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特定技能受け入れ準備のすべて:初めての企業が後悔しない12ステップ

2025.12.22 特定技能受け入れガイド

特定技能受け入れ準備のすべて:初めての企業が後悔しない12ステップ

人手不足解消の切り札として注目される在留資格「特定技能」。しかし、いざ自社で特定技能外国人の受け入れを検討し始めると、「何から手をつければいいのか分からない」「手続きが複雑で難しそう」と頭を抱える担当者の方は少なくありません。

特定技能の受け入れ準備は、単に外国人を採用するだけでなく、法律で定められた厳格な要件や支援計画をクリアする必要があります。準備不足のまま進めると、申請が不許可になったり、採用後に予期せぬトラブルが発生したりするリスクもあります。

この記事では、初めて特定技能外国人を受け入れる企業の担当者様に向けて、制度の基本から具体的な手続き、定着のためのフォローアップまでを、実務に即した「12のステップ」で体系的に整理しました。後悔しない受け入れ体制を築くための完全ガイドとしてご活用ください。

「特定技能」受け入れ準備の全体像と流れ

特定技能人材の受け入れを成功させるには、採用活動の前段階から入念な準備が必要です。行き当たりばったりで進めると、法令違反や申請不備につながる恐れがあります。まずは、受け入れ完了までのロードマップを頭に入れておきましょう。

ここでは、受け入れプロセスを12のステップに分解して解説します。この流れに沿って一つひとつ確実にクリアしていくことが、最短ルートでの成功の鍵となります。

  • Step 1: 特定技能制度の正しい理解(対象分野・業務範囲)
  • Step 2: 自社(受け入れ機関)の要件チェック
  • Step 3: 支援体制の決定(自社支援か登録支援機関への委託か)
  • Step 4: 人材の募集・選定(試験合格者または技能実習修了者)
  • Step 5: 面接・採用内定
  • Step 6: 雇用契約の締結
  • Step 7: 事前ガイダンスの実施
  • Step 8: 健康診断および必要書類の収集
  • Step 9: 1号特定技能外国人支援計画の策定
  • Step 10: 在留資格認定証明書交付申請(または変更許可申請)
  • Step 11: 入国・就労開始に向けた生活準備(住居確保など)
  • Step 12: 入社・行政への届出

「特定技能」制度の基本を理解する:初心者のための概要

特定技能とは、国内で人材確保が困難な産業分野において、一定の専門性・技能を有する外国人を受け入れるために2019年に創設された在留資格です。制度は複雑に見えますが、まずは以下のポイントを押さえましょう。

特定技能1号と2号の違い

特定技能には「1号」と「2号」の2種類があります。初心者の企業が最初に受け入れるのは、大半が「特定技能1号」です。

  • 特定技能1号: 相当程度の知識または経験を必要とする技能を持つ人材向け。在留期間は通算5年までで、原則として家族の帯同は認められません。受け入れ企業には、生活や職業生活上の手厚い「支援」が義務付けられています。
  • 特定技能2号: 熟練した技能を持つ人材向け。在留期間の上限はなく、要件を満たせば家族の帯同も可能です。2023年以降、対象分野が拡大され、長期的な雇用が可能となりました。

対象となる産業分野

特定技能で外国人が働けるのは、政府が指定した特定の分野に限られます。2024年時点で、介護、建設、製造業、外食業、宿泊、農業など、さらに自動車運送業や鉄道、林業、木材産業などが追加され、計16分野へと広がっています。自社の業務が対象分野に含まれているか、必ず確認しましょう。

技能実習制度との違い

よく混同される「技能実習」は、国際貢献と技術移転を目的とした制度であり、労働力不足の解消を目的とするものではありません。一方、「特定技能」は即戦力となる労働力の確保が目的です。そのため、特定技能人材は原則としてフルタイムの直接雇用契約となり、日本人と同等以上の処遇が求められます。

「特定技能」受け入れ企業が満たすべき要件と確認事項

特定技能外国人を雇用するためには、企業側(特定技能所属機関)も厳格な要件を満たしている必要があります。どんなに優秀な人材を採用できても、企業側がNGであればビザは許可されません。

以下の主要な要件をクリアしているか、事前に社内で確認しましょう。

  • 法令遵守: 労働関係法令、社会保険関係法令、租税関係法令を遵守していること。未納や滞納がある場合は申請が通りません。
  • 非自発的離職者の有無: 特定技能雇用契約の締結前1年以内に、同種の業務に従事する労働者を会社都合で解雇(整理解雇など)していないこと。
  • 行方不明者の有無: 締結前1年以内に、自社の責めに帰すべき事由により行方不明者を発生させていないこと。
  • 支援体制の整備: 外国人が日本で安定的・円滑に活動できるよう、職業生活や日常生活、社会生活上の支援を適切に実施できる体制があること(または登録支援機関に委託すること)。
  • 報酬額の適正: 日本人が従事する場合と同等以上の報酬額を支払うこと。
  • 保証金の禁止: 外国人から保証金を徴収したり、違約金を定める契約を結んだりしていないこと。

「特定技能」申請に必要な書類準備と手続きの流れ

特定技能の申請手続きは、他の就労ビザに比べて必要書類が非常に多いのが特徴です。書類の不備は審査の長期化や不許可の直接的な原因となります。

主な必要書類

申請には、大きく分けて「外国人本人に関する書類」「受け入れ企業に関する書類」「分野ごとの書類」の3種類が必要です。

  • 外国人本人: パスポートの写し、特定技能評価試験・日本語試験の合格証明書(または技能実習2号修了の証明)、健康診断個人票、履歴書など。
  • 受け入れ企業: 登記事項証明書、決算書、労働保険・社会保険・税金の納付証明書、特定技能所属機関概要書など。
  • 分野別: 該当する分野の協議会への加入誓約書や、分野特有の要件を満たすことを証明する書類。

申請手続きのフロー

人材が海外にいるか国内にいるかで手続きが異なります。

  1. 海外から呼び寄せる場合: 地方出入国在留管理局へ「在留資格認定証明書交付申請」を行います。審査期間は通常1〜3ヶ月程度です。証明書が交付されたら原本を海外の本人へ送付し、現地の日本大使館等で査証(ビザ)の発給を受けます。
  2. 国内在留者を雇用する場合: 留学生や技能実習生など、すでに日本にいる外国人を採用する場合は「在留資格変更許可申請」を行います。許可が下りれば新しい在留カードが交付され、就労可能となります。

外国人材への生活・職業支援計画の具体策

特定技能1号外国人を受け入れる企業には、法律で定められた「義務的支援」を実施する責任があります。これをまとめたものが「1号特定技能外国人支援計画」です。以下の10項目を具体的に計画し、実行しなければなりません。

  1. 事前ガイダンス: 雇用契約締結後、入国等の申請前に、労働条件や活動内容、入国手続きなどについて対面またはテレビ電話で説明します。
  2. 出入国時の送迎: 入国時は空港まで出迎え、帰国時(一時帰国を除く)は保安検査場まで見送ります。
  3. 住居確保・生活契約支援: 社宅の提供や賃貸契約の連帯保証人になる等の支援、銀行口座開設、携帯電話契約、ライフラインの手続き補助を行います。
  4. 生活オリエンテーション: 日本のルールやマナー、交通機関の利用方法、災害時の対応、医療機関の利用法などを入国後(または変更許可後)すぐに8時間以上かけて説明します。
  5. 公的手続きへの同行: 住民登録や税金、社会保険の手続きが必要な際、役所等へ同行し補助します。
  6. 日本語学習の機会の提供: 日本語教室の案内や教材の提供、学習費用の補助などを行います。
  7. 相談・苦情への対応: 職場や生活に関する相談に母国語等で対応できる体制を整えます。
  8. 日本人との交流促進: 自治会や地域行事への参加案内、地域住民との交流の場を設けます。
  9. 転職支援: 会社都合で解雇する場合などは、次の就職先を探すための支援や推薦状の作成を行います。
  10. 定期的な面談・行政通報: 3ヶ月に1回以上、支援責任者等が面談を行い、労働状況を確認して定期報告書を入管へ提出します。

これらの支援は、自社で実施する(要件あり)か、国が認定した「登録支援機関」に委託することが可能です。初めての受け入れでは、ノウハウを持つ登録支援機関に委託するのが一般的かつ安心です。

「特定技能」人材の受け入れ後、定着までのフォローアップ

特定技能人材を採用しても、すぐに辞められてしまっては元も子もありません。義務的な支援に加え、企業独自のフォローアップが定着率を大きく左右します。

コミュニケーションの活性化

言葉の壁は孤独感を生みやすい最大の要因です。業務指示だけでなく、雑談や声掛けを意識的に行いましょう。「やさしい日本語」を使ったコミュニケーション研修を日本人社員向けに行うことも効果的です。

キャリアパスの提示

「5年で終わり」ではなく、特定技能2号への移行や、その先のキャリアビジョンを共有することで、本人のモチベーションが高まります。資格取得の支援や昇給制度の明確化は、長期定着への強力なインセンティブとなります。

メンター制度の導入

日本人社員をメンター(指導役・相談役)として配置し、業務だけでなく生活面の悩みも気軽に相談できる環境を作りましょう。同国の先輩社員がいればベストですが、いない場合は年齢の近い日本人社員が適任です。

「特定技能」受け入れで失敗しないための注意点と対策

特定技能制度はルールが細かく、意図せず法令違反になってしまうケースがあります。失敗を防ぐための注意点を押さえておきましょう。

  • 業務範囲の逸脱: 特定技能は許可された分野・業務区分以外での就労(単純労働や別職種など)は認められていません。「人手が足りないからこっちも手伝って」は違法就労になるリスクがあります。
  • 日本人との待遇差: 合理的な理由なく、日本人従業員よりも低い賃金を設定することは禁止されています。経験や技能が同程度であれば、同等の給与を支払う必要があります。
  • 支援の実施漏れ: 支援計画は「計画」倒れになってはいけません。定期面談やオリエンテーションを実施しなかった場合、行政指導の対象となり、最悪の場合は受け入れ認可が取り消されることもあります。
  • 受入れ負担の理解不足: 渡航費用の負担や支援委託費、紹介料など、採用コストは決して安くありません。事前にトータルコストを試算し、費用対効果を見極めることが重要です。

「特定技能」受け入れ企業のための最終確認リスト

最後に、受け入れ準備が整っているかを確認するためのチェックリストを掲載します。これらをすべてクリアしていれば、自信を持って申請手続きに進むことができます。

  • 自社の業種・業務が特定技能の対象分野に合致しているか?
  • 過去1年以内に会社都合の解雇や行方不明者を出していないか?
  • 社会保険、税金を適正に納付しているか?
  • 日本人と同等以上の報酬額を設定しているか?
  • 外国人が理解できる言語で支援を実施できる体制があるか(または委託しているか)?
  • 雇用契約書、雇用条件書は特定技能の基準に沿って作成されているか?
  • 事前ガイダンス、健康診断の実施手配は済んでいるか?
  • 入国後の住居や生活備品の手配は進んでいるか?
  • 受け入れ後の定期報告(四半期ごと)の担当者は決まっているか?

特定技能の受け入れは、最初の手続きこそ煩雑ですが、適切な準備と支援を行えば、企業の将来を支える貴重な戦力となります。この12ステップを参考に、万全の体制で外国人材を迎え入れてください。

関連する詳しい情報は出入国在留管理庁の特定技能制度ポータルサイトもご参照ください。

まとめ

特定技能外国人の受け入れは、人手不足に悩む企業にとって大きなチャンスです。しかし、成功のためには「制度の正しい理解」「確実な要件クリア」「手厚い支援体制」の3つが不可欠です。今回ご紹介した12ステップを一つずつ着実に進めることで、手続きの不備や受け入れ後のトラブルを未然に防ぐことができます。

特に初めての受け入れでは、登録支援機関などの専門家のサポートをうまく活用しながら、自社に合った受け入れ体制を構築していくことをおすすめします。法令を遵守し、外国人が働きやすい環境を整えることは、結果として企業の生産性向上と持続的な成長につながるはずです。

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