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特定技能での外国人雇用は2024年も可能?社労士が解説する企業向け完全ガイド
少子高齢化に伴う労働人口の減少が加速する中、外国人材の活用はもはや選択肢の一つではなく、企業の存続を左右する重要な経営課題となっています。特に2019年に創設された在留資格「特定技能」は、即戦力となる人材を確保できる手段として、2024年現在も急速に利用が拡大しています。
しかし、「制度が複雑でよく分からない」「頻繁な法改正についていけない」と悩む人事担当者様も多いのではないでしょうか。本記事では、HR BrEdge社会保険労務士法人の外国人雇用専門ライターが、2024年の最新制度改正(4分野追加など)を反映し、特定技能制度の全貌から採用ルート、支援体制の比較までを徹底解説します。企業の皆様が最適な選択をするための完全ガイドとしてご活用ください。
特定技能制度の全体像:知っておくべき基本と対象分野
特定技能制度は、国内の人材確保が困難な状況にある産業分野において、一定の専門性・技能を有する外国人を受け入れることを目的とした在留資格です。従来の「技能実習」が国際貢献・技能移転を目的としていたのに対し、特定技能は明確に「労働力の確保」を目的としています。
2024年の最重要トピック:対象分野の拡大
制度開始当初は12分野でしたが、2024年の閣議決定により、以下の4分野が新たに追加され、合計16分野となりました。これにより、これまで外国人材の受け入れが難しかった業界でも活用の道が開かれています。
- 自動車運送業(バス、タクシー、トラック運転手)
- 鉄道(運転士、車掌、駅係員、車両整備など)
- 林業(育林、素材生産など)
- 木材産業(製材、木材加工など)
これらに加え、既存の「工業製品製造業」「造船・舶用工業」「飲食料品製造業」においても業務区分が再編・追加されており、受け入れ可能な業務範囲は広がっています。
特定技能1号と2号の違い
特定技能には「1号」と「2号」の2種類があります。
- 特定技能1号:通算5年まで在留可能。相当程度の技能と日本語能力が必要。家族帯同は原則不可。
- 特定技能2号:熟練した技能が必要。在留期間の更新制限がなく、要件を満たせば永住への道も開けるほか、家族帯同も可能。当初は建設・造船のみでしたが、現在はほとんどの分野で2号への移行が可能になっています。
特定技能 vs 技能実習 vs 技術・人文知識・国際業務:外国人雇用ビザの種類を徹底比較
外国人材を採用する際、どの在留資格(ビザ)が自社に適しているか迷われることが多いです。ここでは主要な3つの就労系ビザを比較します。特に、現在過渡期にある「技能実習制度」との違いを理解することが重要です。
| 比較項目 | 特定技能 | 技能実習(※今後「育就労」へ移行予定) | 技術・人文知識・国際業務 |
|---|---|---|---|
| 制度の目的 | 人手不足分野での労働力確保 | 発展途上国への技能移転・国際貢献 | 専門的・技術的分野の外国人受入 |
| 求められるスキル | 即戦力となる相当程度の技能・知識 | 特になし(働きながら学ぶ) | 大学卒程度の専門知識・学歴 |
| 従事可能な業務 | 指定された16分野の現場業務 | 単純作業を含む実習計画に基づく業務 | 専門知識を要する業務(単純労働不可) |
| 転職の自由 | あり(同一分野内なら比較的容易) | 原則不可(やむを得ない場合を除く) | あり |
| 受入企業の負担 | 支援計画の策定・実施義務あり | 監理団体への加入・指導が必要 | 特段の支援義務なし(雇用管理のみ) |
ここがポイント:
技能実習制度は、2027年頃を目処に人材育成と人材確保を目的とした新制度「育就労(仮称)」へ移行することが2024年の法改正で決定しています。今後は「育就労で3年間育成し、特定技能へ移行して長期就労する」というキャリアパスが標準化していくでしょう。現時点での即戦力採用なら「特定技能」、高度な専門職(エンジニアや通訳など)なら「技術・人文知識・国際業務」が適しています。
特定技能外国人受け入れのメリット・デメリット:企業の課題解決とリスクを天秤にかける
制度の活用には、メリットだけでなくリスクやコストも存在します。これらを天秤にかけ、自社の経営戦略に合致するか判断しましょう。
メリット:人手不足への切り札
- 即戦力性: 特定技能外国人は、技能試験と日本語試験に合格しているか、技能実習を3年間修了しているため、基礎的な技能と日本語力を有しています。入社直後から現場戦力として期待できます。
- フルタイム勤務: 留学生アルバイト(週28時間以内)とは異なり、日本人社員と同様にフルタイムで勤務可能です。
- 配置転換の柔軟性: 同一の業務区分内であれば、事業所間の異動なども可能です(技能実習は実習計画に縛られるため困難)。
デメリット:コストと管理工数
- 支援の義務: 企業は法律で定められた「義務的支援(生活オリエンテーション、公的手続き同行など)」を行う必要があります。これを外部委託する場合、ランニングコストが発生します。
- 転職リスク: 日本人同様に転職の自由があるため、より条件の良い企業へ移ってしまうリスクがあります。定着のためのエンゲージメント施策が不可欠です。
- 事務手続きの煩雑さ: 入管への申請書類や定期的な届出(四半期ごと)が非常に多く、専門知識がないと対応が難しい場合があります。
特定技能外国人の採用ルート比較:自社採用と紹介会社、どちらが最適か?
特定技能外国人を採用するには、大きく分けて「自社で直接採用する」か「人材紹介会社を利用する」かの2つのルートがあります。
1. 自社採用(Web媒体、知人紹介、ハローワークなど)
- メリット: 紹介手数料がかからないため、採用コストを数万円〜数十万円程度(求人広告費等)に抑えられます。
- デメリット: 母集団形成が難しく、ビザ要件(試験合格など)を満たしているかの確認を自社で行う必要があります。また、海外現地からの採用はコネクションがない限り非常に困難です。
- 向いている企業: 既に技能実習生を受け入れており、彼らを特定技能に移行させる場合や、社内に外国人採用のノウハウがある場合。
2. 人材紹介会社・登録支援機関の紹介
- メリット: ビザ要件を満たした候補者をスクリーニングして紹介してくれます。面接のセッティングや入国手続きのサポートも手厚く、採用工数を大幅に削減できます。
- デメリット: 成功報酬として、理論年収の20〜30%、あるいは一人当たり30万〜60万円程度の紹介手数料が発生します。
- 向いている企業: 初めて特定技能を採用する企業、採用担当者のリソースが不足している企業、海外から新規に入国させたい企業。
結論: 初めての受け入れであれば、多少コストがかかっても信頼できる人材紹介会社(特に業界特化型)を利用する方が、制度理解やコンプライアンスの面で安全です。
特定技能外国人の支援体制:社内対応と外部委託のメリット・デメリット
特定技能所属機関(受入企業)には、外国人に対する全部で10項目の「義務的支援」が課せられています。これを「自社で行う(自社支援)」か、「登録支援機関に全部委託する」かを選択する必要があります。
支援体制の比較
| 項目 | 自社支援(社内対応) | 登録支援機関への委託 |
|---|---|---|
| コスト | 人件費のみ(支援担当者の配置) | 月額2万〜3万円/人(相場) |
| ノウハウ | 社内に蓄積される | 社内には蓄積されにくい |
| 条件 | 支援責任者の選任、過去2年間の受入実績、通訳体制など厳しい要件あり | 特になし(委託契約のみ) |
| 負担 | 非常に大きい(24時間対応、公的手続き同行など) | 最小限(定期報告を受けるのみ) |
どちらを選ぶべきか?
- 登録支援機関への委託がおすすめな場合:
- 受け入れ人数が少なく、専任担当者を置くコストが見合わない場合。
- 社内に外国語対応できるスタッフがいない場合。
- 法令違反のリスクを最大限回避したい場合。
- 既に数十名規模の外国人材がおり、通訳スタッフを雇用している場合。
- 外国人社員とのコミュニケーションを密にし、直接的な信頼関係を築きたい場合。
- 長期的にコストダウンを図りたい場合。
多くの企業では、まずは登録支援機関に委託してスタートし、ノウハウが溜まってきた段階で徐々に自社支援へ切り替える(あるいは一部委託にする) というステップを踏むのが一般的です。
特定技能制度活用のための最終チェックリスト:失敗を避けるためのポイント
最後に、特定技能外国人の雇用で後悔しないために、採用前に確認すべきチェックリストを提示します。
- [ ] 業務内容の適合性: 従事させる業務が、特定技能の指定された業務区分に合致しているか?(単純労働や該当しない業務は違法になります)
- [ ] 日本人と同等以上の処遇: 賃金は同じ業務を行う日本人と同等以上ですか?(安価な労働力としての利用は禁止されています)
- [ ] 社会保険・労働保険の加入: 雇用契約開始日から適切に加入させる準備はできていますか?
- [ ] 受入コストの試算: 給与だけでなく、紹介料、支援委託費、渡航費、住居初期費用などの総額を把握していますか?
- [ ] 現場の理解と協力体制: 日本人従業員に対し、文化の違いや受け入れの意義について説明し、理解を得ていますか?
- [ ] 支援計画の策定: 入国前のガイダンスから帰国時の送迎まで、具体的な支援スケジュールは見えていますか?
特定技能制度は、正しく活用すれば企業に新しい活力をもたらします。一方で、法令遵守(コンプライアンス)がおろそかになると、企業名の公表や受入停止などの重いペナルティが科されるリスクもあります。
まずは自社の状況に合わせて「採用ルート」と「支援体制」の最適な組み合わせを検討し、必要であれば社会保険労務士などの専門家に相談しながら、堅実な一歩を踏み出してください。
外国人雇用に関する詳しい情報はこちらのブログ一覧もご参照ください。
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