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外国人雇用で失敗しない!社会保険・住民税・年末調整の全手続きガイド

2025.12.31 外国人雇用手続き

外国人材の採用が増加する中、多くの人事担当者が頭を抱えるのが「社会保険」や「税務」の手続きです。「日本人の社員と同じでいいのか?」「特別な書類が必要なのか?」といった疑問は尽きません。

実は、社会保険や税金の基本ルールは日本人と同様ですが、外国人特有の必要書類や確認事項が存在します。ここを誤ると、不法就労助長罪に問われたり、従業員本人がビザ更新できなくなったりするリスクがあります。

本記事では、HR BrEdge社会保険労務士法人の外国人雇用専門ライターの視点から、入社から退職・帰国までに必要な手続きを、実務的なステップ形式で徹底解説します。

外国人雇用における社会保険:加入要件と手続きフロー

外国人従業員であっても、適用事業所で雇用される場合は、原則として日本人と同じ条件で社会保険(健康保険・厚生年金保険)への加入が義務付けられています。「外国人だから加入しなくていい」という特別ルールは存在しません。

ただし、手続きには外国人特有の注意点があります。

1. 社会保険の加入要件

加入要件は国籍に関係なく、以下のいずれかに該当する場合です。

  • 正社員(および正社員の所定労働時間・日数の4分の3以上働く方)
  • パート・アルバイトで以下の「短時間労働者の要件」をすべて満たす方(特定適用事業所等の場合)
    • 週の所定労働時間が20時間以上
    • 月額賃金が8.8万円以上
    • 2ヶ月を超える雇用の見込みがある
    • 学生ではない(※留学生は原則除外ですが、休学中や夜間学部などは加入対象となる場合があります)

2. 資格取得手続きの具体的なフロー

外国人従業員が入社した際の手続きは、以下のステップで進めてください。

  • 在留カードの確認とコピー
    • 就労可能な在留資格か、在留期限が切れていないかを必ず確認します。
    • 表面・裏面の両方をコピーし、保管します。
  • 「被保険者資格取得届」の作成
    • 氏名は、在留カードの記載通り(アルファベット)に記入します。
    • フリガナはカタカナで記入します。
  • 「ローマ字氏名届」の作成(重要)
    • 外国人従業員の場合、年金機構での基礎年金番号と氏名の結びつきを正確にするため、「厚生年金保険 被保険者ローマ字氏名届」の提出が推奨されています。
    • これを行わないと、将来の年金受給やねんきん定期便の送付に支障が出ることがあります。
  • 管轄の年金事務所へ提出
    • 入社から5日以内に提出します。電子申請も可能です。

3. 社会保障協定(二重加入の防止)

外国から派遣されてくる従業員などの場合、母国の社会保険にも加入していると保険料が二重払いになってしまいます。これを防ぐため、日本は多くの国と「社会保障協定」を結んでいます。

  • 対象国: アメリカ、中国、韓国、ドイツなど(最新情報は日本年金機構のページ参照)
  • 手続き: 母国から「適用証明書」を取得してもらい、日本の年金事務所へ提出することで、日本の社会保険加入が免除されます。

外国人従業員の住民税を徹底解説:計算から納付までのステップ

住民税は「地域社会の会費」としての性格を持つため、国籍を問わず課税されます。しかし、外国人従業員は仕組みを理解していないことが多く、トラブルになりやすい項目No.1です。

1. 課税の仕組み(1月1日ルール)

住民税は「その年の1月1日時点で日本国内に住所がある人」に対して、前年の所得(1月〜12月)に基づいて課税されます。

  • 例: 2023年中に所得があり、2024年1月1日に日本に住んでいれば、2024年6月から住民税の支払いが始まります。

2. 入社時の住民税手続きステップ

中途採用の場合、前職での納付状況を確認する必要があります。

  • 前職での徴収方法を確認
    • 「給与所得者異動届出書」を前職から引き継げるか確認します。
    • 特別徴収(給与天引き)を継続する場合は、市区町村へ届出書を提出します。
  • 普通徴収から特別徴収への切替
    • 本人が納付書(普通徴収)を持っている場合、入社後に「特別徴収への切替申請書」を市区町村へ提出し、給与天引きに切り替えるのが確実です。これにより、本人の納付忘れ(=ビザ更新時の不利益)を防げます。

3. 注意点:租税条約による免除

日本との間に租税条約を結んでいる国からの留学生や事業修習生などは、所定の手続きを行うことで住民税や所得税が免除される場合があります(例:中国、ベトナムなど)。

  • 手続き: 「租税条約に関する届出書」を税務署(所得税用)および市区町村(住民税用)に提出する必要があります。自動的には適用されませんのでご注意ください。

外国人従業員の年末調整ガイド:必要書類と申告手続きの流れ

外国人従業員も「居住者」であれば、日本人と同様に年末調整の対象となります。最大のポイントは、国外に住んでいる家族(国外居住親族)を扶養に入れる場合の手続きです。

1. 年末調整の対象区分

  • 居住者(国内に住所がある、または1年以上居所がある): 年末調整の対象
  • 非居住者(上記以外): 年末調整の対象外(源泉徴収のみで完了、または確定申告)

2. 国外居住親族の扶養控除に必要な書類

国外に住む親族を扶養控除の対象とするには、以下の2種類の書類提出が必須です。

  • 親族関係書類
    • 国外居住親族が従業員の親族であることを証明する書類(戸籍謄本、出生証明書、婚姻証明書など)。
    • 外国語で作成されている場合は、日本語の翻訳文が必要です。
  • 送金関係書類
    • その年において、従業員が国外居住親族の生活費や教育費にあてるための支払いを行ったことを明らかにする書類(外国送金依頼書の控え、クレジットカードの家族カード利用明細など)。
    • 重要: 扶養に入れる親族一人ひとりに対して送金記録が必要です(例:妻と母に送金する場合、それぞれに送金が必要)。

3. 【重要】30歳以上70歳未満の非居住者親族の要件厳格化

令和5年(2023年)分より、30歳以上70歳未満の国外居住親族については、扶養控除の対象が以下の方に限定されています。これらを確認できる追加書類が必要です。

  • 留学により国内に住所等を有しなくなった者
    • 必要書類:ビザの写しや在学証明書など
  • 障害者
    • 必要書類:障害者手帳に相当する書類など
  • 生活費・教育費として年間38万円以上の送金を受けている者
    • 必要書類:38万円以上の送金関係書類

詳細は国税庁の「国外居住親族に係る扶養控除等の適用について」をご参照ください。

外国人雇用特有の税務・社会保険に関するよくある質問と注意点

Q. マイナンバーを持っていない場合はどうすればいいですか?

入国直後の外国人従業員など、マイナンバーカードが手元にない(または番号がわからない)場合でも、社会保険の資格取得手続きは可能です。

  • 対応: 基礎年金番号で届出を行うか、届出書の備考欄に「マイナンバー未提出」の理由を記載して提出します。住民票登録が完了すればマイナンバーが付番されるため、後日速やかに「個人番号登録届」を提出してください。

Q. 学生アルバイト(留学生)は社会保険に入らなくて良い?

原則として、昼間学生は雇用保険・社会保険(健康保険・厚生年金)の適用除外です。しかし、以下のケースは加入が必要になることがあります。

  • 休学中の場合
  • 夜間学部、通信制課程の学生
  • 卒業見込証明書を有し、卒業前に就職し、卒業後も引き続き勤務する予定の者
    留学生であっても、週28時間の制限内で働く限りは上記ルールが適用されますが、労働時間の管理(掛け持ち含む週28時間以内)は厳格に行ってください。

外国人従業員の帰国・退職時における社会保険・税金手続きのポイント

外国人従業員が帰国する場合、退職手続きと同時に「税金の精算」と「年金の脱退一時金」の案内を行うことが、トラブル回避の鍵です。

1. 住民税の一括徴収(義務と推奨)

帰国してしまうと、住民税の徴収は事実上不可能になります。退職時期に応じて以下の対応を必ず行ってください。

  • 1月〜5月に退職の場合:
    • 義務として、5月分までの未納住民税を最終給与や退職金から一括徴収しなければなりません(本人の同意は不要)。
  • 6月〜12月に退職の場合:
    • 本人の申し出により一括徴収が可能です。
    • 強く推奨: トラブル防止のため、入社時や退職時に説明し、一括徴収の同意書を取ることをお勧めします。一括徴収できない場合は、後述する「納税管理人」を選任する必要があります。

2. 脱退一時金の案内

厚生年金や国民年金に6ヶ月以上加入していた外国人は、帰国後2年以内に請求することで「脱退一時金」を受け取れます。

  • 条件:
    1. 日本国籍を有しない
    2. 厚生年金等の加入期間が6ヶ月以上
    3. 日本に住所を有しない(転出届を提出済み)
  • 流れ:
    1. 帰国前に市区町村へ「転出届」を提出。
    2. 帰国後、日本年金機構へ「脱退一時金請求書」を郵送(年金手帳、パスポートの写し等を添付)。

3. 納税管理人の選任

住民税を納めきれない場合や、脱退一時金にかかる所得税(約20%)の還付申告を行うために、帰国前に日本国内居住者を「納税管理人」として定める手続きが必要です。

  • 住民税: 市区町村へ「納税管理人申告書」を提出。
  • 所得税(脱退一時金の還付等): 税務署へ「所得税の納税管理人の届出書」を提出。

詳しくは日本年金機構の「脱退一時金」ページをご確認ください。

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