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「やさしい日本語」で外国人材が活躍!企業向けコミュニケーション戦略と実践法を徹底解説
導入
外国人材の雇用が加速する今、多くの企業が直面するのが「言葉の壁」によるコミュニケーションの課題です。「指示が伝わらない」「定着率が上がらない」といった悩みの多くは、実は私たち日本人が使う「日本語」そのものに原因があるかもしれません。
そこで今、最強のコミュニケーションツールとして注目されているのが「やさしい日本語」です。これは単に言葉を簡単にするだけでなく、企業の安全管理や生産性向上、そしてダイバーシティ推進に直結する戦略的なスキルです。
本記事では、外国人雇用専門の社労士ライターが、企業における「やさしい日本語」の導入意義から、明日から使える具体的な実践法、組織への浸透策までを徹底解説します。
「やさしい日本語」とは何か?企業におけるその戦略的意義
「やさしい日本語」とは、難しい言葉を言い換えたり、文の構造を簡単にして、日本語を母語としない人にも分かりやすく配慮した日本語のことです。
もともとは1995年の阪神・淡路大震災の際、日本語が分からず情報弱者となった外国人を支援するために生まれました。しかし現在では、平時における外国人住民や外国人材との「共通言語」として、その重要性が再認識されています。
英語よりも有効なコミュニケーション手段
多くの日本人は「外国人対応=英語」と考えがちです。しかし、出入国在留管理庁の調査によると、日本に住む外国人のうち、「日常生活に困らない言語」として「英語」を挙げたのは約44%に留まる一方、「日本語」を挙げた人は約63%に上ります。さらに、「情報発信を希望する言語」として「やさしい日本語」を選んだ外国人は76%というデータもあります。
つまり、日本で働く多くの外国人材にとって、英語よりも「やさしい日本語」の方が、圧倒的に伝わりやすいのです。
企業にとっての戦略的価値
企業において「やさしい日本語」を導入することは、単なる福祉的な配慮ではありません。それは、業務指示の正確性を高め、労働災害を防ぎ、組織の一体感を醸成するための「経営戦略」です。特別な語学研修や高価な翻訳機を導入せずとも、日本人社員が伝え方を少し工夫するだけで、組織のコミュニケーションコストを劇的に下げることができるのです。
外国人雇用で「やさしい日本語」が不可欠な3つの理由:安全・定着・生産性向上
なぜ今、外国人雇用において「やさしい日本語」が不可欠なのでしょうか。その理由は、企業の存続に関わる3つの要素に直結しているからです。
1. 安全管理とリスク回避
製造業や建設業の現場では、一瞬の判断ミスが重大な事故につながります。「立入禁止」という漢字が読めなくても、「ここに入ってはいけません」と言われれば理解できます。「緊急停止」よりも「すぐに止めてください」の方が、緊急性が伝わります。命と安全を守るためには、直感的に理解できる言葉選びが必須です。
2. 人材の定着率向上(リテンション)
言葉が通じない職場では、外国人材は常に不安と孤独を感じています。「日本人社員が何を話しているか分からない」「自分だけ情報が共有されていない」という疎外感は、早期離職の最大の原因です。「やさしい日本語」で歩み寄る姿勢を見せることは、心理的安全性を高め、「この会社で長く働きたい」というエンゲージメントを生み出します。
3. 生産性の最大化
「適当にやっておいて」「いい感じで頼むよ」といった、日本人特有の「あうんの呼吸」に頼った指示は、外国人材には通用しません。その結果、意図しない成果物が上がってきたり、何度もやり直しが発生したりします。論理的で明確な「やさしい日本語」を使うことで、手戻りが減り、業務効率と生産性が飛躍的に向上します。
【実践】職場で「やさしい日本語」を導入するための具体的なステップとツール
では、実際に職場でどのように導入を進めればよいのでしょうか。ここでは即実践できるフレームワークとツールを紹介します。
「はさみの法則」をマスターする
「やさしい日本語」に変換するための基本テクニックとして、「はさみの法則」が有名です。
「は」:はっきり言う
- 曖昧な表現を避け、結論から伝えます。
- ×「できれば明日までにやってもらえると助かるんだけど…」
- ○「明日までにやってください。お願いします。」
「さ」:さいごまで言う
- 文末を省略せず、肯定か否定かを明確にします。
- ×「この書類はちょっと…(ダメです)」
- ○「この書類は間違っています。直してください。」
「み」:みじかく言う
- 一文を短く切り、情報を詰め込みすぎないようにします。
- ×「このボタンを押してから、ランプが光ったらレバーを引いて、そのあとに確認ボタンを押してください。」
- ○「まず、このボタンを押します。次に、ランプを見ます。光ったら、レバーを引きます。最後に、確認ボタンを押します。」
公的ガイドラインと支援ツールの活用
すべてを自力で考える必要はありません。国が提供している質の高いガイドラインやツールを活用しましょう。
出入国在留管理庁・文化庁「在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン」
- 書き言葉・話し言葉それぞれの具体的なポイントや言い換え例が網羅されています。社内マニュアル作成のバイブルとして活用してください。
やさにちチェッカー
- 作成した文章を入力すると、難易度を自動判定し、難しい言葉を指摘してくれる無料のWebツールです。
翻訳アプリの補助的利用
- Google翻訳やDeepLを使う際も、一度「やさしい日本語」に直してから翻訳にかけることで、誤訳のリスクを大幅に減らすことができます。
場面別「やさしい日本語」活用術:採用・研修・業務指示・緊急時対応
具体的なシチュエーションに応じた「言い換え」の技術を見ていきましょう。
1. 採用・面接時
求人票や面接では、難しい四字熟語やビジネス用語を避けます。
- 「委細面談」→「詳しいことは会ったときに話します」
- 「給与は経験を考慮して決定」→「給料はあなたの経験を見て決めます」
- 「志望動機は何ですか?」→「どうしてこの会社で働きたいですか?」
2. 社内研修・オリエンテーション
就業規則や安全教育は、専門用語のオンパレードになりがちです。
- 「土足厳禁」→「靴を脱いでください」
- 「整理整頓」→「使ったものは元の場所に戻します」「要らないものは捨てます」
- 「携行すること」→「いつも持っていてください」
3. 日常の業務指示
指示は具体的かつ定量的であることが重要です。
- 「なるべく早く」→「3時までに」
- 「朝イチで」→「朝、会社に来たらすぐに」
- 「適宜休憩をとってください」→「疲れたら休んでください」
4. 緊急時・災害時
パニックになりやすい緊急時は、最も単純な言葉で行動を促します。
- 「高台へ避難してください」→「高いところへ逃げてください」
- 「火気厳禁」→「火を使ってはいけません」
- 「頭上注意」→「頭に気をつけて」
日本人従業員向け「やさしい日本語」教育と浸透させるためのポイント
「やさしい日本語」の導入で最も高いハードルとなるのが、実は日本人社員の意識改革です。「なぜ私たちが合わせなければならないのか」「子供扱いしているようで失礼ではないか」といった抵抗感を持つ社員も少なくありません。
研修で「体験」させる
座学だけでなく、ワークショップ形式の研修が効果的です。例えば、日本人社員同士で「日本語禁止(英語のみ)」で作業指示を行うゲームをすると、言葉が通じないストレスや不安を疑似体験できます。その上で「やさしい日本語」を使うとどれだけ伝わるかを実感してもらうことで、必要性の理解が深まります。
「子供扱い」ではないことを周知する
「やさしい日本語」は幼児語ではありません。論理的で無駄のない、グローバルなビジネスコミュニケーションであることを強調しましょう。相手の知的能力を低く見ているのではなく、「言語の壁」を取り除くためのプロフェッショナルな配慮であるという認識を広めることが重要です。
評価制度への組み込み
外国人材のメンターとなる日本人社員に対し、「やさしい日本語」での指導能力を人事評価の項目に加えることも一つの手です。コミュニケーションスキルの一つとして会社が公式に評価することで、学習意欲を高めることができます。
「やさしい日本語」導入でよくある課題と成功に導く解決策
導入過程でよく直面する課題と、その解決策をまとめます。
課題1:どこまで「やさしく」すればいいか分からない
解決策:
基準として、「小学校3年生レベル」の言葉と漢字を目指しましょう。また、実際に外国人社員に聞いてみるのが一番です。「この言い方で分かりますか?」「もっと簡単な言葉はありますか?」とフィードバックをもらうことで、社内の基準が出来上がります。
課題2:日本人社員の負担感が増える
解決策:
すべてを完璧にしようとしないことです。まずは「挨拶」や「重要な安全指示」から始めるスモールスタートを推奨します。また、既存のマニュアルをすべて書き換えるのが大変な場合は、AIツールを活用したり、外部の専門家に依頼するのも有効です。
課題3:方言や社内用語が抜けない
解決策:
社内用語集を作成し、「弊社→私たち」「アサイン→担当」といった変換リストを共有しましょう。方言については、地域性が強いため、「標準語で話す」意識を持つだけでも大きく改善します。
コミュニケーション効果の測定と継続的な改善サイクル構築
導入しっぱなしにするのではなく、効果を測定し改善し続けるPDCAサイクルが必要です。
定量的な指標(KPI)の設定
- 外国人材の離職率: 導入前後での変化を測定します。
- 業務ミスの発生件数: 指示伝達ミスによる不良や手戻りの数。
- 日本語検定(JLPT)合格者数: 環境が整うことで、外国人材の学習意欲も向上します。
定性的なフィードバック
半年に一度など、定期的に外国人社員へアンケートや面談を行います。「日本人社員の説明は分かりやすいか」「困っていることはないか」をヒアリングし、その結果を日本人社員への研修内容にフィードバックします。この双方向の対話こそが、組織の信頼関係を強固にします。
「やさしい日本語」の先へ:多文化共生社会を築くための組織戦略
「やさしい日本語」は、単なる伝達ツールを超え、企業の多文化受容力(インクルージョン) を高める鍵となります。
日本人の側から歩み寄り、言葉を調整するプロセスを通じて、社員一人ひとりに「相手の立場に立つ」意識が芽生えます。それは外国人だけでなく、高齢者、障がい者、育児中の社員など、多様な背景を持つ人々にとっても働きやすい職場づくりにつながります。
「やさしい日本語」を組織文化として定着させることは、SDGsやESG経営の観点からも高く評価され、これからの日本社会で選ばれる企業になるための必須条件と言えるでしょう。まずは今日、「お疲れ様です」の代わりに「元気ですか?」「順調ですか?」と声をかけるところから始めてみてください。
外国人雇用に関する詳しい情報はこちらのブログ一覧もご参照ください。
まとめ
外国人雇用における「やさしい日本語」の導入は、安全管理、人材定着、生産性向上に直結する重要な経営戦略です。
「はさみの法則(はっきり・さいごまで・みじかく)」を意識し、難しい言葉を平易な表現に言い換えるだけで、コミュニケーションの質は劇的に改善します。日本人社員の意識改革や継続的な改善サイクルを通じて、言葉の壁を越えた強い組織を築き上げてください。
「やさしい日本語」の実践は、外国人材への思いやりであると同時に、御社の未来を拓く大きな一歩となるはずです。
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