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外国人採用の面接で質問を避けるべき項目とは?法務リスクを回避し優秀な人材を見極める実務手順

2026.02.06 社労士コラム

外国人採用の面接において、経営者や人事担当者が最も頭を悩ませるのは「どこまで聞いて良いのか」という境界線ではないでしょうか。日本の労働法制や公正採用選考の観点から不適切な質問をしてしまうと、法的なリスクを招くだけでなく、企業のブランドイメージを損なう恐れがあります。

一方で、在留資格(ビザ)の要件や文化的な背景による業務への影響は、採用前に確実に確認しておかなければ、入社後のミスマッチや不法就労助長罪といった重大なトラブルに発展しかねません。

この記事では、「法務リスクの回避」と「人材の見極め」を両立させるための具体的な面接手順を、社会保険労務士の視点から解説します。これから特定技能外国人の雇用を始める企業や、面接官のトレーニングを行いたい人事責任者の方は、ぜひ参考にしてください。

Step1:厚生労働省の指針に基づき「適性・能力」に関わらない14のNG質問を徹底排除する

【結論】このステップでは、職業安定法および厚生労働省の指針に基づき、面接で聞いてはいけないNG項目をリスト化し、面接官全員で共有します。

公正な採用選考の基本は、「応募者の適性・能力に関係のない事項を基準にしない」ことです。特に外国人材の場合、悪気なく聞いてしまった質問が差別と受け取られるリスクが高いため、注意が必要です。

  • 本人に責任のない事項:本籍・出生地、家族に関すること(職業、続柄、健康、地位など)、住宅状況(間取り、部屋数など)、生活環境など。
  • 本来自由であるべき事項:宗教、支持政党、人生観・生活信条、尊敬する人物、思想、労働組合に関する情報など。

実務での判断ポイント:
現場でよく見られる失敗例として、アイスブレイクのつもりで「ご両親は母国で何をされているのですか?」と聞いてしまうケースがあります。日本人同士の会話では親愛の情を示す意図であっても、採用面接の場では「家族の社会的地位で判断しようとしている」と捉えられかねません。「適性・能力」に直結しないプライベートな質問は、原則として一切行わないというルールを徹底してください。

Step2:在留資格の確認において「不法就労防止」と「プライバシー侵害」の境界線を整理する

【結論】このステップでは、応募者の在留資格(ビザ)を確認し、自社で就労可能かどうかを判断します。ただし、必要以上にプライバシーに踏み込まないよう注意が必要です。

企業には、雇用する外国人が不法就労でないことを確認する義務があります(入管法第73条の2)。確認を怠ると「不法就労助長罪」に問われる可能性があります。

  • 在留カードの現物確認:面接時に必ず在留カードの原本提示を求めます。「在留資格の種類」「在留期限」「就労制限の有無」を目視で確認します。
  • 就労制限の確認:「留学」や「家族滞在」の場合は「資格外活動許可」の有無を裏面で確認します。
  • 特定技能の場合:試験合格証や日本語能力試験の証明書、あるいは技能実習の修了証書などを確認します。

実務での判断ポイント:
ここで注意が必要なのは、「身分系在留資格(日本人の配偶者等など)」の確認です。就労制限がないため企業としては採用しやすい在留資格ですが、「配偶者は日本人ですか?」「結婚生活は順調ですか?」といった質問は、Step1の「家族に関すること」に抵触する恐れがあります。
この場合、「現在の在留資格の維持・更新に支障が出る予定(離婚協議中など)はありますか?」といった聞き方ではなく、「在留期限の更新手続きに必要な書類はご自身で用意できますか?」と実務ベースで確認するのが安全です。

Step3:宗教や文化の違いを「差別」ではなく「就業継続のための合理的配慮」として確認する

【結論】このステップでは、宗教そのものを聞くのではなく、「業務遂行上、配慮が必要な事項」として確認を行います。

「宗教は何ですか?」と聞くことは思想・信条の自由に触れるためNGです。しかし、お祈りの時間や食事制限(ハラール対応など)が業務や社内行事に影響する場合、事前に調整しておかなければ早期離職の原因となります。

  • 質問の切り替え:「信仰している宗教はありますか?」ではなく、「業務を行う上で、時間や食事、服装などで配慮が必要な習慣はありますか?」と質問します。
  • 具体例の提示:「当社では制服の着用が必須ですが、問題ありませんか?」「社員食堂での食事提供がありますが、食べられない食材はありますか?」など、具体的なシーンを挙げて確認します。

実務での判断ポイント:
多くの企業に関与してきた経験上、事前に「配慮が必要なこと」を確認し、会社として「できること・できないこと」を明確に伝えている企業ほど、定着率が高い傾向にあります。もし「1日5回のお祈りが必要」と言われた場合、休憩時間を調整して対応可能か、業務の性質上難しいかをその場で判断せず、持ち帰って検討することも重要です。

Step4:特定技能特有の「転職意向」や「送金事情」を法的に抵触せず深掘りする

【結論】このステップでは、特定技能外国人の採用において特に重要な、転職リスクと経済的背景を確認します。

特定技能制度は転職が認められているため、より高い賃金を求めて短期間で離職されるリスクがあります。また、母国への送金プレッシャーが強い場合、残業代稼ぎや副業(原則禁止されている場合が多い)への意欲が強すぎることがあります。

  • 前職の退職理由の深掘り:単に「給料が安かった」だけでなく、どのようなスキルアップを目指しているのか、キャリアプランを確認します。
  • 日本での生活設計の確認:「毎月、生活費としてどのくらい必要と考えていますか?」と質問し、提示する給与額とのギャップがないかを確認します。
  • 送金事情の確認:直接「借金はありますか?」と聞くのはデリケートですが、「母国のご家族への仕送りは予定されていますか?その場合、毎月無理のない範囲で計画できていますか?」と寄り添う形で確認します。

実務での判断ポイント:
特定技能の場合、技能実習からの切り替えで採用するケースも多いです。技能実習時代の監理団体や受入れ企業とトラブルになっていないか、失踪歴がないかを確認することは重要ですが、直接本人に問い詰めるような圧迫面接は避けてください。あくまで「長く安心して働いてもらうため」というスタンスで、生活設計に無理がないかを確認しましょう。

Step5:面接官の「無意識のバイアス」を排除する評価基準とやさしい日本語の質問票を整備する

【結論】このステップでは、日本語能力に依存しすぎない評価基準を設け、面接官による評価のバラつきを防ぎます。

外国人の面接では、日本語が流暢なだけで「優秀だ」と判断したり、逆にたどたどしいだけで「能力が低い」と判断したりする「無意識のバイアス」がかかりがちです。これを防ぐために、構造化面接(あらかじめ決めた質問項目と評価基準で実施する面接)を取り入れます。

  • やさしい日本語への書き換え:「志望動機は何ですか?」→「どうしてこの会社で働きたいですか?」、「自己PRをしてください」→「あなたが得意な仕事は何ですか?」のように、質問を単純化します。
  • 評価シートの作成:「日本語力」「技能・経験」「意欲・姿勢」など項目を分け、日本語力が低くても技能が高い場合は評価できる仕組みにします。

実務での判断ポイント:
実際に支援を行っていると、面接時に「はい、わかります」と答えていても、実は質問の意味を理解していなかったというケースが多々あります。重要な質問については、「今の質問の意味はどう理解しましたか?」と逆に説明してもらうなど、理解度を確認するプロセスを入れるとミスマッチを大幅に減らせます。

まとめ

外国人採用の面接では、日本の法律に基づいた公正な採用選考を守りつつ、在留資格や文化的な背景、生活設計など、外国人特有の事情を確認する必要があります。「聞いてはいけないこと」と「確認すべきこと」の境界線を明確にし、マニュアル化しておくことで、面接官による対応の差をなくし、法務リスクを最小限に抑えることができます。

特定技能・外国人雇用に関する詳しい情報はこちらのブログ一覧もご参照ください。

監修者プロフィール

本記事は、HR BrEdge社会保険労務士法人に所属する 特定社会保険労務士・渡辺俊一が監修しています。 法人顧問業務を中心に、給与計算、労務相談、就業規則整備など、 企業のバックオフィス全体を支える実務に携わってきました。

日常的な労務相談から、制度設計、実務運用、トラブル予防まで、 「現場で実際に起こること」を前提とした支援を行っています。 特に、従業員100名以上規模の企業における 実務の属人化や判断が分かれやすい場面への対応を得意としています。

  • 社会保険労務士(登録番号:第27070207号・平成19年11月1日登録・平成24年5月1日特定社会保険労務士付記)
  • キャリアコンサルタント(登録番号:16131446・平成28年8月23日登録)
  • HR BrEdge社会保険労務士法人 代表社員
  • 法人顧問を中心とした労務管理・給与計算の実務支援
  • 就業規則・社内ルール整備を含む制度運用支援
  • 企業向け労務管理に関する書籍・実務資料の執筆・監修
  • 経営者・人事担当者向け研修・セミナー講師実績

制度の解説にとどまらず、 「このケースではどう判断すべきか」 「どこでトラブルになりやすいか」 といった実務上の判断ポイントを重視した情報提供を行っています。

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