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外国人扶養控除の書類回収コツ|送金証明の罠を防ぐ社労士直伝の回収手順と実務の要諦
特定技能外国人をはじめとする外国人従業員の年末調整において、現場担当者を最も悩ませるのが「扶養控除」の適用判断と書類回収です。「書類が揃わない」「送金証明が足りない」といったトラブルは、単なる準備不足ではなく、制度特有の複雑さと従業員への説明不足に起因します。
本記事では、HR BrEdge社会保険労務士法人の実務経験に基づき、外国人扶養控除の書類回収をスムーズに進めるための具体的な手順を解説します。送金証明書の不備による追徴課税リスクを防ぎ、企業と従業員双方を守るための実務ノウハウを持ち帰ってください。
Step1:制度の誤解を解き、扶養控除の対象者を正しく洗い出す
【結論】このステップでは、従業員本人へのヒアリングを行い、法的に扶養控除の対象となる親族を正確に特定します。
多くの現場で「国にいる親に仕送りをしているから扶養に入れられる」という漠然とした認識だけで手続きが進んでしまいますが、これが最大の落とし穴です。令和5年(2023年)分からの税制改正により、国外居住親族の扶養要件は厳格化されています。
- 30歳以上70歳未満の「非居住者」に対する扶養控除の要件確認(留学、障害者、38万円以上の送金など)
- 従業員が申告しようとしている親族の年齢と属性のリストアップ
- 「誰に」「いくら」送金する予定かの事前確認
注意点・社労士の視点
30歳以上70歳未満の親族については、単に送金しているだけでは控除対象にならないケースが増えています。一方で、留学生である場合や38万円以上の送金がある場合など、条件分岐が複雑です。ヒアリング時点で「この親族は対象外の可能性が高い」と判断できれば、無用な書類回収の手間を省けます。
Step2:入社時・更新時を逃さず「親族関係書類」を回収・翻訳する
【結論】このステップでは、年末調整の時期を待たず、入社手続きや在留資格更新のタイミングで「親族関係書類」を先行して回収します。
年末調整の直前になってから「出生証明書」や「婚姻証明書」を本国から取り寄せようとすると、物理的に間に合いません。これらは一度取得すれば内容が変わらないものが多いため、早期回収が鉄則です。
- 入社時の必要書類リストに「本国の出生証明書」「婚姻証明書」を含める
- 回収した書類に日本語訳が添付されているか確認する
- 翻訳がない場合、本人または翻訳会社に依頼して翻訳書を作成させる(翻訳者の署名必須)
注意点・社労士の視点
パスポートのコピーだけでは親子関係や婚姻関係を証明できない国が多々あります。特に特定技能外国人の場合、家族滞在ビザの手続きがないため、会社側で能動的に親族関係書類を集める必要があります。翻訳者の署名がない翻訳書は税務調査で無効とされるリスクがあるため、形式不備もこの段階で潰しておきましょう。
Step3:「38万円ルール」を具体的に案内し、送金実績を作る
【結論】このステップでは、30歳以上70歳未満の扶養親族1人につき「年間38万円以上」の送金が必要であることを、具体的数値で周知します。
「生活費を送っていればいい」という認識では不十分です。複数の親族を扶養に入れる場合、まとめて送金すると「誰への送金か」が判別できず、全員分の控除が否認される恐れがあります。
- 「扶養親族1人につき、それぞれの名義の口座へ送金が必要」と伝える
- 「1人あたり年間38万円以上」という基準額を明示する
- 夫婦共同口座や代表者への一括送金はNGである旨を図解で説明する
注意点・社労士の視点
もし従業員が「妻と子供の分を妻の口座にまとめて送った」と言ってきた場合、それは妻への送金としてしか認められません。子供の控除は受けられないことになります。この「名義ごとの送金」というルールは、日本的な感覚とは異なるため、母国語で丁寧に説明する必要があります。
Step4:銀行送金かアプリか?有効な「送金証明書」を選定・確認する
【結論】このステップでは、税務署に認められる形式の「送金関係書類」を従業員に準備させ、会社側でその有効性をチェックします。
海外送金サービスは多岐にわたりますが、すべての明細が控除証明書として使えるわけではありません。特にスマホアプリ経由の送金は、画面キャプチャでは不可とされるケースがあります。
- 利用明細書に「送金日」「送金元(本人)」「送金先(扶養親族)」「送金金額」が明記されているか確認
- 外国送金依頼書(控え)ではなく、実際に送金が完了したことを示す「計算書」や「明細書」を回収する
- クレジットカードの家族カード利用の場合は、利用明細を回収する
注意点・社労士の視点
近年利用者が多い海外送金アプリ(WiseやSBIレミットなど)は便利ですが、年末に「年間取引報告書」のような一括証明書が出せるサービスと、都度の明細しか出せないサービスがあります。都度明細の場合、1年分を紛失せずに保管させるのは至難の業です。可能であれば、年間証明書が発行可能なサービスを会社として推奨するのも一つの手です。
Step5:二重控除や不整合をチェックして税務否認を未然に防ぐ
【結論】このステップでは、回収した書類と申告書を突合し、矛盾やリスクがないか最終確認を行います。
形式的に書類が揃っていても、内容に矛盾があれば税務調査で指摘されます。特に夫婦共働きで、同じ子供を双方が扶養に入れてしまう「二重控除」は頻発するミスです。
- 夫婦が共に日本で働いている場合、どちらが子供を扶養に入れているか確認する
- 送金証明書の受取人名義と、親族関係書類の名前が一致しているか(スペルミス含む)確認する
- 送金日が当該年(1月1日〜12月31日)に収まっているか確認する
注意点・社労士の視点
一方で、送金金額が極端に少額(例:年間数万円のみ)で30歳未満の親族を扶養に入れる場合も、生計を一にしている実態があるか疑われる可能性があります。法的な金額基準がない年齢層であっても、社会通念上妥当な送金実績があるかを確認し、リスクが高い場合は顧問税理士や社労士に相談することをお勧めします。
Step6:登録支援機関と連携し、母国語資料で説明コストを下げる
【結論】このステップでは、自社だけで対応しきれない説明業務を、登録支援機関や通訳担当者と連携して効率化します。
制度の複雑な説明を、日本人の人事担当者が日本語で繰り返すのは非効率です。特に特定技能外国人の場合、支援計画の中に「公的手続きの支援」が含まれているため、登録支援機関を有効活用すべきです。
- 登録支援機関に「扶養控除説明用の母国語資料」の作成や提供を依頼する
- 定期面談の際に、送金記録の保管状況を確認してもらうよう依頼する
- 年末調整説明会に登録支援機関の通訳を同席させる
注意点・社労士の視点
登録支援機関によっては、税務知識が乏しい担当者もいます。会社側から「38万円ルールの周知をお願いしたい」「親族ごとの送金が必要と伝えてほしい」と具体的な指示を出すことが重要です。外部リソースを上手く巻き込むことで、社内担当者の負担を大幅に削減できます。
特定技能・外国人雇用に関する詳しい情報はこちらのブログ一覧もご参照ください。
監修者プロフィール
本記事は、HR BrEdge社会保険労務士法人に所属する特定社会保険労務士・渡辺俊一が監修しています。法人顧問業務を中心に、給与計算、労務相談、就業規則整備など、企業のバックオフィス全体を支える実務に携わってきました。
日常的な労務相談から、制度設計、実務運用、トラブル予防まで、「現場で実際に起こること」を前提とした支援を行っています。特に、従業員100名以上規模の企業における実務の属人化や判断が分かれやすい場面への対応を得意としています。
- 社会保険労務士(登録番号:第27070207号・平成19年11月1日登録・平成24年5月1日特定社会保険労務士付記)
- キャリアコンサルタント(登録番号:16131446・平成28年8月23日登録)
- HR BrEdge社会保険労務士法人 代表社員
- 法人顧問を中心とした労務管理・給与計算の実務支援
- 就業規則・社内ルール整備を含む制度運用支援
- 企業向け労務管理に関する書籍・実務資料の執筆・監修
- 経営者・人事担当者向け研修・セミナー講師実績
制度の解説にとどまらず、「このケースではどう判断すべきか」「どこでトラブルになりやすいか」といった実務上の判断ポイントを重視した情報提供を行っています。
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