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特定技能外国人の給与・手取りはいくら?計算ミスを防ぐ5つの注意点と対策【2025年版】

2026.01.07 外国人雇用実務

特定技能外国人の受け入れを検討する企業にとって、最も頭を悩ませるのが「給与設定」と「手取り額」の計算ではないでしょうか。2025年現在、最低賃金の引き上げや制度改正が続いており、適正な給与計算はこれまで以上に複雑化しています。「日本人と同等以上」という基準を曖昧に理解したまま雇用契約を結ぶと、後々重大な法令違反や労働トラブルに発展するリスクがあります。

特に外国人材にとって、額面の給与と実際に受け取る手取り額のギャップは、離職の大きな原因となります。この記事では、特定技能外国人の給与に関する基本原則から、社会保険・税金の計算ロジック、計算ミスを防ぐための具体的な注意点までを網羅的に解説します。法令遵守(コンプライアンス)を徹底し、優秀な人材に長く働いてもらうための給与設計バイブルとしてご活用ください。

特定技能外国人の「給与」基本原則:日本人と同等以上が絶対条件

特定技能制度において、給与設定の最も重要なルールは「日本人と同等以上の報酬額」を支払うことです。しかし、これは単に「同じ金額を払えばよい」という単純な話ではありません。比較対象となる日本人の選定や、最低賃金との兼ね合いなど、法的な基準を正しく理解する必要があります。

「日本人と同等以上」の具体的な定義

「日本人と同等以上」とは、受け入れ企業で同じ業務に従事し、同程度の責任を負う日本人従業員がいる場合、その従業員の給与額を下回ってはならないというルールです。もし社内に全く同じ職務の日本人がいない場合は、近隣地域の同業他社で働く同等の経験年数を持つ日本人の賃金水準と比較して、遜色のない金額を設定する必要があります。

  • 比較対象: 同等の業務内容、責任の程度、役職、経験年数を持つ日本人従業員
  • 禁止事項: 外国人であることを理由に賃金を低く設定すること(不当な差別)

最低賃金法の遵守と地域別・産業別基準

当然ながら、給与は「最低賃金法」を遵守しなければなりません。2025年も最低賃金は上昇傾向にあり、特に地域別最低賃金だけでなく、産業によっては「特定最低賃金」が適用されるケースがあるため注意が必要です。

  • 地域別最低賃金: 都道府県ごとに定められた最低ライン
  • 特定(産業別)最低賃金: 特定の産業(電子部品製造業や自動車小売業など)に設定された、地域別よりも高い基準

どちらか高い方の金額以上で設定する義務があります。月給制の場合でも、所定労働時間で割り返した時給換算額が最低賃金を下回っていないか、必ず確認してください。

昇給・賞与・手当の取り扱い

基本給だけでなく、昇給や賞与(ボーナス)、各種手当についても、日本人従業員と同じルールを適用する必要があります。「外国人は賞与なし」「通勤手当は支給しない」といった扱いは、合理的な理由(業務内容の違いなど)がない限り認められません。就業規則や賃金規程に基づき、公平な運用が求められます。

知っておきたい!特定技能外国人の給与形態と計算方法

特定技能外国人の給与形態は、基本的には日本人の正社員と同様に扱われます。ここでは、具体的な給与形態の選び方と、間違いやすい割増賃金の計算方法について解説します。

月給制が原則(一部例外あり)

特定技能外国人の雇用契約は、原則としてフルタイムの直接雇用であるため、「月給制」を採用するのが一般的であり推奨されています。これにより、生活の安定を図ることができます。ただし、農業分野や漁業分野など、季節による繁閑の差が激しい一部の業種では、時給制が認められる場合もありますが、その場合でも雇用の安定性に配慮が必要です。なお、建設分野に関しては、国土交通省の基準により「月給制」での支払いが義務付けられています(日給月給制を含む)。

残業代・休日手当の計算ルール

給与計算で最もミスが起きやすいのが、時間外労働(残業)、休日労働、深夜労働に対する「割増賃金」の計算です。特定技能外国人も日本の労働基準法が完全適用されるため、以下の割増率を下回ることは許されません。

  • 時間外労働(残業): 法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超える分は25%以上の割増
  • 休日労働: 法定休日(週1回の休日)に労働させた場合は35%以上の割増
  • 深夜労働: 22時から翌朝5時までの労働は25%以上の割増

例えば、時給1,200円の契約の場合、残業時は1,500円以上、法定休日は1,620円以上の支払いが必要です。これらを基本給に含めて「固定残業代」とする場合は、雇用契約書にその旨と時間数、超過分の追加支払いを明記しなければなりません。

欠勤・遅刻・早退控除の計算

「ノーワーク・ノーペイの原則」に基づき、働かなかった時間分の賃金を控除することは可能です。しかし、就業規則に定められた計算方法に従う必要があり、ペナルティとして働かなかった時間以上の金額を引くことは労働基準法違反(賠償予定の禁止)となる恐れがあります。

  • 計算式: (月給 ÷ 月平均所定労働時間) × 不就労時間数
  • 注意: 15分の遅刻に対して1時間分の賃金をカットするような処理は違法です。

特定技能外国人の「手取り」を左右する社会保険・税金の仕組み

「採用面接で提示した給与より、振込額が少ない」という不満は、日本の控除システムへの理解不足から生じます。特定技能外国人は、日本の公的保険や税制の適用対象となるため、総支給額から約15%〜20%程度が控除されるのが一般的です。

社会保険(健康保険・厚生年金・雇用保険)

特定技能外国人は、適用事業所で働く場合、国籍に関わらず社会保険への加入が義務付けられています。

  • 健康保険: 医療費の自己負担が3割になります。
  • 厚生年金保険: 老齢年金や障害年金の受給権を得るための保険です。帰国時には「脱退一時金」を請求できる制度があることを説明すると、本人の納得感が高まります。
  • 雇用保険: 失業時や育児休業時に給付を受けられます。

これらの保険料は、日本人従業員と同様に、標準報酬月額に基づいて会社と本人が折半(雇用保険は事業主負担がやや多い)して負担します。

所得税(源泉徴収)

特定技能外国人の多くは日本に住所を有するため、税法上の「居住者」として扱われます。したがって、日本人と同様に「給与所得の源泉徴収税額表」に基づいて毎月の給与から所得税が天引きされます。扶養家族が母国にいる場合、適切な書類(親族関係書類や送金関係書類)を提出することで扶養控除を受けることができ、税額を抑えることが可能です。

住民税(2年目からの負担増に注意)

住民税は「前年の所得」に対して課税される仕組みです。そのため、来日1年目は基本的に課税されませんが、2年目の6月から天引き(特別徴収)が始まります。「2年目から急に手取りが減った」と感じさせないよう、採用時や1年目の段階で「来年から住民税がかかる」ことを丁寧に説明しておくことが極めて重要です。

【注意】特定技能外国人の給与・手取り計算で陥りやすい5つの落とし穴

ここでは、実務担当者が特に注意すべき、給与計算上のミスや法令違反のリスクが高い5つのポイントを解説します。これらは監査でも指摘されやすい項目です。

1. 最低賃金改定の反映漏れ

毎年10月頃に行われる地域別最低賃金の改定を見落とし、旧賃金のまま支給してしまうケースです。特に月給制の場合、所定労働日数の変更などで「時給換算額」が変わることがあるため、毎年の改定時期には必ず再計算を行いましょう。わずか数円の不足でも法令違反となります。

2. 違法な家賃・光熱費の控除

社宅や寮を提供する際、家賃や光熱費を給与から天引きするには、必ず「労使協定」の締結が必要です。さらに、控除できる額は「実費」を超えてはなりません。管理費名目で不当に高い金額を徴収することは、手取り額を不当に減らす行為として厳しく指導されます。

  • 鉄則: 家賃控除額は、会社が負担している家賃額(借上げの場合)を超えてはいけません。

3. 固定残業代(みなし残業)の運用ミス

固定残業代制度を導入している場合、実際の残業時間が固定分を超えたにもかかわらず、差額を追加支給していないケースが見受けられます。また、雇用契約書において「基本給」と「固定残業代」が明確に区分されていない場合、全額が基本給とみなされ、割増賃金の計算基礎単価が跳ね上がるリスクもあります。

4. 住民税の特別徴収手続き漏れ

特定技能外国人は、原則として住民税の「特別徴収(給与天引き)」が求められます。会社側が手続きを怠り、本人に納付書が届いて未納になってしまうと、在留期間の更新許可に悪影響を及ぼす可能性があります。納税状況は在留審査の重要項目です。

5. 賞与・退職金の不支給に関する説明不足

就業規則で賞与や退職金が「あり」となっているにもかかわらず、外国人だからという理由だけで不支給にすることはできません。逆に、支給要件(在籍期間など)を満たしていないために支給しない場合は、その根拠を明確に説明できなければトラブルの元となります。

給与トラブルを防ぐ!特定技能外国人材への適切な説明と確認プロセス

給与に関するトラブルの多くは、金額そのものよりも「事前の説明不足」や「認識のズレ」から発生します。入社前後のプロセスで誤解を解消する仕組みを作りましょう。

雇用条件書(母国語併記)の交付と読み合わせ

特定技能外国人を雇用する際は、労働基準法に基づく労働条件通知書だけでなく、入管法に基づく「雇用条件書」の交付が義務付けられています。この書類は、本人が十分に理解できる言語(母国語など)で作成し、署名をもらう必要があります。単に渡すだけでなく、面談時に項目を一つひとつ読み合わせ、合意を得ることが重要です。

「手取りシミュレーション」の提示

面接時や内定時に、額面の給与だけでなく、社会保険料や税金、家賃などを控除した後の「手取り見込額」を具体的な数字で提示しましょう。「月給22万円」と伝えても、本人はそこから4〜5万円引かれることを想定していない場合があります。「口座に振り込まれるのは約17万円です」と具体的に伝えることで、入社後の失望を防げます。

賃金台帳と給与明細の適切な管理

毎月の給与明細は必ず交付し、各項目の意味を理解できるようサポートします。また、労働基準監督署や入管の調査に備え、賃金台帳(労働時間数、時間外労働時間数、深夜労働時間数などが正しく記載されたもの)を法定期間保存してください。

特定技能外国人雇用の給与・手取りに関する最終確認チェックリスト

最後に、給与設定や支払いが適正に行われているかを確認するためのチェックリストを掲載します。これらをクリアしているか、定期的に見直してください。

  • [ ] 給与水準: 同じ業務を行う日本人従業員と比較して、同等以上の金額設定になっているか。
  • [ ] 最低賃金: 最新の地域別最低賃金および産業別最低賃金をクリアしているか(時給換算で確認)。
  • [ ] 割増賃金: 時間外(1.25)、休日(1.35)、深夜(1.25)の割増率が正しく設定・計算されているか。
  • [ ] 雇用条件書: 母国語が併記された雇用条件書を作成し、本人に内容を説明した上で署名をもらっているか。
  • [ ] 控除協定: 家賃や光熱費を給与天引きする場合、労使協定を締結し、かつ実費の範囲内であるか。
  • [ ] 税務処理: 居住者として適切な源泉徴収を行い、扶養控除申告書等の必要書類を回収しているか。
  • [ ] 住民税: 2年目以降の住民税天引き(特別徴収)の準備、または本人への説明ができているか。
  • [ ] 社会保険: 入社日から健康保険・厚生年金・雇用保険に加入手続きを行っているか。

まとめ

特定技能外国人の給与計算は、日本の労働法制と入管法の両方を遵守しなければならない、非常にデリケートな業務です。「日本人と同等以上」という原則を守り、社会保険や税金の仕組みを丁寧に説明することは、単なる法令遵守にとどまらず、外国人材との信頼関係を築く第一歩となります。

給与や手取りに関する誤解は、モチベーションの低下や早期離職、さらには失踪といった深刻なトラブルに直結しかねません。2025年の最新ルールを常に把握し、透明性の高い給与支払いを実践することで、企業の成長を支える貴重な人材として定着してもらうことができるでしょう。

関連する詳しい情報は出入国在留管理庁の特定技能制度ポータルサイトなどもご参照ください。

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