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特定技能の定期面談記録の必須項目は?社労士が教える監査を突破する3つの記録術と実務の落とし穴
特定技能外国人を雇用する企業にとって、3ヶ月に1回の「定期面談」とその「記録」は、避けては通れない法的義務です。しかし、多くの現場では「とりあえず会って話せばいい」「書類は後でまとめて作ればいい」といった認識が蔓延しており、入管の監査で厳しい指摘を受けるケースが後を絶ちません。
定期面談記録は、単なる活動報告ではなく、企業が支援責任を果たしていることを証明する唯一の「証拠」です。この記録に不備があれば、最悪の場合、受入停止処分という重いペナルティが課されることもあります。
本記事では、外国人雇用の実務に精通した社会保険労務士が、監査を確実にクリアするための記録術と、形骸化した面談が招くリスクについて、Q&A形式で具体的に解説します。
Q1. 特定技能の定期面談記録はなぜ監査で厳しくチェックされるのですか?
【結論】入管法上の支援義務が適正に履行されているかを判断する、唯一の客観的証拠だからです。
特定技能制度において、定期面談(3ヶ月に1回以上の実施)は、第1号特定技能外国人支援計画の中でも特に重要な義務として位置づけられています。入管や労働局の実地調査(監査)が入った際、調査官はまず「定期面談報告書」と「相談記録書」を確認し、支援が計画通りに行われているかをチェックします。
一方で、登録支援機関に委託している場合、「プロに任せているから安心」と考えがちですが、最終的な受入責任(使用者責任)は受入企業にあります。委託先の記録がずさんであれば、企業の管理監督責任が問われます。
実際の顧問先では、面談記録の日付と本人の出勤簿(タイムカード)を照合された際、本人が「欠勤」や「帰国中」である日に面談実施の記録があり、虚偽報告として厳しく追及された事例がありました。記録は事実に基づき、他の帳票との整合性が取れていることが絶対条件です。
Q2. 記録に不備があった場合、具体的にどのようなペナルティがありますか?
【結論】改善命令の対象となり、悪質な場合は5年間の受入停止処分を受けるリスクがあります。
定期面談を実施していない、あるいは実施していても記録を作成・保存していない場合、出入国在留管理庁から改善命令が出されます。これは単なる注意喚起ではなく、行政処分の一歩手前の警告です。
例えば、単なる記載漏れであれば指導で済むこともありますが、一方で「実施していないのに実施したように装う(虚偽記載)」ことが発覚した場合は、出入国在留管理法違反として、受入機関(企業)および登録支援機関の認定・登録が取り消される可能性があります。
一度取り消し処分を受けると、その後5年間は特定技能外国人の受け入れができなくなるだけでなく、現在雇用している他の特定技能外国人も働けなくなるため、事業継続に多大な影響を及ぼします。
Q3. 定期面談記録書(参考様式第5-6号)には具体的に何を書く必要がありますか?
【結論】法定様式の全項目を網羅し、特に「生活状況」「職務内容」「相談事項」を具体的に記載する必要があります。
入管が指定する「定期面談報告書(参考様式第5-6号)」には、以下の項目を必ず記載しなければなりません。
- 面談実施日、場所、実施者、通訳者
- 従事している業務の内容(計画との不一致がないか)
- 生活オリエンテーションの実施状況
- 日本人との交流状況
- 相談・苦情の有無とその対応内容
実務上よくある誤解として、「特に問題なし」という定型文だけで全ての項目を埋めてしまうケースが見られます。しかし、監査では「3ヶ月間働いていて、何も変化や感想がないのは不自然」と判断されます。
一方で、具体的なエピソードが記載されていれば、支援が実質的に機能している証拠となります。例えば「業務内容は〇〇の工程を担当。日本語での指示理解に不安があるため、図解マニュアルを活用している」といった具体的な記述が求められます。
Q4. 「生活オリエンテーションの確認」など、形式的な項目はどう記載すれば良いですか?
【結論】「実施済み」とするだけでなく、本人が内容を理解し、活用できているかを確認した結果を記載すべきです。
定期面談は、入国時や変更時に実施した「生活オリエンテーション」の内容が、実際の生活で活かされているかを確認する場でもあります。単にチェックマークを入れるだけでは不十分です。
例えば、行政手続きに関する項目であれば、「転居に伴う住所変更手続きは完了しているか確認した」といった記述が有効です。一方で、防災・防犯に関する項目であれば、「地域の避難場所を再確認し、ハザードマップの保管場所を本人に聞いたところ正しく回答できた」など、理解度チェックの結果を残すと評価が高まります。
これまで多くの企業を支援してきた中で、形式的なチェックのみで済ませていた企業が、外国人のゴミ出しトラブルや騒音問題を放置していたとみなされ、地域住民からの通報を機に支援体制の不備を指摘されたケースがあります。面談記録は、トラブル予防の履歴書でもあるのです。
Q5. 「異常なし」と書き続けるだけの面談記録にはどのようなリスクがありますか?
【結論】実態を反映していない「形骸化した支援」とみなされ、支援計画の不履行を疑われる原因になります。
毎回コピペのように「特段の変更なし」「本人からの相談なし」と記載された報告書は、入管の審査官から見れば「実際には面談をしていないのではないか」という疑念を抱かせます。
もし本当に相談がない場合でも、「現在の給与額について確認したが、本人から不満はなかった」「寮の設備について聞いたところ、エアコンの効きが悪いとの話があったため清掃を指示した」など、能動的にヒアリングしたプロセスを記録に残すことが重要です。
企業の状況によって判断が異なりますが、あまりにも「異常なし」が続く場合は、面談担当者を変えるか、通訳者を変更して本音を引き出す工夫が必要です。最終的な判断に迷う場合は、専門家への個別相談をお勧めします。
Q6. 実際にあった「面談記録の不備」による指導事例を教えてください。
【結論】長時間労働や賃金不払いの予兆が見逃され、記録と実態の乖離(かいり)を指摘される事例が多発しています。
定期面談では、タイムカードや賃金台帳と照らし合わせて、労働条件通知書通りの雇用が行われているかを確認する義務があります。
実務上よくあるケースとして、面談記録には「労働条件に問題なし」と記載されているにもかかわらず、別途提出された賃金台帳では36協定を超える残業が行われていた事例があります。この場合、面談担当者が労働法令を理解していない、あるいは意図的に隠蔽したとみなされ、厳重な指導が行われました。
一方で、本人が「残業をもっとしたい」と希望している場合でも、法令違反になるリスクを説明し、納得してもらった経緯を記録に残しておけば、企業がコンプライアンスを遵守しようとした証拠になります。
Q7. 3ヶ月に1回の面談を形骸化させず、本音を引き出すコツはありますか?
【結論】面談場所を社外に変える、あるいは直属の上司以外が担当することで、心理的安全性を確保することが有効です。
社内の会議室で、普段指示命令を行っている上司が面談を行うと、外国人は「評価に響くのではないか」と恐れて本音を話せません。
例えば、ランチタイムに食事をしながらカジュアルな雰囲気で話を聞く(※記録は別途正式に残す)のも一つの手です。一方で、深刻な悩みがありそうな場合は、母国語対応が可能な外部の支援担当者と1対1で話す時間を設けることが不可欠です。
実際の顧問先では、定期面談の際に必ず「最近楽しかったこと」と「最近困ったこと」をセットで聞くようにした結果、人間関係の小さな摩擦を早期に発見でき、離職防止に繋がった成功事例があります。
Q8. 現場担当者が使いやすいヒアリングシートの運用ステップを教えてください。
【結論】「はい/いいえ」で答える項目と、自由記述させる項目を分けた独自のヒアリングシートを導入すべきです。
法定様式(参考様式第5-6号)は提出用であり、現場でのヒアリング用としては使いにくい側面があります。現場では、より具体的で答えやすい「補助シート」を用意することをお勧めします。
- ステップ1:生活・仕事・健康・人間関係の4カテゴリで質問を用意する
- ステップ2:日本語レベルに合わせて、母国語併記のシートを作成する
- ステップ3:面談前に本人にシートを渡し、事前に記入してもらう
日本語が得意な場合であれば、本人に日本語で書いてもらうことで日本語学習のアウトプットにもなります。一方で、日本語が不慣れな場合は、通訳者がヒアリングしながら記入するスタイルを徹底してください。
Q9. 委託している登録支援機関の面談の質が低いと感じたら、どう判断すべきですか?
【結論】報告書の内容が薄い、面談時間が極端に短い、通訳の質が低い場合は、登録支援機関の切り替えを検討すべきサインです。
登録支援機関の質は玉石混交です。安価な委託料を提示する機関の中には、Zoomで5分話すだけで「面談」と称し、実質的な支援を行っていないところも存在します。
例えば、トラブルが起きた際に「それは御社で対応してください」と丸投げしてくる機関は、支援委託の趣旨に反しています。一方で、定期的に詳細なレポートを提出し、企業の労務リスクまで助言してくれる機関であれば、良きパートナーと言えます。
支援の不備によるリスクを負うのは企業自身です。「おかしい」と感じたら、契約更新のタイミングを待たずに、他の登録支援機関や専門家にセカンドオピニオンを求めることが、会社と外国人を守ることに繋がります。
まとめ
特定技能の定期面談記録は、単なる事務作業ではなく、企業のコンプライアンス体制を映す鏡です。監査対策としてだけでなく、外国人材が安心して働ける環境作りのために、質の高い面談と正確な記録が求められます。
「今の記録内容で監査に耐えられるか不安」「登録支援機関の対応に疑問がある」という場合は、手遅れになる前に専門家のチェックを受けることを強くお勧めします。
特定技能・外国人雇用に関する詳しい情報はこちらのブログ一覧もご参照ください。
監修者プロフィール
本記事は、HR BrEdge社会保険労務士法人に所属する特定社会保険労務士・渡辺俊一が監修しています。法人顧問業務を中心に、給与計算、労務相談、就業規則整備など、企業のバックオフィス全体を支える実務に携わってきました。
日常的な労務相談から、制度設計、実務運用、トラブル予防まで、「現場で実際に起こること」を前提とした支援を行っています。特に、従業員100名以上規模の企業における実務の属人化や判断が分かれやすい場面への対応を得意としています。
- 社会保険労務士(登録番号:第27070207号・平成19年11月1日登録・平成24年5月1日特定社会保険労務士付記)
- キャリアコンサルタント(登録番号:16131446・平成28年8月23日登録)
- HR BrEdge社会保険労務士法人 代表社員
- 法人顧問を中心とした労務管理・給与計算の実務支援
- 就業規則・社内ルール整備を含む制度運用支援
- 企業向け労務管理に関する書籍・実務資料の執筆・監修
- 経営者・人事担当者向け研修・セミナー講師実績
制度の解説にとどまらず、「このケースではどう判断すべきか」「どこでトラブルになりやすいか」といった実務上の判断ポイントを重視した情報提供を行っています。
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