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特定技能の定期報告を漏れなく完了させる提出方法|行政処分を回避する社労士直伝の管理体制

2026.02.11 社労士コラム

特定技能外国人を雇用する企業にとって、避けて通れないのが「定期報告(四半期報告)」の実務です。この報告を怠ったり、内容に虚偽や不整合があったりすると、最悪の場合「受入れ停止」という重い行政処分が下されるリスクがあります。

「登録支援機関に任せているから大丈夫」と考えている経営者様や人事担当者様も多いですが、法的な報告義務者はあくまで受入れ企業(特定技能所属機関)にあります。この記事では、行政処分を回避し、安定した雇用を継続するための「定期報告の確実な進め方」を、現場の労務管理に詳しい社会保険労務士がステップ形式で解説します。

Step1:4つの定期報告と「提出期限」を正確に把握する

【結論】このステップでは、自社が提出すべき報告書の種類と、厳守すべき期限(四半期ごとの翌月14日)を確認します。

特定技能制度では、入管法に基づき、受入れ企業に対して定期的な状況報告が義務付けられています。これを怠ると、指導・助言の対象となるだけでなく、悪質な場合は在留資格の取り消しや機関登録の抹消に繋がります。

  • 受入れ状況に係る届出書:雇用している特定技能外国人の総数、氏名、在留カード番号、活動日数、活動場所などを報告します。
  • 支援実施状況に係る届出書:1号特定技能外国人に対して実施した生活支援の内容(オリエンテーション、定期面談など)を報告します。
  • 活動状況に係る届出書(登録支援機関用):登録支援機関に委託している場合、機関側が提出しますが、企業側も内容を把握しておく必要があります。
  • 提出期限の厳守:第1四半期(1~3月分)は4月14日まで、第2四半期(4~6月分)は7月14日まで、と続きます。

注意点・社労士視点の補足
「14日が土日祝日の場合はどうなるか」という質問をよく頂きますが、官公庁の開庁日に準じて直後の平日となるのが一般的です。しかし、ギリギリの提出はシステム障害などのリスクがあるため、「毎月10日までに提出完了」を社内ルール化することをお勧めします。また、退職者が出た場合の「随時報告」と混同しないよう注意が必要です。

Step2:登録支援機関との役割分担と責任範囲を明確にする

【結論】このステップでは、外部委託している場合でも、最終責任が自社にあることを認識し、報告内容の確認フローを構築します。

多くの企業が支援業務を登録支援機関に委託していますが、入管法上の届出義務者は「特定技能所属機関(受入れ企業)」です。委託先が報告を忘れていた場合でも、ペナルティを受けるのは企業側となります。

  • 委託契約書の確認:定期報告の作成・提出代行が契約範囲に含まれているか再確認してください。
  • ドラフト(下書き)の確認:提出前に必ず報告書のドラフトを共有してもらい、企業側の認識とズレがないかチェックします。
  • 受領証の保管:提出完了後、入管からの受付メールや受領印のある控えを必ず自社で保管します。

注意点・社労士視点の補足
登録支援機関に「全部お任せ」にしている企業ほど、トラブル時に対応が遅れます。特に、支援担当者が変更になったタイミングなどで報告漏れが発生しやすい傾向にあります。「今月の報告は完了しましたか?」と企業側から一本メールを入れるだけでも、管理体制としての強度が変わります。

Step3:賃金台帳と出勤簿の整合性をチェックする

【結論】このステップでは、審査官が最も厳しくチェックする「賃金支払い状況」と「労働時間」の整合性を確認します。

定期報告において、最も不備を指摘されやすいのが添付書類である「賃金台帳」と「出勤簿(タイムカード)」の不整合です。特定技能外国人の報酬額が、日本人と同等以上であること、および最低賃金法や労働基準法を遵守しているかが審査されます。

  • 労働日数・時間の突合:出勤簿上の労働時間と、給与計算上の支給額(特に残業代)が完全に一致しているか確認します。
  • 控除項目の適法性:家賃や水道光熱費を給与天引きしている場合、労使協定が締結されているか、実費を超えて徴収していないかを確認します。
  • 日本人従業員との比較:同じ業務に従事する日本人従業員の賃金台帳と比較し、不当に低い設定になっていないか再確認します。

注意点・社労士視点の補足
変形労働時間制を採用している企業は要注意です。シフト表と出勤簿、そして残業代計算の根拠が複雑になるため、計算ミスが頻発します。もし計算ミスが見つかった場合は、報告前に不足分を遡及して支払い、その記録も合わせて提出することで、悪意のないミスであることを示す必要があります。

Step4:支援実施状況報告書の記載内容を精査する

【結論】このステップでは、義務的支援(特に定期面談)が計画通り実施され、記録されているかを確認します。

特定技能1号では、少なくとも3ヶ月に1回、支援責任者等が外国人本人と面談を行うことが義務付けられています。この面談記録が報告書の根幹となります。

  • 定期面談の実施記録:面談日時、場所、対応者、相談内容が具体的に記載されているか確認します。
  • 生活オリエンテーションの実施:入社時や転居時に必要な情報提供が行われた記録があるか確認します。
  • 相談対応の記録:本人からの苦情や相談があった場合、その対応履歴が記載されているか確認します。

注意点・社労士視点の補足
「特になし」の連続は疑われます。3ヶ月間働いていて、悩みや質問が一つもないことは稀です。些細なこと(例:「スーパーの場所を聞かれた」「有給の取り方を説明した」)でも記録に残しておくことが、実態のある支援を行っている証明になります。一方で、面談が実施できていない月に「実施した」と虚偽報告をするのは絶対NGです。

Step5:電子届出システムまたは窓口・郵送での提出準備

【結論】このステップでは、出入国在留管理庁の「電子届出システム」を利用して効率的に提出を行います。

以前は窓口持参や郵送が主流でしたが、現在は24時間利用可能なオンライン提出が推奨されています。移動時間や待ち時間を削減できるため、実務担当者の負担軽減に繋がります。

  • 利用者情報登録:初めて利用する場合は、事前にIDとパスワードの発行手続きを行います。
  • 添付書類のPDF化:賃金台帳や出勤簿などをPDF化し、システムにアップロードできる状態にします。
  • システムへの入力・送信:画面の指示に従って報告内容を入力し、データを送信します。

注意点・社労士視点の補足
システムは便利ですが、添付ファイルの容量制限や形式指定に注意してください。また、システム障害やメンテナンスで期限直前にアクセスできない可能性も考慮し、余裕を持ったスケジュールで操作することをお勧めします。紙で提出する場合は、必ず「控え」に受領印をもらうことを忘れないでください。

Step6:担当者の属人化を防ぐ「四半期報告スケジュール」と社内連携

【結論】このステップでは、担当者が不在でも報告漏れが起きないよう、組織的な管理体制を構築します。

特定技能の運用で最も怖いのが「担当者の退職によるブラックボックス化」です。定期報告は数ヶ月に一度の業務であるため、引継ぎが漏れやすく、気づいた時には期限を過ぎていたというケースが後を絶ちません。

  • 年間カレンダーへの登録:Googleカレンダーなどの共有カレンダーに、報告期限の2週間前を「準備開始日」、1週間前を「提出完了目標日」として登録します。
  • マニュアルの作成:ログインID・パスワードの保管場所、必要な添付書類リスト、登録支援機関の連絡先をまとめた簡易マニュアルを作成します。
  • 複数名での管理:メイン担当者だけでなく、上長やサブ担当者も通知を受け取れる設定にします。

注意点・社労士視点の補足
「誰かがやっているだろう」が一番危険です。四半期ごとの定例会議のアジェンダに「特定技能定期報告の進捗確認」を組み込むなど、強制的にチェックする仕組みを作ることが、コンプライアンス遵守の鍵となります。

まとめ

特定技能の定期報告は、単なる事務手続きではなく、外国人を適正に雇用していることを国に証明する重要なプロセスです。提出期限の管理、賃金台帳の整合性チェック、そして登録支援機関との連携を密にすることで、行政処分のリスクを回避し、安定した受入れ体制を築くことができます。

特定技能・外国人雇用に関する詳しい情報はこちらのブログ一覧もご参照ください。

監修者プロフィール

本記事は、HR BrEdge社会保険労務士法人に所属する特定社会保険労務士・渡辺俊一が監修しています。法人顧問業務を中心に、給与計算、労務相談、就業規則整備など、企業のバックオフィス全体を支える実務に携わってきました。

日常的な労務相談から、制度設計、実務運用、トラブル予防まで、「現場で実際に起こること」を前提とした支援を行っています。特に、従業員100名以上規模の企業における実務の属人化や判断が分かれやすい場面への対応を得意としています。

  • 社会保険労務士(登録番号:第27070207号・平成19年11月1日登録・平成24年5月1日特定社会保険労務士付記)
  • キャリアコンサルタント(登録番号:16131446・平成28年8月23日登録)
  • HR BrEdge社会保険労務士法人 代表社員
  • 法人顧問を中心とした労務管理・給与計算の実務支援
  • 就業規則・社内ルール整備を含む制度運用支援
  • 企業向け労務管理に関する書籍・実務資料の執筆・監修
  • 経営者・人事担当者向け研修・セミナー講師実績

制度の解説にとどまらず、「このケースではどう判断すべきか」「どこでトラブルになりやすいか」といった実務上の判断ポイントを重視した情報提供を行っています。

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