は許可された在留資格の範囲内に限られます。
最も注意が必要なのは「留学」および「家族滞在」の在留資格を持つ者です。これらの資格は本来就労を目的としていないため、働くためには「資格外活動許可」が必要です。許可を得た場合でも、労働時間は「週28時間以内」という厳格な上限があります。
- 週28時間ルールの厳格さ: この28時間には残業時間も含まれます。例えば所定労働時間を週28時間で契約していた場合、1分でも残業すれば違法となります。
- 掛け持ち(ダブルワーク)の通算: 複数のアルバイトをしている場合、すべての勤務先の労働時間を合算して週28時間以内でなければなりません。他社での労働時間を把握していなかったとしても、雇用主の責任が問われる可能性があります。
- 長期休業期間の特例: 留学生に限り、学則で定められた夏休みなどの長期休業期間中は「1日8時間・週40時間」まで労働が可能になります。ただし、学校の証明が必要となるため、自己申告だけで判断せず、年間カレンダー等で確認するプロセスが必要です。
外国人労働者特有の勤怠管理課題と具体的な対策
外国人労働者の勤怠管理では、言語や文化的な背景の違いから、日本人従業員とは異なる課題が発生しがちです。
- 「残業」に対する意識の違い: 一部の国や地域では、自分の業務が終われば定時前でも帰宅するのが当たり前であったり、逆に「稼ぎたい」という理由で会社への申告なしに長時間働こうとしたりするケースがあります。日本的な「チーム全体の進捗に合わせた残業」や「暗黙の了解」は通用しないと考え、就業規則を丁寧に説明する必要があります。
- 打刻ミスの多発: 勤怠システムの操作画面が日本語のみの場合、操作ミスによる打刻漏れや二重打刻が頻発します。これは給与計算の誤りや、意図しない労働時間超過のリスクに直結します。
- ダブルワークの管理困難: 前述の留学生などの場合、他社での勤務状況をリアルタイムで把握することは困難です。
これらの課題への対策として、以下の取り組みが推奨されます。
- 多言語マニュアルの作成: 勤怠打刻のルールや、遅刻・欠席時の連絡方法を母国語で図解した資料を用意する。
- 定期的なヒアリング: 特に留学生の場合、月1回程度、他社でのアルバイト状況が変わっていないかを確認し、書面で記録を残す。
- 労働条件通知書の多言語化: 雇用契約時に、労働時間や休憩、残業に関するルールを本人が確実に理解できる言語で明示する。
法的に正しい勤怠システム選定と運用のポイント
外国人雇用におけるリスクをシステムで制御するためには、一般的な勤怠管理機能に加え、以下の要件を満たすシステムの選定が望ましいです。
- 多言語対応(UI): 従業員画面が英語、中国語、ベトナム語などに切り替えられること。操作ミスを減らし、本人自身が労働時間を把握できるようにするためです。
- 在留資格管理機能: 在留カードの有効期限や在留資格の種類を登録し、期限切れ前にアラートを通知する機能。不法就労状態になるのを未然に防ぎます。
- 週28時間超過アラート: 留学生や家族滞在者の場合、週の労働時間が一定ライン(例えば25時間)を超えた時点で、本人と管理者に警告メールを飛ばす機能は非常に有効です。
- シフト管理との連動: 計画段階で法定労働時間や在留資格の上限を超えていないかをチェックできる機能。
運用上のポイントとしては、「実労働時間」と「在留資格上の上限」の乖離を常にモニタリングすることです。特に変形労働時間制を採用している場合、特定の週に労働時間が集中しすぎないよう、システム上で自動チェックをかける設定を行うと良いでしょう。
残業時間適正化のためのコミュニケーション戦略と教育
システムやルールを整備しても、現場の運用が伴わなければ意味がありません。外国人労働者、そして現場の日本人管理職双方への教育が重要です。
外国人労働者への教育:入社時のオリエンテーションで、「なぜ労働時間のルールを守らなければならないか」を法的な観点(ビザ更新への影響など)から説明します。「会社のため」ではなく「あなた自身が日本で働き続けるため」に必要なルールであることを伝えると、納得感が強まります。特に、「許可された時間を超えて働くと、強制送還のリスクがある」という事実は、正しく理解してもらう必要があります。
日本人管理職への教育:現場の店長やリーダーが、人手不足を理由に安易に残業を依頼しないよう教育します。「留学生には残業を頼めない(週28時間の枠内でしか頼めない)」ことや、「特定技能には36協定の上限がある」ことを徹底させます。また、異文化理解研修を取り入れ、「残業=やる気がある」といった日本的な評価基準を押し付けないようなマネジメント能力を育成することも大切です。
労務リスクを軽減する記録・書類管理の重要性
外国人雇用においては、労働基準法だけでなく入管法に関連する書類の管理も求められます。万が一、労働基準監督署や入国管理局の調査が入った際、適法な運用を証明できるのは「記録」だけです。
- 雇用契約書・労働条件通知書: 母国語または英語の併記があるものを2部作成し、署名入りのものを確実に保管します。
- 在留カードの写し: 採用時および更新時に必ず原本を確認し、両面のコピー(またはデータ)を保管します。偽造在留カードでないことを確認するため、出入国在留管理庁の失効情報照会を利用した記録を残すことも推奨されます。
- 勤怠記録: タイムカードやシステムログは、原則として5年間(当分の間は3年)の保存義務があります。特に留学生の「週28時間」の遵守状況を示す記録は、次回のビザ更新時に提出を求められる場合があるため、重要度が高いです。
- 36協定届: 残業をさせる場合は、必ず締結・届出を行い、その控えを事業場に備え付けておく必要があります。
これらの書類は、退職後も一定期間(通常は3年〜5年)保管しておく必要があります。外国人雇用状況届出の内容と整合性が取れているかも定期的にチェックしましょう。
外国人雇用における違法残業を未然に防ぐ監査と見直しのプロセス
コンプライアンスを維持するためには、定期的な内部監査の仕組みを構築することが効果的です。半年に1回など、以下の項目をチェックリスト化して監査を行います。
- 在留期限の確認: 全従業員の在留カードの期限が切れていないか、更新申請中であるか。
- 労働時間の実績確認:
- 36協定の上限を超えていないか。
- 留学生・家族滞在者の週28時間超過がないか。
- 特定技能外国人の労働時間が日本人と同等水準か(差別的扱いの禁止)。
- 賃金台帳の照合: 残業時間と支払われた残業代が一致しているか。
- ヒアリング実施: 長時間労働が常態化している部署がないか、現場マネージャーにヒアリングを行う。
監査で問題が発見された場合は、即座に是正措置を講じるとともに、原因分析を行い、再発防止策(シフト作成ルールの見直し、人員の補充など)を策定します。このプロセスを回すことが、企業としての信頼性(権威性)を高め、労務リスクを最小化します。
知っておくべき外国人雇用の残業代計算と賃金支払いルール
最後に、給与計算における注意点です。外国人労働者であっても、残業代(割増賃金)の計算方法は日本人と全く同じです。
- 法定外残業(時間外労働): 1日8時間または週40時間を超えた場合、通常の賃金の1.25倍以上。
- 深夜労働: 22時から翌5時までの労働は、さらに0.25倍を加算(残業かつ深夜なら1.5倍)。
- 法定休日労働: 週1回の法定休日に労働させた場合は、1.35倍以上。
注意すべきポイント:
- 基礎賃金の計算: 割増賃金の基礎となる時給単価には、基本給だけでなく諸手当も含まれます(家族手当、通勤手当など一部の限定列挙された手当を除く)。外国人特有の手当(帰国手当など)がある場合、それが基礎賃金に含まれるかどうかを規定で明確にしておく必要があります。
- 固定残業代(みなし残業): 導入している場合、雇用契約書で「〇〇時間分の残業代として〇〇円を含む」と明記し、超過分は別途支給する必要があります。この仕組みは外国人にとって理解しにくいため、特に丁寧な説明が不可欠です。
正しい計算と支払いは、外国人労働者との信頼関係の基盤です。「計算が複雑でわからない」という場合は、日本年金機構や社会保険労務士などの専門機関の情報を参照し、適正な運用を心がけてください。
大阪なんば駅徒歩1分
給与計算からIPO・M&Aに向けた労務監査まで
【全国対応】HR BrEdge社会保険労務士法人
