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特定技能 宿泊業 業務範囲 違反を防ぐ適正運用の手順|社労士が教える不法就労リスク回避法

2026.01.25 労務相談

宿泊業界における人手不足の切り札として「特定技能」外国人の採用が進んでいますが、現場運用で最も注意すべきなのが「業務範囲」の違反です。「ホテルの仕事なら何でも頼める」と誤解し、知らず知らずのうちに不法就労(資格外活動)の状態に陥っているケースが少なくありません。

この記事では、宿泊業の特定技能外国人が従事できる業務の境界線と、違反を防ぐための具体的な管理手順を解説します。これから採用を始める企業様も、すでに雇用している企業様も、入管法令を遵守した適正な運用体制を構築しましょう。

Step1:宿泊業の特定技能における「業務範囲違反」の定義とリスクを把握する

【結論】このステップでは、特定技能「宿泊」ビザで許可されている業務と、禁止されている業務の境界線を明確にします。

特定技能「宿泊」の在留資格は、宿泊施設における「宿泊サービスの提供に係る業務」を行うために付与されます。具体的には以下の業務が「本来業務」として認められています。

  • フロント業務(チェックイン・アウト、案内等)
  • 企画・広報業務
  • 接客業務
  • レストランサービス業務(配膳・下膳、注文対応等)

注意点・よくあるミス
最も多い誤解は、「ホテル内の仕事なら清掃や調理もメインで任せられる」という思い込みです。特定技能「宿泊」において、客室清掃や調理業務はあくまで「付随業務」としての位置づけであり、これらを専従させることは認められていません。もし清掃のみを一日中行わせた場合、資格外活動として不法就労助長罪に問われるリスクがあります。

Step2:フロント・接客以外の「付随業務」が50%を超えないか実態を測定する

【結論】このステップでは、当該外国人の業務時間全体に占める「付随業務」の割合を確認します。

入管庁の運用要領では、特定技能外国人が行う業務について、「日本人が通常従事することとなる関連業務(付随業務)に付随的に従事することは差し支えない」としています。これには館内清掃、客室のベッドメイク、館内販売などが該当します。

  • 1週間のシフト表を用意し、業務内容を色分けする
  • 「本来業務(フロント・接客等)」と「付随業務(清掃・単純作業等)」の時間を集計する
  • 付随業務が全体の業務時間の半分を超えていないか確認する

社労士視点の補足
明確に「何%まで」という法的数値基準はありませんが、実務上は「主たる業務」がメインである必要があります。例えば、週5日勤務のうち3日以上が「一日中ベッドメイク」である場合、それはもはや付随業務とは言えず、在留資格の範囲外と判断される可能性が高いです。

Step3:レストラン・清掃業務への配置転換が「不法就労」にならないための条件を確認する

【結論】このステップでは、配置転換や応援業務を命じる際の法的要件を確認します。

宿泊施設内のレストランであっても、その運営形態によって判断が分かれます。特定技能「宿泊」の外国人が従事できるレストランサービスは、あくまで「雇用元の宿泊施設が直営または運営している場合」に限られます。

  • 直営レストランの場合:朝食会場の配膳や接客は「宿泊サービスの提供」に含まれるため問題ありません。
  • テナント店舗の場合:ホテル内に入っている別法人のテナント飲食店へ「応援」に行かせることは、雇用契約外かつ資格外活動となるため違法です。

現場での判断ポイント
「今日は人が足りないから厨房で皿洗いだけして」という指示も要注意です。レストランサービス(ホール業務)の一環としての片付けなら許容範囲ですが、バックヤードでの「洗い場専従」となると、特定技能「外食」や「ビルクリーニング」の領域に抵触する恐れがあります。

Step4:雇用契約書と実務の乖離を埋める「業務分担表」を作成し現場へ周知する

【結論】このステップでは、契約上の業務内容を現場レベルのタスクに落とし込み、日本人スタッフと共有します。

経営層や人事が正しく理解していても、現場の支配人やリーダーが「外国人スタッフ=何でも屋」と扱ってしまうことでトラブルが起きます。これを防ぐために、明確な業務分担表を作成します。

  • 特定技能外国人が担当する「メイン業務」と「サブ業務」をリスト化する
  • 日本人スタッフ向けに「依頼してはいけない業務(例:送迎バスの運転、長時間の草むしり等)」を明記したマニュアルを配布する
  • 雇用契約書の業務内容欄には「宿泊サービスの提供に係る業務(フロント、接客、レストランサービス等)及びこれに付随する業務」と網羅的に記載しておく

注意点
雇用契約書に詳細を書きすぎると、業務変更のたびに契約変更が必要になるため、契約書は包括的に記載し、別紙の「職務記述書(ジョブディスクリプション)」や「業務分担表」で具体化するのが実務的な進め方です。

Step5:入管の監査・実地調査に備えた「日報・シフト管理」の保存体制を構築する

【結論】このステップでは、適正な業務運用を行っていることを証明するための記録を整備します。

入管や労働局の実地調査が入った際、口頭で「適正にやっています」と主張しても証拠がなければ認められません。日々の記録が身を守ります。

  • 業務日報に「従事した具体的な業務内容」を記載させる欄を設ける(「業務:フロント」だけでなく「チェックイン対応 4時間、ロビー清掃 1時間」など)
  • 過去のシフト表と日報を突き合わせ、付随業務が過多になっていないか定期チェックする
  • これらの記録を最低3年間は保存する

社労士視点の補足
特定技能外国人は四半期ごとの定期届出が義務付けられていますが、その際にも業務内容の整合性が問われます。日報データがあれば、届出書類の作成もスムーズになり、監査時の心証も良くなります。

Step6:登録支援機関との連携を強化し「業務範囲の定期モニタリング」を仕組み化する

【結論】このステップでは、自社だけで判断せず、専門家である登録支援機関や社労士による第三者チェックを導入します。

現場の業務内容は日々変化します。当初は適正でも、繁忙期にいつの間にか清掃専従になっていた、というケースを防ぐには外部の目が有効です。

  • 3ヶ月に1回の定期面談時に、支援担当者から本人へ「最近どんな仕事をしているか」ヒアリングしてもらう
  • 登録支援機関に対して、業務範囲に関する法的アドバイスを求める
  • 支援委託契約の中に「業務範囲の適正性チェック」を含めておく

成功のポイント
登録支援機関任せにするのではなく、企業側から「コンプライアンスを重視している」という姿勢を見せることが重要です。違反が発覚した場合、受入れ停止処分を受けるのは企業自身だからです。

特定技能・外国人雇用に関する詳しい情報はこちらのブログ一覧もご参照ください。

監修者プロフィール

本記事は、HR BrEdge社会保険労務士法人に所属する特定社会保険労務士・渡辺俊一が監修しています。法人顧問業務を中心に、給与計算、労務相談、就業規則整備など、企業のバックオフィス全体を支える実務に携わってきました。

日常的な労務相談から、制度設計、実務運用、トラブル予防まで、「現場で実際に起こること」を前提とした支援を行っています。特に、従業員100名以上規模の企業における実務の属人化や判断が分かれやすい場面への対応を得意としています。

  • 社会保険労務士(登録番号:第27070207号・平成19年11月1日登録・平成24年5月1日特定社会保険労務士付記)
  • キャリアコンサルタント(登録番号:16131446・平成28年8月23日登録)
  • HR BrEdge社会保険労務士法人 代表社員
  • 法人顧問を中心とした労務管理・給与計算の実務支援
  • 就業規則・社内ルール整備を含む制度運用支援
  • 企業向け労務管理に関する書籍・実務資料の執筆・監修
  • 経営者・人事担当者向け研修・セミナー講師実績

制度の解説にとどまらず、「このケースではどう判断すべきか」「どこでトラブルになりやすいか」といった実務上の判断ポイントを重視した情報提供を行っています。

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