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外国人労働者の転職・退職手続き、企業が知らないと損する在留資格管理の落とし穴と対策
外国人雇用において、入社時以上にトラブルが発生しやすいのが「退職・転職」のタイミングです。「外国人 転職 退職 手続き」には、日本人社員と同様の労務手続きに加え、入管法や雇用対策法に基づく独自の届出義務が存在します。本記事では、人事担当者が知っておくべき法的手続きの全貌と、在留資格トラブルを未然に防ぐための実務ポイントを徹底解説します。
外国人労働者の転職・退職手続き:企業がまず知るべき基本
外国人労働者が退職、あるいは新たに転職してくる場合、企業が行うべき手続きは多岐にわたります。まず理解しておくべき大原則は、「日本人社員と同じ労働・社会保険の手続き」と「外国人特有の入管・ハローワークへの届出」の2つを同時に進める必要があるという点です。
日本人社員が退職する場合、雇用保険の資格喪失届や離職票の発行、社会保険の脱退手続きを行いますが、外国人社員の場合はこれらに加えて、在留資格(ビザ)の管理や行政への報告義務が発生します。特に注意が必要なのは、これらの手続きには法律で定められた厳格な「期限」があることです。
例えば、ハローワークへの「外国人雇用状況届出」を怠ると、事業主に対して30万円以下の罰金が科される可能性があります。また、退職する外国人が帰国するのか、国内で転職するのかによっても、企業がサポートすべき内容は異なります。コンプライアンスを遵守し、スムーズな雇用関係の終了(または開始)を実現するためには、全体のフローを正しく把握することが第一歩です。
【転職時】企業が行うべき手続きと見落としがちな在留資格の注意点
新たに外国人社員を中途採用(転職者を受け入れ)する場合、新卒採用とは異なるリスク管理が求められます。
1. 在留カードの確認と偽造チェック
採用時に最も重要なのが、在留カードの確認です。以下の項目を必ず目視およびICチップ情報の読み取りで確認してください。
- 在留資格の種類: 自社の業務内容と合致しているか(例:「技術・人文知識・国際業務」など)。
- 在留期間の満了日: 期限が切れていないか。
- 就労制限の有無: 裏面の資格外活動許可欄などを確認し、就労が可能かチェックします。
2. ハローワークへの「外国人雇用状況届出(雇入れ)」
外国人を雇用したすべての事業主は、雇入れの翌月末日までにハローワークへ届け出る義務があります。雇用保険の被保険者となる場合は「雇用保険被保険者資格取得届」の備考欄に必要な情報を記載することで届出を兼ねることができます。
3. 就労資格証明書の活用
転職者の前職と自社の業務内容が類似していても、厳密には入管の審査基準で認められないケースがあります。このようなリスクを回避するために、「就労資格証明書」の取得を本人に促すことが有効です。これは、新しい職場での業務内容が現在の在留資格で認められる活動であることを法務大臣が証明する文書であり、次回のビザ更新時のトラブル予防になります。
【退職時】企業が行うべき手続きとトラブル回避のためのポイント
外国人社員が退職する場合、帰国するか国内で再就職するかに関わらず、企業は以下の手続きを確実に行う必要があります。
1. 雇用保険資格喪失届と離職票の交付
日本人同様、退職日の翌日から10日以内にハローワークへ「雇用保険被保険者資格喪失届」を提出します。この際、本人が希望すれば「離職票」を発行してください。離職票は失業給付の受給だけでなく、特定活動ビザ(就職活動用)への変更申請時にも必要となる重要な書類です。
2. ハローワークへの「外国人雇用状況届出(離職)」
雇用保険に加入していた場合は資格喪失届で兼ねることができますが、加入していなかった場合(週20時間未満のアルバイトなど)は、別途「外国人雇用状況届出書」を退職日の翌月末日までに提出しなければなりません。これを忘れる企業が多いため注意が必要です。
3. 源泉徴収票の交付
退職後1ヶ月以内に源泉徴収票を交付します。本人がすでに帰国している場合は、PDF等の電子データや海外送付で確実に届くように手配します。これは確定申告や母国での所得証明に必要となります。
4. 住民税の徴収
退職時期(1月〜5月か、6月〜12月か)によって、一括徴収の義務や方法が異なります。帰国してしまうと徴収が極めて困難になるため、退職時の給与や退職金から一括徴収を行うか、納税管理人の選任手続きを行うよう本人に指導することが、自治体とのトラブル回避に繋がります。
在留資格の期間管理と更新手続き:企業が陥りやすいミスと対策
在留資格の更新申請は原則として「外国人本人」の義務ですが、企業側が管理を怠ると「不法就労助長罪」に問われるリスクがあります。
期限管理の自動化とリマインド
在留期限の管理はExcelやカレンダーへの入力だけに頼らず、労務管理システムのアラート機能を活用すべきです。更新申請は在留期限の3ヶ月前から可能です。ギリギリになって慌てないよう、期限の3〜4ヶ月前には本人へ更新の意思確認と準備を促すリマインドを行いましょう。
申請中の「特例期間」の理解
更新申請中に在留期限が到来してしまっても、処分が決定するまで(または期限から2ヶ月経過するまで)は適法に日本に滞在・就労できる「特例期間」があります。しかし、この期間中に再入国許可なしに出国してしまうと戻れなくなるなど複雑な規定があるため、申請中は在留カード裏面に「申請中」のスタンプが押されているかを必ず確認してください。
外国人雇用でよくある法的トラブル事例とその回避策
事例1:届出漏れによる過料と企業名の公表
ハローワークへの外国人雇用状況届出を怠り、指導に従わなかった場合、30万円以下の罰金に加え、法令違反企業として社名が公表されるリスクがあります。
回避策: 入退社のチェックリストに「外国人特有の項目」を設け、担当者が変わっても漏れがない仕組みを作ります。
事例2:業務内容の不一致による不法就労
「翻訳通訳」で採用したのに、現場の人手不足で「工場ライン作業」に従事させた場合、資格外活動違反(不法就労)となります。
回避策: 雇用契約書に業務内容を詳細に記載し、現場責任者にも在留資格の範囲(やっていい仕事・ダメな仕事)を教育します。
事例3:行方不明・無断退職
一時帰国したまま連絡が取れなくなるケースです。
回避策: 退職扱いとする就業規則の規定(例:「14日間無断欠勤が続いた場合は自然退職とする」)を整備し、雇用保険喪失手続きを進めます。併せて、入管へ「所属機関等に関する届出(契約終了)」を行うことも検討してください。
外国人労働者の再雇用・再入国時の手続きと留意事項
一度退職した外国人を再雇用する場合や、一時帰国から戻る社員を迎える際の手続きについて解説します。
みなし再入国許可の活用
有効なパスポートと在留カードを所持する外国人が、出国から1年以内(かつ在留期限内)に再入国する場合、「みなし再入国許可」を利用すれば事前の許可申請が不要です。ただし、空港で必ず「みなし再入国許可による出国を希望する」欄にチェックを入れるよう、出国前に本人へ周知徹底してください。チェックを忘れると在留資格が消滅してしまいます。
再雇用時の契約と届出
過去に雇用していた外国人であっても、一度退職して期間が空いている場合は、新規採用と同様に在留カードの有効性を確認し、ハローワークへの雇入れ届出を再度行う必要があります。
円滑な退職・転職支援のための企業側の配慮とサポート
法的な手続きだけでなく、企業としての配慮がトラブルを防ぎ、将来的な「アルムナイ(退職者)採用」や企業ブランディングに繋がります。
- 脱退一時金の説明: 厚生年金に加入していた外国人が帰国する場合、脱退一時金を請求できることを案内します。
- 退職証明書の交付: 転職先でのビザ手続きで必要になる場合があるため、求められたら速やかに発行します。
- 有給休暇の消化: 日本の有給制度を十分に理解していない場合があるため、退職日までの消化計画を一緒に立てるなどのサポートが推奨されます。
【Q&A】外国人雇用に関するよくある疑問と専門家の回答
Q1. 外国人社員が退職後、すぐに帰国せず日本に残る場合の注意点は?
退職後も日本に滞在する場合、原則として3ヶ月以内に次の就職先を見つけるか、在留資格を変更する必要があります。正当な理由なく3ヶ月以上就労活動を行わない場合、在留資格取消しの対象となる可能性があります。企業側は、退職後14日以内に入管へ「所属機関等に関する届出」を行うよう本人にアドバイスし、国民健康保険や国民年金への切り替えが必要であることも伝えましょう。
Q2. 留学生アルバイトが卒業してそのまま正社員になる場合の手続きは?
在留資格を「留学」から「技術・人文知識・国際業務」などの就労ビザへ変更する「在留資格変更許可申請」が必要です。この審査には1〜3ヶ月程度かかるため、卒業前から余裕を持って申請準備を進める必要があります。変更が許可されるまでは、正社員としてのフルタイム勤務はできません(資格外活動許可の範囲内である週28時間以内に留める必要があります)。
Q3. 「所属機関等に関する届出」は企業が代行できますか?
この届出は原則として外国人本人の義務(入管法第19条の16)です。企業が代理で行う仕組みはありませんが、本人がオンライン(出入国在留管理庁電子届出システム)で簡単に行えます。企業側のハローワークへの届出(外国人雇用状況届出)とは別物ですので、混同しないよう注意が必要です。
Q4. 帰国する外国人社員の住民税はどうすればよいですか?
退職時期が1月〜5月の場合は、原則として退職時の給与等から一括徴収することが義務付けられています。6月〜12月の場合は、本人の同意を得て一括徴収するか、普通徴収(自分で納付)に切り替えます。ただし、帰国後は納付が困難になるため、納税管理人の選任(日本に住む知人や企業の担当者が代理になる)を行うのが確実です。未納のまま出国すると、再来日時のビザ審査に悪影響を及ぼす可能性があります。
Q5. 特定技能外国人が退職する場合の特有の手続きはありますか?
特定技能外国人の場合、通常のハローワークへの届出に加え、随時届出(特定技能雇用契約の終了に関する届出)を入管へ提出する必要があります。また、支援計画に基づく支援を行っていた場合は、支援終了の報告も必要です。これらは四半期ごとの定期届出とは別に、事由発生から14日以内に行う必要があります。
Q6. 本人が在留カードを返納せずに帰国してしまった場合は?
在留カードの返納は本人の義務であり、出国時に空港の入国審査官に返納するのが原則です。もし持ち帰ってしまった場合は、本人が海外から日本の入管へ郵送で返納する必要があります。企業が回収して処分手続きをすることはできませんので、退職時のオリエンテーションで「空港で必ず穴を開けてもらい、無効化したカードを持ち帰るか、返納すること」を伝えてください。
Q7. 離職票の備考欄には何を書けばいいですか?
外国人特有の記載事項としては、在留資格の種類や在留期間などを記載しておくとハローワークでの手続きがスムーズになる場合がありますが、必須ではありません。ただし、特定活動(求職活動)への変更を希望する場合、退職理由が「会社都合」か「自己都合」かによって失業給付の待機期間やビザ変更の審査心証が変わるため、退職理由は事実に基づいて正確に記載し、本人と認識を合わせておくことが重要です。
Q8. 外国人社員が行方不明になり、退職手続きが進められない場合は?
まずは就業規則に基づき退職処理を行います。その上で、ハローワークへの届出、社会保険の資格喪失手続きを進めます。本人の印鑑や署名が得られない場合でも、事情を説明する疎明資料を添付することで手続きは可能です。また、入管へは「所在不明」となった事実を報告することで、企業の管理責任を問われるリスクを軽減できます。
Q9. 転職者の在留資格が「永住者」の場合、特別な手続きは必要ですか?
「永住者」「日本人の配偶者等」「定住者」などの身分系在留資格の場合、就労制限がないため、日本人と全く同様の手続きで問題ありません。ハローワークへの「外国人雇用状況届出」も、2020年以降は特別永住者以外の外国人はすべて対象ですので、永住者であっても届出は必要です。
外国人雇用手続きを確実に、かつスムーズに進めるための最終チェックリスト
外国人労働者の転職・退職手続きは、関係する法律が複数にまたがり、非常に複雑です。しかし、一つひとつの手続きを期限内に正確に行うことは、企業のコンプライアンスを守るだけでなく、日本で働く外国人材のキャリアを守ることにも繋がります。
最後に、企業が最低限押さえておくべきチェックポイントをまとめます。
- [ ] 雇入れ・離職の翌月末日までにハローワークへ「外国人雇用状況届出」を行いましたか?
- [ ] 退職する外国人に対し、入管への「所属機関等に関する届出」を行うよう指導しましたか?
- [ ] 帰国者の住民税(一括徴収または納税管理人)の処理は完了しましたか?
- [ ] 在留カードの有効期限と就労制限の有無を現物で確認しましたか?
- [ ] 離職票や源泉徴収票は確実に本人へ渡るよう手配しましたか?
これらの手続きに不安がある場合や、複雑なケースに直面した場合は、外国人雇用に詳しい社会保険労務士や行政書士などの専門家に相談することをお勧めします。正しい知識と運用で、外国人材との良好な関係を築いていきましょう。
外国人雇用に関する詳しい情報はこちらのブログ一覧もご参照ください。
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