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外国人 社内教育 マニュアル 作り方|離職を防ぎ現場を回す「社労士式」5つの作成手順

2026.01.30 社労士コラム

「何度説明しても伝わらない」「現場のルールが守られない」
外国人材の受け入れを始めた企業の多くが、こうした教育の壁に直面します。特に特定技能外国人の雇用においては、即戦力としての期待値が高い分、現場との摩擦が生じやすくなります。

その原因の多くは、日本独自の「暗黙の了解」や「曖昧な指示」にあります。日本人同士なら通じる阿吽の呼吸も、文化背景の異なる外国人社員には通用しません。これを放置すると、現場の疲弊や外国人材の早期離職につながるリスクがあります。

この記事では、【外国人 社内教育 マニュアル 作り方】に焦点を当て、現場の負担を減らし、定着率を高めるための具体的な作成手順を解説します。社労士としての実務経験に基づき、法的リスクを回避しながら、現場で「使える」マニュアルを作るための5つのステップをご紹介します。

Step1:日本の「暗黙の了解」を排除する:現場の常識を言語化するファーストステップ

【結論】このステップでは、現場にある「言わなくてもわかるはず」という常識をすべて洗い出し、言語化を行います。

日本の職場には、「空気を読む」「状況を見て判断する」といったハイコンテクストな文化が根付いています。しかし、これは外国人材にとって最大のストレス要因となり得ます。入管法や労働法以前の問題として、この文化的なギャップを埋めることが教育の第一歩です。

  • 「常識」のリストアップ:「挨拶をする」「整理整頓」といった抽象的な言葉ではなく、「出社時は立ち止まって『おはようございます』と言う」「道具は使い終わったら元の棚に戻す」など、具体的な行動レベルまで分解します。
  • NG行動の明文化:「適当にやってはいけない」ではなく、「手順書にない方法で機械を操作してはいけない」と具体的に禁止事項を定めます。

社労士視点の実務ポイント:
現場でよくあるトラブルとして、「掃除」の概念の違いが挙げられます。「きれいに掃除して」と指示しても、個人の感覚によって完了基準が異なるためです。
特定技能ですでに実務経験がある人材の場合は、前の職場のルールを引きずっている可能性があるため、「当社のルール」として明確に再定義することが重要です。一方で、技能実習生からの移行組の場合は、日本での生活には慣れていますが、職場の独自ルール(ローカルルール)の違いに戸惑うことが多いため、その差分を丁寧に説明する必要があります。

Step2:雇用契約書・就業規則との整合性をとる:法的リスクを回避するマニュアルの定義

【結論】このステップでは、作成するマニュアルの内容が、法的根拠のある書類(雇用契約書・就業規則)と矛盾していないかを確認します。

現場で作るマニュアルが、知らず知らずのうちに労働基準法違反になっているケースは少なくありません。マニュアルは業務遂行のルールブックですが、それが就業規則という「会社の憲法」を超えてしまっては、労務トラブルの火種になります。

  • 労働時間の定義確認:「着替えは始業15分前までに済ませる」といった記述は、着替え時間を労働時間とみなす判例に照らすとリスクがあります。「始業時刻には作業を開始できる状態にする」といった表現への調整が必要です。
  • ペナルティの記述チェック:「遅刻したら罰金1,000円」といった記述は、労基法第91条(制裁規定の制限)や第16条(賠償予定の禁止)に抵触する恐れがあります。

社労士視点の実務ポイント:
マニュアル内に独自の懲戒ルールを設けることは避け、必ず就業規則の懲戒規定を参照する形にしてください。
変形労働時間制を採用している企業の場合は、シフトごとの始業・終業時刻や休憩の取り方が複雑になりがちです。マニュアルにはカレンダーやシフト表の見方を詳しく記載し、誤解による欠勤や遅刻を防ぐ工夫が必要です。一方で、固定残業代制を導入している場合は、「残業代が含まれているから何時間でも働かせていい」という誤解を現場リーダーが持たないよう、マニュアルの管理者向けページで注意喚起することも有効です。

Step3:「やさしい日本語」と「視覚情報」の黄金比:実務で迷わせない構成のルール

【結論】このステップでは、翻訳に頼りすぎず、「やさしい日本語」と写真・図解を組み合わせて、直感的に理解できる紙面を作ります。

すべてを母国語に翻訳することは、コストがかかるだけでなく、更新のたびに翻訳が必要になり、メンテナンス性を著しく低下させます。また、将来的に多国籍な人材を受け入れる際にも応用が利きません。日本の現場で働く以上、「やさしい日本語」での理解を促す方が、結果的に業務習熟が早まります。

  • 「やさしい日本語」への変換:
    ・「記入してください」→「書いてください」
    ・「持参してください」→「持ってきてください」
    ・「使用不可」→「使ってはいけません」
    このように、漢語を避け、単純な動詞構造に書き換えます。
  • 視覚情報の活用:作業手順は文字で説明するよりも、1枚の写真の方が正確に伝わります。「良い例(OK)」と「悪い例(NG)」を並べて写真を掲載し、視覚的に正解を示します。

社労士視点の実務ポイント:
動画マニュアルも有効ですが、現場ですぐに見返せる紙(またはタブレット上のPDF)のマニュアルも必ず用意してください。
日本語能力試験N3以上の人材が多い場合は、漢字にルビを振る程度で十分理解できることが多いですが、専門用語には必ず解説を加えましょう。一方で、N4レベルや日本語が苦手な人材が多い場合は、重要な安全上の注意点(「危険」「さわるな」など)に限っては、母国語を併記することで労働災害を確実に防ぐ配慮が必要です。

Step4:習熟度を「見える化」するチェックリストの導入:評価の不公平感をなくす運用術

【結論】このステップでは、マニュアルの内容を習得できたかどうかを客観的に判断するためのチェックリストを作成します。

「指導担当者によって教え方が違う」「人によって合格基準が違う」という状況は、外国人社員に不公平感を与え、モチベーション低下や離職の原因になります。評価基準を統一することは、特定技能の定期面談や評価制度の運用においても極めて重要です。

  • 「できた」の基準を明確化:「一人で操作できる」「補助があればできる」「説明ができる」など、習熟度のレベルを定義します。
  • 日付とサイン欄の設置:いつ、誰が指導し、いつできるようになり、誰が確認したかを記録に残します。これは、万が一の事故やトラブルの際に、会社が安全配慮義務を果たしていたことの証明にもなります。

社労士視点の実務ポイント:
チェックリストは、入社直後のオンボーディング期間だけでなく、試用期間終了時の本採用判断の材料としても活用できます。
製造現場などの作業系業務の場合は、安全確認手順の遵守を最優先項目とし、ここがクリアできない限り次の工程に進ませないといった厳格な運用が求められます。一方で、介護やサービス業の場合は、利用者への声掛けや態度といったソフト面の評価基準を具体的に(例:「目を見て挨拶しているか」)設定することが、サービスの質を保つ鍵となります。

Step5:現場リーダーの負担を減らす更新フロー:マニュアルを「作って終わり」にしない組織作り

【結論】このステップでは、マニュアルを常に最新の状態に保つための更新ルールと担当者を決めます。

マニュアル作りで最も多い失敗は、「作って満足してしまう」ことです。業務フローの変更、機械の入れ替え、法改正などにより、マニュアルはすぐに陳腐化します。古い情報のまま放置されると、現場での信頼を失い、誰も見なくなってしまいます。

  • 更新担当者の指名:現場リーダーだけでなく、実際にマニュアルを使用している外国人社員自身を更新プロジェクトに巻き込むのが効果的です。「ここが分かりにくかった」という当事者の意見は、マニュアルの質を劇的に向上させます。
  • 定期見直しのスケジュール化:半年に1回、あるいは特定技能の定期報告のタイミングに合わせて、マニュアルの見直しを行う日を設けます。

社労士視点の実務ポイント:
マニュアルの更新履歴を残すことは、ISOなどの品質管理の観点からも重要ですが、労務管理上も「ルールの変更をいつ周知したか」の証拠となります。
社内に通訳スタッフがいる場合は、更新のたびに翻訳チェックを依頼するフローを確立してください。一方で、通訳がいない場合は、Google翻訳などのツールを活用しつつも、必ず日本人スタッフが「やさしい日本語」として意味が通じるかを再確認する工程(バックトランスレーション的な確認)を挟むことで、誤訳による重大なミスを防ぐことができます。

特定技能・外国人雇用に関する詳しい情報はこちらのブログ一覧もご参照ください。

監修者プロフィール

本記事は、HR BrEdge社会保険労務士法人に所属する特定社会保険労務士・渡辺俊一が監修しています。法人顧問業務を中心に、給与計算、労務相談、就業規則整備など、企業のバックオフィス全体を支える実務に携わってきました。

日常的な労務相談から、制度設計、実務運用、トラブル予防まで、「現場で実際に起こること」を前提とした支援を行っています。特に、従業員100名以上規模の企業における実務の属人化や判断が分かれやすい場面への対応を得意としています。

  • 社会保険労務士(登録番号:第27070207号・平成19年11月1日登録・平成24年5月1日特定社会保険労務士付記)
  • キャリアコンサルタント(登録番号:16131446・平成28年8月23日登録)
  • HR BrEdge社会保険労務士法人 代表社員
  • 法人顧問を中心とした労務管理・給与計算の実務支援
  • 就業規則・社内ルール整備を含む制度運用支援
  • 企業向け労務管理に関する書籍・実務資料の執筆・監修
  • 経営者・人事担当者向け研修・セミナー講師実績

制度の解説にとどまらず、「このケースではどう判断すべきか」「どこでトラブルになりやすいか」といった実務上の判断ポイントを重視した情報提供を行っています。

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