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特定技能「介護」の資格取得支援を成功させる全手順|離職を防ぎ介護福祉士を育てる社労士直伝のキャリア支援術
「せっかく採用した特定技能のスタッフが、5年の在留期間を終えて帰国してしまうかもしれない」
「介護福祉士の国家試験に合格できず、本人のモチベーションが下がっている」
介護現場で特定技能外国人の受け入れが進む中、多くの経営者様や施設長様からこのような相談をいただきます。特定技能「介護」は、最長5年の在留期間が設けられていますが、介護福祉士の国家資格を取得すれば在留資格「介護」へと変更が可能になり、事実上の永続勤務が可能となります。
しかし、日本語の壁や専門用語の難しさ、そして日々の業務の忙しさから、独学での合格は極めて困難です。組織として戦略的に支援を行わなければ、貴重な人材を失うことになりかねません。
この記事では、外国人雇用に強い社会保険労務士が、特定技能外国人の介護福祉士取得を成功させ、長期定着につなげるための具体的な支援手順を解説します。単なる学習支援にとどまらず、法的な労務管理や心理的なケアまで踏み込んだ「現場で使える」ノウハウをお伝えします。
現場で起こる「特定技能のモチベーション低下」を未然に防ぐ資格取得支援の意義
特定技能外国人の多くは、「日本で長く働きたい」「高い給料を得たい」という強い意欲を持って来日します。しかし、現場配属から1〜2年が経過すると、以下のような理由でモチベーションが低下するケースが散見されます。
- 日々の業務に追われ、日本語能力が伸び悩む
- 日本人職員との待遇差(資格手当など)を感じる
- 「介護福祉士」の試験内容が難しすぎて諦めてしまう
資格取得支援は、単に合格を目指すだけでなく、「あなたのキャリアを会社が本気で応援している」というメッセージでもあります。適切な支援体制を構築することは、離職防止(リテンション)における最強の施策となるのです。
Step1:業務時間内での学習時間を「福利厚生」ではなく「業務」として保障する
【結論】このステップでは、学習時間を労働時間として扱い、給与を支払った上で勉強させる仕組みを構築します。
多くの施設では「勉強は個人の自由時間に行うもの」と考えがちですが、特定技能外国人にとって、異国の言語で専門知識を学ぶ負荷は想像を絶します。業務終了後の疲れた状態で勉強を強いるのは、現実的ではありません。
- 学習時間のシフト組み込み:週に1〜2回、1時間程度の「学習タイム」を勤務シフトに組み込みます。
- 場所の確保:スタッフルームや空き会議室など、集中できる環境を提供します。
- 記録の管理:学習内容や進捗を日報などで報告させ、業務の一環として管理します。
社労士視点の重要ポイント:
使用者の指揮命令下にある学習時間は、労働基準法上の「労働時間」に該当します。これを無給で行わせると未払い賃金のリスクが生じます。あえて「業務」として扱うことで、本人に「仕事として勉強する責任」を持たせることができ、日本人職員に対しても「会社の指示で勉強している」という説明がつきやすくなり、不公平感を軽減できます。
Step2:日本語の壁を越えるための「介護現場の専門用語」と試験対策を両立させる
【結論】このステップでは、現場の実務と試験勉強をリンクさせ、日本語のハンデを埋めるための具体的なツールを整備します。
介護福祉士試験の最大の壁は、日常会話では使わない「専門用語」と「独特の言い回し」です。例えば「褥瘡(じょくそう)」「嚥下(えんげ)」といった漢字は、日本人でも難しいものです。
- ルビ付きマニュアルの作成:業務マニュアルや申し送り事項には、必ずふりがなを振ります。
- 「言い換え」の徹底:現場での指示出しの際、「臥床(がしょう)して」だけでなく「ベッドに横になって」と言い添えるなど、専門用語と平易な日本語をセットで伝えます。
- 過去問の多言語解説:EPA(経済連携協定)などで公開されている、用語解説付きの過去問題集を活用します。
実務での失敗例:
「日本語能力試験(JLPT)N3を持っているから大丈夫だろう」と放置するケースです。JLPTの日本語と介護の専門用語は別物です。現場のリーダーや教育担当者が、意識的に専門用語の意味を噛み砕いて教える時間を設けることが不可欠です。
Step3:実務者研修の受講費用補助とシフト調整を組織的なルールとして運用する
【結論】このステップでは、受験資格である「実務者研修」の受講ハードルを、資金と時間の両面から組織的に取り除きます。
介護福祉士国家試験を受験するには、実務経験3年に加えて「実務者研修」の修了が必須です。しかし、受講費用(10〜20万円程度)やスクーリング(通学)の日程調整は、外国人材にとって大きな負担です。
- 費用補助制度の構築:受講費用を会社が全額または一部負担する規定を作成します。
- シフトの優先調整:スクーリングの日程を優先的に休日にする、あるいは出勤扱い(職務免除)にするなどの配慮を行います。
- 返還免除規定の整備:「資格取得後、◯年勤務すれば返済免除」といった貸付金制度を活用します。
社労士視点の重要ポイント:
費用を会社が負担する場合、労働基準法第16条(賠償予定の禁止)に抵触しないよう注意が必要です。「辞めたら違約金として全額払え」という契約は違法となる可能性があります。「金銭消費貸借契約(借金)」の形をとり、「一定期間勤務することで返済を免除する」という運用にするのが実務上の定石です。必ず専門家のアドバイスを受けて規定を整備してください。
Step4:介護福祉士国家試験に向けた「模擬試験」の実施と進捗管理を並走する
【結論】このステップでは、試験直前期におけるメンタルサポートと、合格率を高めるための客観的な実力把握を行います。
試験勉強は孤独な戦いです。特に外国人の場合、「落ちたらどうしよう」というプレッシャーは日本人の比ではありません。組織として「一緒に戦う」姿勢を見せることが重要です。
- 定期的な模擬試験:外部の模試を活用するか、社内で過去問テストを実施し、現在の実力を可視化します。
- 弱点分野の洗い出し:「制度・法律系が弱い」「医療的ケアが苦手」など、弱点を特定して重点的に指導します。
- 声掛けと励まし:進捗確認の面談を月1回行い、悩みを聞き出します。
一方で注意すべき点:
模試の結果が悪かった場合に、厳しく叱責することは逆効果です。「この分野さえ覚えれば合格ラインに届くよ」と、具体的な改善策をポジティブに伝えることが、最後まで走り抜けるための燃料になります。
【独自視点】不合格が招く「帰国・転籍」の連鎖を止めるための心理的セーフティネット構築
どれだけ支援しても、残念ながら不合格になることはあります。この時、最も恐れるべきは「自分はダメだ、もう国に帰ろう」と心が折れてしまうことです。
私が関与した企業では、不合格発表の直後に必ず面談を行い、以下のことを伝えています。
- 「挑戦したこと自体が素晴らしい」という承認
- 「来年も会社は全力でサポートする」という約束
- 「特定技能のままでも、あなたの働きぶりを評価している」という安心感の付与
不合格のショックを「次へのバネ」に変えられるか、「離職のトリガー」にしてしまうかは、発表直後の企業の対応にかかっています。心理的なセーフティネット(安心の網)を張っておくことが、長期的な雇用安定には不可欠です。
介護福祉士取得後の「特定技能2号」移行を見据えた処遇改善とキャリアパスの事前提示
資格取得支援を成功させるための最後の鍵は、「合格後の未来」を見せることです。「苦労して資格を取っても給料が変わらない」のでは、誰も頑張りません。
介護福祉士を取得すれば、在留資格「介護」への変更が可能になるほか、要件を満たせば「特定技能2号」への道も開けます。これにより、家族帯同が可能になったり、在留期間の更新制限がなくなったりと、ライフプランが大きく広がります。
企業側は、資格取得時の「資格手当の増額」「昇給」「リーダー職への登用」などを明確に規定し、事前に提示しておくべきです。「頑張れば報われる」という確信こそが、日々の過酷な勉強を支える最大のモチベーションになるのです。
まとめ
特定技能「介護」の資格取得支援は、単なる福利厚生ではありません。それは、将来の現場リーダーを育成し、慢性的な人手不足を解消するための重要な経営戦略です。
業務時間内の学習確保、専門用語への配慮、費用面のサポート、そして心のケア。これらを組織的な仕組みとして運用することで、外国人人材は「この会社で長く働きたい」と強く感じるようになります。ぜひ、できるところから一歩ずつ、支援体制の見直しを進めてみてください。
特定技能・外国人雇用に関する詳しい情報はこちらのブログ一覧もご参照ください。
監修者プロフィール
本記事は、HR BrEdge社会保険労務士法人に所属する 特定社会保険労務士・渡辺俊一が監修しています。 法人顧問業務を中心に、給与計算、労務相談、就業規則整備など、 企業のバックオフィス全体を支える実務に携わってきました。
日常的な労務相談から、制度設計、実務運用、トラブル予防まで、 「現場で実際に起こること」を前提とした支援を行っています。 特に、従業員100名以上規模の企業における 実務の属人化や判断が分かれやすい場面への対応を得意としています。
- 社会保険労務士(登録番号:第27070207号・平成19年11月1日登録・平成24年5月1日特定社会保険労務士付記)
- キャリアコンサルタント(登録番号:16131446・平成28年8月23日登録)
- HR BrEdge社会保険労務士法人 代表社員
- 法人顧問を中心とした労務管理・給与計算の実務支援
- 就業規則・社内ルール整備を含む制度運用支援
- 企業向け労務管理に関する書籍・実務資料の執筆・監修
- 経営者・人事担当者向け研修・セミナー講師実績
制度の解説にとどまらず、 「このケースではどう判断すべきか」 「どこでトラブルになりやすいか」 といった実務上の判断ポイントを重視した情報提供を行っています。
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