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外国人住民票登録の遅れが及ぼす影響は?特定技能雇用の受入れ停止を防ぐ3つの実務対応を社労士が解説

2026.02.14 社労士コラム

特定技能外国人を雇用する際、入国後最初に行うべき手続きの一つが「住居地の届出(住民票登録)」です。しかし、業務の忙しさや本人任せの運用が原因で、法律で定められた「14日以内」の期限を過ぎてしまうケースが後を絶ちません。たかが手続きの遅れと軽く見ていると、給与が支払えない、社会保険に入れないといった実務上のトラブルだけでなく、最悪の場合は「支援計画の不備」として特定技能の受入れ自体が停止されるリスクもあります。

本記事では、外国人雇用の実務に精通した社会保険労務士が、住民票登録が遅れた場合に企業が直面する具体的なリスクと、トラブルを未然に防ぐための実務対応について解説します。

「14日以内」を過ぎたらどうなる?給与計算や社会保険手続きが停滞する現場の混乱

【結論】銀行口座が開設できず給与振込が遅れるほか、社会保険の資格取得手続きが完了しないため、入社直後の労務管理に重大な支障が出ます。

住民基本台帳法では、入国または転居から14日以内に市区町村の窓口で住居地の届出を行うことが義務付けられています。この手続きが完了して初めて「住民票」が作成され、マイナンバーが付番されます。実務上、この登録が遅れると、企業の管理部門は次のような連鎖的なトラブルに見舞われます。

  • 銀行口座が開設できない
    給与振込先の口座を作るには、在留カード裏面に住所が記載されている必要があります。登録が遅れれば、初任給を現金で手渡しするリスクが発生します。
  • 社会保険の加入手続きが止まる
    健康保険や厚生年金の資格取得届には、基礎年金番号やマイナンバー、正しい住所の記載が必要です。住民票がない状態ではこれらの情報が確定せず、保険証の発行も大幅に遅れます。

実際の顧問先では、本人が「忙しいから来週行く」と言って手続きを先延ばしにした結果、入社月に病気にかかってしまい、保険証がないため医療費を全額自己負担せざるを得なくなったケースがありました。一方で、入国翌日に会社担当者が同行して手続きを済ませている企業では、最短で口座開設と保険証発行が進み、スムーズなオンボーディングが実現しています。手続きの遅れは、外国人本人だけでなく、企業の事務負担を倍増させる要因となるのです。

特定技能特有の落とし穴:住民票の届出遅延が「支援計画の不備」とみなされるコンプラリスク

【結論】特定技能1号における「生活オリエンテーション」や「公的手続きの支援」の不履行とみなされ、改善命令や受入れ停止処分の対象になる可能性があります。

特定技能制度において、受入れ企業(特定技能所属機関)には「1号特定技能外国人支援計画」の策定と実施が義務付けられています。この支援計画の中には、入国後の住居確保や、市区町村での行政手続き(転入届・国民健康保険・国民年金の手続き等)の補助が明記されています。つまり、住民票登録の遅れは単なる個人の怠慢ではなく、企業の支援義務違反として扱われるのです。

  • 支援計画の不履行リスク
    登録支援機関に委託している場合でも、最終的な管理責任は受入れ企業にあります。「支援機関がやってくれると思っていた」という言い訳は入管には通用しません。
  • 定期届出での発覚
    四半期ごとの定期届出で支援実施状況を報告する際、公的手続きの支援が適切に行われていないことが露見すれば、指導の対象となります。

実務上よくあるケースとして、登録支援機関の担当者が遠方に住んでおり、「本人に地図を渡して行かせた」結果、窓口で言葉が通じずに手続きが完了していなかったという事例があります。一方で、自社支援を行っている企業がチェックリストを用いて期日管理を徹底している場合は、こうしたミスはほぼ発生しません。特定技能においては、手続きの遅延が企業の「受入れ適格性」に関わる重大な問題であることを認識する必要があります。

在留資格の取消しや過料も?外国人本人と雇用企業が負う法的ペナルティの現実

【結論】正当な理由なく90日以上届出をしない場合、在留資格が取り消される可能性があるほか、最大20万円の過料が科されるリスクがあります。

入管法(出入国管理及び難民認定法)および住民基本台帳法には、住居地の届出に関する罰則規定が設けられています。これは脅しではなく、実際に適用されうる法的ペナルティです。

  • 在留資格の取消し(入管法第22条の4)
    正当な理由なく、新規入国から90日以内に住居地の届出をしなかった場合、在留資格の取消事由に該当します。
  • 過料の適用(住居地届出義務違反)
    14日の届出期間を経過した場合、20万円以下の罰金(過料)が科される可能性があります。

「仕事が忙しかった」は正当な理由として認められません。一方で、入院や災害など真にやむを得ない事情がある場合は、その証明書類を提出することで免責される可能性があります。これまで多くの企業を支援してきた中で、実際に在留資格が取り消されたケースは稀ですが、更新申請時に「届出遅延」の履歴がマイナス評価となり、審査期間が長期化した事例は散見されます。企業としては、雇用している外国人が法令違反の状態にならないよう、強力に管理・指導する責任があります。

【実務チャート】住民票登録が遅れた際のリカバー手順と入管への報告要否の判断基準

【結論】直ちに本人を連れて市区町村窓口へ行き、遅延理由書を提出して登録を完了させた上で、支援計画の不履行として入管へ報告が必要か判断します。

万が一、14日を過ぎてしまったことが発覚した場合、放置すればするほどリスクは高まります。以下の手順で速やかにリカバリーを行ってください。

  • ステップ1:市区町村窓口への同行
    まず何よりも住民票登録を完了させることが最優先です。窓口で遅れた理由を聞かれますので、正直に事情を説明し、必要であれば「遅延理由書」を提出します。
  • ステップ2:支援実施状況の確認と記録
    なぜ遅れたのか(本人の過失か、支援担当者のミスか)を特定し、支援記録簿に詳細を記載します。再発防止策もあわせて記録してください。
  • ステップ3:入管への報告判断
    特定技能の場合、支援が適切に行えなかったことについて「支援実施状況届出書」に記載する必要があります。著しい遅延や悪質な放置でなければ、直ちに受入れ停止にはなりませんが、報告を怠ることは隠蔽とみなされます。

実務上、数日の遅れであれば窓口で口頭注意を受ける程度で済むことが多いですが、1ヶ月以上の遅れとなると、簡易裁判所から過料の通知が届くリスクが高まります。一方で、遅延発覚後すぐに企業主導で対応し、その経緯を記録に残している場合は、コンプライアンス意識があると判断され、ダメージを最小限に抑えることができます。

登録支援機関任せにしない!入国直後の「市区町村窓口同行」を社内フローで標準化すべき理由

【結論】入国時の手続き同行を社内フローとして標準化し、完了報告を義務付けることで、ブラックボックス化を防ぎコンプライアンスを担保すべきです。

特定技能制度において、多くの企業が登録支援機関に支援業務を委託していますが、「委託=丸投げ」ではありません。特に住民票登録のような初期手続きのミスは、その後の雇用管理全体に悪影響を及ぼします。

  • 同行支援の標準化
    登録支援機関に対し、入国後の住居地届出には必ず担当者が同行し、完了後の住民票の写しを即日企業へ送付するよう契約または仕様書で義務付けます。
  • 社内チェック体制の構築
    入社日から3日以内に「住民票の写し」「口座情報」が揃っていない場合、アラートが出るような管理フローを作成します。

実務上よくあるケースとして、登録支援機関の質にはばらつきがあり、安価な委託料の機関ほど、こうした同行支援を省く傾向にあります。一方で、自社でチェックリストを作成し、支援機関の業務遂行状況を管理している企業では、トラブルの発生率が極めて低くなっています。外国人材が安心して働ける環境を整えることは、定着率の向上にも直結します。手続きの「完了」を自分の目で確認するまでは安心しない、という姿勢が実務担当者には求められます。

まとめ

外国人住民票登録の遅れは、給与支払いや社会保険手続きの停滞だけでなく、特定技能制度における受入れ企業の適格性を揺るがす重大なリスク要因です。14日という期限を厳守するためには、本人任せにせず、企業や登録支援機関が確実に同行するフローを確立することが不可欠です。万が一遅れた場合でも、隠蔽せずに速やかにリカバリー対応を行うことが、企業の信頼を守ることにつながります。

特定技能・外国人雇用に関する詳しい情報はこちらのブログ一覧もご参照ください。

監修者プロフィール

本記事は、HR BrEdge社会保険労務士法人に所属する特定社会保険労務士・渡辺俊一が監修しています。法人顧問業務を中心に、給与計算、労務相談、就業規則整備など、企業のバックオフィス全体を支える実務に携わってきました。

日常的な労務相談から、制度設計、実務運用、トラブル予防まで、「現場で実際に起こること」を前提とした支援を行っています。特に、従業員100名以上規模の企業における実務の属人化や判断が分かれやすい場面への対応を得意としています。

  • 社会保険労務士(登録番号:第27070207号・平成19年11月1日登録・平成24年5月1日特定社会保険労務士付記)
  • キャリアコンサルタント(登録番号:16131446・平成28年8月23日登録)
  • HR BrEdge社会保険労務士法人 代表社員
  • 法人顧問を中心とした労務管理・給与計算の実務支援
  • 就業規則・社内ルール整備を含む制度運用支援
  • 企業向け労務管理に関する書籍・実務資料の執筆・監修
  • 経営者・人事担当者向け研修・セミナー講師実績

制度の解説にとどまらず、「このケースではどう判断すべきか」「どこでトラブルになりやすいか」といった実務上の判断ポイントを重視した情報提供を行っています。

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