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特定技能「飲食業」の兼務はどこまでOK?社労士が教える付随業務の境界線と店舗間応援の適正手順

投稿日: 2026.01.26 / 最終更新日: 2026.02.10 外国人雇用

「特定技能外国人に、ホールの片付けや食材の買い出しを頼んでも大丈夫ですか?」「他店舗が忙しい時にヘルプに行かせても問題ないでしょうか?」

これらは、外食業で特定技能外国人を雇用する企業様から頻繁にいただくご相談です。特定技能「外食業」は業務範囲が比較的広く設定されていますが、「主たる業務」と「付随業務」の境界線を見誤ると、不法就労助長罪や在留資格取り消しのリスクに直結します。

この記事では、社会保険労務士として数多くの外国人雇用監査に立ち会ってきた経験をもとに、現場で迷いやすい「兼務のOK/NGライン」と、コンプライアンスを守りながら柔軟に人員配置を行うための「店舗間応援の手順」を、実務ステップに沿って解説します。

Step1:業務範囲の「主従関係」を定義する

【結論】このステップでは、任せたい業務が「主たる業務」か「付随業務」かを明確に区分けします。

特定技能「外食業」において、外国人が従事できる業務は入管法および運用要領で厳格に定められています。現場判断で勝手に業務を拡大することはできません。

  • 主たる業務(必須):飲食物調理、接客、店舗管理
  • 付随業務(可能):上記に関連して通常行われる業務(原料の調達・受入れ、店舗の清掃、作業場の片付け、会計事務など)

注意点・よくあるミス:
最も多い誤解は、「付随業務だけを長時間行わせる」ケースです。例えば、日本語が苦手だからといって「皿洗い(洗浄)」や「清掃」のみに専従させることは認められません。これらはあくまで調理や接客に付随して発生する作業であり、それ自体が主たる業務ではないためです。「日本人が通常行う業務の流れと同じかどうか」が判断の基準となります。

Step2:付随業務の時間管理とシフト調整を行う

【結論】このステップでは、付随業務が主たる業務を上回らないよう、シフトや業務配分を調整します。

法律上、「全体の何%までなら付随業務OK」という明確な数値基準はありません。しかし、実務上の監査対応では、業務全体の中で「主たる業務」が中心となっているかが厳しくチェックされます。

  • 確認事項:1週間のシフトの中で、調理・接客・店舗管理に従事する時間が大半を占めているか
  • 具体的対策:「清掃担当」「搬入担当」といった特定の役割のみを固定しない

社労士視点の補足:
私たちが顧問先で指導する際は、「一連の業務フローの中に組み込むこと」を推奨しています。例えば、「10時から14時は調理、その後1時間は清掃」という切り分けではなく、「調理業務の一環として、調理場の清掃や片付けも行う」という位置づけにすることで、業務の関連性が明確になり、不法就労のリスクを低減できます。

Step3:店舗間応援の契約確認と届出を行う

【結論】このステップでは、同一法人内の他店舗へ応援(ヘルプ)に行かせるための法的要件を整備します。

特定技能外国人は、指定された「就業の場所」で働くことが前提です。しかし、同一法人内かつ同一業務区分(外食業)であれば、適切な手続きを踏むことで店舗間応援は可能です。

  • 確認書類:雇用契約書および雇用条件書(3号様式)
  • 必須アクション:応援先の店舗が「就業の場所」として記載されているか確認する
  • 届出対応:記載がない店舗へ行かせる場合、事前の契約変更と入管への「変更届出」が必要

条件分岐:
【雇用契約書に応援先店舗の記載がある場合】
→ そのまま応援に行かせて問題ありません。
【記載がない場合】
→ まず雇用契約書(条件書)を巻き直し、応援先店舗を追加します。その後、入管へ「特定技能所属機関による届出(変更届出)」を提出してから応援を開始してください。これを怠ると「資格外活動」とみなされる危険があります。

Step4:デリバリー・事務作業の兼務リスクを回避する

【結論】このステップでは、デリバリー業務や事務作業の取り扱いについて、適法な範囲内で運用ルールを定めます。

近年、テイクアウトやデリバリーの需要が増加していますが、ここにも落とし穴があります。

  • デリバリー業務:「接客」の一環として認められますが、「専らデリバリーのみ」に従事させることはNGとなる可能性があります。あくまで店内業務との兼務が前提です。
  • 事務作業:「店舗管理」に含まれるシフト作成や発注業務はOKですが、本社での経理事務や総務業務に専従させることは「技術・人文知識・国際業務」の範囲となり、特定技能では認められません。

実務のポイント:
「今日は人が足りないから一日中配達に行って」という指示が常態化していないか確認してください。監査では、タイムカードだけでなく業務日報などで実態を確認されることがあります。

Step5:業務従事記録の作成と社内体制を構築する

【結論】このステップでは、監査や定期届出に備え、適正な業務運用を行っている証拠を残す体制を作ります。

特定技能制度では、3ヶ月に1回の定期届出が義務付けられています。ここで「どのような業務に従事していたか」を問われた際、曖昧な回答をすると疑義を招きます。

  • 作成すべき記録:出勤簿に加え、簡単な「業務日報」や「作業割当表」
  • 記録内容:「ホール」「キッチン」「発注」など、具体的な従事内容がわかるもの
  • 体制構築:店長や現場責任者に対し、「特定技能外国人にさせてはいけない業務(単純労働のみの専従など)」を教育する

社労士視点の補足:
実際にトラブルになるケースの多くは、現場責任者が制度を理解しておらず、悪気なく禁止業務をさせていたパターンです。本社人事だけでなく、現場レベルへの周知徹底が、雇用継続の鍵を握ります。

まとめ

特定技能「外食業」における兼務や応援は、ルールを守れば柔軟な運用が可能です。重要なのは、「主たる業務」を軸に置くことと、「就業場所の届出」を徹底することです。

曖昧な運用のまま放置すると、次回のビザ更新が不許可になるだけでなく、企業名公表や受入れ停止処分などの重いペナルティを受ける可能性があります。自社の運用が適正か不安な場合は、専門家によるチェックを受けることをお勧めします。

特定技能・外国人雇用に関する詳しい情報はこちらのブログ一覧もご参照ください。

監修者プロフィール

本記事は、HR BrEdge社会保険労務士法人に所属する特定社会保険労務士・渡辺俊一が監修しています。法人顧問業務を中心に、給与計算、労務相談、就業規則整備など、企業のバックオフィス全体を支える実務に携わってきました。

日常的な労務相談から、制度設計、実務運用、トラブル予防まで、「現場で実際に起こること」を前提とした支援を行っています。特に、従業員100名以上規模の企業における実務の属人化や判断が分かれやすい場面への対応を得意としています。

  • 社会保険労務士(登録番号:第27070207号・平成19年11月1日登録・平成24年5月1日特定社会保険労務士付記)
  • キャリアコンサルタント(登録番号:16131446・平成28年8月23日登録)
  • HR BrEdge社会保険労務士法人 代表社員
  • 法人顧問を中心とした労務管理・給与計算の実務支援
  • 就業規則・社内ルール整備を含む制度運用支援
  • 企業向け労務管理に関する書籍・実務資料の執筆・監修
  • 経営者・人事担当者向け研修・セミナー講師実績

制度の解説にとどまらず、「このケースではどう判断すべきか」「どこでトラブルになりやすいか」といった実務上の判断ポイントを重視した情報提供を行っています。

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